五月雨が止まない。
さめざめと泣く女性のように、静かに中空より降り注ぎ地面を濡らしてゆく。
万福丸はそれを見、何事か歌を詠もうとしたが、己にはさほど歌の知識が無いこ
とを恥じて、あえて口には上らせなかった。

万福丸「時に朝倉殿は、尾張の織田信長殿をどう思われる?私の母の兄なのだが」