つい先日、母の遺品を改めて整理してたら、着物用の古いバッグが出てきた。
中には、差出人不明で母に返送されてきた手紙がいっぱい入ってた。
日付は、私が生まれる前後のもので、宛先は知らない男性のなま。
なんで戻って来るの分かってて出しつづけたんだろうって思った。

母には悪いと思ったけど、中身を読んだ。
私は父の娘ではなく、その宛名の人の娘なんだそうだ。
母は、父と別れてその人と結婚するつもりだったらしい。
詳しくは書けないけど、両親の間になかなか子供が出来なくて、不妊治療していたことは知ってた。
もう後は人口受精しかないってとこまできて、父はもうやめようと言ったらしい。
母はそれに応じて、通院をやめた。でも、そのあと私を妊娠した。
父は奇跡だって手放しで喜んだんだと、父方の親戚が話していた。

でも本当はそうじゃなくて、母は父を裏切って、別の男を選ぼうとした。
私を妊娠したのは奇跡でもなんでもなくて、相手がかわったからだそうだ。
でも母はその男に捨てられて、父の元にとどまることにした。
わたしは、父の娘じゃない。
母と父の奇跡の子供じゃない。
私は母の、裏切りの証だ。

私は父ににてなんかいなかったのに、母はわざとそう言ったんだ。
父に不信を抱かせないためか、もしくは、私は顔も知らない母の不倫相手に似てるんだろう。
なにもかもいやになって、母の手紙は燃やして捨てた。