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唯「天上のノモス!」

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0001以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 01:22:55.73ID:7A3qvQVI0
ノモス(νόμος,nomos)→一定の集団(集合)における秩序、
           およびその秩序が保たれている状態。


−2009年 12月16日 琴吹邸

唯「重いよぉ〜」

律「もっと腰を入れろ腰をっ!!はっ!」
0089以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 14:16:30.34ID:Tb9s/pe+O
紬「『永続性のない肉体への恋(異性愛)は醜く、魂への恋(同性愛)は美しい』とプラトンも言っているわ!!」ハァハァ

支援
0090以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 14:19:29.37ID:7A3qvQVI0
唯「力なき正義は無力であり、正義なき力は暴力…」

唯がそう呟く。

律「は?」

唖、となる律。

紬「それも…パスカルの言葉ね。」

唯「正義は、誰が正義だって決めるんだろう?
  暴力は、誰が暴力だって決めるんだろう??」
0091以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 14:30:41.14ID:7A3qvQVI0
紬「パスカルはものすごく強い信仰心をもつクリスチャンだったらしいから…」

紬「パスカル自身の正義は、キリスト教の教えと切っても切きれない
  、神様が下し示したもの、のはずだわ。」

唯「じゃあ、私達はどうなの??」

紬「…」

紬は答えに窮する。
0092以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 14:40:52.00ID:7A3qvQVI0
しかし、刹那の思案の後に紬は答える。

紬「正義を深く考えなくても、人間は生きていけるわ。
  けれど私は、よくよく考えて、それを、自分の正義を確かなもの

  にする必要があると思うの。」

紬「うちのお父さんは、そんなことをよく言うから…」

紬「だって、そうしないと、琴吹家に関係する多くの人間が
  苦しむことになるでしょう?」

律(ムギの奴、唯のギー太を値切ってたよな、確か。)
0093以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 14:53:41.56ID:7A3qvQVI0
唯「偉くなればなるほど、その人の考え方次第で
  たくさんの人が幸せにもなり、不幸にもなるんだ、ね。」

唯「でも、今の日本にも、他の国にも、色々な理由で苦しんでいる人はたくさんいるし、
  他人を苦しめてまでお金を稼ごうとするひともたくさんいるよね。」

唯「そういう人たちはどうなるんだろう??」

梓「だから法律や警察があるんじゃないですか?」

梓が口をはさむ。
0094以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 15:04:04.45ID:7A3qvQVI0
唯「でもやっぱり、苦しんでいる人はたくさんいるよ。」

梓「それは、人間は万能じゃないですし、自分が蒔いた種で苦しむ
  自業自得な人たちもたくさんいますし…」

唯「他人のせいで苦しんでいる人もたくさんいるよ。」

律「まあ唯よ、なんだ、理想を言ってもはじまらねーし…」

律が口を入れる。

律「とにかく終わりだー終わりっ!
  今日はもう切り上げてスマブラしようぜっ!」

律が場を収める。
けれど…
0095以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 15:06:51.03ID:pc4QX0M+0
流石りっちゃんだぜ
0096以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 15:10:01.33ID:Tb9s/pe+O
流石りっちゃんだせぇ
0097以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 15:16:31.89ID:7A3qvQVI0
その日、皆が眠りについたあと、唯は再び生命の樹の前に立つ。
そして、呟く。

唯「堀江さん…」

すると生命の樹から、あの紅く輝く光球が現れ、唯の目前へと下降する。

『ゆい、月並みだけれど、私はライブドアの元社長ではないのだわ…』

『ホーリエ、よ。』

『よく覚えて頂戴。』
0098以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 15:23:29.42ID:7A3qvQVI0
唯「私だけに聞こえるように、声をかけてくれたよね?」

『ええ、そうよ。』

精霊は答える。

唯「なんかわたし、よくわからなくなっちゃった…」

『ふふ…ゆい、まずはそれでいいの。』

唯「…」
0099以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 15:29:34.35ID:7A3qvQVI0
『昨日、あなたに話したわよね?
 人間が意識を持ち始めてから、
 それがためにずっと苦しんで来た、最大の"謎"のことを。』

