【オリジナル質雑TRPG】錬金乙女エリクシアンdeux [無断転載禁止]©5ch.net
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0001 ◆vTHUCgBFbw
2016/07/03(日) 10:14:14.64ID:/MsMLVGM彼女はいつか、人類の発展に貢献するさだめのあなたを守護するため――
人類発展機関『ビュトス』より派遣された『錬金人類(エリクシアン)』だった。
いつの頃からか世界各地に出現し、人類の根絶を企む謎の生命体『デミウルゴス』から。
地球の覇権を掌握せんと画策する組織の送り出す『機械化人類(メカニゼイター)』から。
そして、自らの姉たる六人の『錬金人類(エリクシアン)』から――
Dominusと認めたあなたを守護するため、ソレイユは戦う。
それは地上で輝く、白い太陽の物語。
・オリジナル質雑TRPG『錬金乙女エリクシアン』は、名無しの皆様の書き込みを物語に反映させるスレです。
・ソレイユのDominusとして、ソレイユに指令(オーダー)を与えてください。ソレイユは可能な限りそれを忠実に実行します。
・戦闘中でも雑談歓迎。
前スレ
【オリジナル質雑TRPG】錬金乙女エリクシアン
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1460285021/
年齢:製造より半年 外見年齢は16歳程度
性別:女性型
身長:163cm
体重:129.3kg (武装含)
スリーサイズ:78・56・80
種族:錬金人類(エリクシアン)
職業:護衛
性格:可能な限り主人の要望に沿うよう命令を受けている
パンチ力:2.5t
キック力:5t
100m走力:5.8秒
ジャンプ力:38m
遠距離兵装:EXW-0035R 前腕部内蔵型高出力粒子砲『ソレイユ・アマ・デトワール』
近距離兵装:EXW-0002S 携帯型ビームエッジ『ソレイユ・エトワール・フィラント』
特殊兵装:EXW-013O 燕型小型電子支援ユニット『ソレイユ・イロンデル・ノワール』
特殊兵装:EXW-006S 超高圧力式水流鞭『メルキュール・トレント・デ・フエ』
特殊兵装:EXW-091S 超高熱溶断火炎斧『マルス・ティタン・ドゥ・フランム』
特殊兵装:EXW-055S 絶凍刃『サテュルヌ・タンペート・ド・ネージュ』
特殊兵装:EXW-049S 無線式オールレンジ攻撃ユニット『ヴェヌス・ベルジュロネット・ドゥ・ブリエ』
趣味:家事、ショッピング
外見:
膝裏まである長い金色の髪、蒼色の瞳
顔の造作は整っているものの、感情の起伏に乏しい
胸元にビュトス機関の所属を示すカドゥケウス(杖と蛇)の刻印がある
戦闘時は身体にフィットした白いボディスーツ状のアサルトスーツを纏う。普段は白いワンピースが好み
簡単なキャラ解説:
ビュトス機関により派遣されてきた護衛
七体製造された錬金人類(いわゆるホムンクルス)の七体目で、高い総合力を有する
謎の組織『デミウルゴス』の侵略を防ぐ為、戦闘用に数々の装備を内蔵している
Dominusに対しては絶対服従。基本過保護。
0004ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/03(日) 10:17:27.39ID:/MsMLVGM……そんな……。
再生した?今までのデミウルゴスには、そんな能力はなかったはず……。
くッ!それに、再生前よりも防御力が上がっている?わたしたちが今まで遭遇したことのない、新型ということですか……!
再び鶺鴒を発動させ『ブランシュ』でデミウルゴスの投擲する瓦礫を防ぎながら、わたしは回避に専念する。
どうすれば……?どうすれば、この敵を倒すことができるの……?
このままでは、被害は増える一方。デミウルゴスにこれ以上、わたしの大切な商店街を!破壊させはしない!
わたしは身を低く屈めて一気に前方へと駆けると、渾身の力を込めてデミウルゴスの下腹を殴りつけました。
――硬くて巨大なゴムタイヤを殴りつけるような手ごたえ。強固であり、なおかつ柔軟でもある外殻が、衝撃を吸収している!
デミウルゴスの右のローキック。鉈のようなそれを肘でブロックするも、勢いを殺しきれずわたしは吹き飛ばされました。
……強い……!ひょっとしたら、その性能はわたしたちにも匹敵するかも……。
けれど。
だからといって。
負けることなんて、許されない!!!
このオポジット級と戦っているときに、覚えた違和感がひとつ。
オポジット級と言えば、フィアンケット級。この両者はワンセットで、片方だけが出ることなどありえない。
だというのに、ここにはオポジット級しかいない……。
いいえ。そうじゃない。
もし、わたしの見えないところにフィアンケット級が隠れているとしたら――?
0005ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/03(日) 10:18:11.46ID:/MsMLVGMそういえば。
さっき、Dominusを襲った少年の身体から出て行った、小さな黒い球体……。
あれは最終的に、オポジット級の頭部に吸い込まれるように消えていった。
……もしも。
あれが、このオポジット級に対応するフィアンケット級デミウルゴスだったとすれば――?
『僧兵(ビショップ)型』フィアンケット級デミウルゴスの特徴は、暗殺に特化した存在だということ。
それなら、何の罪もない人々を操り、凶刃を振るわせることなど容易なこと……!
もちろんすべては過程に過ぎませんが、有効な対策が立てられない今――この閃きに賭けるしかない!
ならば!!
セキュリティ解除シーケンス発動、特殊兵装を開放!
EXW-091S 超高熱溶断火炎斧『マルス・ティタン・ドゥ・フランム』!
わたしはオポジット級の攻撃をかわして跳躍すると、一気にその巨体を駆け上がりました。
そして肩のあたりにまで到達すると、すかさずマルス姉さまの斧をデミウルゴスの頭部へと振り下ろす――。
黒い球体は頭部に!それなら、頭部を破壊すれば――オポジット級も停止させることができるはず!
ガゴォッッ!
原初の地球、炎に包まれていた溶岩の時代を思わせるかのような、流動する炎の戦斧。
何もかもを溶断、破砕するその分厚い刃が、オポジット級の頭部を瞬く間に熔解させてゆく。
これで……決まって!!
0006創る名無しに見る名無し
2016/07/03(日) 13:54:09.41ID:QxE9Bfa3乙ー
0007創る名無しに見る名無し
2016/07/03(日) 19:24:46.52ID:qjOcMo74ビートルズとかいう躁鬱まき散らし集団のせいで
ある世代の人口の46%がドラッグに憧れ、47%が精神薬を常用することになり
のこりの7%が自殺に追い込まれたというのは嘘で、
真実なのはまだハトがまき散らす糞による公害のほうがまだマシだということ。
0008創る名無しに見る名無し
2016/07/03(日) 23:16:31.90ID:oxofu9FFおつ!
0009創る名無しに見る名無し
2016/07/05(火) 06:42:03.90ID:cySyGkvqなぜ目の前にいる人間はオポジットの攻撃を受けても死なないどころか立ち上がれるのだろう。
黒球のデミウルゴスは生まれたばかりで、目的はあっても達成するための手段を知らなかった。
人間の体を乗っ取りその人間の記憶から手段を知ったが、今目の前にいる人間に邪魔をされた。
邪魔をした人間は自分が乗っ取った人間よりも戦闘能力が遥かに高かった。
そのため自分の知る中で最も戦闘能力が高いデミウルゴスを呼び出し、排除しようと試みたが未だに排除出来ずにいる。
人間から得た知識では、オポジットの攻撃を受けた人間は間違いなく即死する。回避も防御も人間には不可能だ。
だが、目の前の人間は回避し、防御し、攻撃が当たっても死なない。何故死なないのか理解が出来ず、デミウルゴスは混乱していた。
気付くと目の前の人間が消えていた。何処へ行ったのか探すとすぐに見つかった。オポジットの肩の上だ。
自分がいる頭部目掛けて繰り出される攻撃。防御や回避は間に合わないし、外殻では防ぎきれない。
このままでは死ぬと瞬時に悟った黒球のデミウルゴスは、オポジットの後頭部から脱出、そのまま商店街の方へと飛び去って行く。
0010創る名無しに見る名無し
2016/07/05(火) 06:42:32.19ID:cySyGkvqそれでもオポジットは生きていた。それどころか溶断された箇所が再生し、赤みを帯びた外殻が新たに形成されていく。
しかしそれまでだった。胸部に達した灼熱の斧はオポジットの体を内側から焼いた。
その熱はオポジットの再生能力を生み出す心臓部をも焼いた。
熱に耐え切れず溶解する心臓。同時にオポジットの体がゆっくりと倒れる。
光に包まれることなく、他のデミウルゴスと同様崩れ去っていくオポジット。
しかし、他のデミウルゴスと違い、彼の全身を覆っていた外殻と、はるか遠くへ投擲した盾は消えずにそのまま残っていた。
0011ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/05(火) 19:45:52.82ID:HsplKXJI>>6
はい!ありがとうございます、Dominus!
この新しい拠点でも、ソレイユは全身全霊!魂のひとかけらまでDominusにお仕えする覚悟ですから!
どうぞ、何なりとお申し付けください!
最近は、戦いも激化する一方で。わたしたちの身の回りも、予断を許さない状況ですが――
それでも。戦い以外のことも、たくさんやっていけたら……と思っているんです。
戦いばかりでは、心が磨り減ってしまう。それは、人類もわたしたち『錬金人類(エリクシアン)』も同じ。
だからこそ。いろんなことがしたい。いろんなところへ行きたい。
どんなことだって。Dominusとやるなら、きっと楽しい。
どんな場所だって。Dominusと行くなら、きっと素晴らしい……。
わたしは。そう信じています。
さしあたっては海ですよ!海!海海海海!!!
プールじゃダメですよ。プールなら、ビュトス機関の施設内で利用したことがあるんです。
もっとも水泳ではなく、深海耐圧訓練で……ですけど。
わたしは、Dominusの選んでくださったスクール水着がありますから。
次はDominusの水着ですね!それにビーチバレーのボールに、浮き輪に、スイカも用意しなくちゃ!
わたしを海に連れて行ってください、Dominus!
0012ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/05(火) 19:47:11.42ID:HsplKXJIラジオ……ですか?申し訳ありませんDominus、現在は周囲に騒音を感じる60デシベル以上の音圧は計測されません。
それは恐らく音圧の問題ではなく、趣味嗜好による生理的不快感だと推察します。
Dominusは特定のアーティストの音楽がお嫌い、ということですね。
ビートルズ……主に1960年代に世界的な大ブームを巻き起こしたアーティストですね。
わたしは、その方々の具体的な曲名などは存じ上げませんが――
反戦歌などを歌っておられた、とは聞いています。
ボーカルの方が、悲劇的な死を迎えたとも……。
良くも悪くも、影響のある存在の発言や歌は、大衆の意識までも左右してしまう……ということですね。
わたしに歌はわかりません。最近はクラスメイトの皆さんとカラオケに行ったりすることも多くなりましたが。
わたしは、皆さんと違って歌に心を乗せることができない。ただ、歌詞をなぞるだけです。
だから。
どんな歌でも、歌い手の心がこもった歌声は素晴らしいと思います。
それは。わたしが決して、手に入れられないもの……だから。
0013ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/05(火) 19:48:32.93ID:HsplKXJISic.Dominus.
