あらすじ
人口わずか二百数十人の小さな島。
信之は、その島で一番美しい美花と体を重ねることに夢中な14歳。
そんなふたりについてまわる、父親に殴られている可愛そうな輔(たすく)。
ある夜、津波が島を飲み込み、すべてが消えた。
生き残った3人はある秘密を抱えたまま、島を離れる。
それから20年後、それぞれ別の場所で生きていたはずの
彼らの運命の歯車が軋み、そして再び近づいていく・・・。

ネットレビューまとめ
純文学とミステリーの中間的な作品である。
二十年前に起こったことに対する謎や次々と視点を変えて展開していく物語が
次第に繋がっていく構成などはいかにもミステリー的だ。
だが、そうした要素はあくまでも副次的なものにすぎない。
この作品の中に一貫して流れる主題は「暴力」である。
暴力の形はさまざまだ。天災、人為的な暴力、精神的な暴力。そして暴力に
対抗するための暴力。ここにあるのは果てしない暴力の連鎖である。
一見、平凡に見えて性格破綻者ぞろいの登場人物。安易に共感できそうな人物は
誰もいない。
最初から最後まで空気が重く、息が詰まりそうだ。それでも読む手が止まら
ないのは一重に作者の力量である。
ラスト、一筋の光が射しているように見えてなお、それが希望の光とは
思えない異様な感覚にゾクゾクとする。
これまで青春小説のイメージが強かった三浦しをんが描く、絶望に満ちた異色傑作。
*無理に今まで違うものを狙っている。上辺だけで真に迫るものがない等と
いう意見も数点あり。