『そう…大変巨怪な"謎"、≪エニグマ≫のことを。』

唯「えに…ぐま?」

『ゆい、あなたに教えましょう。』

『人間が長い間苦しんで来たこの謎は…』

『なぜこの世界に悪が存在するかということよ。』

『とくに一神教が優勢な地域においてだけれど、
 なぜ完全である神のもと、世界に悪が生じたのか、
 多くの人が頭を悩ませてきたわ。』
0100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 15:31:09.14ID:7A3qvQVI0
すいません活動限界、寝ますです。
0101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 16:33:06.73ID:HjamFOsO0


しかし結構な量になりそうだなこのSS
0102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 17:19:31.17ID:7a+yn7CnO
0103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 18:05:49.42ID:Tb9s/pe+O
0104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 18:51:34.32ID:HjamFOsO0
bh
0105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 19:24:55.05ID:Tb9s/pe+O
h
0106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 19:52:26.83ID:oQubzow9O
0107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 20:35:19.20ID:HjamFOsO0
ho
0108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 20:50:36.28ID:HjamFOsO0
ho
0109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 21:15:59.64ID:Tb9s/pe+O
上げ
0110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 21:26:08.61ID:BguQXpg8O
保守
0111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 21:53:35.54ID:NBTcYSr2O
0112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 22:08:59.26ID:oQubzow9O
0113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 22:28:42.86ID:7A3qvQVI0
すんずれーした。
保守ば、すまねかった
だば、再開するわ
0114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 22:32:28.42ID:7A3qvQVI0
『多くの人々は悪を…』

『善が欠けている状態としたり、
 神との距離のために神との関係が弱まったもの、としたり
 神との距離のため、神が放射する勢力からの恩恵に、
 より少なくしか預かれぬため、としたり、
 人間の根源的罪のため、としたり…』

『その点、ゆい、あなたたち日本人をはじめとする、アジアの人々は
 昔から実際的だっただわね。』

『生きることにおいて諦念を強く有する、とでもいうのかしら?
 輪廻及び転生の概念を背後に持つ民族に多く見られるわ。』
0115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 22:35:04.64ID:Tb9s/pe+O
支援
0116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 22:44:58.64ID:7A3qvQVI0
『そして悪の改善や悪を消滅させる、ないし善に近づく、方法も…』

『人間の欲望を意識的に抑制するやり方。
 まったく呪術的な方途にたよるもの。
 善の知的追求による一種の啓蒙。
 善のもと、悪とされたモノを意図的に排除する方法…』

『けれど、人間、種としても個体としてもの、この人間には、
 悪は執拗にこびり付き、根付いて、
 …決して分かたれることはなかった。』

『今の今まで、ね。』
0117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 22:50:26.48ID:pc4QX0M+0
すえんするば
0118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 22:55:24.99ID:7A3qvQVI0
『また、悪を遠ざけることが得てして…』

『全く逆説的な…結果、遠近法的な結果を多く生み出すだけ、だったわ。
 つまり、あるモノに意識が集中されることで、
 その周辺にある、そのモノから距離のある別のもの、
 その輪郭がぼやけただけだった。』

『つまり、多く存在する悪をあいまいなものにし、
 あまり目に付かないようにする、という結果になっただけだった。』

『意識的、無意識的な逃避でもあったわ。』
0119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 23:05:10.77ID:7A3qvQVI0
『人間が意識を獲得し、歴史を紡ぎ始めてから…』

『人間はずっと悪くなっていったわ。』

『悪への無関心も強くなっていった。』

『…けれど、こうも考えられたわ。』

『そうではなく、人間は、人間を悩ましてきたこの迷信から
 自由になりつつあるのではないか、と。』
0120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 23:14:20.76ID:7A3qvQVI0
『必要なのは、この善及び悪という迷信ではなく、
 ≪合理的かつ的確な采配≫なのではないか、とね。』

『例えるなら、あなたの時代の交通法規のようなもの、よ。』

『けれど、それでは同時に、個人が個人の内に持つ倫理感が
 小さくなることを意味するわ。』

『倫理感は、一種の信念と恐怖感情の間の子。』

『倫理感を迷信として捨て去ったとき、そのときこそ、
 あの怪物は、大きく開いた口をもって
 人間という種をひと飲みにすることでしょう。』
0121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 23:22:50.99ID:7A3qvQVI0

