友人の話。

山の棚田で田植えをしていた時、足を取られて転倒した。
体勢を持ち直そうとしたが叶わず、顔から泥に突っ込んでしまう。
次の瞬間、上空から棚田を見下ろしていたのだという。
いきなり切り替わった視点に驚いていると、真下の棚田に倒れ込んだ男が見えた。
転けた自分だった。

理由はわからないがヤバイと感じ、必死で体に戻ろうと念じていたら、
視界が真っ暗になり息が出来なくなる。
顔が泥から出て、やっと自分が元の身体に戻れたことに気が付いたそうだ。

「俺ってあの時、幽体離脱でもしていたのかな?」
彼は不思議そうにそう言っていた。