俺の町の中学校には、学校の敷地内にSL機関車が保存されていた。
そして、俺は中学校入学までにその機関車が動いているのを見たことが3度ほどある。
機関車を載せているレールは、機関車の全長から前後にほんの僅かの余裕がある程度の長さしかない。
その短いレールの上を機関車が煙を吐き出しながら前後にゆっくりと往復運動しているのを見た記憶があるのだ。
俺はそれを不思議な光景であると思ったことはなかった。
機械は定期的に動作させないと錆ついて駄目になる。メンテナンスを兼ねて動かしているのだろうとずっと思っていた。
しかし、その思いが打ち砕かれたのは中学校に入学して一月ほどたってからの事だった。
生徒になったので、誰に気兼ねする事もなく機関車を見る事ができるようになった俺は、生まれて始めてその機関車に間近に寄って観察してみた。
するとどうだろう。レールには頑丈な車輪止めが取り付けられており、1ミリたりとも動かせない様になっている。
また、遠目にはピカピカに磨きあげられている様に見えた車体も、ペンキを塗りたくってごまかしているだけで実際はボロボロだった。
もちろん燃料である石炭も水も積んでなんかいない。
中学入りたてのガキの目から見ても、10年はそのままの状態で来ていると見て取れる代物だった。
じゃあ、俺が見たあの光景はなんだったのだろう。
夢を現実とでも思い込んでいたのか……こんな事を人に話しても笑われるだけなので、俺はそれっきり機関車の事には触れない事にした。

そして、今このスレを読み、その記憶がよみがえってきたので書き込む事にしたのだが、その前にあの機関車が今はどうなっているのか少し検索してみた。

すると……ここからが信じがたいのだが……
なんと、あの機関車は現在他所の町に引き取られて元気に動いていると言うのだ!
ttp://www.city.moka.tochigi.jp/kouiki/
ttp://kikuchi.server.ne.jp/SL/c11-325/Index.html

俺が見たあの姿は、ひょっとしてもう一度走りたいと願う機関車の……まさか……