それから10年。
私も18になり、トラックの運転手になっていました。
その日、夕方に荷物を積み、夜のうちに目的地へ移動中。
突然濃い霧のようなものが立ち込め、そこが本当に道路なのかさえわからなくなりました。
危険を感じた私はすぐに車を止め、霧が晴れるまで待つことにしました。

すると前方から、二人の人影か近づいてきました。
なぜだかすぐにあの二人だと気付き、車を降りて駆け出していました。
二人はにこやかに微笑んでいて、私は泣きながら抱きつきました。
それから、時のたつのも忘れて、10年間にあったいろいろなことを話し、
二人は昔のように聞いていてくれました。
話が終わると、二人は泣いていました。私は「そろそろお別れなんだ」と思い、
「ありがとう。本当にありがとう」と言いました。また、私は泣いていました。
二人は「あなたが幸せなら、私たちは安らかにいられる」と言い、
「もし私たちの最後の言葉を忘れてしまったら、あの場所へきなさい」
と言い残し、霧の中に消えていきました。
気がつくと霧は晴れ、車は路肩に止まっていました。

翌日、二人の家のあった場所に行くと、そこは墓地になっていました。
十数個ある墓石に刻まれているのはすべて同じ苗字
その中に新しい墓がひとつ。
その裏には二人の名前がありました。お兄さんが亡くなったのは、その人が亡くなってちょうど一年後でした。
花を添え、線香をたき、手お合わせていると、頭の中で二人の声が聞こえました。
そして、私は最後の言葉を思い出しました。

「私たちの分まで生きなさい」と…。