『ふぅ…』

精霊は一息置く。

『あの太い眉毛の子、大変良い子だわ。
 私も好きよ。』

唯「むぎ、ちゃん…」

『けれど…』
0122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 23:24:46.73ID:puF+8G04O
津軽だと
0123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 23:31:25.72ID:7A3qvQVI0
『動物はその体格が大きくなるほどに、多くの栄養を必要とし、
 不要とされたより多くの排泄物を体外に捨て去る。』

『同じように、あの子の一族の富を糧に生きるものも多いけれど、
 その分だけ、あの子の一族に起因する悪のために苦しむ者達も多い。』

『人間は汚れている、と考えたモノから目をそらそうとする。
 これを虐待し、遠く離れたままにしておこうとするの。』

『あなたの生きるこの時代は、人間の歴史のなかで
 最も、それが極大化している時代よ。』

『さて。』

『…今日はここまで。』
0124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 23:39:10.53ID:7A3qvQVI0
『ゆい、よくよく考えなさい。』

唯「…」

唯は黙ったまま。

『ふふ…大丈夫よ、ゆい。あなたは、結晶のような意志を持ち
 その意志のもと、透徹した直感を持っているのだから。』
0125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 23:46:16.33ID:7A3qvQVI0
そう言い終えると精霊は樹の中へとかえっていった。

精霊が描いた軌跡の残り香を見つめる唯。

唯「わたしも、たくさんの人を、苦しめてきた…のかな…」

そう独り言つ。

京都の冬はまだまだずっと、寒くなるはず。
0126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/18(金) 23:54:37.85ID:7A3qvQVI0
翌日 12月18日 19時 琴吹家食堂

一同は食堂に会して夕食を摂っている。
今回は紬の父も同席している。

律(しかしまあ、親子で立派な眉毛ですこと…)

律は盗み見るように、琴吹父と琴吹娘の額あたりを見比べる。
紬の父も、それはそれは太い眉毛(ただし毛色は黒色だが)を持っている。
まるで、ぶっとく海苔を切り取って貼り付けたかのよう。
0127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 00:01:52.29ID:7A3qvQVI0
紬父「ん?田井中くん、やはり私の眉毛が気になるかな?」

律(しまった…!)

律「え、あ、ああ、いやぁ…ハハハハハハ…」

笑ってごまかそうとする律。

梓(これだから…)

ため息をつく梓。
0128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 00:09:19.52ID:CeVfSM5f0
紬父「まあ、琴吹家と言えば眉毛!と言われるくらいだからね。」

紬父「着脱可能だと誤解されることもあるぐらいなんだよ?」

紬母「まあ、あなたったら♪」

紬の父は、にこやかに笑いながらそう言う。
やはり彼もどことなく、紬と同じ優しい雰囲気を漂わせている。

唯「あの、ムギちゃんのお父さん…」

唯が唐突に口を開く。
0129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 00:17:25.32ID:CeVfSM5f0
紬父「うん?なにかな、平沢くん?」

紬の父は、唯に顔を向ける。

唯は上座に座る紬の父の斜め左奥、
紬や律とテーブルを挟んで対面する形に座っている。
唯の両隣には憂と梓がいる。

唯「あの、聞きたいことがあるんです、けど…」

紬父「言ってみなさい、平沢くん。」

優しく微笑みかける紬の父。
0130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 00:25:31.72ID:CeVfSM5f0
唯「ムギちゃんのお父さんが、会社の社員の人たちの幸せのために、
  心がけていることって、何なんですか?」

律(ん?唯らしからぬ真面目な…)

律は訝しげに唯を見やる。

紬父「ふむ…」

視線を天上に吊るされたシャンデリア状の照明に向け、
数秒、何事かへと考えを向ける、紬の父。
0131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 00:28:48.97ID:Uui4qy2v0
支援
0132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 00:35:48.54ID:CeVfSM5f0
紬父「たくさんあり過ぎるけれど…」

視線を唯へもどし、真面目な、しかし柔らかな目持ちで答える。

紬父「そのうちで最も大切だと私が考えることは…」

紬父「私が判断と決定う場合に、最高度の内容と速さを持って、
   この二つを行うこと、かな。」

紬父「これが、リスクを回避する上で最も重要なこと、
   と考えているね。」
0133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 00:49:04.57ID:CeVfSM5f0
唯「…」

