小鐵:ところがCDの始めの方というのは、アナログレコードは「アナログからカッティングするわけだからロスがあるだろう。
そのロスを補うためにマスタリングするんだ」って考え方をする上の人が多かったんです。
そういう考えがあるもんだから「CDになったらカッティングをしないんだから、立ち会って操作する必要はない」と。「CDの場合は、トラックダウンしたマスターのままでよろしい」という考えだったんですね。

?? CDが出たばっかりの頃はフラットだったんですか?

小鐵:もうフラット。よく「リマスター」ってあるじゃないですか? 当時のものってレベルも低かったですよ。
と、言うのはトラックダウンしたマスターそのものをマスターにしているから、そのレベルのまま、素材のままなんですよ。
そんな事情があるので「リマスター」によって音質がすごく変わることがあるわけです。

当時はトラックダウンした素材をそのまま工場に持って行ってしまうんですよ。
たまに「CDのマスタリングしてくれ」って言ってくる人がいたんですけど、それをやると「余計なことするな」と会社に怒られたもんです。そんな時代があったんです。

?? では、少し遅れてCDのマスタリングというものが確立されていったと。

小鐵:そうですね。聴き比べると、やはり外国のCDの方が格好良いわけじゃないですか?
それでようやく、CDにもマスタリングが必要だということになった。ですから、アナログのときと同じ流れですよ。