これは1993年の初夏を偲んだ話
僕が大学四年のころのことだ
就職が決まりすることもないので夜更しをしていたらいつの間にか朝になってしまっていた
早朝、そとから子供達の声が聞こえてきた
朝日を受けてオレンジ色に染まるビル群
僕は(ラジオ体操の時間かあ)などと思い、のんきにそを聞いていた
窓を開けるまもなくそとから流れるラジヲ体操のあの音楽
僕は(お、はじまったぞ)と思い外を眺めた。子供達がラジヲ体操をしている。
初夏の風物詩だ。しかしそう思ったのもつかの間
(あれ?今日は9月の3日だぞ?なぜ夏休みも終わっているのにラジヲ体操なんじゃ?)
と、ふと疑問に思った
すると外でラジヲ体操をしていたこどもたちが黒い闇に包まれたと思うと
いままで燦々と輝いていた朝日が沈み夜の如く辺りは闇へと包まれた
霞城の木立がガサガサ音を立てる
一寸先も見えないような異様な黒い闇の霧が僕を沈め込む
依然としてラジヲ体操の音楽はなり続ける
僕は泣いた。懐かしさと、悲しさと、儚さに胸が一杯になって
消え行く子供達、そして辺りには血の海が出来る
人は生まれ、そして死に行く
子供達はまるでセミのようだ。短命でそして儚い
溺れてそして殺されて、そして夏に骨になるんだ
お堀のほとりの小屋の栄華がよみがえり御霊が糸を水面に垂らす
僕は庭の葉に火をつけて一息に吸い込んだ
ただいま。
ママ、僕、今帰ったよ。