実を言うと、紬の父の回答は、唯にはよく理解できなかった。
『状況判断と命令』の重要性を、まだ年若い唯は、
現実味を持って捉えることができないのだ。

紬父「例えばだ、ある人が心臓発作で倒れたとしよう。」

唯がうまく反芻できていないことを悟り、紬の父はこう続ける。
0134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 00:58:55.86ID:CeVfSM5f0
紬父「そして救急車を呼び、救急隊員が来るまで応急手当を行って
   その患者を病院まで搬送する。」

紬父「脳内出血や心臓発作から生還する可能性は、
   時間との格闘だ、ということはわかるね。」

コクリ、と唯は首肯する。

紬父「それに、応急処置や救急隊員の処置が不味いものであった場合にも、
   あたりまえだが、患者の命はそれだけ危険にさらされる。」

紬父「企業を運営管理することも、これと同じ、ということになるね。」

唯「あ、そっか…」

唯は合点がいったようで、ふんふん、と頭を少し揺らす。
0135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 01:06:15.52ID:CeVfSM5f0
そのとき−

コンコン。

食堂の扉がノックされる音がする。
扉の脇に控えていたメイドがゆっくりと扉を開ける。

「失礼します。」

スーツ姿の女性が入室してくる。
すらりとした長身、肌は白く細かく、長い銀髪を有している。
黒ふちの細長い眼鏡をかけ、
片手にブリーフケースのようなものを持つ。
二十代、ということはわかるが、正確な年齢の推定は難しい。
0136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 01:08:26.66ID:HoC6ZvDcO
支援
0137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 01:15:07.71ID:CeVfSM5f0
唯(すっごいキレーな人…)

銀髪の女性の容姿に、うっとりとする唯。
となりの憂のほうから、ギチギチギチ、
と歯軋りする音が聞こえる。

律(ムギよ、随分とまー美人なおねーさんだな…)

律が隣の紬にそう囁く。

紬(でしょう?『白銀(しろがね) ありす』さんって、あの若さで
 お父さん直属の秘書室長をなさっているの。)

律(ありす??変な名前ぇ。)
0138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 01:30:15.32ID:CeVfSM5f0
梓(おっきなおっぱい…)

梓は、スカッスカッ、と自分の胸の前で両手を動かす、

銀髪の女性は、紬の父の側面に立ち何事かを報告している。

紬父「了解した、食事が終わり次第向おう。」

報告が終わると、銀髪の女性は紬の母と紬のほうへ一礼する。

その直後、銀髪の女性が面をあげたとき、
唯の視線と女性のそれが交差した。

ほんの一瞬、女性の、薄紫の瞳が唯の瞳を射る。

唯「??」

そして、何事も無かったように、女性は扉へと向かい
食堂から退出していった。
0139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 01:43:23.76ID:CeVfSM5f0
18日の夜は、あの精霊は唯の前に姿を現さなかった。
そして日が替わる。

12月19日9時 和の家 玄関

和「いらっしゃい、あがってちょうだい。」

唯「お邪魔しまーす。」

律(いやぁ、今朝までムギんちだったからカルチャーショックだわ。)

律は和の家を見つつ、そう思う。
0140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 01:51:06.99ID:CeVfSM5f0
梓「唯先輩のおうちからホントに近いところにあるんですね。」

和「そうね、スープの冷めない距離ってやつかしら。」

律「つまり、それだけ色々と唯に
  迷惑をかけられて来たわけだな、和は。」

唯「りっちゃんひっどーい!!」

律「ザリガニ事件聞いた時はさすがに引いたぞ…」

唯「あ、あれはぁぁ…///」
0141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 01:59:22.85ID:CeVfSM5f0
和「あのザリガニたちには悪いことしたわね…
  唯、後でお墓参りしなさいよ。」

唯「はーい…」

梓「お墓??」

憂「結局全部死んじゃって、和さんの家の裏手に埋めてあげたの。」

和「故381匹のためのザリガニ塚よ。」

律「そ、そいつはまた…」
0142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 02:11:19.62ID:CeVfSM5f0
−和の部屋−

律「…てわけ。」

和「そう、そんなことがあったの…」

紬の家での、唯と紬の禅問答のことを、和に教える律。

和「まあ、昔から唯には,譲れないこだわりのようなものがあって…」

和「それが原因で、周りを巻き込んでの大騒動も何度か経験したけれど…」
0143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 02:19:23.19ID:Uui4qy2v0
結局これなんの話なの・・・
0144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 02:22:15.86ID:CeVfSM5f0
和「それも唯の一部だから、」

