ほんのりと怖い話スレ その47
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0132ほんのり良い医者
2008/03/10(月) 14:53:10ID:bAVkovUv0私は医師だ。医師としては真実を告げるのが義務だ。
命に関わる病なら、本人は元より家族その他への色々な配慮も必要な
のだろう。
だが”これ”はその例に当たらない。
故に告げるのは至極当然の事ではあったのだが、まだ若い彼にそれを
告げるのは、一種の死刑宣告にも等しいものではないだろうか。
彼の症例を己に反映すれば、とても耐えられそうもない事実だった。
恐らく、この生殖器の細かい傷は表面のみにあらず、傷の最深部からま
た別の傷を分派させながら、次第に深遠へとそのクレバスを広げている
事だろう。
つまり、外観はともかく、中身は刺激を感じる毎に崩れているのだ。
セックスは勿論、自慰行為すら不可能だろう。
マゾヒストでさえも敬遠するであろう”内臓感覚”での激痛は次第に強くなり、
あまり考えたくはないが、触れるだけで出血する事になる。
単なる排尿行為ですら、卒倒しそうな凄まじい痛みを伴う事になる。
『あと2日、いや1日早く来ていてくれれば・・・』
同じ男性としてあまりに哀れを感じ、私は両手で顔を覆いたくなった。
だがその感情を抑え、何とか微笑を浮かべる事が出来た。
「大したことはないでしょう。良くある事ですよ。」
安堵する患者の顔を正視できないまま、精一杯の微笑とともに私は告げ
る。
「軟膏を処方しておきます。それと、しばらくは性行為の類は禁止です。」
照れた様な笑顔を浮かべながら立ち去る患者の表情に、私は泣き出した
くなった。これが私の弱さなのだろう。
キッと表情を固めてみたが、いつまで彼に真実を隠せるのだろう、と考え
ると挫けそうになる自分がいた。
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