あれはボクがまだ人間だった頃、キミだけがボクにやさしさ
を与えてくれた。まるで虫ケラのように誰からも相手にされ
ないこのボクに、キミだけは他の人と同じように接してくれ
た。キミは他の人に見せるやさしさを、同じようにボクにも
分け与えてくれた。とても嬉しくてとても幸せで、それだけ
を頼りにボクは生きていた。だけど結局ボクはキミになにか
してあげる事は出来なかった。感謝の気持ちを伝える事すら
出来ないまま、ボクは逃げてしまった。それだけが心残りだ。
だから今は毎日こうやって、キミの後ろ姿ばかり見ている。
いつでもキミを見守っている。キミはたまにボクに気がつい
て驚き怖がるけど、心配はいらない。ボクに出来る事はとい
えば、キミに近付く奴らを呪ったり、たまに写真に写ったり、
枕元に立ってキミの寝顔を眺めるくらいなのだから。