戦国ちょっといい話23
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0858人間七七四年
2010/12/16(木) 20:21:14ID:AdsW1wN4両者が帰国の準備を進める中、会津四天の佐瀬源兵衛のもとに、佐竹の客将・太田三楽斎より書状が届いた。
“このまま帰国すれば、今生の別れとなろう。互いにいつ果てるか分からぬ身である。老後の思い出に、
顔を合わせて旧交を温めたし。”
「さすがは三楽じゃ、よし、会おう!」
源兵衛は小躍りして喜び、すぐさま主君・蘆名盛氏の許しまで得てしまったが、同僚たちはこれを危ぶんだ。
「相手は謀将として名高い太田三楽だ。ノコノコ行けば、何が待っていることか。」
「いや、わしはヤツを良う知っておるが、そんな男ではない。」
心配する同僚をよそに、源兵衛は甲冑を脱ぎ捨て道服に着替えると、わずかな手勢を連れて佐竹陣へ向かった。
久しぶりに対面した源兵衛と三楽斎は、膝を突き合わせて来し方行く末を語り合い、名残を惜しみつつ別れた。
無事戻って来た源兵衛に、同僚たちが詰め寄った。
「いくら三楽と懇意と言えども、昨日までの敵のもとに、鎧も着けずに出かけるとは何事じゃ!
我ら、手に汗を握って待っておったのだぞ!?」
「何を言う。わしは昔、関東に武者修行に出向いた折、三楽の居城でやっかいになった。その時は武辺話に
花が咲き、毎日夜が更けるまで語りあったものだ。そのわしらの仲に、妙な謀略などあろうものかよ。」
「それでも万に一つ、という事もある。やはり危なかろう。」
「なぁに、万に一つなどという事があっても、顔と顔、眼と眼を合わせておれば、そうそう不意を打たれる
ことはないわ。向こうが動いた瞬間、こちらもお相手し、刺し違える。会津と佐竹、一人ずつ減るだけよ。」
「だ、だが帰るところを、後ろから襲われたらどうする?」
「わしの馬の名はご存知かな?」「……確か、『韋駄天』だったか。」
「そう!その名の通り、風のごとく逃げ去るのみよ。このようになっ!!」
そう言って笑みを浮かべると、源兵衛は愛馬に一鞭当て、懐かしき会津へ向けて駆け出した。
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