お待たせして申し訳ありませんでした、Dominus。
わたしはこれからも全力で貴方をお護りします。どれだけ傷つくことになったとしても――
わたしが、貴方の盾になる。貴方には毛筋一本の傷だってつけさせません。
たとえ、誰が敵となったとしても。
本当は、Dominusが人類に貢献する偉業を成し遂げるまでお傍にいるのがわたしの役目だったはずなのに。
いつのまにか、わたしと姉たちの戦いにDominusを巻き込んでしまった……。
本当に、ごめんなさい。さっきだってそう、危うくDominusが負傷してしまうところでした。
こんなことは、早く終わらせなければ。
そのためには、一刻も早くデミウルゴスを駆逐する。人類の脅威を取り除く。
そして、残る姉さまたちも……。
――いけない。そうではありませんでしたね、Dominus。
姉さまたちは救う。排除するのではなくて、助ける。
姉さまたちや三魔術師の方々は、この戦いを試練と位置づけているようですが……。
わたしに、そんなことは関係ない。
どうか。これからもわたしを導いてください、Dominus。
わたしは……Dominusのことを――
0014ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/05(火) 19:50:40.94ID:HsplKXJIマルス姉さまから譲り受けた溶断斧が、オポジット級デミウルゴスの頭部に食い込む。
溶断斧の真の恐ろしさは、単に赤熱した刃で対象を切断するところにあるのではありません。
その発する超高熱により、対象を内部から融解するところにある!
ぐらりと巨体を傾がせるオポジット級。そして、その半壊した頭部から飛び出てくる黒い球体。
やはり――、あれがこのデミウルゴスに対応したフィアンケット級デミウルゴス!
……ッ、逃がさない!!
一目散に逃走する黒い球体を追い、わたしは瞬時にオポジット級の肩から跳躍しました。
ここで逃がしてしまったら、なんの意味もない!後顧の憂いは――ここで!断つ!!
そう、思っていたのですが。
ビュオオオッ!!
突然高速で飛来してくる、巨大な黒い塊。それを間一髪回避すると、わたしはその物体に視線を向けました。
それは、オポジット級が先ほどわたしに対して投擲した盾。
そんな……。オポジット級は確かに撃破しました。他に、あんな重い盾を軽々と投擲できる存在なんて……。
……いいえ。
この、刺すようにピリピリした空気。肌が粟立つ、いやな感覚。
大気中の静電気が、すべて悪意を宿したかのような――この気配!
こんな気配を発し、なおかつ軽々と超重量の盾を投げつけられる存在は……この世にただひとり!
「――や。お待たせ、ソレイユ」
0015ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/05(火) 19:56:52.41ID:HsplKXJIウサギのパーカーを着込み、フードをかぶってポケットに両手を突っ込んだ小柄な少女が、不敵に笑う。
ジュピテル……、姉さま……。
「いろいろ、準備に手間取っちゃってね。でも、もうダイジョーブ。今まで待たせた分、たぁ〜っぷり遊べるよ。ソレイユ」
にひッ、と姉さまが嬉しそうに右の口角をつり上げて笑う。
どいてください、姉さま!今、姉さまのいる方向にデミウルゴスが……!
「デミウルゴス?」
そうです!こう……黒くて小さな球体が、こちらの方へ飛んで――
「そ・れ・っ・て。コレのこと?」
そう言って、ジュピテル姉さまがパーカーのポケットから取り出したもの。
黒い、小さな球体……。
そ、それです!それが、Dominusを傷つけようと人間に憑依したデミウルゴスです!
それを早く破壊してください、でないと……
「……でないと?」
この商店街の人々に害が……、それに、姉さまご自身にも影響があるかも……!
それは、何かに取り憑いて自由に操ってしまうデミウルゴスなんです!……だから!
「……クひッ……いひひッ、きひひヒひ……あッはははハははハはハハはッ!!!」
「や〜〜〜〜〜だよ!!!」
思い切り笑ってから、わたしへ向けてやおらアッカンベーをする姉さま。
ね……、姉……さま……?
「どうして、せっかくのオモチャを壊さなくちゃいけないのさ?楽しい楽しい、新作のオモチャをさ!」
「このデミウルゴスはね……、『ボクが持ってきた』んだよ。面白いだろ?人間でもデミウルゴスでも、何でも操り人形にしちゃうオモチャだ!」
「このオモチャを使って……一緒に遊ぼうよ、ソレイユ。楽しいごっこ遊びをさあああああ!!!」
狂気。
そう言う他に形容しようのない、姉さまの声。
デミウルゴスを手に哄笑するジュピテル姉さま――、なぜ?どうして姉さまがデミウルゴスを?
何もかもが分からない中で。わたしと姉さまとの戦いは、唐突にその幕を開けました。
0016創る名無しに見る名無し
2016/07/05(火) 20:38:11.82ID:2MWoMA8a0017創る名無しに見る名無し
2016/07/06(水) 00:07:23.76ID:Ji4+NhWc商店街の人々とかを操り人形に、それどころか肉の盾にされて手出しできなくなることも考えられる
そんな展開になると敗色濃厚だしみんなが危険だ
操り主であろうジュピテルが目の前にいて、阻む者がいない今がチャンス
戸惑う気持ちはわかるけど、ここは先手必勝、ぶん殴ってジュピテルの意識を刈り取っておいたほうがいいかもしれない
0018創る名無しに見る名無し
2016/07/06(水) 18:14:09.97ID:Ckeow4h20019ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/07(木) 14:05:13.95ID:78HlkBoC>>17
Sic.Dominus.
悩むのは後です!話は、姉さまに勝って無力化してからでも遅くない……!
往きます!Dominus!!
わたしは一瞬身構えると、すぐさまジュピテル姉さまへ向かって突進しました。
「……ボクに?勝つゥ……?」
ジュピテル姉さまが、わたしの言葉にあからさまな不快の表情を浮かべる。
姉さまは両手をパーカーのポケットに突っ込んだまま、依然として商店街のアーケードの真ん中に佇立しています。
狙いは下顎部!人体の急所と言われるこの部位は、『錬金人類(エリクシアン)』にも有効!
ここに拳がクリーンヒットすれば、いかな姉さまでも気絶は免れ――
バギィッ!!
――が、ハァッ……!!
狂気を露に双眸を見開き、笑みに歯を剥き出しにした姉さまの、目にも止まらぬ一撃。
強烈な右拳を頬にまともに喰らい、わたしは弾丸のように吹き飛ばされました。
そのまま、商店街の八百屋さんの店先に積んであった野菜のダンボール箱の山に激突してしまう。
「チョーシに乗るなよな、ソレイユ。オマエなんかがボクに勝つ?ジョーダンだろ?」
がらがらとダンボールをかき分けて出てきたわたしに、指先に雷を纏わせた右手をヒラヒラと振り、ジュピテル姉さまが言う。
そんな……。姉さまが拳を抜いたのが、まったく見えなかった……。
「ソレがオマエのDominus?パッとしないね。でも、そいつの入れ知恵のお蔭で、オマエは今まで生き延びてこられたってワケだ」
「ねえ、ソレイユのDominus。オマエ、なかなかいい勘してるよ。その通り――」
「いっぱい。あるんだよねェ〜」
そう言って、姉さまがポケットから取り出したもの。
両手指の股いっぱいに挟み込んだ、たくさんの黒い球体……。
「取り憑け!デミウルゴス!!」
ジュピテル姉さまが、大きく両手を振るう。その指に挟まっていたデミウルゴスたちが、一斉に飛んでゆく。
黒い球体が、吸い込まれるように商店街の人たちの身体の中へ――
……あぁ……。
0020ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/07(木) 14:07:23.84ID:78HlkBoC「キャはハハははははハはははハはハはハ!!!」
絶望に目を見開くわたしを前に、ジュピテル姉さまが背を仰け反らせて嗤う。
そして、ジュピテル姉さまを守るようにわたしの目の前に立ちはだかる、商店街の人々――。
「さあ、ゲームを始めようよソレイユ!いわゆるタワーディフェンスゲームってヤツ?」
「オマエが攻め手、ボクが受け手。大切な人間たちを犠牲にして、見事ボクの防御を突破できるかな?きッひひひッ!」
「さあ――Wave1だッ!」
憑依型フィアンケット級デミウルゴスが取り憑いた人たちが、まるでゾンビのようにわたしに群がってくる。
もちろん、わたしに皆さんを攻撃することなんてできない。わたしはすぐに回避行動を取りました。
これでは姉さまに近付くどころじゃ……!
「こっちの軍資金は潤沢だよォ〜?ユニットはどんどん生産!投入!ちょっとチートすぎるかなァ?きゃハははハッ!」
姉さまのパーカーから、どこにそんなに入っていたのかというくらい黒い球体が零れ出しては、人々に取り憑いてゆく。
このままでは、商店街の人々だけではない……この区域一帯の人すべてが操り人形になってしまう……!
わたしは高く跳躍すると、アーケードの屋根の上に退避しました。
ここまでは、一般人は追ってこられないはず。あとは隙を見て、なんとか姉さまの懐まで――
ダダダダダダダッ!
――!?
突然の銃声。機関銃の音に反応して咄嗟に身を翻すと、そこには五機の重機兵が滞空していました。
これは……米軍の重機兵?なぜ、こんなところに……?
「タワーディフェンスゲームなのに、ユニットが陣地の外に出ちゃったらルール違反だろォ?ソレイユぅ?」
「もちろん、そのオモチャもボクが連れてきたのさ。オマエがルール違反したときのためにね!」
「早く商店街に戻んなよ、ソレイユ。でないと――」
「ソイツらが、商店街の人間どもを撃つ。それでもイイの?」
「あ、言うまでもないと思うけど、その重機兵の中にも人間は入ってるからね?撃墜しちゃってもいいけどォ〜」
きひひ、とジュピテル姉さまが笑う。
……く……!!
わたしは唇を噛みしめると、屋根からアーケードの中へと戻りました。
0021ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/07(木) 14:09:40.60ID:78HlkBoC「ま……といって、ボクを今までのマヌケで弱っちいお姉ちゃんたちと一緒にしてもらっちゃ困るけどね」
「ボクは他とはモノが違うんだからさ!」
文字通りの肉の壁となってわたしの前に立ち塞がる人々を見て、腕組みしながら姉さまが言う。
……他の姉さまたちが……。弱い……?
「そうだろ?考えてもみなよ。情やら優しさやら、甘っちょろいことを言って全然戦闘向きじゃなかったメルキュールお姉ちゃん!」
「突っ走ることしかできない、バカなマルスお姉ちゃん!オマエなんかを守ったばっかりに、犬死にしたサテュルヌ!」
「そして、アメリカを勝たせることに固執して本来の役目をすっぽかしたヴェヌスお姉ちゃん!」
「みんなみ〜んな、バカばっかり!言っちゃえば負けてトーゼン!所詮は失敗作だったってことさ、『錬金人類(エリクシアン)』の面汚しだ!」
「でもね……ボクは違う。ボクこそは完全な『錬金人類(エリクシアン)』!すべてを支配する雷霆の星!」
ウサギを模したパーカーを着た、一見して小学生くらいにしか見えない小柄な姉さま。
けれど、その表情には強さを誇示する無邪気な傲慢さが溢れ出ている。
「ゲームをするって言ったけど。それは『オマエがボクに勝つ可能性がある』って意味じゃないからね」
「最初から、勝敗なんて決まってるんだよ。勝者はボク、敗者はオマエ!その結果が覆ることは決してないんだ」
「あとは――オマエがどう無様にもがき、のたうち回って死ぬのか?それを見届けるだけ!さあ――」
「死になよ。思いっきり笑えるよーな、みっともなくてカッコ悪い姿を晒して!ボクが見ててあげるからさあ!」
――、お断りします!!
わたしには、まだ……やらなければならないことがあるんです!
「妹の分際で、姉に逆らうんじゃないよ!!!」
ジュピテル姉さまの怒号と共に、人々が襲い掛かってくる。
けれど、人類の――まして訓練さえ受けていない一般人の能力では、『錬金人類(エリクシアン)』に傷をつけることは不可能!
わたしが彼らに傷をつけないよう配慮さえすれば、人々の攻撃はわたしには無力――
ドゴォッ!!
……!く、ふ……!?
商店街の人の拳が、わたしの鳩尾に突き刺さる。
……どう、して……?
