https://dot.asahi.com/wa/2020091400038.html?page=2


──ならば義偉さんは集団就職しなくても良かったのでは?

「アレは全然勉強しなかったの。『バカか』と言ったの。北海道大を受けて弁護士か政治家になりたがっていたけれど、全然勉強しないから入れるわけないの」

 ぼろくそだ……。義偉の子供時代のことを聞くと、父からはすぐ「バカ」という言葉が出てくる。

 元教師という母のタツが付け加えた。「集団就職しても1カ月で帰ってきて、それでウチで勉強していたんです」。和三郎が続けて言う。「役内川でアユ釣りばかり。それで浪人中、アユ釣り大会で優勝して県知事から竿をもらったんです」

「集団就職」と片付けるには込み入った話である。むしろ菅が「自分探し」に彷徨していたと言えるだろう。結局、法政大に進学。父和三郎は、意外なことを打ち明けた。

「学生運動が盛んなときで、アレはデモを見に行ったら捕まってしまったんです。『自分はやっていない』と言っても、検事に調べられて長く留め置かれて、それで関係ないことがわかって帰されました」

──えっ、連行されたんですか?

「んだ」と和三郎。饒舌な父だが、さすがにこの瞬間は、しゃべりすぎたと思ったのか、神妙になった。タツも「あのときはショックだったみたい」と相槌を打つ。