豊臣秀吉が初めて城の外に出たとき河口で牛を見て、これを大いに恐れ怖がったという。

それから間もなく、徳川家康の御前でこの話が出た。
話題が話題だけに、おそらくは若年とは言え武士として如何なものかと、幾分の嘲笑や
侮蔑が混じっていただろう。
が、家康の反応は意外なものだった

「どんなものでも見たことの無いものを始めて見れば、驚くものだろ?
秀頼公が牛を見て驚いたと言うが、それは当然のことだ。
わしだってもし初めて見たら、牛なんてものは特に恐ろしいと感じるだろう。」

初めて見た牛を恐れるのは恥でも問題でもない、としたのだ。

家臣が秀頼を侮ることをたしなめたか、あるいは家康らしい合理主義で語っただけか、
家康、秀頼の恐怖を当然とする、と言うお話。