前の職場の同僚Aさんの体験談。
大学時代に友人数人と鎌倉に行った。神社仏閣を見ていくうちに道に迷った。
途中、暗い感じのトンネルを通過した。
鎌倉から帰って数日後、友人の一人から電話が来た。金縛りや変な声が毎日
続いて恐くてしかたがないのだという。
何回か同様の電話があり、だんだんひどくなっている気がした。
それから一ヶ月ほど経ったある夜、Aさんが寝ているといきなり金縛りに
襲われた。何回か経験していたが、今回はいつもとは明らかに違っている。
何者かが胸に重くのしかかって、力ずくで両目をこじ開けようとしている。
ついに力尽きて目を開けてしまった。二つの真っ赤な目をした何者かが
自分に馬乗りになってグイグイ胸を押している。頭の中が恐怖で真白になる
のが分かった。それでも唯一自由になる右手で毛布をつかむと、渾身の力で
矧ぎ取った。次の瞬間、毛布が落ちた床から「ドサッ」と大きな音がした。
あまりの恐怖にまんじりともせず、朝を迎えた。
明るくなったころ、恐る恐るのぞいたが、毛布以外には何もなかった。
Aさんが不気味な体験をしたのはこの時だけである。
夏休みがの終るころ、友人は父親が癌であるという告白を最後に行方
不明に。その後、友人の母親も行方不明になってしまい音信が途絶えた。

友人が行方不明になる直前に会った時、しきりに、あの時通り抜けた
トンネルは小坪トンネルだ、自分は何かに取り憑かれた、と言っていた
のを思い出して背筋が冷たくなる気がしたそうだ。

トンネル内での彼の様子で、Aさんは特に気になったことはないという。

今から20年近くも前の話です。過去にいくつかのサイトに書き込み
ましたので知っている人がいたら申し訳ない。