いうてはイカンと思ってずーっと
黙って来たことですが、ここでこっそり白状させてください。

子供のころ(幼稚園から小1まで)家がせまくて、戸をあけた押し入れでねていたのですが、
ある晩、押し入れの中で物凄い風が吹きまして、びっくりして目がさめました。なぜ家の中しかも押し入れの中で風が吹くのかわかりませんでした。
部屋は小玉というか、あの、電気の黄色いやつだけついていました。
風がひどかったので必死でシーツにしがみついていました。

だんだん暗さに目が慣れて、部屋のようすを見たところ、なぜか姉の机の下がぼんやり明るくみえました。
どうもなにか、灯りがついているようなのです。よく目をこらすと、なめし皮のような質感の生き物が点々と並んでいました。それがぼんやり光っていて、その向こうを、なにか小さなものの行列が歩いているのです。
それが何といいますか、やたらにゆっくりと時間が流れているかのように、停止して見えるのですが、時計の長針くらいの早さでゆっくりと右から左へ進んで行っているようなのです。
とにかく風がひどく、私はその場から吹き飛ばされて転げ落ちそうな、まるで山の頂上で台風に巻き込まれたかのような、まさに生きた心地もしないといった調子でした。

しばらくたって風もやみ、行列も見えなくなったので、押し入れからとびだして眠っている親を起こし、起こったできごとを必死に説明したのですが、親は理解してくれませんでした。
「それであんたになんか悪いことでもしたの?お化けはべつに何もしないでしょ。」などと言って笑うだけで、信じていないようすでした。私は大変な危機感を感じ、更に説明しようとしました。すると「そんなこと本当だって主張してどうする気なの?」と不快そうに聞かれたので、
ああ、これは親にもどうしようもないことなんだな、とわかって、黙りました。
翌朝親兄弟に嘘つきの大騒ぎと笑い者にされ、これはだれかにいったら絶対にマズイな、と感じ、それ以来口をつぐんでおりましたが、
あの崖から吹きおとされそうになる恐怖感は今でも生々しいのです。

どうせ会うならにこにこした仏様がよかったなあ。
きっと前世の行ないが悪かったのかもしれません。
長くなってすみませんでした。