車掌はそう呟くと運転士にこの場に残っているように指示し、自らは応援を呼ぶために電車の中へと引き返して行った。
すると・・・
ズリッ!
転がっていた少女の上半身が突然起き上がり、運転士の方へ向かって地面を這い出したのだ。
「助けて・・・」
力なくそう呟きながら、少女の体は運転士に近づいてくる。
恐怖にかられた運転士は慌てて逃げようとしたが、雪と焦りのために上手く動くことができずに転倒してしまう。
「助けて・・・」
そうしている間にも、地を這う少女の上半身は運転士との距離をますます縮め続けている。
パニックに陥った運転士は少女のように地を這って逃げ出し、近くにあった電信柱によじ登ろうとした。
ところが・・・
「助けて・・・」
彼のすぐ耳元で少女の声がし、それと同時に何かが彼の背中に覆い被さってきた。

連絡を終えた車掌が踏み切りに戻ると、そこに運転士の姿はなかった。
それどころか、さっきまであったはずの少女の上半身も消えている。
不思議に思った車掌が辺りを見まわすと、運転士は近くの電信柱の上で少女の上半身を背負ったまま気絶していた。
可哀想なことに、彼はこれが原因で後に発狂してしまったという。
少女の体が切断された時、切断面の傷口は寒さのためにたちまち凍りいて出血が抑えられた。
そのため彼女は即死せず、上半身だけがしばらくの間生き長らえていたのだ。