源兵衛と妻が洞窟で暮らし始めて25年目のある晩、
源兵衛らは、近隣の町から帰ろうとしていた夫婦を襲った。
攻撃部隊が最初に女を捕らえ、次に男をつかまえようとそうともみ合っている間に、
別の部隊が先に捕らえた女を裸にし、その場で内臓を引きずり出し、
洞窟へ持ち帰る準備を整えた。それらの残虐行為を目の当たりにした夫はパニックに襲われ、
半狂乱になって無我夢中で暴れた。
火事場のなんとかというが、彼のすさまじい抵抗で源兵衛らの何人かは転倒した。
ちょうどその時、同じ町から帰る20人以上の集団が偶然に通りかかったのだ。
不意に大人数の集団に出会った源兵衛らは、自分たちが不利なのを悟ると攻撃を中断し、
切断した女の死体をその場に残したまま、慌てて洞窟に戻った。
これが源兵衛一族にとって、最初で最後の、そして最大の失敗になった。
彼は坂上田村麻呂に連れて行かれ、自らが体験した事件について口述した。
その話しに将軍は衝撃をおぼえた。