〜美濃〜
その時、狩衣姿の男が入ってきた。
近衛前久「謙信殿から話は聞いた…大宰大弐殿じゃな」
弘忠「はっ…此度は遠く美濃までお越しいただき、…」
前久「関白であろうとも、美濃ぐらいには出かけるわい…もっとも、関白は辞しておるがの」
場は凍り付いた。この公家風の壮年の男が前関白左大臣・近衛前久だと分かったためである。
弘忠「では、宿所に案内仕ります」
前久「うむ、明日からは政務もあるからの…休むことにする」
・・・
祐光「殿!いきなり前関白さまをお呼びになるとは…」
弘忠「ふふ…公卿の応対も習わねばな」