和「唯には、そのこだわりを捨てて欲しくないわ。」

唯「和ちゃん…」

梓(軽音部の人たちとの絆とは、また違った…)

憂(和さんには、敵わないな…)
0145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 03:06:26.69ID:Uui4qy2v0
支援ねたか
0146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 03:15:55.70ID:OpgdMB/5O
目的は何なんだ?
0147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 04:03:32.71ID:lWDymd3N0
堀江さんで地味に吹いた
0148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 05:09:09.82ID:lWDymd3N0
堀江保守
0149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 06:25:19.06ID:lWDymd3N0
堀江
0150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 08:49:16.71ID:DLmdKvOlO
ゆいー
0151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 09:49:56.80ID:HoC6ZvDcO
終着点が良く分からんけど面白い保守
0152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 10:31:08.36ID:Uui4qy2v0
支援
0153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 10:44:48.10ID:CeVfSM5f0
すまねかった、ねまった
0154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 10:51:19.87ID:CeVfSM5f0
12日19日 深夜 真鍋家裏手 "ザリガニ塚"前

真鍋家の裏手、同家に面した道路からは全く見えないところに
"ザリガニ"塚はあった。
見た目はまさに『金魚のお墓』のそれ。
こんもりとした小丘の上に漬物石のようなものが置かれていた。
ここに381匹の遺体が眠る。

ザリガニのお墓の前に立つ唯。
パジャマ姿にカーディガンを羽織っただけ。
見た目からして非常に寒そうだ。
0155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 10:58:48.47ID:CeVfSM5f0
目前の墓もまた、己の悪の結実である−

『これが沼海老のお墓?』

あの精霊の声だ。
いつのまにか唯のすぐ横、肩ぐらいの高さをふよふよ、と浮遊している。

唯「沼海老??ザリガニだよ?」

唯もこの奇妙な存在にすっかり慣れてしまったようだ。

『ようするに湖沼に生息する海老の一種でしょう??』
0156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 11:05:54.12ID:CeVfSM5f0
唯「あ、そうか…」

『まあ、いいわ。』

『あなたたちアジアの人たちは殺生を、
 ヨーロッパの人間とは別の形で忌むものね。』

『アジア人は怖れから、ヨーロッパ人は仮象の愛から。』

『一般化し過ぎかもしれないけれど…』
0157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 11:11:24.64ID:CeVfSM5f0
『ゆい、≪カルマ≫って知っている?』

『カルマ??』

首をひねる唯。

『生き物の行為は、その生き物自身のうちに蓄積されて、
 物事の原因の一つになり、その人の来世や子孫に
 様々な影響を与える。』

『簡単に言えばそんなところかしら。』

『ずっと昔、インドで発明された考え方よ。』
0158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 11:18:18.85ID:CeVfSM5f0
『因果応報ないし因報果報っていう言葉は
 聞いたことがあるでしょう?』

唯「うん。」

『因果応報もカルマの存在が、
 そのプロセスのうちにある、と考えられてきたのだわ。』

『でも、可笑しなものね。カルマをそういった原因として見ても、
 人間は、自分にこびりついたカルマを全て認識することなど
 できないはずでしょうに。』

唯「?」

唯は再び首をかしげる。
0159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 11:29:40.89ID:CeVfSM5f0
『原因があるから結果が生まれる。
 ある結果には必ずそれに応じた原因がある。』

『原因論とか因果論とかもいわれる、古くからある考え方。』

『たとえば、ゆい、あなたのご両親がいるから、
 あなたは今、生きている。そうよね?』

唯「あたりまえ、だよね?」

『ええ、そうよ。』
0160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 11:35:02.71ID:CeVfSM5f0
『カルマも、人間の身に生じる結果の一原因、ということ。』

『そして、ある人間が持っているカルマのうち、そのほとんどは
 その人間に知られていない、と考えられるわ。』

『例えば、もし前世があるとするならば…
 ゆい、あなたは前世のことを覚えている?』

唯「ぜーんぜん。本当にあるのかなあ…」

『さあ、それは私にもわからないのだわ。』
0161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 11:41:00.81ID:CeVfSM5f0
『そして、あなたのご先祖様たち、彼らが生まれてから死ぬまで
 何をおこなってきたか、を全て把握することはできないでしょう?』

