たとえば、横山さんという名字のヒトが中国に長期間滞在すると、
最初の半年ぐらいで横さんと呼ばれるようになる。これ、あちらに馴染んだというサイン。
(で、もっと長く滞在すると、黄さんになる)

中華=漢族は原則として姓は一文字で表す。
例えば耶律氏、愛新覚羅氏などの長い姓は出自が漢族でないことの刻印となり、
明のように本家・漢族が治める中華帝国の下では、夷狄として軽侮される。

宗氏がかつて惟宗氏だったとするなら、宗氏と簡略化したのは、
東アジア社会〜実質的には朝鮮〜を意識しての現実的な選択だと思われる。
小中華を自認する朝鮮・・・つまり、「最高の存在である中華」の次位に自らをランクし、
他の夷狄を蛮族として蔑視する朝鮮とつきあっていく上で、蛮族の刻印である二文字姓はプラスにならない。

日本の他の公家や武家には、名字(源平藤のような本姓ではない)を簡略化する習慣はない。
例えば万里小路氏は万氏にならないし、小笠原氏も笠氏にはならない。
宗氏のおかれた“境界的領域の領主”という立場の特異性を思わせる一件だね。