中里透
安倍内閣の経済政策は、「新自由主義」としての評価や批判がしばしばなされる。
だが、これは不思議な話だ。
政労使の対話の場を設け、首相が経済界のトップに自ら賃上げを要請する政権の経済政策が、はたして新自由主義的なものといえるのだろうか。

政権発足当初の「三本の矢」は成長重視の枠組みであったが、そこに子育て支援と社会「保障の充実などからなる「新・三本の矢」が加わると、途端に再分配重視の政策に生まれ変わる。
この融通無碍な対応は支持層を広げ、長期政権を実現させる礎となったが、その分だけ目指すゴールは曖味になった。