ザフィリの命令で砲撃のような攻撃をした竜の後方から同じ種類の竜が入れ替わるよう
に前に進みだしはじめ、その後ろを兵たちが隠れるように付いていく。
 入れ替わりが終わると再び竜が咆哮し、それに追随するように塹壕付近に土煙が立ち上
る。その間も自衛隊側からの銃撃は行われたが、厚く硬い鱗に覆われた戦竜には勿論の事、
分厚い盾を壁のようにして進む兵たちに対しても有効打が与えにくくなっていた(流石に
穴だらけにすれば倒せるがすぐに新しい盾を用意されてしまっている)。

「ふっ、ニホンの奴ら随分と慌てていらっしゃる」

 最前列の塹壕を放棄して後退していく自衛隊を見て、ザフィリの口角があがる。
 先ほどから砲撃のような攻撃を行っている戦竜は咆竜と呼ばれる種類の竜で驚異的な咆
哮をあげる事で有名な竜である。
 スペルビア帝国をはじめとした列強国などは鉄球を飲み込ませた状態で咆哮させて高速
で吐き出させる事でさながら大砲のような運用を行うのが主流である。まだ火薬が発明さ
れていないスペルビア帝国らの世界において強力な攻城兵器の一つとして重宝されている
竜種であった。現在、ザフィリはこの竜を40頭投入しており、交互に咆撃させる事で自
衛隊側に反撃の隙を作らせないように攻撃を行っていた。

「敵は混乱している。このまま一気に距離を詰め、蹂躙するのだ!」

 後退していく自衛隊を見て勝機と思ったのか再度前進の命令を下すザフィリ、既に最前
列は一列目の塹壕を乗り越え次の塹壕へと歩みを進めていた。
 勝利は近い。そう感じて笑みが零れるザフィリであったがその刹那、一番右端に居た咆竜
目掛けて高速で何かが突き刺さり爆発した。その爆発で周囲の兵たちにも被害が発生した
ことで動揺が走る。そしてそれを皮切りに複数箇所で似たような爆発が起きて瞬く間に6
頭の竜が屠られる。

「森で飛竜を撃ち落とした兵器か、敵の塹壕に竜を隠せ! 姿を見られなければ攻撃は受けん!」

 咆竜を屠った攻撃をこれより前の戦いで飛竜を落とした攻撃と同一と判断したザフィリ
はすぐさま竜を隠すように伝える。ニホンの竜に対する攻撃は破壊力が大きく一度狙われ
るとまず躱すことは不可能であるが、それと同時に連続かつ大量に行うことは出来ず、敵に
居場所を悟られなければ攻撃そのものがされないことを既に植民兵団側も悟っていた。
 ザフィリの命令通り戦竜を塹壕に隠される。塹壕そのものが大きかったこともあり兵士
たちもそれなりの数が身を隠すことが出来たようで一時の安息を得る。
 だが、その瞬間――。

 ドッ! ドッ! ドッ!

 何かが高速で落下する音と同時に植民兵団の兵たちが身を隠した塹壕を中心に先ほどの
咆竜の攻撃とは比べ物にならない爆発が竜や兵士たちを容赦なく蹂躙していく。
 一体何が!? 離れたところで命令を出していたザフィリは自身の常識を凌駕したその
光景に声を失い、混乱の渦に突き落とされるのであった。


 今回は以上です。現在就活中の為、投稿間隔はあまり期待しないでください。