これは俺がベトナムで旅をしていた頃の話だ

夕日を見ながら浜辺でディナーを嗜んでいると
日本人女性と現地の中年男が口論していた。
彼女によればバイクタクシーを利用した際に男がボッタクリ料金を請求してきたそうだ。
言い合っている内に男が怒り狂い彼女に拳を挙げていた。
俺は挙げた手を掴み、男を制する。

「待ちな、強奪するつもりか?」
「なんだてめえ!?邪魔をするな!」

すると男がもう片方の手で俺の顔を殴ろうとした。
俺の頬に拳がかすった。頬から血が流れる。
俺は親指で血を拭って舐めた。

(鋭い拳だ・・・察するに元ベトナム兵ってところか)

間合いを取り、男が構えをとる。

「隙のない構えだ・・・だが」

俺は地面の砂を蹴り上げ、その反動で一回転し旋風脚を放つ。
男が怯んだ隙に砂を目に放った。更に瞬速で急所を突く。
男は倒れ、痙攣している。

「だ・・・だいじょうぶですか?」
「心配は無用。だが女の一人旅は危険だ。気をつけるんだな」
「は・・・はい」
「しかしここにいても危険だな・・・まぁいい、俺についてこい」
「喜んで」

俺はバイクに女を乗せ、夕日を背に新たな旅路を再開した。