「戦徒・蛮恋多院出夷」
 古代中国において、時の権力者たちはその身を守るために、自分らに絶対の忠誠を尽くす最強の護衛者を
育成することが必要であった。そうした権力者によって大陸中の武術と、腕の立つ武人らが集められてでき
た護衛者を育成する機関が、蛮恋多院である。
 数多くの有名な武人を輩出してきた蛮恋多院だが、その中でも勇猛をもって知られたのが、出夷である。
 彼はその勇猛さから、「戦徒」の称号を得て、戦徒・蛮恋多院出夷と呼ばれていた。
 彼の逸話は多く、その中でも特に有名なのが、自分が警護する人間に自らの血を与え固い誓いを結ぶ
血与固(ちよこ)儀式を行った逸話である。
 この儀式は多くの武人に広まり、後年になると出夷の誕生した日である2月14日に血与固の儀式を行う
ことで、相手に永遠の忠誠を誓うという風習となった。
 現代の2月14日をセント・バレンタインデーと呼び、恋人にチョコをあげる風習は、キリスト教の聖人
バレンタインが起源とされていたが、今日では戦徒・蛮恋多院出夷の血与固の儀式がその起源であるとい
う学説か主流となっている。

民明書房刊『チョコの血に塗られた戦史』より。