オホーツク海沿岸、紋別と元紋別の間にチウェンチャシ(我等の悪しき砦)という
ところがあります。
昔のこと、日高だか十勝だか、よその土地から来た者が勝手に付近の山で猟をするので、
その者を追い回して捕らえ、泣いて謝るのに立ち木に縛り付けてひどい拷問を加えた
ことがございました。
その者が宝物を出して謝罪しなおしたので漸く解き放ってやったのです。
しかし先方ではこの仕打ちを恨み、徒党を組んで攻め込んでまいりましたので
たちまち砦の者と戦になりました。この戦の勝敗の結果は定かではありません。
ところがその翌年のこと、夏になると見知らぬ裸の子供が二人、
この砦の砂浜で遊んでいるのです。紋別コタンでは元紋別の子供だと思い、
方や元紋別コタンでは紋別の子供だと思い、お互いに
「あんなところに子供だけで遊びにやるものでないべさ。危ないでないか。」
と、話し合っておりましたが、やがてどちらの子供でもないことがわかりました。
人々は、「戦のときに隠されていた宝が化けたのではないか」とおののき、
この砦をチウエンチャシと呼ぶようになった、とのことです。