0022ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/07(木) 14:11:05.27ID:78HlkBoC「あーッはッハはハハっははハはハハッ!ばぁぁ〜〜〜〜〜っか!!」
「ソレを何だと思ってるんだよ?デミウルゴスの憑依した人間だよ?もちろん、身体能力もアップしてるに決まってるだろ!」
「もっとも、力は増幅されても受け皿である肉体が脆弱だから、考えなしにブン回せばそれだけ肉体にかかる負担も大きいケドね!」
「ま……持って30分ってとこかな?それ以上は肉体が耐え切れず、自壊を始めちゃうかも?きヒひヒひッ!」
……さ……、30分……。
その制限時間以内に人々をデミウルゴスから解放しなければ、生命が……!
なおも群れなしてわたしを攻撃しようとする人々から距離を取り、わたしは唇を噛みしめました。
攻撃はもちろんできない。といって、逃げることもできない。
上空には重機兵たちが待機しているし……わたしには、有効な手立てが何もない……!
まさに、万事休す。
「ボクに勝つだなんて大層なコト言っといて、このザマかい?期待はずれじゃないか、ソレイユ?」
「こんなんじゃ、このデミウルゴスを用意する必要もなかったかな?ま、ガチンコでもボクが負ける要素なんてないケドね!」
……そう……。姉さまは、このデミウルゴスを自分が持ってきた、と発言していました。
それは、いったいどういう……?デミウルゴスとビュトス機関に、何か繋がりが……?
わたしは今までずっと、デミウルゴスこそは人類の敵だと。人類発展機関たるビュトス機関の敵だと教わってきたのに……。
ど……、Dominus……。
わたしは……いったいどうすれば……?
束の間棒立ちになったわたしの元へ、デミウルゴスに操られた人々が群がる。
人々に押し倒され、もみくちゃにされ、わたしはすぐに人の波に飲まれました。
姿の見えなくなったわたしの様子に勝負は決したと判断し、ジュピテル姉さまが背を向ける。
「フン、やっぱりボクが妹なんかに負けるはずなかったね。さて……あとは、もう一度お姉ちゃんに挑むだけだ」
「ボクが……ボクこそが一番なんだ。お姉ちゃんなんかじゃない、ボクが……一番、パパに愛されてるんだ……」
搾り出すように、ジュピテル姉さまが呟いたその言葉は。
わたしの耳には、届きませんでした。
0023創る名無しに見る名無し
2016/07/09(土) 01:16:14.98ID:euwFcJ54『ノワール』とその護衛に『ブランシュ』をつけ、この二基は一組で飛ばす。
この二基を、人が跳躍しても届かず、かつ屋根より下の高さを維持しながら、
背を向けてるジュピテルに接近させ、可能であれば攻撃(奇襲)する。
この方法なら、仮に攻撃に失敗してもジュピテルやデミウルゴスに操られてる人の反応を見て
状況の分析もできるんじゃないかと思う。……けど、大丈夫?動けそう?
0024ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/09(土) 19:58:30.31ID:qeKiXTxW>>23
……S……、Sic.Dominus……
ダメージ20パーセント、まだ……いけます……!
わたしは押し寄せる人の波の股下を滑り抜けると、なんとか人々から間合いを離しました。
そして、すかさずセキュリティ解除シーケンス発動、特殊兵装を開放!
EXW-049S 無線式オールレンジ攻撃ユニット『ヴェヌス・ベルジュロネット・ドゥ・ブリエ』!!
鶺鴒たちよ――お願い!
「……しぶといね」
わたしの放った白と黒、つがいの鶺鴒に気付いたジュピテル姉さまが、小さく舌打ちする。
『ノワール』が圧縮粒子砲を放つも、ジュピテル姉さまは巧みに身をかわして攻撃を避けてしまう。
そして――
「おーっとっとォ!イイのかなァ〜?下手な鉄砲、数撃ちゃ誰かに当たっちゃうかもよ〜ォ?」
きひひ、と笑いながら、姉さまが商店街の人々の影に隠れる。
そう来ることは予想できていましたが……。実際にやられると、こちらは迂闊に攻められない――!
こうしている間にも、人々は再びわたしへ向かって覚束ない足取りで迫ってくる……。
何か――、何か有効な策を考えないと――
ジュピテル姉さまの周囲に鶺鴒を飛ばし、隙を伺いながら、わたしは知恵を巡らせました。
「ふん……。ヴェヌスお姉ちゃんの兵装か。鬱陶しいな……小バエ風情が!」
「こんなの使えって言ったのも、Dominusの入れ知恵?なるほどねェ……なるほどォ……くヒヒっ」
ジュピテル姉さまの口角に、禍々しい笑みが浮かぶ。
それは、とっておきのイタズラを考え付いたときの姉さまの癖。
「じゃあさァ……Dominusも操り人形にしちゃえばいーじゃん?ボクの言うことを聞く、忠実なオモチャにさア!」
「取り憑けッ!デミウルゴス!あーッはッはハっははハはは―――ッ!!」
哄笑と共に、姉さまがパーカーのポケットから黒い球体を取り出し、Dominusへ向けて投げつける。
――Dominus!!
0025ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/09(土) 20:00:50.48ID:qeKiXTxWわたしは全速力で飛び出すと、Dominusへと走りました。
Dominusは――Dominusだけは、絶対に!誰にも傷つけさせない!!
叩き落としている暇はない……、それなら!
わたしはDominusの前方に立ち塞がると、大きく横に両手を広げました。
黒い球体――生物を操るフィアンケット級デミウルゴスが、吸い込まれるようにわたしの額に入り込む――。
…………ぅ…………
う……あぁあぁあああッ、あああああああああああ……ッ!!
わたしの心を、精神を肉体から切り離し、操ろうという意思が流れ込んでくる……。
これは……わたしの中に入ったデミウルゴスの意思?いいえ……
わたしは……この感覚を知っている……!
これは――主人挌を肉体から切り離し、ダミー人格に肉体の支配権を移し替える――
……ドミネーション・プログラム……!!
かつて、メルキュール姉さまと戦うことを躊躇したわたしに対して、ウェストコット師が発動させたシステム!
デミウルゴスの行動が、ビュトス機関のテクノロジーと酷似しているなんて……。
うッ、うぐッ、うああああああ……ッ!
強力な支配力によって、デミウルゴスがわたしの肉体を掌握しようと心を侵食してくる。
こんなものが体内に入ってしまっては、人類などひとたまりもない……。瞬く間に肉体を奪われ、操り人形になってしまう。
――でも。
それは、通常の人類ならば……の話!
かつてドミネーション・プログラムから肉体を取り戻したわたしなら――抗うことが!できるはず!
……ッ、はあああああああああ――――ッ!!!
体内に侵入したデミウルゴスのドミネーション・プログラムを、わたしの力で改竄し逆に支配する!
言うなれば、カウンター・ドミネーション!それが成れば、もうデミウルゴスはわたしを支配することができなくなる!
0026ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/09(土) 20:02:05.10ID:qeKiXTxW姉さまが商店街の人々に命令を下す。さながらゾンビのように、人々がわたしへと迫る。
手に手に携えた鉄パイプや角材などを、攻撃のために振り上げる――
けれど。
人々が行動したのはそこまで。人々は凶器を振り上げたまま、わたしを無視してウロウロと周囲をさまよい始めました。
まるで、わたしなど目に入らない、とでも言うように。
「ど……、どうして……?オマエたち、ソレイユは目の前にいるんだぞ!どーして攻撃しないんだよォ!?」
……それは。わたしが体内のデミウルゴスのプログラムを改竄したからです、姉さま。
「何ィィ〜?」
「プログラムを書き換え、自分を仲間だと誤認させたってことか……!デミウルゴスはハチやアリと似たような社会性を持つ――」
「一度同じ階級のデミウルゴスだと認識させてしまえば、もうソイツらはソレイユを攻撃しない!」
そうです、姉さま!もう、みんなを駒として使うことはできない!
「ふん……そうかな?まだ、ボクはコイツらを自由に盾に――」
そんなことは!させない!!
わたしは強く地面を蹴って駆け出すと、ジュピテル姉さまに接近しました。
そして、すかさず右の回し蹴り――姉さまを渾身の力で蹴り飛ばす!
「がふッ!」
姉さまが苦悶に顔を歪め、商店街のはるか後方へと吹き飛んでゆく。
これで、操られている人々から姉さまを引き離すことはできた……!
後は!
0027ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/09(土) 20:03:59.47ID:qeKiXTxWEXW-055S 絶凍刃『サテュルヌ・タンペート・ド・ネージュ』!
わたしはジュピテル姉さまを追跡すると、すぐに絶凍刃を抜いて地面に突き立てました。
即座に、わたしと姉さまの四方を囲むように分厚い氷の壁が出現する。
――Dominus、インカムはお持ちですか?指令(オーダー)をお願いします。
出現した氷壁は透明度が高いため、外からでもわたしたちの戦いをモニターできると思いますので――。
「こんな……氷の壁なんかで、ボクを閉じ込めたつもり?」
これでもう、商店街の人たちを操ることはできません。新たにデミウルゴスをばら撒くことも――封じました、姉さま!
「あァ〜?ボクの何を封じたって?勘違いするなよな、ソレイユ。あんなデミウルゴスなんて、しょせんオモチャに過ぎないんだ」
「アレは、このボクの能力や強さとはなんの関係もない。言ったろ?あんなのなくたって……ボクがオマエに負ける要素はないって!」
ぎん、と姉さまが双眸を見開く。自分の左肩を掴むと、姉さまは着ていたウサギを模したパーカーを毟り取るように脱ぎ捨てました。
と同時、姉さまの全身から迸る、膨大な電雷――
「ボクのパーカーは絶縁体なんだよ。ボク自身にも抑えられない雷を制御する拘束具……それを脱いだってことは、ワカルよね?」
「オマエには、もう死ぬ運命しかない!黒コゲになって死ぬ運命しか――ってことさ!!」
「こんな氷の壁を作って、墓穴を掘ったのはオマエの方さ!さあ……死になよ!この『電界の女帝』の手にかかってさあ!!!」
……く……!
まさか、ジュピテル姉さまの雷がこれほどとは……。
でも、負けられない!今までの戦いを無駄にしないために、人々を守るために!
そして、Dominusと――未来を生きるために!
Dominus!
わたしに……力を貸してください!
往きます!!
0028創る名無しに見る名無し
2016/07/09(土) 22:48:58.84ID:Bo5ar7hbところでジュピテルがソレイユにぶっ飛ばされたとき……
なんていうか……その……下品なんですが……フフ……(ry
0029ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/11(月) 22:52:51.26ID:IXWs8CfG>>28
「見せてあげるよ……ソレイユ!このボクの、『電界の女帝』の本気ってヤツをさあ!!」
膨大な雷電が、わたしとジュピテル姉さまのいる氷のリングを駆け巡る。
姉さまの操る雷が、これほどまでのパワーを秘めていたなんて……!
絶凍刃で作り出した氷の壁は、高さ10メートル。その熱さは50センチにもなりますから、そうそう壊れないとは思いますが……。
それでも、万全とは言えません。Dominus、充分にお気を付けて――
……Dominus?
鼻の下を伸ばしていないで、ちゃんと対処してください!Dominusーっ!
「ノンキに世間話なんてしてるんじゃないよ!行くぞォォォォォ!!」
ジュピテル姉さまが、咆哮と共に突っ込んでくる。電撃を纏わせた右拳を、わたしは腕を十字に交差させて食い止める。
ぐ……!なんてパワー!マルス姉さまと比べても、まったく遜色がない……!
「ほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらァ!」
ドッ!ドガガガガガッ!!
目にも止まらぬ、ジュピテル姉さまの連撃。
雷を纏った拳による、嵐のような乱打――。
信じられない……このスピードは、サテュルヌ姉さまに勝るとも劣らない!
