戦前は北の軍都として名高かった旭川の街。
多くの兵士が第七師団から旭橋を渡って出征していき、そして帰らなったので
在りますが・・・・

昭和十七年8月17日の深夜、第七師団に完全武装の一団が軍靴の音も高らかに
帰還して参りました。当時、第七師団の大半は外地に出征しており、わずかな
部隊が留守を守っているだけでありましたが、ともあれ歩哨の兵は捧げ筒で
迎え、司令官に帰還を伝えました。深夜の帰還に驚きつつ駆け付けてみると
部隊は第二十八連隊の空き兵舎に押し合いへし合いで潜りこもうとしている。
気丈な司令官も思わず全身に粟粒、と、彼らはかき消すように消えてしまったのであります。




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丁度その日、第二十八連隊はガダルカナル島でアメリカの猛攻に死闘するも
玉砕していたのでありました。

この「幽霊部隊」の帰還は目撃者も多かったためにたちまち市内に噂が
広まりました。さしてそのうえ第七師団ではそれよりしばらくの間
怪奇現象が絶えなかったのであります。
「風邪もないのに屋根瓦がガラガラ鳴る」「空きの兵舎から笑い声がする」
「戦車の動く音がする・・・」
また、深夜軍靴の音がするのでその家の者が戸を開けてみると、出征した
息子が直立不動の姿で立っていた、とおもうかクルリと回れ右して
さって逝く。慌てて母が後を追うと、そのまま護国神社に消えていった・・・

市民は噂におののき、そして涙したと申します。