「でも、目立ったもん勝ちじゃないですか」

そうアタシのね、サークルの後輩の高瀬君、まあ仮にT君としておきますが
酒の席でいっつもこう言う。こう言って乱痴気騒ぎをする。
イイ奴なんですよ。ただ、どうもタガが緩いというかネジが飛んでいるというか、
ちょっと不安なところがある。

サークル連中で心霊スポット行こうなんつってね。
あの、コンビニに置いてあるような心霊スポット地図パーラパラめくったらば
近場にね、一家惨殺。そんな家があったんですよ。

これはちょっと、詳細明かせないんだけども、
アタシも他の連中も、とにかくここで生まれた奴なら誰でも覚えがある、
それくらい大きな事件だったもんだから。なんせ一家惨殺ですからね、ええ…。
そうそう忘れるもんじゃない。

T君「行こう行こう!」言う。
T君ここの生まれじゃないもんだから気楽ですけど
実際アタシらそこんちのこと詳しいところまで知ってるわけですからね。
生々しすぎるってんで反対したんです。反対したんですがまるで聞かない。

そしたらT君、「じゃあ俺ひとりで行く」言ってね、
彼言い出したら聞かないでしょ。アタシらが止めるのも聞かず行っちまったんです。
アタシら何だかしらけちまってね…。じゃあまた明日ーなんつって、その場は解散しましたよね。