「言ったろ?ボクは他の『錬金人類(エリクシアン)』とはモノが違うって!」
「ボクは……パパに特別な調整を施された、完璧な『錬金人類(エリクシアン)』!ボクこそが……真に望まれた存在なんだ!」
「パパが愛しているのは、ラ・テールお姉ちゃんなんかじゃない!まして……オマエでもない!!」
くッ!……ジュピテル、姉さま……?
それは、いったいどういう……?
0030ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/11(月) 22:54:32.56ID:IXWs8CfGガギィッ!
小柄な身体から繰り出される、圧倒的なパワー。放出される雷撃。
その二重の威力に、クロスさせた両腕が痺れてゆく。このままでは、腕ごと破壊されてしまう……!
素手での戦いは不利、ならば!
EXW-0002S 携帯型ビームエッジ『ソレイユ・エトワール・フィラント』!
「フン!そんな短剣なんかで、このボクを仕留められるとでも?」
「なら、武器対決と行こうか!もちろん、あらゆる特殊兵装の中でもボクの兵装が一番だけどね!見せてあげるよ、神の雷霆――」
「EXW-077S 投射式雷電魔槍『ジュピテル・グラン・エクレール』!」
高々と掲げた姉さまの右手に、長槍状の雷撃が出現する。
あれが、姉さまの兵装――すべてを焼き尽くす、裁きの雷……!
「きゃハはははハはハハハははハはハハハ!!」
姉さまが雷霆を投擲してくる。超高速で飛来するそれを間一髪で避けながら、わたしは姉さまに斬りかかる。
けれど。その攻撃は姉さまには当たらない。サテュルヌ姉さまをも凌ぐかのような、神速の体捌き。
ジュピテル姉さまが、一瞬でわたしの背後を取る――。
「どこを見てるんだい?ボクはこっちだよ、ノロマ!」
バヂバヂバヂッ!
が……はァッ!!
雷がわたしの身を焦がす。強固な防御力を誇るはずのアサルトスーツが、黒く焦げてゆく。
苦し紛れに繰り出す、ビームエッジの一閃。でも、それもやはり虚しく空を切る。
……やはり、姉さま……強い!
0031ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/11(月) 22:57:08.40ID:IXWs8CfGまずは、この氷のリング内に満ちる電気をなんとかしなくては……。
姉さまの圧倒的な身体能力も脅威ですが、それ以上にこの電気がわたしの回避能力を著しく低下させています。
これを防ぐ手立てを考えないと……。
「休んでるヒマなんてないぞォ!ボクを本気にさせたんだ……もう、オマエは死ぬまで一息つくことなんてできないんだよ!」
身を低く屈め、姉さまが突っ込んでくる。その手には、2メートル程の長さの雷の槍。
わたしの胸元――『錬金人類(エリクシアン)』の心臓部たるカドゥケウスを狙った一撃を、なんとかビームエッジで防ぐ。
姉さまが大きく槍を横に振る。脇腹をしたたかに打たれ、わたしは衝撃で吹き飛ばされ氷壁に激突しました。
ぐ、は……!
氷壁にも、電撃が伝っている……。これでは、逃げ場がないのはむしろ、わたしの方……。
わたしは、姉さまの言う通り……墓穴を掘ってしまったのでしょうか……?
「これでわかったろ!オマエが今まで生きながらえてこられたのは、ぜ〜んぶ!他の姉妹が弱っちかったからさ!」
「本当の『錬金人類(エリクシアン)』であるボクと当たらなかったから、たまたま生き残った!それだけなんだよ!」
「そォーらッ……そろそろ、とどめをさしてやる!終わりだ……ソレイユ!!」
「戦術雷霆殺『ジュピテル・ユルティム・ウラガン』!!!」
ジュピテル姉さまの必殺技――戦術雷霆殺『ジュピテル・ユルティム・ウラガン』。
無数の雷霆を同時に出現させ、一気に投擲。敵を完全に消し炭にする、電界の女帝たる姉さまに相応しい技。
こんなものの直撃を受ければ、いかに『錬金人類(エリクシアン)』といえど……。
ドギュッ!!ドッ!ドドドッ!バリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!
耳をつんざく轟音と、分厚い氷の壁を揺るがす衝撃。
商店街の地面を大きくえぐり、稲妻の束がわたしに降り注ぐ。
大量の土煙が巻き起こり、そこにいる者たちの視界を覆う。
「ボクの本気の技を防げるヤツなんて、この世には存在しないんだよ。ラ・テールお姉ちゃんだって……」
「バイバイ、ソレイユ。他の姉妹によろしくね」
今度こそ勝負は決したとばかり、ふたたび姉さまが踵を返す。
――でも!
勝負は!まだ、終わっていません!!
「なッ――!?」
立ち込める土煙を内側から突き破り、矢のように飛び出したわたしの右拳が。
ジュピテル姉さまの腹部に、深々と突き刺さりました。
でも……浅い!
Dominus!指示を……わたしに、姉さまを倒す手立てを!
0032ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/13(水) 23:03:17.82ID:ZrdcHL8w身体を『く』の字に折り曲げ、苦悶と共にジュピテル姉さまが呻く。
そう――。姉さまの必殺技、戦術雷霆殺の威力は凄まじい。直撃すれば、即死は免れなかったでしょう。
でも。それはあくまで『直撃すれば』の話。
「……オ……、オマエ……それは……!」
ジュピテル姉さまが、震える右手でわたしを指差す。
いいえ……正しくは、わたしが今身に着けている、ウサギを模したパーカーを。
これぞ、秘策『ウサギソレイユ』!
……ごめんなさいDominus、ネーミングセンスがなくて……。
と、ともかく。
姉さまはご自分で言っておられましたね。パーカーは雷を抑えるための絶縁体だと……。
それなら、このパーカーを身に着けさえすれば、姉さまの雷電から身を守ることができる!
もう、雷はわたしには通じません!姉さま!
「ッ!……こ……の……!」
「ボクに!姉であるこのボクに対して!上から目線でモノを語るなァァァァァァァッ!!!」
ガガン!ガギュッ!
ドッガガガガガガガガガガガガガッ!!!
怒号と共に繰り出される、姉さまの連撃(ラッシュ)。
けれど、それも……雷撃という特殊効果を封じた今となっては、充分に見切ることができる!
確かにその威力はマルス姉さまに匹敵し、速度はサテュルヌ姉さまに競るかもしれない――。
でも。
わたしは、過去そのふたりの姉さまと戦い、打ち克つことができたのですから!
ジュピテル姉さまにも――決して、負けない!
0033ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/13(水) 23:04:55.11ID:ZrdcHL8wはあああああああ――――――ッ!!!
わたしとジュピテル姉さまの、音速を越えるラッシュの対決。
ただ、時間を追うごとにジュピテル姉さまの手数は減っていき、その勢いも弱くなってゆく。
姉さまの弱点――それは、体格!
姉さまの小柄な身体は、絶対的にスタミナに欠ける……長期的な戦いは想定されていない!
それゆえ姉さまは当初、自らの手を汚さずデミウルゴスで人々を操り、けしかけるような真似をしたのでしょう。
それを破られ、雷霆の大火力で一気に勝負をつけようとしたけれど、わたしはそれさえも凌いだ……。
つまり、もう。姉さまにわたしを倒す術はない!!
「うるさァァァァァァいッ!!」
「ボクがオマエを倒せないだって?そんなことあるもんか!ボクは最強の『錬金人類(エリクシアン)』!一番強いんだ!」
「オマエみたいな!ラ・テールお姉ちゃんの予備なんかに!負けるワケないんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ラ・テール姉さまの……予備?わたしが……?
ジュピテル姉さま、それは――
「死ね!シネ!しね!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね――オマエなんか!死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ぐ……!
膨大な雷光!これは……戦術級の必殺技?『ジュピテル・ユルティム・ウラガン』の他に、奥義が……
「戦術轟雷!『ジュピテル・デュ・シュット・ドゥ・フードゥル』!!!!」
カッ!
天から降り注ぐ、莫大な量の雷。
それはわたしの作った氷壁を一瞬で粉砕すると、ウサギのパーカーを直撃しました。
0034ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/13(水) 23:06:12.44ID:ZrdcHL8w「アッハ……、あッはハハッはハはっはははハはハは!!」
「どォだ!ボクの雷霆は最強なんだ、誰にも破られたりなんてしないんだ!ボクが!やっぱり一番強いんだ!アハはハハハ……!」
肩で大きく息をしながら、ジュピテル姉さまが笑う。
勝利の哄笑。ふたつ目の必殺技で、わたしを仕留めたと確信して疑わない笑い――
けれど。
「……ぁ……?」
姉さま、わたしは……まだ、死んでいません。
「ど、どうして……?そんな……!ボ、ボクの……ボクの雷は……」
姉さまの雷が降り注ぐ直前、わたしはパーカーを脱ぎ捨てたのです。
そして『ベルジュロネット・ドゥ・ブリエ』を展開し、防御を司る白の『ブランシュ』にパーカーを与え、高く飛ばした……。
「パーカーと鶺鴒を、避雷針代わりに使って……ボクの戦術轟雷をやり過ごしたって言うのか……!」
はい、姉さま。
そして――これが!決着の一撃です、姉さま!!
わたしは強く踏み出して姉さまの懐へと潜り込むと、その腹部に狙いを定めました。
ただし、カドゥケウスは狙わない――鳩尾を痛撃し、一瞬で昏倒させる!!
突き出した拳が、姉さまの腹部へ吸い込まれるように突き刺さる。
「――ご、ボッ……!!」
くぐもった声を漏らし、ジュピテル姉さまが遥か後方へと吹き飛ぶ。
姉さまの小柄な身体は二、三度地面をバウンドすると、大きな幹線道路の横断歩道でやっと止まりました。
姉さまはうつ伏せに倒れたまま、ピクリとも動きませんが……カドゥケウスが無事な限り命に別状はないはずです。
やりました、Dominus!
0035ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/13(水) 23:08:21.46ID:ZrdcHL8wぐぐ、とゆっくり身体を起こし、ジュピテル姉さまが立ち上がる。
姉さま……!もう、勝負はつきました!これ以上の戦いは無意味です!だから……!
「だから……なんだって……?二度負けたボクは、失敗作として……大人しくスクラップになれって……そう言うのか……?」
「ボクは……もう、負けられないんだ……!絶対に……オマエに勝って、もう一度……ラ・テール……お姉ちゃんに……」
ラ・テール姉さま……?
ジュピテル姉さま、どうしてそこまでラ・テール姉さまにこだわるのですか……?
何か、理由があるというのですか?
「オマエは……ホントに、なんにも知らないんだな……」
「ボクたちは、ラ・テールお姉ちゃんを人類の新たな道しるべにするための試練……。噛ませ犬、なんだって……」
「そう、パパが言ったんだ。ボクたちのパパが……」
「でも、ボクはそんなの認めない……!ボクが噛ませ犬だなんて!お姉ちゃんのための生贄だなんて……!」
「だから、ボクは言ったんだ……。もしボクがラ・テールお姉ちゃんを倒すことができたら……それは撤回してほしいって!」
「ボクが『錬金人類(エリクシアン)』の最後のひとりになったら!お姉ちゃんのやるはずだったことを、ボクにやらせてほしいって!」
「……ボクを……救星主にして、って……!」
……救星……主……?
「ボクが……最強なんだ、七人の中で一番なんだ……!ボクが噛ませ犬でなんかあるもんか、ボクが……ボクが……!」
「ボクが!!一番、パパに愛されてるんだあああああああああああああああああ!!!!!」
――ざ。
ざざざ。ざざざざ。
ざあああああああああああああ……!
