ぼくは少し混乱したが、n部は口数が少ないおとなしい男だったので
その分ぼくは頭を回転させる余裕があった。
松本なんていない?何をいっているんだろう。
学校のクラスでは、松本はぼくの前の席に座っている。
背中をつつくと笑いながら振り向いて「やめてーや」と言ってくる
人懐っこい女の子だ。

なぜn部は松本を知らないなんていうのか気になったけど
ぼくは好きな女の子の話をした気恥ずかしさから、
あまり深く詮索しなかった。
そのとき、ぼくの兄が自転車で通り過ぎ、こっちに
「や き ゅ う(やるぞ)」と口の動きだけで合図してきたので、
ぼくらは解散した。

それから10年たった。
不思議にかみ合わなかったあの会話の意味が、
時間を超えてようやく理解できた。

n部の冥福を心から祈りたい。