池田信夫 blog B-CASは独禁法違反である 2008-01-17 / Media
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/e3b44ae168cda176cb937bf809bfe8ec

CAS(conditional access system)は、有料放送のシステムとしてはどこにもあるが、無料放送に
CASをつけている国は日本以外にない。FAQにも書いたことだが、事の起こりは、BSデジタルを
有料放送にするか無料放送にするかで民放の意見が割れたことにある。当初はみんな強気で、
有料放送でやる予定だったので、ITゼネコンに委託して100億円かけてB-CASセンターを作った。
それを使ってTVショッピングをやるとか、いろんな夢を描く業者がいて、私に役員になってくれと
頼んできた企業もあった。私が「BSデジタルは危ない」と止めても企画会社をつくったが、
やはり失敗して企画会社を清算した。

そういう現実をみて、各局とも弱気になり、当初は無料放送でやって、視聴者が増えてから
有料に切り替えようということになった。ところが、困ったのはB-CASセンターの100億円を
どうやって回収するかである。WOWOWだけならもともとCASはあるので、B-CASは必要ない。
そこで彼らが考えたのが、とりあえずB-CASを全受像機に入れておき、有料放送になったとき、切り替えるという方針だった。

しかしBSデジタルの出足は悪く、各社は数百億円の赤字で、とても有料化できる情勢ではなかった。
おかげで受像機の出荷も少なく、B-CASは赤字を垂れ流していた。そこで彼らが考えたのが、無料放送で
ある地デジにB-CASを導入するという方針だった。これによってBSよりはるかに多くの「審査料」が取れるからだ。
しかし、無料放送にCASを入れる大義名分がない。そこで出てきたのが、コピーワンスによって「著作権を守る」という理由だった。

・・・というような調子で、間違いに間違いが重なって今日に至ったわけだ。だから問題は、これをEPNに
するかどうかといったレベルの話ではなく、こういうおかしなしくみを作った意思決定システムを見直すことだ。
最大の問題は、これが事実上は総務省の天下り先であるARIBによってつくられた公的な規格で、
すべてのデジタルTVに義務づけられるのに、その審査をB-CAS社という民間企業が独占しており、
この審査に法的根拠がないことだ。つまりB-CASは、独禁法第3条で禁止されている私的独占そのものなのだ