以前の同僚の話。

初対面ではあたりが優しくて、話し易い人だと思えたY男。
でもひとたび打ち解けると、結構依頼心が強くて、差別意識が根強い事が分かってきた。
つまりは2面性があって、だいたい陰口をサラッと自然に言ってのけるので
仕事が出来ない訳じゃないのに、誰も面倒見たりフォローもしなくなっていった。

そうしていたらある年、上司が変わって、そんなY男の性分が一発で見抜かれた。
その上司は、いわゆるたたき上げの人で、Y男にも堂々と注意してくれるので
周囲は次第に、上司を認めて、良いチームの様なまとまった職場になっていった。
上司も、言葉は慎重に選んでたしなめてくれるし、上からものを言う人じゃなかったので
良心的で人徳者だと、信頼していた。

そのうちY男が、また陰口で
「あの課長が、次々とひっきりなしに自分に仕事を持ってきて頼むんだ。
 しょっぱなから恫喝してきて、俺の事を良く思ってないからだろう。
 こんな仕返しあるかよ。どうせ何処かで悪く言ってるんだろうになぁ。」
などと言うので、こう返事してやった。
「でもY男が貰う仕事って、やり様によっては一発で仕事が片付くし
 はっきりと成果があがるヤツが多いよね。逆に羨ましく思うよ。
 男で結果がハッキリ残せたら、査定や昇格に有利じゃん。
 それに今、あの課長の事を悪く言ったけど、それってY男がよく言ってやってる事よね?」

バツが悪そうに無言になって仕事に帰って行ったY男。
それからちょっとしてから、急にY男が退職届を出して、去って行った。
理由が、今の職場環境で孤立感を感じ、意欲的に働けないとの事。

因果応報か自業自得か、判断できかねるけど、自分に返って来たんだなとは思った。
そして誰も、同情していなかったのが、Y男の人徳そのものだと感じた。