唯「昔のことなんて、わかるはずないんじゃない?」

『そう、そのとおりね。だから…』

『沼海老を381匹死なせるよりも、もっと残酷なこと、
 あなたが残酷と考えるようなね、
 そのようなことを、あなたのご先祖様が行っていたかもしれない。』

唯「…」

唯は嫌な予感がした。
0162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 11:48:09.70ID:CeVfSM5f0
『まあ、カルマも人間が考えだしたものだから。
 信じる信じないも、参考にするしないも、あなたの勝手。』

『私が今したお話は、その381匹の沼海老を思うあなたへの手向け。』
 
『…そしてこれから、あなたが知るであろう悪に備えるための、前準備。』

『今日はここまで。』

『明日もこの時間、ここに来なさい。』

『そして、人間の絆についてのお話をしましょう。』
0163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 11:56:10.04ID:CeVfSM5f0
そう言い終えると、紅い光球は上昇し、どこぞへと飛んでいった。

唯「…」

唯「ブルッ…」

精霊が消えると、はじめて、外気の冷たさを覚える唯。

唯「気がつかなかったけど、精霊さんといっしょだと
  ぜんぜん寒くなかったんだなぁ…」
0164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 12:01:45.84ID:CeVfSM5f0
唯「…」

再び唯の胸奥に、さきほど感じた不安感、の名残が意識される。

唯「そういえば、なん、なんだろう…?」

この不安感がはっきりとした形をとるのは
もう少し先のことになるはず。
0165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 12:11:56.43ID:CeVfSM5f0
翌12月20日 正午過ぎ

唯と律は和とともに、アルバムをらしきものを眺めている。

律「へー、和はこのころはまだ眼鏡をかけてなかったんだな。
  コンタクトにはしないんか?」

和「眼鏡のほうが色々と便利なのよ。
  コンタクトは手間がかかるし、安全性にも問題があるわ。」

唯「だいじょぶだいじょぶ!
  和ちゃんは眼鏡かけても、コンタクトでも
  どっちにしろすっごい美人さんだから!」
0166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 12:21:22.04ID:CeVfSM5f0
和「唯ったら…はぁ…」

憂「2ab…+(a-…」

梓(先輩達、和先輩の家に来てから、ぜんぜん勉強してない…)

梓「ふぅ…」

和(梓、呆れてるわね…)

和(まあ、澪がスパルタでやるだろうから、
  明日まではいわば中休みよ…)
0167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 12:27:41.80ID:CeVfSM5f0
律「ん…?」

律が何事かに気づく。

律「唯と和が移っている写真にはどれにもこれにも
  な、ぜ、か…憂ちゃんも写ってるよな?」 

憂「ピクッ…」

和「律、正確にはそうじゃないわ。
  唯の写っている写真には必ず、よ。」
0168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 12:31:12.68ID:Qvay/UC/0
神学上の話に詳しいのはわかるが、読者を無視しすぎワロタ。
0169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 12:32:16.11ID:CeVfSM5f0
憂「汗…」

律「おいおい…これなんて調理実習の写真だよな、
  奥の窓側、見切れてるポニーテール後姿…」

唯「あっ、ホントだ!」

和「今まで気付かなかったわ…」

憂「だ、だって…」

憂がはじめて口をひらく。
0170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 12:39:17.72ID:CeVfSM5f0
憂「お姉ちゃんが怪我したり火傷したりしないか、心配で…」

唯「うい…」

和「憂、このときの授業、さぼったの?」

憂「は、はぃ…保健室に行くって言って…」

梓「唯先輩と憂は、昔からずっとそんな感じなんですか?」

和「ええ。物心ついた時から今の今までね…」
0171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 12:44:37.65ID:CeVfSM5f0
和「でも、まあ、姉妹中が悪いよりは、よっぽどね。」

和「唯を甘やかすのを今の三分の一ぐらいにすれば、
  ちょうど良い按配になるかもしれないわ。」

憂「で、できるかぎり善処します…」

唯「むむぅ…」

律(多分無理だろ…)
0172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 12:49:24.84ID:CeVfSM5f0
そして−

再び紅い光との邂逅。

『ゆい、あなたたち姉妹は…』

『本当に仲が良いのね。』

唯「へへ…///」

『羨ましいわ…』

精霊の声音が少し暗くなる。
0173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 12:59:16.62ID:CeVfSM5f0
『愛、というものに一括りされること。』

