2002年7月○日・・・森田健作は母校、青葉高校で教師として今日という日を
迎えている。
森田健作はクラスの教え子である土門美香の投身自殺を食い止めようと、今、
屋上に登っているのだ。
美香「来ないで先生!」
健作「バカやろう!はやまるんじゃない。一体何があったんだ?」
美香「私みたいな女、死んだ方がいいの。」
健作「何言ってるんだ?わけを説明しろ!」
美香「私、憧れの永濱先輩に告ったんだけど・・・。」
健作「・・・。」
美香「・・・お前みたいなジャンボ鶴田似のキモいブスと付き合えるか、って
言われたの。」
健作「バカやろう!お前は何もキモくないよ。可愛いよ。永濱だけが男じゃない、
おまえを愛してくれる男は他にもたくさんいるだろう。」
美香「やだ!先生だって私のことをブスだって思っているんでしょう。
可愛い女の子とブスの女の子と態度分けてるのはっきり分かるよ。」
健作「そんなことないって。おれは生徒みんながかわいいよ。血は繋がってなくても生徒はみんな
おれの子供だと思っている。」
美香「口先だけのやさしい言葉は聞きたくない!」
青春の巨匠と呼ばれたかつての好青年ももう50を過ぎ、教師としての自己の能力にも
限界を感じていた。
気持ちだけは若き日のままなのに・・・いつからおれと生徒とはここまで距離が
広がってしまったのか・・・。
キレル若者、いじめ、学級崩壊・・・。
確かにいまどきの若者は自分の青春時代とは違い、世の中に対する価値観、考え方にギャップが
あるかもしれない。
しかし、いつの時代でも決して変わらない普遍的な価値観があるはずだ。
人間はなぜ生きるのか?人間一人一人にはその生涯においてなんらかの使命が
あるからこそ生まれてくるのだ。
自殺するために生まれてくる人間などいない。
美香「先生・・さようなら・・・わたし、今、飛び降りる・・・。」
健作「そうか・・・わかった。じゃ、飛び込めよ。」
健作の意外な一言に一瞬うろたえる美香。
下では全校生徒、そして教師が見守っている。
校長「な・・・なんて・・・ばかなことを・・・教師として言う事か?」
健作「美香、飛び込む前に良く聞け。お前が今、死ぬと言う事は、お前の
ご両親も、友達も・・・そして未来にお前を必要とするたくさんの人間を
悲しませる事になるんだぞ。それでも構わないんだな?」