戦国期の火縄銃についての疑問@

「火縄銃 所荘吉著 雄山閣 P49−50」に、「常に最高の状態を求めるのは不可能である」と黒色火薬について記載されています。
火縄銃の威力、命中精度の維持は難しく、名人芸ともいうべき修練や複雑に絡み合う未解決な変動因子が多くあるので、戦国時代の武器としての鉄砲については、再考する必要性があります。


『かように黒色火薬はその粒子の大きさ、形状等により、又集合密度によって燃焼速度が異なってくるので、混合原料たる硝石、硫黄、木炭の三味の純度や配合率に対し厳密な注意も当然ながら、混合方法にも困難な工夫を要求される。
このようにして作られた火薬も、鉄腔内に充填された状態、すなわち搠杖によって圧された度合等、名人芸ともいうべき修練や見逃す事のできぬ空気中の湿度等の諸条件が完全に満足されたとき、初めて発射薬としての力を十二分に発揮する事ができるのである。
しかし吸湿性の塩類を含有した黒色火薬に対し、常に最高の状態を求めるのは不可能である。
この事は初期の砲術家による経験によっても知られ、春夏秋冬の四季の変化による配合率の相違や朝夕、天候による装薬量の増減等によって補われるようになっている。
この装薬量は口径のみでなく、火薬の燃焼が終わっても弾丸が銃腔内にあれば、摩擦によって弾速が落ちるので、銃身長によって量が異なるのは当然である。』