わたしのもうすぐ60歳になる父はとても現実主義。
わたしは実家を離れて暮らしているのだが、帰省土産を仏前に供えると、
「仏壇にそんなもの置く必要はない。生きている人間が食って
長生きしたほうが、じいさんやばあさんの供養になるだろ。」といって食べてしまうような人。
幽霊や死後の世界も信じておらず、「バカバカしい。人は死んだらおしまいだ」と言っていた。

そんな父は50歳を過ぎた頃から徐々に太りはじめた。
それと同時にイビキがひどくなり、病院で「睡眠時無呼吸症候群」と診断された。
ご存知の方も多いと思うが、この病気は寝ている間に呼吸が止まってしまい、
最悪の場合死に至ることもある。
父はダイエットしたり、夜中に母に起こしてもらったり、何度も目覚ましをかけて
自主的に起きる努力をしていたのだが、なかなか改善されない。

ある夜、母がいつものように父を起こそうとしたとき、
父が全く息をしていないことに気が付いた。
慌てて父を起こすと、父は大きく息を吸い込みながら、
「ああ・・・夢みてた・・・。花をいじっていたよ・・・。」と言って目を開けた。
元々庭弄りが趣味だった父なので、母はその夢を見ていたのだと思った。