彼らはその足ですぐに警察へ駆け込み、その屋敷で C が行方不明になったと告げた。警察も、もともとが
屋敷の現状を確認したかったのか、即応して朝まで捜索が展開された。その結果、当主が一室で、おそらく
は老衰のため死んで布団の中で半ミイラ化していたのが発見されたのと、こちらは朝になって分かったこと
だが、縁側から外部へ、何かが這い出て行った痕跡が発見された。C の持ち物のいくつかがその縁側の突き
当たりの和室で発見されたが、C 自身の行方は皆目不明だった。

この後、結局何を見たのかについて、けっこうな時間押し問答が続き、最後に A は渋々ながらも語ってくれた。

おはぐろ。そう、おはぐろの歯を剥き出しながら、笑顔なのか泣き顔なのか怒り顔なのか、何とも言いよう
のない表情の、日本髪を結った割と年配の女性。それが、C の両足にしがみついてたんです。それだけでも
怖いのに、その女性、頭と手と肩だけで、ほかがないんです。ぺったんこの着物が、C の背後の闇へズッと
延びてるだけで。ズッと、

不意に彼は蒼ざめ震え出した。私が声をかけようとした刹那、ズッと何かを引きずるような音が待合室の方か
らした。私たちが顔を見合わせる間にも、今度はエヘ、エヘヘという異様な笑い声がする。彼はお前のせいだ
と言うような表情で私をにらむと、驚くほどの身軽さでヒラリと窓から逃げ出す。呆然と見送る私の背後で、
なおもズッ、ズズズッと何かが這い寄る音と、エヘエヘと不気味な笑い声が診察室のドアへと近づいて来る。
さあ、これを書き終えた今、後は振り向き、ドアをジッと見つめながら、ただ待ち続けるだけだ。