<ファクトチェック>SNSで拡散「選挙機材大手『ムサシ』大株主は安倍元首相」は誤り

10/18(月) 18:01
毎日新聞

 衆院選の日程が19日公示、31日投開票と決まった。毎日新聞は、国政選挙のたびにSNS(ネット交流サービス)などで繰り返し拡散される情報をファクトチェックする。今回取り上げるのは、選挙機材大手「ムサシ」(東京都中央区)の大株主が安倍.晋三元首相である、といううわさだ。結論から言えば、これは誤りだ。

 ムサシは、投票用紙の「読み取り分類機」や「計数機」、投票用紙などの開発や製造を手がけている。同社を巡り、「安倍氏が大株主を務めている」とするうわさや、これに絡めて「選挙で不正が行われている」とするうわさがSNSで拡散されてきた。

 拍車をかけたのが、学校法人「森友学園」(大阪市)を巡る補助金詐取事件で詐欺罪などに問われた前学園理事長の籠池泰典被告が、2019年に外国特派員協会で開いた記者会見での発言だ。

 籠池被告は「我が国の選挙制度について、本来手で開票していたが、今はムサシという機械が使われている。そのムサシという機械(を製造・販売する会社)の筆頭株主は安倍.晋三さんと聞いているし、竹中平蔵さんがそのプロデュースをしたということも聞いているが、ムサシによって自動集票することで、不正が行われやすい状況になっている」などと述べた。

 この発言部分を短く切り出した映像が拡散し、中には再生回数が100万回を超えるとみられるものもある。ツイッター上では、この発言の内容を紹介する投稿や、「ムサシは安倍晋三の会社」「ムサシを調べねば」などとする投稿が続いている。

 しかし、これは誤りだ。ムサシがホームページ上で公表している02年以降の有価証券報告書では、所持する株数が多い上位10者を記載した「大株主の状況」に、安倍氏は一切登場しない。筆頭株主は一貫して「上毛実業株式会社」(東京都文京区)となっている。ムサシの赤井征巳広報室長は「大株主の一覧は公開している通りです。安倍氏とは全く関係ありません。竹中氏が機械をプロデュースしているという事実もありません」とうわさを否定する。

 「不正選挙が行われている」とするうわさで特に標的となっているのが、開票作業に導入されているムサシの「投票用紙読取分類機」だ。投票用紙に書かれた文字を瞬時に読み取り、候補者ごとに仕分ける機械で、全国の自治体の約8割のシェアを誇る。この機械の特徴は、投入された投票用紙が仕分けられていく通り道が全て外から見えるようになっている点だ。「開発当初から、選挙で大切な透明性と正確性を意識しています。工程を隠してしまうと意図的な仕掛けがあるのではと疑われてしまうので、全て人の目で追えるようにしました」と赤井室長は説明する。

 それでも「マシンの中で候補者名が書き換えられているのでは」といううわさもある。赤井室長は「1分間に660枚の速度で仕分けており、そのような技術が可能なのか、こちらが聞きたい」と苦笑いする。

※略※

https://news.yahoo.co.jp/articles/5f1d599c80d891a485cb8508bdcffd822f38e6d3