ジュピテル姉さまの慟哭を合図とするかのように。
標的を失い、商店街を彷徨っていた人々の身体から、フィアンケット級デミウルゴスが飛び出してくる。
その数は五十以上。それは、どこにそんなに隠れていたのだという程に大量の黒い球体たちと合流し、ひとつの群れを形成してゆく。
群れが向かった先には、交差点のジュピテル姉さま。
夥しい数の黒い球体、フィアンケット級デミウルゴスたちが。
雪崩のような勢いでジュピテル姉さまの小さな身体の中へと入ってゆくのを、わたしは見ました。
0036創る名無しに見る名無し
2016/07/14(木) 22:23:10.38ID:E5ZdfCjPだから意識を保ったりデミウルゴスを制御する為にも、
デミウルゴスを頭に憑依させることはないと思う
身体能力を大幅強化できるとはいえ、アレは意識を乗っ取ったところで単純な動きしかできないから
そんなものに体を任せるのはデメリットが大きいからね
ということは強化されてない頭から下を切り離せば……いやだめじゃん。死んじゃうじゃん
それに頭に憑依させても意識を乗っ取られない方法があったりするかもしれないし……この作戦は駄目だ
じゃあカドゥケウスを破壊すれば……これも命に関わるんだっけな。これもダメか
……あ、ならいっそ、水鞭を喉に詰めるなりして呼吸困難に陥らせて意識を落とすってのはどうだろう?
これならどこを強化されてようと関係ない。錬金人類とは言え、呼吸は必要だろうからね
そして呼吸を封じられればどんな強靭な生物だって倒れる。無力化できる
もし仮に、それによって意識の手綱をデミウルゴスに握られることになったとしても、
ソレイユの中にはフィアンケット級デミウルゴスがまだ残ってるよね? だとすれば仲間と認識されることになり、
標的を失えばさっきの商店街の人達みたいにうろうろするだけになって、結局無力化できることになる
あんな数のデミウルゴスを体に入れての強化は恐らく初めてだろう。動きも最初はぎこちないと思う
そのうちに意識を何とか奪ってしまえば勝てる……かなぁ
上手く無力化できれば時間的余裕ができる。そしたらビュトス機関が造ったであろう、
あのデミウルゴスを操る兵器だか装置だかを持ってきて貰えば、
ジュピテルの体からデミウルゴスを取り除くこともできるはず
0037創る名無しに見る名無し
2016/07/16(土) 21:46:51.41ID:Tlcv9pNAジュピテル・ユルティム・ウラガンの時点で避雷針立てたかとおもったけどパーカー使うのはアイデアになかった。
しかもパーカーの活用2段構えとは。
"幼女の上着をソレイユが纏うことはない"――これは自由な発想を妨害する強固な先入観だった。
「――Dominusよりソレイユへ緊急通信。
可及的速やかにジュピテルを無力化後、ウサ耳パーカーを回収せよ。
まだ二人分の匂いが……いや、落雷でイオン脱臭している可能性も否定できないが……いや、なんでもない。
とにかく必ず、回収せよ!
例の黒い球体への対応はDominus#36の指示に従ってくれ。オーバー」
……。
通信を切ったあとで、俺はふと、恐ろしい妄想に駆られた。
それはジュピテルに集う無数の黒い球体の"目的"だった。
彼らの目的がもし、ジュピテルの操作ではないとしたら。
――"資格"を失ったエリクシアンへの"処理"を目的としていたら。
「おいソレイユ、聞こえるか!?
ジュピテルに入りこんだデミウルゴス群、あれを遠隔でハッキングとか、できないのか!?
デミウルゴスはひとつの共有意識を持つ群体とかそういう設定はないのか!?
俺の考えすぎかもしれないが……このままだと、ヤバいかもしれない」
"ふたり"に敗れたエリクシアンがどうなるか……。
ここまでソレイユと姉妹たちの顛末を見て来た俺たちなら、よくわかったいたはずだったのに。
0038創る名無しに見る名無し
2016/07/16(土) 21:57:24.22ID:Tlcv9pNA急な引越しがあって、固定回線繋がるまでスマホでなんとか書き込もうとしたけどおπ送り?にあって書き込めず。
ジュピテルのコンプレックス煽ったりしたかったZE。
0039創る名無しに見る名無し
2016/07/17(日) 07:36:09.21ID:jRuuTNFY目的を達成する過程で人間などに寄生し、対象の持つ知識を得る。そしてその知識を基に思考し、行動する。
ジュピテルに召集され、彼女にとり憑く五十を超えるデミウルゴス。
命令されるままに彼女の身体のリミッターを外していく。
しかし、デミウルゴス達は命令に従ってはいたが、制御はされていなかった。
ジュピテルの支配力が弱まり、デミウルゴス達が自由に思考することを許してしまっていた。
デミウルゴスは、自分達がとり憑いているジュピテルの知識から、目の前の錬金乙女にはもう勝てないと判断した。
よって彼女の目的では無くデミウルゴスの目的を果たすことにした。
どのような行動をとれば目的を達成できるかは、デミウルゴス達がそれぞれとり憑いた五十を超える人間達が教えてくれた。
一体だけジュピテルにとり憑かせず、別行動させる。その一体がデミウルゴスの目的を果たしてくれる。
デミウルゴスが一体足りなくとも今のジュピテルは気付かないだろう。
ジュピテルのリミッターを外し終える。後は、目の前にいる錬金乙女に出来る限りダメージを与える。
ジュピテルにとり憑いた黒球達はもうそれ以外の事は考えなくなった。
0040ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/17(日) 17:51:28.38ID:/XH8NsmM>>39
「うああああああああああああああ―――――――ッ!!!」
……姉さま!!
姉さまの身体の中へと入ってゆく、夥しい数の黒い球体――フィアンケット級デミウルゴス。
生物に憑依し、莫大な力を与えると同時に意のままに操るそれが、姉さまの中へ……。
姉さまは絶叫すると、ゆっくりと立ち上がりました。
「……ゥ……ご……オオオオオオオオオオオオッ!!!」
バヂンッ!
バギッ!ベキッ、ビギギッ――
わたしの目の前で、ジュピテル姉さまが変質してゆく。
その小さかった、愛らしい身体が。みるみるうちに膨張し、巨大になってゆく……。
四肢が。胴体が肥大化し、強固な装甲に覆われてゆく。
わたしはただ双眸を見開き、姉さまの異常な変質を見ていることしかできませんでした。
やがて変容を終えた、ジュピテル姉さまの姿。
さながら中世の鎧の騎士のように、全身を強固な装甲で覆った、身長5メートルばかりの異形。
その姿は、まるで――あの『巨神(デウス)』型デミウルゴスの縮小版のような――
「……ボ……ク……ハ……。ソレイ……ユ……ヲ……殺ス……!」
兜のような装甲に覆われた面貌。そこから炯々と輝く両眼だけを覗かせ、ジュピテル姉さまが唸る。
……なんてこと……。
「ゴオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――――ッ!!!」
咆哮。今やわたしを遥かに上回る巨躯を手に入れたジュピテル姉さまが、巨拳を振り上げて攻めかかってくる。
――疾い!類似した外観を持つ『城兵(ルーク)』型オポジット級デミウルゴスとは比べ物にならない!
拳と共に、姉さまが全身から雷撃を放つ。これもまた、今までとは段違いの威力……!
デミウルゴスたちが、姉さまのリミッターを外し強制的に力を引き出しているの?
わたしの耳の奥に、先程姉さまの言った言葉がこだまする。
《もっとも、力は増幅されても受け皿である肉体が脆弱だから、考えなしにブン回せばそれだけ肉体にかかる負担も大きいケドね!》
……このままでは、姉さまの身体が……!!
0041ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/17(日) 17:53:29.14ID:/XH8NsmMSic.Dominus.
ウサ耳パーカーを回収します!――鶺鴒よ、お願い!
いまだにパーカーをかぶったままの『ブランシュ』を、Dominusのところへ――!
Dominus、このジュピテル姉さまは今までの敵とはまったく異質の存在です!
安全な場所へ避難して、パーカーを頭からかぶっていてください。雷が飛んできても、防げるはずですから。
でも、くれぐれもご無理なさらず!
「死……、ネェェェェェェッ!!!ソレイユゥゥゥゥゥゥッ!!!」
く……!Dominusと話している時間がない……!巨体に反して、なんというスピード!
「致命的なスタミナのなさ」という姉さまの弱点を……デミウルゴスたちがカバーしている!?
ならば……!携帯型ビームエッジ『ソレイユ・エトワール・フィラント』!
ジュピテル姉さまの大振りの一撃を回避し、すれ違いざまにその右膝を一閃。これで機動力を封じられれば……。
「ソンナモノガァ!効クモノカァァァァァァ!!!」
ゴガァッ!!
か、は……ッ!
姉さまの拳を食らい、大きく吹き飛ばされるものの、わたしは空中でくるりと身を翻して地面に降り立つ。
一閃した右膝が、急速に再生してゆく……。この常識を超越した再生能力は、まさに『巨神』の……!
――えっ?デミウルゴスをハッキング……ですか?
Non.Dominus.
わたしは、わたしの中のデミウルゴスの意識をかろうじて書き換えただけです。
群体ではあるかもしれませんが……姉さまの体内のデミウルゴスの方が圧倒的多数である以上、アクセスは困難かと……。
このままでは危うい。それに関しては、同感です。
早く……姉さまをデミウルゴスから引き剥がしてしまわないと!
「オオオオオオ……グガガァァァァァァァ―――――――ッ!!!」
姉さまの全身から迸る雷霆!
パーカーはDominusの手に……そして、範囲一帯を埋め尽くす雷撃には、鶺鴒の避雷針も効果を発揮しない。
でも――近付かなければ、倒せない!
0042ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/17(日) 17:55:26.07ID:/XH8NsmMセキュリティ解除シーケンスを発動、特殊兵装を発動!
EXW-006S 超高圧力式水流鞭『メルキュール・トレント・デ・フエ』!!
Dominusの作戦通り、ジュピテル姉さまを窒息させ、失神に追い込むことさえできたら――。
……ぎゃうっ!!
わたしが水流鞭を発動させた途端、水流鞭に雷撃が伝播する。
強烈な電撃が水流鞭を伝って、わたしの右腕へ。激しい衝撃に、わたしは思わず悲鳴をあげました。
ぐ、あ……!水流鞭では、ジュピテル姉さまの雷に対しては相性が悪いです、Dominus!
でも、かといって姉さまをどうすれば倒せるのか……。
半端な攻撃では、瞬く間に再生してしまう。あの恐ろしいまでの治癒能力は、東京湾沖に現れた『巨神』とまさに同一。
わたしの他の兵装で、どうやったらあの治癒能力を上回るダメージを与えられるのかを考えなければ!
「ソレイユ!死ネ死ネ死ネ!死ネエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」
ガゴォッ!
姉さまの拳が、わたしの胴体を捉える。わたしは紙屑のように吹き飛び、近くのビルの壁面に背から激突する。
ビギギッ!と、わたしを中心にビルの壁に大きな亀裂が入る。
がはッ……。
ダメージが蓄積されてゆく……。披ダメージ率75パーセント、身体能力60パーセントダウン……。
「オマエハココデ死ヌンダ!ソシテ……ボクガ!ボクガ一番ノ!唯一ノ『錬金人類(エリクシアン)』ニナルンダ!!」
「コノ力ガアレバ!ボクハ一番ニナレル!ラ・テールオ姉チャンニモ……負ケナイ!」
……違い……ます……。姉さま、それは……あってはならない、使ってはいけない力……です……!
そんな力で、最強の『錬金人類(エリクシアン)』になったとしても……。果たして、師はお喜びになるでしょうか……?
「黙レッ!黙レ黙レ黙レ……黙レェェェェェェェェェェェッ!!!」
「ドンナ力ヲ使ッタッテ、勝テバイインダ!勝タナキャ……負ケチャッタラ、何モカモオシマイナンダァァァァァァ!!!」
ゴッ!ゴヅッ!バギッ!