『これは人間の生が充実するために、
 甚大な割合を占めるのと同時に…』

『これほどまた、当てにならないものもない、
 と考えられてきたわ。』

『人間と人間を結びつける紐帯。』

『同朋意識、家族愛、友情、友愛、忠義、性愛…』

『もっと数多くあり、もっと細かくも分類できるけれど…』
0174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 13:09:05.13ID:CeVfSM5f0
『感情と強く結びついているこれらは、
 悪を減少させもし、増大させもする。』

『鞴(ふいご)から送られる風が、
 良き鋼と悪き鋼の母であるように、ね。』

『そのため人間は、指導的な原理、
 人間の性質の中でも、最も高尚かつ有意とされる原理を作り出したわ。』

『それはまずは知性としてあらわれ、それは理性として分たれ、
 能動的な、人間が持つ他の性質を統御するものとされた。』
0175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 13:15:36.61ID:CeVfSM5f0
『ある人間は、感情と理性の関係やバランスを微妙さを説いた。』

『ある人間は、理性の原理の元に壮大な≪倫理の宮殿≫を作り上げた。』

『ある人間は、人間の歴史の背後に理性を見、
 つまり物事の形成の根源であると考えた。』

『そして、多く、神との関係で語られてきた。』
0176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 13:23:00.37ID:CeVfSM5f0
『絆を作り上げるものと、これをコントロールするもの。』

『人間の絆は深妙なバランス、均衡のもとにあるわ。』

『町々を潤す大河は、町々を滅ぼす龍にもなりかねない。』

『だけれど、心のうちに、愛する人との間に、
 それを持っていたい、と願うもの。』
0177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 13:25:36.46ID:CeVfSM5f0
『ゆい、良い絆を求めなさい。』

唯「よいきずな?」

『ええ。』

『あなたは良い絆に恵まれすぎているから。』

『それが当たり前のことになっている。』
0178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 13:29:33.32ID:CeVfSM5f0
『けれど、あなたほど良い絆を持っている人は、そう、いないわ。』

『だからこそ、意識して良い絆を求めなさい。』

『それが、悪を抑える近道の一つになるの。』

唯「…」

自分は、恵まれているのだろうか?
0179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 13:32:17.87ID:CeVfSM5f0
『さて、次からは本題に入るわ。』

『悪の繁殖、悪を抑えること、そしてー』

『天上のノモスについて。』

『だからこそ、今は眠り、今日の疲れを癒しなさい。』

『≪眠りこそ最大の癒し≫だから。』
0180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 13:39:12.64ID:CeVfSM5f0
結局、和のもとでの三日間は、ほとんど碌に、
勉強に対して費やされなかった。

そして−

12月22日 秋山家居間

澪「Our nation is at war, against a far-reaching
  network of violence and hatred!」

律「ア、アウア ネーション アト ワー アゲンスト…」

澪「声が小さいっ!」

唯「ひぃぃぃ…」
0181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 13:45:12.27ID:CeVfSM5f0
律(舌が痛てぇ…)

澪「次、唯!訳してみろ!」

唯「わたしたちのネーションは戦争です、
  ヴァイオレンスとヘイトレッドのファーリーチングなつながりに対して…」

澪「ぜんぜっん駄目だっ!」

澪「いいか、この箇所はだな、
  オバマ大統領の国際的テロに対する…」
0182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 13:52:06.35ID:CeVfSM5f0
澪「まるまるうまうま…
  あーだこうだあーだこうだ…」

唯「うぅぅぅ…」

律(これは時間がかかりそうだ…)

律「ん?あれは…」

居間の一角に目を向ける律。

一方の梓は、

梓(澪先輩は恋愛と仕事にのめり込みすぎて
  破滅するタイプかも。)

などと思っている。
0183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 13:53:58.17ID:CeVfSM5f0
床屋さいってくるはんで、

量的に、あと少しで終わり
0184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 14:25:16.51ID:HoC6ZvDcO
あげ
0185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 14:51:30.26ID:DLmdKvOlO
あげ
0186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 15:25:06.71ID:lWDymd3N0
天井の野茂ッス
0187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 16:10:21.68ID:lWDymd3N0
堀江野茂ッス
0188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 16:12:18.54ID:kDSuwlYcO
津軽弁wwwwwww青森かwwwwwwwww
0189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2009/12/19(土) 16:19:45.35ID:DLmdKvOlO
あたなや
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