俺は桐木吾郎。私立探偵だ。
うだつのあがらぬ貧乏探偵だが、常に正義の味方だ。
世の中には、悪いヤツがいっぱいいる。その隠れた悪事を摘発すべく立ちあがった俺は、いま当局が捜査中の、八千万円の公金横領の女事務員、大沼ゆかりを俺の独力で見つけた。
彼女は変装して盛り場で遊び歩いていたのだった。
「おい、もう逃がさんぞ。さあ警察へ行くんだ」
「警察は勘弁してください。ホテルなら付き合いますから‥」
正義の味方も女には弱い・・・俺は大沼ゆかりとホテルに入った。
ベッドの中で俺はゆかりの凄いテクニックで何度も何度も射精し、昇天した。
ベッドでぐったりしている俺を見て、トイレから戻った大沼ゆかりは笑った。
「あんたって、見かけ倒しね。もっとタフかと期待したのに」
誇りをキズつけられ、俺は怒った。ゆかりをイヤというほどブン殴った。
「ナメるな。さあ吐くんだ。金はどこに隠してある?」
ゆかりはヒイヒイ泣き出し、ついに白状した。
「S町のウィークリーマンションの302号室を偽名で借りて、その部屋の床下に入れてあるの」
「ウソじゃあるまいな」
「ホントです」
ゆかりが教えたマンションの管理人と連絡を取り、ゆかりの人相と名乗ったという偽名をつたえて確認を取った。
「どうやら確からしい。よし、金は俺がマンションに行って警察に届けよう。おまえはここで待て」
俺はウィークリーマンションに出掛けた。ゆかりが偽名で借りていた部屋は確かにそこにあった。が、金はなかった。ホテルに戻ると、大沼ゆかりも消えていた。
俺はやっぱり駄目な男だ。あんな"錯覚"をするなんて―――。
さて、その錯覚とは?