小学生の頃さ、ばあちゃんちに車で行く途中、いろんな変なもん見たんだよね。
大抵夕方で、エアコンがついてない古い車だったから蒸し暑いのに、ジャンパー着てて、
気晴らしに外見てると、なんか風景が変なの。

山の斜面がさ、スーっと頂上まで移動してるの。夕方だからシルエットしか見えないけど、
木とか鉄塔とかが移動してるのが見えるの。
で、頂上まで来ると、頂上のへこみにスッと消えるの。

空を見てるときも変なもの見たな。夕焼けの空一面に、何かの星の表面がドアップで
映ってるの。月がめちゃくちゃ接近したような感じ。クレーターまで見えてね。

夢じゃないのは確かなんだよ。だって、そういうたいていの場合、熱さと退屈さで
眠気があって、でも不快感で目が覚めてる、そんな状態だったから。

親も弟もばあちゃんも、それが見えてないのね。幻でもないと思う。だって夕暮れ時に
婆ちゃんちいってると、いつもそんなのが見えたからね。
でも不思議なんだけど疑問はなかった。子供だったし、いつも見えてたから、それが
普通の光景だったからね。

中学に入ってから、そんな時間に婆ちゃんち行く事は少なくなったし、車はエアコンが
付いた車になった。それから、もうあの風景は見ていない。