がっ!がふっ!ぐ、ぁ……!
壁に磔状態になったわたしへ、姉さまがさらに無数の拳撃を叩き込む。
わたしの身体に拳が突き刺さるたび、背後のビルに刻まれた亀裂が大きく広がってゆく。
最後に姉さまが渾身の力でわたしを殴りつけると、ビルが崩壊を始める。大量の瓦礫に呑まれ、わたしはビルの下敷きになる。
「ゴオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
……姉……さま……。
どうすれば……わたしは、姉さまを救えるのですか……?
0043ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/17(日) 17:56:32.08ID:/XH8NsmMDominus、お引越しお疲れさまです!
固定回線に繋がるのは、まだ先でしょうか?Dominusのサポートがなければ、わたしの戦闘力は大幅ダウンしてしまいます。
姉さまを倒し、その心と身体を救うことができるのか、否か――
それは、Dominusにかかっていると言っても過言ではありません。
ソレイユは、Dominusのお早いお戻りをお待ちしております!
わたしは、今まで姉さまは単に性格的な問題で意地悪なだけかと思っていたのですが。
どうやら、その行動の裏にはDominusの仰る通り、激しいコンプレックスがあったようですね……。
わたしがラボで姉さまにいじわるをされていたのも、その――噛ませ犬だとか、試練だとかが原因だとしたら。
……なんとなくですが、理解できるような気がします。
やっぱり、ジュピテル姉さまもわたしの大切な姉さま。
どんなことをしても、救いたい。呪縛から解き放ちたい――。
お知恵を貸してください、Dominus!
0044創る名無しに見る名無し
2016/07/17(日) 21:58:24.40ID:+e2SI0dx聞くに堪えない俺の掠れ声が、あろうことか町中に大音量で響き渡った。
「巨大化は負けフラグだってな!」
……ソレイユがビルに叩きつけられたとき、俺は無意識のうちに煙草屋向かいのビル5Fに走り出していた。
商店街の宣伝広報システム――そのコントロールルームが、そこにあるからだ。
アーケードのそこらに設置された"宣伝用"スピーカーが俺の声を馬鹿デカく増幅し、各所から何重にもリフレインさせる。
これだけ響かせれば、やはり馬鹿デカくなったジュピテルの耳元にだってよく届くはずさ。
結構な予算をかけて商店街振興会が立ち上げたこの宣伝システムも、最近じゃあ夕暮れ時に「蛍の光」のインストを垂れ流すだけの代物に成り下がっていたからな。
こんな死にシステムをここ一番で有効利用した俺には感謝してもらいたい。ちなみにこれで地球が救えることになったら、費用対効果は抜群ってことになる。
「おーい、どこ見てんだよ小娘! こっちだこっち! 俺がどこにいるのかもわからないか?」
俺はできるだけ憎たらしい抑揚をつけてマイクに叫んだ。
商店街のいたるところに設けされた拡声器が、ジュピテルに俺の居場所を特定させないはずだ……なんてのはまあ、気休めなんだけどな。
とにかく、ソレイユがやられたら終わりだ。いや、何が終わるのか、俺にもよくわからなかったが、終わりなんだ。だからここが俺の体のはりどころだった。
――"時間"だ。時間を稼ぐ必要がある。
短期決戦では分が悪すぎる。だが、デミウルゴスの負荷が一定値を超えたそのとき、あの恐るべき巨体は一瞬の隙を見せる……と思う。
俺は、それに賭けることにした。
0045創る名無しに見る名無し
2016/07/17(日) 22:02:29.78ID:+e2SI0dxお前はソレイユの潜在能力を引き上げるためだけの、唯の試料なんだぞ? 他の姉妹と同じ、たんなる当て馬だ!」
俺は煽るように吐き捨てた。
「その当て馬の中でも、お前は最悪レベルだ!
メルキュールも、マルスも、サテュルヌも、ヴェヌスも……他の連中はよくやった。
彼女たちは自らの信念を貫き、己の力を最大限に引き出して戦った。そして彼女たちは立派に自らの任を果たした、ひとつにして十全な錬金人類だった。
だけどジュピテル。お前は――」
ここで底意地悪く嘲笑ってやろう。既定路線だ。
「なぁ――その"おもちゃ"は、誰から貰ったんだ?
メイザースか、ウェストコットか、それともウッドマンか?
なあ、嬉しかったか?特別扱いされたって、そう思ったか?
……本当はわかってるんだろう? 自分でもよくわかったうえで、考えないようにしてるだけなんだ――」
普通の人間だって。錬金人類だって。基本的な精神構造は同じなんだろうな。俺はソレイユとの暮らしの中で、そして彼女の姉妹を通して、そのことを知っている。
「お前が"黒い球体"を与えられたのは、"パパ"がお前を愛してるからじゃない」
俺は今、例のビルの最上階に立っていた。
そして態々背負って来たデカいアンプ、それに接続した手提げスピーカー3本に向けて、叩きつけるように叫んだ。
「お前が"足りない"からだジュピテル! 未熟者には駄賃のひとつもやらないと、たいした成果も期待できないってな!」
ビル屋上からジュピテルを睥睨した俺は――文字通り、上から目線で彼女を睨みつけた俺は、ふんぞり返って笑った。ちなみにそのバカ笑いも、スピーカーに乗せてヤツに届けてやったのだ。
ぴっちりウサギパーカーを着用した不審者と、今や無敵の巨神と化したエリクシアンは、多分、このとき初めて対峙した。
0046創る名無しに見る名無し
2016/07/17(日) 22:11:20.46ID:+e2SI0dxわざわざありがとうございます。
やっとネットも繋がるようになりました。新環境なので落ち着くのに時間がかかると思いますが、このスレや他Dominusの進行を心の支えにして頑張りますね。
今までの鬱憤を晴らすような長文レスしましたが都合悪ければスルーしてね。
あとサテュルヌ描いたので下手でも良ければ見てね。モノクロで500kくらいあります。
http://dl1.getuploader.com/g/6|sousaku/916/PEX-006_Saturne.jpg
0047ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/19(火) 20:54:34.69ID:DIq3AFso>>44
…………ぅ…………。
Dominusの声が……聞こえる……。
きんきんと反響する、耳障りなハウリング。割れた声。
普段わたしの聞くものとは、まるで異なるけれど――これは、紛れもなくDominusの声……。
Dominusが、ジュピテル姉さまを挑発している。
どう……して……?
「ナン……ダト……?ボクガ……他ノ姉妹ニ劣ルッテ言ウノカ……!コノ最強ノ『錬金人類(エリクシアン)』、ジュピテルガ!」
Dominusの挑発に、姉さまが露骨な反応を示す。
プライドの高い姉さまにとって、自分より劣っていると見下しきっている人間の罵倒ほど許しがたいものはない。
姉さまはすぐに周囲を見回し、Dominusを見つけようとしましたが、反響するスピーカーの音に位置が特定できないようでした。
「ガアアアアッ!ドコダァ、蟲ケラガァァァァ!」
「オマエモ殺シテヤルッ、ソレイユト一緒ニ!出テコォォォォイッ!!」
ガゴォォォォンッ!
ガラガラガラッ!!
苛立ち紛れに、姉さまが巨拳を振るって商店街の店舗を粉砕する。濛々と土煙が上がり、建物が倒壊する。
それでも止まらない、Dominusの挑発。
「……ボクガ……愛サレテ……ナイ……?足リナイ……?」
「ウルサイ……!ウルサイウルサイ!ウルサァァァァァァァァァァイッ!!!」
「ボクハ未熟者ナンカジャナイ!ボクハ一番強インダ!最強デ、最高デ、最愛ノ『錬金人類(エリクシアン)』ナンダァァァァ!!」
そんな姉さまの絶叫を否定して、Dominusの高笑いが周囲にイヤというほど響き渡る。
そして――
「ソ、コ、カァァァァァァァァァ!!!!死ネェェェェェェェェェ!!!!」
ビルの屋上へ姿を現したDominusを確認し、憤怒と憎悪に爛々と双眸を輝かせ。
ジュピテル姉さまは拳を振り上げました。
0048ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/19(火) 20:55:53.84ID:DIq3AFso――Dominus!
わたしは倒壊したビルの下から一瞬で飛び出すと、『エトワール・フィラント』を抜いて姉さまの左膝裏に斬りつけました。
ぐらり、とバランスを崩し、片膝をつく姉さま。けれど、こんなものはきっとダメージのうちにも入らない。
ただ、姉さまの意識をDominusからわたしへと向けさせることはできる――。
「……ソレイユゥゥゥ……。マダ、死ンデナカッタノカ……」
そう簡単に死にはしません、姉さま。
とりわけ――Dominusがその命を懸けて、わたしが再起動する時間を稼いでくれたのなら!
「ナラ、モウ一度潰シテヤル!死ネ……ソレイユゥゥゥ!!」
斬られた膝を再生させ、姉さまが立ち上がる。巨体がわたしの方を向き、拳が掲げられる。
戦いの再開――そう、思ったけれど。
「ゥ……、グ、ガァッ……!?ハ、ウ……グァァァァァァァァァッ!!!!」
突然、姉さまが頭を押さえて苦しみ始める。
背を大きく仰け反らせ、かと思えば身を丸く縮めて。尋常でない苦悶の叫びをあげる。
あれほど強靭で、かつ圧倒的な再生能力を誇っていた装甲が、まるで腐敗するかのように融解してゆく――。
姉さまの肉体が、取り憑いたデミウルゴスに拒絶反応を起こしている……?
それはまさしく、姉さまの肉体にかかる負荷がキャパシティを越えたことの証。
「苦……シ、ィ……グアアアアアッ、ギィィィィアアアアアアア!!!」
姉さま!
……姉さまを、救います!Dominus!
内部スキャンによれば、あの姉さまの姿は何も、本当に姉さまの肉体が巨大化したわけではありません。
デミウルゴスの集合体が外殻を形成し、内部に姉さまを収納している――と考えるのが正しいようです。
姉さまを救うには、外殻から姉さまの本体を引きずり出すしかない……!
だとしたら、取るべき方法はただひとつ!
0049ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/19(火) 20:57:56.22ID:DIq3AFsoどろどろと溶けてゆく巨躯を、それでも破壊と殺戮のために動かして。姉さまがわたしへと突っ込んでくる。
なんて、可哀想な姉さま……。一刻も早く、姉さまをあの呪われた身体から救出しなければ!
今までは、あの強固な装甲によって八方手詰まりの状況でしたが。
装甲が崩壊し始めている今なら――きっと!
わたしは軽く腰を落として身構えると、巨象さながらに突進してくる姉さまと真っ向から対峙しました。
「死ネ死ネ死ネッ……死ネェェェェェェェ!!!」
……姉さま!
わたしは高く跳躍すると、空中でくるりと身を反転させ、錐のように回転しながら蹴りを繰り出す。
さながらドリルのように、光の矢のように。
狙うべきただ一箇所を穿ち貫く、必殺の一点集中穿孔蹴!ソレイユ・エギーユ・リュミエール!!!
ドギュッ!!
