しばらく進むと見たこともないような防波堤で数人の釣り人が釣りをしていた。海は墨汁
のように真っ黒、空は赤に近いピンク色だった事は覚えている。
変な形の魚が釣り人のバケツの中を暴れまわっている。
釣り人は近付いた私に一瞬驚いたようだが一瞥くれるとすぐに釣りに戻った。

離れようとした時ボソッと声が聞こえた「喰われるぞ」
「え?」と言ったのも束の間、私はカラスのような鳥に手を突つかれた。同時に釣り人がバケツに入れていた魚を鳥に向かって投げた。群がる鳥。
釣り人は、方角を指差すと
「急げ」と。その方向に全力で駆け抜けた。途中一度だけ振り返ると、太陽が近づいて来ていた。釣り人や鳥、景色も蒸発していった。