だと言うのに、そこには確かに何らかの気配があり、更に集中してみると、ひそひそと何かが
囁き合っているような声が聞こえている事に気付いたらしい。しかも、一人や二人のものではなかったと言う。
流石に不気味に思った兄だったが、元来、好奇心も人一倍強く、その正体を確認してやろうと言う気分に
なってきたらしく、声のする方にそっと近づくと、襖に手をかけてそっと中を覗き込んでみたらしい。

中の様子を覗き込み、兄はその場で固まってしまったそうだ。
この家には元々、婆ちゃんと爺ちゃんの二人しかいない筈である。
だと言うのに、仏間には六人か七人くらいの人影あり、それらが車座に並びながら
額を突き合わせて、ひそひそと何かを喋りあっているらしい。
薄暗くてよく分からないが、殆どが爺ちゃんや婆ちゃんと同じくらいの歳の老人で
全員が全員、黒っぽい着物に身を包んでいたらしい。
その光景が余りにも異様だったので、思わず息を飲んだ。すると、それが聞こえたのか
ひそひそと言う話し声がぴたりと止んだそうだ。
ヤバイ・・・と、思っていると、それまで車座の中心を向いていた顔が、ぬうっと兄の方を向く
表情はまったく分からなかったが、無性に生気が無い感じだったと言う。
彼らはそのまま、まったく動かない。兄は兄でどうして良いのか分からず戸惑っている。
すると、