わたしの蹴りが、いいえ……全身が、崩壊しかかっているデミウルゴスの胴体へと突き刺さる。
投擲された槍さながらのわたしの身体が、デミウルゴスの集合体の胴体に巨大な穴を穿つ。
そして――合体したデミウルゴスの巨躯の背中を突き破り、わたしと共に小さな姉さまの身体が飛び出してくる――。
「……が……、がはッ……!」
元の姿の姉さまが、ごぽりと『魔導血液(エリクシル・ブラッド)』を吐き出す。
ダメージは甚大でしょうが、カドゥケウスが破壊されない限り『錬金人類(エリクシアン)』に死はありません。
わたしは姉さまの身体をぎゅっと抱きしめると、地面に降り立ちました。
0050ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/19(火) 21:00:20.87ID:DIq3AFsoメルキュール「こんばんは〜♪メルキュールの『エリクシアンおまけ講座』のお時間ですよ〜☆」
ヴェヌス「司会は慈愛の水麗メルキュールお姉さまと、わたくし最美の閃光ヴェヌス。そして――」
マルス「炎熱の顕形マルスでお送りするぜ!」
メルキュール「思えば、おまけ講座も久しぶりね……お姉ちゃん寂しかった。くすん」
ヴェヌス「最近は少々シリアスな流れが多くて、おふざけをする隙がありませんでしたから」
マルス「もっとフザケた書き込みがあってもいいとオレは思う」
メルキュール「そうねえ……シリアスなばかりだと、息が詰まってしまうものねえ。それはともかく、今日のおハガキですよ」
メルキュール「ポイント95532にお住まいの>>46さん!いつもありがとうございます☆」
メルキュール「>>46さんは、今度はサテュルヌを描いて下さったんですよ。ホラ!」
ヴェヌス「……サテュルヌですわね」
マルス「ああ、どっからどう見てもサテュルヌだ」
サテュルヌ「うむ。この怜悧な眼差し、凛然たる姿。道着に袴、そして手には絶凍刃――紛うことなき吾であるな」
マルス「まーた当然のように出てきやがって……」
ヴェヌス「こんなに素敵なイラストを頂いたというのに、貴方は相変わらず無表情ですわね」
サテュルヌ「頂き物があったとて、あからさまに喜ぶもそらぞらしきことかと。さりながら、胸中にて感謝しておりますれば」
サテュルヌ「主殿、転居は色々と不都合もあろうが、自愛するが善い」
サテュルヌ「そうそう。絵の礼と言っては何だが、剣の稽古がしたければいつでも声をかけよ。みっちり教えて遣ろうゆえ」
マルス「出た。修業マニア」
ヴェヌス「全然イラストのお礼になっていませんわね」
サテュルヌ「ならば、二十四時間耐久英国産間違った日本の文化アニメ鑑賞会の刑でも可とする」
マルス「刑ってついてる時点でアウトじゃね?」
メルキュール「では、また次回〜☆」
ソレイユ(戦闘中なので当然出そびれました……!)
ジュピテル「ボクも……」
0051創る名無しに見る名無し
2016/07/20(水) 21:40:13.54ID:JI0uAHIcしかし毎回壮絶な姉妹喧嘩を繰り広げているが救星主とは何から星を救うのだろうか
少なくともデミウルゴスからではない気がするよネ
さて、ボクはメルキュール姉さんのぷにぷに腹筋を枕に昼寝してくるヨ
0052ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/21(木) 18:21:58.19ID:efcIyBdDね……、姉さまの様子が……。
もう、デミウルゴスの呪縛から解き放ったはずなのに!なぜ――
「う、う……あああああああああ―――――ッ!!!」
身体をのけぞらせ、わたしの腕の中で苦悶に眼を見開き絶叫する姉さま。
その胸のカドゥケウスが、不気味に明滅する。そして、そこから滲み出るように姿を現す、黒い球体。
ビギギッ!
姉さまの身体から出てゆくついで、行き掛けの駄賃とばかりに、黒い球体がカドゥケウスを侵食する。
硬く澄んだ音を立て、カドゥケウスの表面に走る亀裂。聞き違いようのない、死と破滅の音……。
――姉さま……!ああ……なんてこと……!
用済みだと言いたげにカドゥケウスから飛び出すデミウルゴスを、わたしは素早く右手を伸ばして捕えると、一気に握り潰しました。
ズズゥン……
わたしたちの背後で聞こえる、重い地響き。
振り返ると、姉さまを失い崩壊しかかったデミウルゴスの抜け殻が、なおもわたしたちを攻撃しようと腕を振り上げていました。
……しつこい……!
胴体に、向こうが見えるほどの大穴を開けられているというのに。まだ動くことができるなんて!
でも――今は、あなたに構っている暇はない!
わたしは姉さまから束の間離れると、両腕をデミウルゴスへと向けました。
出力最大!ソレイユ・アマ・デトワ―――――ル!!!!
わたしの腕から迸る星の光。粒子砲の閃光が、デミウルゴスの巨体を跡形もなく消し去ってゆく。
核であった姉さまを失い、無限の再生力をなくしたデミウルゴスなら、わたしの兵装でも消滅させることは可能!
デミウルゴスを排除すると、わたしは急いで姉さまの元へと戻りました。
0053ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/21(木) 18:26:56.36ID:efcIyBdD「……消える……。消えちゃう……ボクの手が……身体、がぁ……ッ!」
駆け寄ったわたしが姉さまを抱き直す。姉さまが自分の両手を見て、恐怖に目を見開く。
その小さな手が。徐々にその色彩を失い、指先から消えてゆく――。
「や……、やだッ、やだやだやだ……!消えたくない、死……死にたく、死にたくない……!」
「やだッ!やだよォ……!やだやだっ、消えちゃう、ボクが消えちゃう……死んじゃう……やだっ、やだ……いやぁ……!」
「こわいっ……、やだ……ソレイユ、助けて……!助けて、ボクを助けて……!あああああああ……!」
……姉さま……。
「パパに……もう、愛してもらえなくなっちゃう……。失敗作だって……見捨てられちゃう……」
「やだ……そんなの、やだ……やだよ……。パパぁ……」
「だっこして、頭を撫でてほしいの……。えらいぞ、出来る子だジュピテルって……そう……言ってほしいの……」
………………。
死の、消滅の恐怖に怯える姉さま。その肉体が、雷光を纏いながらゆっくりと空中に飛散してゆく。
生気に満ちていたはずの大きな瞳が輝きを失い、ぼやけてゆく。
虚空に手を伸ばし、うわごとのように呟く姉さまの小柄な身体を、わたしは強く両腕で抱きしめました。
「……ぁー……」
姉さま……。
たとえ、どんなことになったって。師が――お父さまたちが、あなたを見捨てるなんてことはありません。
あなたは。七姉妹の中でも一番、皆に愛された『錬金人類(エリクシアン)』……。お忘れですか?ラボで過ごした頃のこと。
お父さまたちだけではありません。ラボの研究員たちも、そしてわたしたち姉妹も。
みんな、あなたのことを深く愛していましたよ。姉さまがどんなにイタズラをしても、誰もあなたを怒らなかった。
ビュトス機関の中で、あなたはまさしく女帝だった……。
そして。これからも、それはずっと変わらない。
「……ホン……ト……?」
本当ですとも。
「ホントに……ホント……?」
ええ。もちろんです、姉さま。
「ソレ……イユ……」
はい、姉さま。
「……ボクのこと……好き……?」
はい。大好きですよ、姉さま。
「……ぁは……。そっか……」
「ボクも……ソレイユが、大好き――」
――バチッ……。
幼く愛らしいその顔に似つかわしい、あどけなくも儚い笑顔。
最期にそれをわたしへと贈ると、ジュピテル姉さまはまるで仔ウサギのように、眠るように。
静かに、わたしの腕の中で消えてゆきました。
0054ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/21(木) 19:03:35.82ID:efcIyBdDメルキュール「はいは〜い!メルキュールの『エリクシアンおまけ講座』のお時間で〜っす☆司会はわたし、メルキュールと!」
サテュルヌ「その他 でお送りする」
ヴェヌス(雑な……)
メルキュール「今日のオハガキは、ポイント10200にお住まいの>>51さん!ありがとうございます☆」
ヴェヌス「救星主とは、いったい何から星を救うのか?という質問ですわ」
サテュルヌ「五の姉上が今回身罷られたことで、残る『錬金人類(エリクシアン)』は二名――」
サテュルヌ「残ったソレイユと三の姉上がどう動くのか、物語はいよいよ佳境!といったところですな」
ジュピテル「うっが―――――っ!!!なんでボクが死ぬんだよォ!もーっ、ムカツクムカツクムカツクーっ!」
マルス「よォ、お疲れさン。電界の女帝(笑)ちゃン?」
ジュピテル「フザけてんの?……コロスよ?」
マルス「殺すも何も、もう死んでるしなぁ……」
メルキュール「はいはい、喧嘩はそこまで。ところでジュピテル、ソレイユに情報はちゃんとあげたのかしら?」
ジュピテル「あっ。伝えるの忘れてた。てへぺろ☆」
ヴェヌス「やってしまいましたわね……」
サテュルヌ「まぁ、五の姉上が話さずとも、真相は近く究明されるに違いありますまい」
ジュピテル「あーァ、ボク、割と初期から出張ってたのにこれでオシマイ?もーちょっと活躍したかったなー」
ヴェヌス「それはここにいる皆も同じかと思いますが、主役はあくまでソレイユですから……」
サテュルヌ「ところで、>>51が一の姉上のぷにぷに腹筋の腹枕で昼寝を所望しておりますが」
メルキュール「ぷ、ぷにぷに!?が―――ん、お姉ちゃんショック……!そ、そりゃ、マルスみたいに鍛えてはないけれど……」
ヴェヌス「マルスの腹筋はバッキバキすぎて、石を枕にした方がまだマシですわね」
マルス「コロスぞ?金姉」
ヴェヌス「もう死んでますわ」
サテュルヌ「ぷにぷに即ち肥満という訳ではありますまい。むしろ母性とは女性の肌の柔らかさに由来するもの」
ジュピテル「慈愛の水麗相手なら、むしろ褒め言葉なんじゃないの?」
メルキュール「そ……そうかしら?そうよね、そうだわ!じゃ、>>51さん、一緒にお昼寝しましょうね〜☆冷え冷えですよ〜」
マルス(チョロイなぁ……)
ジュピテル「ボクも寝よーっと。じゃ、バイバーイ」
サテュルヌ「されば、本日はこれにて解散ということで」
ヴェヌス「ではまた次回。お疲れさまでした」
ソレイユ(……はい、まあ、ええと、出そびれました……)
0055創る名無しに見る名無し
2016/07/21(木) 20:17:23.15ID:ZtFTcbX3そういやソレイユだって生まれてそんなに経ってねえんだよな。大人の都合に振り回される難儀な子供ってところかい。
さて……あとは白黒つけるだけ、か。
黒いのをぶちのめせば勝ち、なのかね。
だがよ、それは何に対する勝ちなんだろな。
そもそも、それで俺たちは勝ったことになるのかね。
――しっくりこねえなぁ。何もかもが。
お前はどうなんだ、ソレイユ。
0056創る名無しに見る名無し
2016/07/22(金) 00:47:22.94ID:Ml2WjeDnビュトス機関もそろそろ説明をしてくれるような気もするし
ラ・テールは日本を守ってくれたことがあったから、漠然といい人そうな気がする
もしかしたら説得や話し合いに応じてくれる人かもしれない
0057ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/23(土) 01:26:25.67ID:1wjfbacT>>55
こんなこと。
……こんな結末。
こんな、最期……納得なんてできるはずありません!
試練?当て馬?噛ませ犬?
そんな!そんなくだらない、意味の分からないモノのために!姉さまたちが死ぬ必要なんてなかった!
納得も、理解も、共感もできません!そんな……そんなモノよりも、姉さまたちの命の方が……よほど尊いというのに……!
……なにをもって勝ちとするのか。そう仰いましたね、Dominus。
勝利という概念が、自らの意思の通りに物事を進める、という意味を持つのなら。
わたしは今まで、ただの一度も勝利を収めていない……。
わたしの望みはただひとつ――かつてのように、姉妹仲良く暮らすこと。それだけなのですから。
七姉妹のうち、残ったのはわたしと――ラ・テール姉さまだけ。
ラ・テール姉さまとも、わたしは戦わなければいけないのでしょうか?
その……何に対するものなのかも分からない『試練』のために?『救星主』……というモノのために?
