転載ですが

私の名前は宮元樹(みやもといつき)。今年で50になる。
末期ガンでホスピス暮らしをしている私は、同じホスピスで死を待つ若い少女に
何か面白い話は無いかと訪ねられ、とっておきの話をしてやる事にした。

「これは、30年前に実際にあった事件だ」
「私が生まれるずっと前ね」
「ある兄弟が、冬山登山に挑戦した。長男の大志(ひろし)をはじめ、
 不二雄(ふじお)、満(みつる)、陽平(ようへい)、一番下が武蔵(むさし)だ」
「力強い、良い名前ばっかりね」
「だが、彼らは皆、悲惨な運命を辿る事になる。登山の最中に強い吹雪に見舞われ、
 遭難の憂き目に遭ったんだ。兄弟は、生まれつき体の弱かった末の弟を見捨てて、
 残る兄達だけで全速力で山小屋に非難した。だが、山小屋にはせいぜい一人分の
 燃料と食料しかなかったんだ。すでに弟を見捨てていた兄達はそれを奪い合い、
 各々が持っていた山岳用のナイフで殺し合いを始めた。
 そして結局、後日山小屋を訪れた捜索隊が発見したのは、兄弟四人の死体だった。
 大志は背中にナイフが刺さっていて、指紋はついていなかった。
 不二雄は首の左側にナイフが刺さっていて、満の指紋がついていた。
 満は左脇腹にナイフが刺さっていて、不二雄の指紋がついていた。
 陽平は腹部にナイフが刺さっていて、指紋はついていなかった」
「まぁ……じゃあ、結局全滅してしまったの?」
「だが、おかしな事が一つだけあった。山小屋の食料や燃料が、全部使われていたんだ。
 四人は全員ナイフが刺さって死んでいたというのに、一体誰が使ったんだと思う?」
「……武蔵さんの死体は見つかったの?」
「ああ。兄達が見捨てた場所よりもかなり山小屋に近い場所で、凍死体で見つかった。
 なんとか自力で這ってきたけど、あと一歩のところで力尽きたんだろうね……」
「ふぅん……」
「どうだい、食料と燃料を使ったのは誰か、分かるかな?」
「その前に……この話、全部本当の事、っていう事でいいのね?」
「あはは、やっぱり信じられないかい? まぁ、そうだとして考えて欲しいな」
「だったら、一人しかいないわね」

では問題です。食料と燃料を使ったのは誰か、答えて下さい。
答え方は、例えば「長男の大志」や「三男の満」という風にお願いします。