まあでも、はっきり言って俺は視力良い方じゃないから「こんな時間に散歩かな?」くらいにしか思ってなかった。
それで、しばらくボーっとそいつを見てたんだけど、街路樹に重なってからそいつが出てこないんだよ。わかるかな?
 
ずっと真っ直ぐな道(自転車が走る所)を歩いてたのに、フェンスの内側に植えてある街路樹とそいつが重なった途端に、ぱたりとそいつの気配が消えて、誰もいなくなったの。
 
一瞬、状況が飲み込めなかったんだけど、ヤバいと思ってすぐに窓閉めた。
それから、隣で一緒に外見てた友人に「見た?」って聞いたらさ、「え?何を?」って言うんだよね。
この友人は、あんまり人をからかったりするようなタイプじゃないから、マジで言ってたんだと思う。
 
俺超怖くなって、情けないんだけど友人に頼んで、泊まってもらうことにしたの。
それで、風呂入ろうと思ってパーカーを脱いだらさ、パーカーの下に来てたTシャツに、長い髪の毛が五本くらい張り付いてたんだ。友人も俺も、それ見て顔面蒼白。
その日は友人と一緒に震えながら、朝までゲームしてた。