小学生の頃、日が暮れて友人の家から帰る途中。
当時私の住んでいたあたりは街灯もろくにないところでした。
その夜は満月だったので、なんとか足もとを確認しながら
踏みわけ道を歩いていました。
友人の家から私の家の間には小山があり、その上に学校がありました。
その学校の小山をのぼって家に向かう途中、
斜面の芝生に、白いワンピースを着た若い女性が一人、
寝転んで空を見上げていました。
月明かりに照らされたその女性は、肌が白く、とてもきれいでした。
おどろいて、足音を立てずに近づいて見てみると、
その人は涙を流しているようでした。
いくら満月とはいえ月明かりだけではこんなに白くてきれいな顔や肌は
見えないのではないかと思いました。
なんだかこの世の人ではないような気がしたので、
そのまま足音を立てないように、立てないように、そっとそこから離れ、
しばらくしてから思いっきり坂道を駆け下りて家に帰りました。