忠興、武士の誉れを語る!


細川越中守忠興は、武具の研究に最も熱心な武将であった。
時には自ら手を下して作ったこともあるといい、
勇ましさ、美しさを兜に表現する名人であったらしい。

当時は兜を作る際、多くの大名が忠興に教えを乞うた。
忠興は参勤交代時にいつも京都に滞在し、
大納言烏丸光広を訪問しているのだが、
ある時その烏丸家に、近国大名の使者が忠興を追ってきた。

「越中守様のご指示どおりの兜を作りたい」とその使者は言う。
そこで忠興は注意事項を詳しく書き添えて、使者に与えた。
すると使者は内容を一読すると、小癪にも
「立物の下木は桐の木を、というのは間違いでは?
桐の木は折れ易いものです。」と問いただした。

忠興はたちまち顔面を紅潮させ、激怒した。
「汝は弓取りの使いとも思えぬ!
戦いに挑んで誰が生きて帰ろうと思う。
なぜ桐の立物を厭う。軽いほうが動きやすいのだ。
立物の折れるほど働いてこそ、武士の誉れぞ!」

使者は返す言葉がなかったという。