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俺がそれに気付いて動揺したのを電話口で悟ったのか、朗読が止まった。
そして妙に湿ったような声で
「小学生なのに、こんなエッチな漫画を読んだらダメだねぇ?」
「早く続きが読みたいのかなぁ?」
「だったらお仕置きしないといけないなぁ?」
みたいな事を話しかけてきた。
ブワッと鳥肌が立って、そこで初めて「怖さ」を感じた。受話器を叩きつけて
電話を切り、部屋を見渡した。窓に誰かが覗いてる人影はない。
詳しい間取りや家周辺の説明は省くが、俺が寝転がって漫画を読んでた位置は
窓から覗いても死角になるような場所だったんだ。

俺は心底震え上がって、慌ててトイレに駆け込んで鍵をかけた。
そのあと母が帰ってくるまで何度も何度も電話が鳴ったが、もちろん出なかった。
母が帰ってくると、俺はトイレから飛び出し泣きながら事情を説明した。
信じてはもらえなかったが、同級生の何人かにも似たような事があったらしい。

そんな訳で20年経った今でも電話はトラウマ。
携帯電話すら持てないでいる。