先生。僕は貧しい農家の5人兄弟のそれも長男でした。
ここへ行かせるのも両親がどれだけ無理をしたか、良家のおぼっちゃんである先生にはよくおわかりにはならないでしょう。
大学を出るのにも文字どおりの苦学でした。
医局に入ってそれから6年、経済的な苦しさはもとよりのこと、僕は耐えきれないような屈辱にも耐え続けてきたんです。

それとこれとは別だとおっしゃりたいんでしょ
でもせっかくここまでやってきて今全てが無になるようなことはできないんです。そんな勇気はありません。
田舎の年取った両親たちや兄弟たちは僕が一人前の医者になるのを首を長くして待っているんですよ。

先生。僕は今、子供の時なまじ成績よかったことを悔んでたんです。
普通のできだったらもっと平凡な人生を歩んでいたに違いない、なまじ無理をして大学を出たばっかりに、医者になったばっかりに。
先生に責められるまでもなく、僕は自分自信を責め続けてきたんです。
それをどうか責めないでください。