ふと思い出したこと。昔、アルバイトしてた時、不思議なお客さんを見たことがある。
その人が現れるのは、決まって土曜日のお昼前頃。50歳くらいの男性だった。

 私がとくに様子を覚えているのは、その人が白子(アルビノ)だったせいもある。
まるで白人のような色素のない真っ白な肌に、白い髪の毛をしていた。そして、
瞳の色を隠すためか、濃い目のサングラスをかけていた。

 その男の人は、いつも花束を持って現れた。ある時、同僚が囁いた。
「あの人、何か悲しい目にあったんだろうね」
どうしてと尋ねると、
「時々ね、お線香の香りがする」
 そういえば、男の人の持っている花束は、いつも白菊だった。