非正規公務員には労働契約法が適用されないため、自治体は何年雇っていようが無期雇用に転換することも、雇用期間を長くすることも義務付けられていない。
それにもかかわらず多くの自治体が、必要以上に短い期間を定めて非正規公務員を採用し、有期雇用を反復更新して、いざとなったら雇い止めという「解雇」を自由に行なえるようにしている。

非正規公務員にはパート・有期雇用労働法も非適用なため、格差を埋める義務を免れているばかりか、自治体には民間事業主に課される待遇差の説明義務さえなく、非正規公務員からのあらゆる異議を「問答無用」ではねつけている。

非正規公務員の驚くほど低い給与は、
(1)基本給の水準が正規公務員の初任給より異様に低く設定されている。
(2)昇給額の上限設定が決められている。
(3)支給すべき手当に制限がある
からだ。
その結果、自治体によっては、非正規公務員がふつうに働いて得る収入が地域別最低賃金さえも下回る。
こうした状況を改善するとして導入された会計年度任用職員制度は、公募試験の導入によって「金銭的な対価のない解雇」を自由化するなど、状況をさらに悪化させている。

上林氏はこうした状況を総括して、
「会計年度任用職員制度とは、同一労働「非」同一賃金を一般原則とする官製ワーキングプア固定化装置」
であり、
「現行の非正規公務員の勤務条件の改善のための(自治体の)法環境は、民間に比べて二周回も遅れている(一周回遅れは非正規国家公務員)。
もしかしたらスタートラインにも立てていない」
と強く批判している。

ここで誰もが疑問に思うのは、民間はまがりなりにも同一労働同一賃金が導入されつつあるのだから、まともなひとは民間企業で働こうとするのではないか、ということだろう。
これは実際そのとおりで、多くの自治体で教員が不足しているが、その理由のひとつは「臨時教員が就職してしまったため」だという。
日本の場合、公務員はもともと「正規」が原則で、「非正規」は専業主婦などが家計を助けるために補助的な仕事をするのだとされていた。
それがいつのまにか、専門職の非正規公務員が自治体の住民サービスの最前線に立ち、不安定な身分と極端な低収入でなんとか生活しようと苦闘している。

どれほど高い志があったとしても、ここまで劣悪な労働環境で長く働くことはできないのではないか。
児童相談所や生活保護の相談窓口で不祥事が起きるたびにメディアははげしいバッシングを浴びせるが、職員が置かれた実態が記事になることはほとんどない。
なぜなら、そんな不愉快な話は読者・視聴者が喜ばないから。