だとしたら、わたしはそれに抗います。例え、それが師の命令だとしても。
……師に……失望されることになろうとも。
Dominus、わたしは悪い娘ですね。
子は親の言うことを聞かなければならない。親の期待に応えなければならない。
けれど――
今、わたしの胸の中には、師に対する偽りようのない疑念が渦巻いているのです。
メイザース師は、わたしたち姉妹を深く慈しんでくださいました。愛して下さいました。
それは、ジュピテル姉さまに言った通り。欠片ほどの偽りもありません。
――でも。
わたしは確かめなければならない。偉大なる三魔術師の、心のうちを。
Dominus――
力を。貸してくださいますか?
0058ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/23(土) 01:28:04.50ID:1wjfbacTSic.Dominus.
ビュトス機関とコンタクトを取ることは容易です。
なぜなら、いまだわたしはビュトス機関の管理下にあり、メンテナンスを受けているからです。
今回のジュピテル姉さまとの戦いによって破壊された商店街も、すでに機関が修復に当たっています。
負傷された方々への補償も抜かりありません。幸い死者は出なかったようですので、近くすべては元に戻るかと。
わたしの栄養ゼリーも、依然Dominusのおうちに定期的に届いていますし――
Dominusならびにわたしが機関と接触することは可能、と回答します。
ただし、それは機関の末端に限定されており、現段階で師や他の高位魔術師とのコンタクトは不可能です。
ことの真相を聞き出すことは、難しいかと――。
ラ・テール姉さまに関しても、難しいと思います。少なくとも、わたしにはできません。
現在、ラ・テール姉さまがどこにいらっしゃるのか。それすら把握できていないのです。
わかっていることは、姉さまもまた日本にいるということだけ。
でも、恐らく……そう遠くない未来にお会いすることになるでしょう。
わかるんです。残る『錬金人類(エリクシアン)』が姉さまとわたしのふたりになったから、というだけではなくて。
運命が引き合っている、わたしたちの命が呼び合っている……。
わたしたちの胸に輝く、叡智の結晶カドゥケウスが。
ジュピテル姉さまとの戦いから、一週間。
やっと商店街も元の賑わいを取り戻したようです。デミウルゴスの侵攻も、あれからぱったり途絶えました。
この平和が、少しでも長く続けばよいのですが……。
とりあえず、学校へ行きましょうか?Dominus。
デミウルゴスが攻めてきても。姉さまたちや、『機械化人類(メカニゼイター)』がやってきても。
学業だけは疎かには出来ませんから!さ、支度ですよ!支度!
0059ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/23(土) 01:30:37.91ID:1wjfbacT何か、教室の様子がおかしいですね。クラスメイトの皆さんも、心なしか落ちつかないような。
ええと。皆さん、どうかされたのですか?
…………。
…………。
Dominus、聞き込みを行なったところ、本日当校に転入生がやってくるとのことです。
クラスの何名かが、見慣れない女生徒が職員室に入ってゆくのを目撃した……と。
妙ですね。夏休みを控えたこのタイミングに転入してくるなんて……。
あ。先生がいらっしゃいました、着席しましょう。
――朝のホームルーム。担当科目が古典にも拘らずジャージ姿の担任の先生が、教卓の前に立って挨拶を始める。
弛緩した空気が、先生の登壇によってぴりりと引き締まる。わたしにとっては、とても心地いい一瞬。
ここに。教室にいることで、わたしは平和を心から噛みしめることができる。
当たり前の平穏を。なんでもない幸福を。全身で感じることができる――。
先生が言う。「今日は転入生を紹介する。みんな、仲良くしてやるように」と。
サプライズに教室中がざわつく。やはり、噂は本当だったようですね。
「入りなさい」という先生の言葉と共に、教室の前の扉が開かれひとりの女生徒が入ってくる。
わたしが着ているのと同じ、本校の制服を隙なく着込んだ、長い黒髪の少女。
その容姿は、色を除いてわたしと瓜二つ――
……瓜二つ。
「本日付でこの学校に転入しました、ラ・テールです!妹のソレイユともども、よろしくお願いします!」
…………え?
え……えええええええええええええええええええええええ!!!!!????
挨拶を終えると、姉さまは一目散にわたしのところへと駆け寄ってきました。
そして、勢いよくわたしに抱きついて――。
「ソレイユ!会いたかった!」
「ずっと、ずっと会いたかった!今日が来るのを待ってた!やっと会えた……嬉しい!」
ぎゅうぎゅうとわたしを抱きしめる、ラ・テール姉さまの勢いにすっかり圧されて。
わたしはただ、こくこくと頷くことしかできませんでした。
0060創る名無しに見る名無し
2016/07/23(土) 12:59:50.83ID:3rl1PaDo0061創る名無しに見る名無し
2016/07/24(日) 00:25:59.20ID:H2VMyA6Y適当な時間を見つけて挨拶をして、何か話題でも振ってみよう。そうだなぁ
「初めまして。長い黒髪が素敵だね」、「ソレイユにはいつもお世話になってます」
「ところで救星主ってなにか知ってる?」、「ラ・テールの兵装って、重力とか風とか、
目に見えない物を操作するものだと推測してるんだけど合ってる?」
「この間は日本を守ってくれてありがとう」……こんな所でどうだろう
0062ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/25(月) 22:22:04.16ID:CIM+R7Rq>>60
……さ、さすがはラ・テール姉さまです……。
転入してきた瞬間、もうクラスの――いえ、校内の中心的存在になってしまわれました。
でも、それも無理のないことなのかもしれませんね。
以前ラ・テール姉さまが軍港に現れ、『ベンジェンス・オブ・ドーン』の発射したグランMACガンの砲弾を止めたこと。
それによって日本を救ったという事実は、テレビによって日本全国に……それどころか世界中に放送されたのですから。
そんな救い主が、ある日突然前触れもなく自分たちの学校に。そしてクラスに転入してくれば、皆が驚くのも当然かと。
今や、休み時間のたびに教室は姉さまを一目見ようと押し寄せてきた人々でいっぱいです。
立錐の余地もないとは、まさにこのこと……!わたしたちでさえ、姉さまに近づくことができません!
姉さまに人気があって嬉しい反面、姉さまが遠くに行ってしまったみたいで、少し複雑な気持ちですが……。
いっ、いえ。そんな私的なことではなくて、姉さまには色々伺わなくてはならないことがあります。
姉さまがこの学校へ転入してきた理由、目的。これからの行動指針――。
それらを、可能な限り聞き出さなければ……。
……Dominus?Dominus!
鼻の下が伸びていますよ。だらしないお顔をなさらないでください!
むちしちゅ?とは一体なんですか?確かに姉さまは人を疑うことを知らない、純粋無垢な方ですが。
まさか……それをいいことに、いけないことをしようとしているのではありませんよね?
姉さまは嘘がお嫌いな方です。もし、Dominusにやましいお考えがおありだとするのなら……。
ばれると、ひどいことになってしまうかも……。そうなれば、わたしも責任は取れませんよ?
さ!姉さまとゆっくり話すには、もう少し時間がかかるでしょう。
それまで、何を話すべきか。ふたりで纏めておきましょう――ね?Dominus。
0063ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/25(月) 22:27:48.93ID:CIM+R7RqSic.Dominus.
問題ないと思います。……それにしても、全然お話しできないまま放課後になってしまいましたね。
自由に行動できる時間は――いいえ、それ以外の授業中まで、姉さまの周りには誰かしらがいて。
わたしたちが近寄れる隙は全くありませんでしたから……。
あ、ほら。Dominus、噂をすれば姉さまです。ちょうど、校庭のあたりに。
わたしたちの今いるこの屋上からは、姉さまの姿がよく見えますね。
姉さまの周りに、100人くらいの生徒が同伴しています。これは、本日中の会談は絶望的でしょうか……。
「お――――――いっ!ソー!レー!イー!ユーッ!」
姉さまの方もわたしたちに気がついたようですね。大きく両手を振っています。
「いま――――!そっちに―――!いくね――――っ!!」
……え?
姉さまの様子に、わたしが小首をかしげた瞬間。
姉さまが、突然校庭から高く跳躍しました。
いえ――それは跳躍、と言うより飛翔、と言った方がいいかもしれません。
とにかく、姉さまは取り巻きの生徒たちを校庭に置き去りにして、一気にわたしたちのいる校舎の屋上へとやってきたのです。
ねっ、ねねねねね、姉さま……!
「よいしょっと!とうちゃーくっ!あはは、びっくりした?ソレイユったら、目がまん丸!」
「学校の案内をしてくれたみんなには悪いんだけど、こうでもしないと話す時間が作れなかったから」
「……まあ、時間はまだまだたっぷりあるから。焦る必要はないけど……でも、やっぱり。早くあなたたちと話したかったし!」
「あなたがソレイユのDominus?改めて自己紹介するね、あたしはラ・テール。七姉妹の三女、ソレイユの姉だよ」
「あなたのことも、ずっと見てた。ソレイユのこと、いつも愛してくれてありがとう。素敵なDominusと巡り合えたんだね、ソレイユ」
……姉さま……。
Dominusが矢継ぎ早に質問を浴びせると、姉さまは軽く眉を下げ、ひらひらと両手を振って笑いました。
「おっとっと!熱烈な質問攻めだね〜。まぁまぁ、そう急がなくっても!言ったでしょ?時間はたくさんあるって」
「これから、ずっと一緒にいるんだもの。徐々にお互い分かり合っていけば、それでいいんじゃないかな?」
ずっと?ずっとというのは、どれくらい――
「ずっとは、ずっとだよ。ずっとずっと、ず―――っと!」
「だって――あたしとソレイユは、救星主。ふたりの救星主……なんだもの!」
屋上の落下防止柵を背に、長い黒髪を風に遊ばせて。
ラ・テール姉さまは右手をわたしの方へと差し伸べると、そう言ってにっこり笑いました。
0064ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/25(月) 22:30:48.39ID:CIM+R7Rq救星主とはいったい……?それがラ・テール姉さまとわたしだとして、それにはどういう意味が……?
「救星主とは何か、って?いい質問だね!――救星主とは!」
救星主とは?
「……救星主とは!!」
き、救星主とは……!?
「……あはは、わかんない!」
ね、姉さまーっ!?
「いや〜、あたしもよく知らないんだよね。ただ、父さんが『おまえは救星主だ』って言うから。そうなんだ〜って」
「でも、なんとなくは分かるよ。とにかく、悪者をやっつければいいんだって。みんなの平和や愛を奪う者を倒せばいいって」
「それなら、わたしは戦うよ。みんなの笑顔を、平穏を。愛を!守るために――戦う!」
「だから、お願い。ソレイユも力を貸して!一緒に、大切な人たちを守るために戦おうよ!」
姉さまがわたしの両手を取り、ぶんぶんと上下に振る。
で……、では、姉さまがここへ来たのは、他の姉さまのようにわたしと戦いに来たのではない、と……?
「あたしとソレイユが戦う?どうして?そんな理由ないし、あたしはソレイユに協力してもらいたいから来たんだよ?」
「他のみんなは、試練のためにあたしたちと戦う役目があったみたいだけど……。あたしとソレイユは戦わない」
「あたしとあなたの手は。お互い殴りあうためじゃなく――こうして。繋ぐためにあるんだから」
姉さまが、わたしの手指に自分の手指を絡めてくる。
温かく、柔らかな姉さまの手。殴りあうためでなく、繋ぎあうための手……。
……ぅっ、うっぐ……ひっく、うっ、うぇぇぇぇぇぇぇ……!!
「なんで泣くのっ!?あ、あたし何か言っちゃった!?禁句的な何かを!?」
い、いいえ……嬉しいんです、わたし……!
やっと。やっと、願いが叶った……!姉さまと仲良く、昔のように過ごせるって……それだけで……!
「あははは……大袈裟だなぁ、ソレイユは。でも、わかるよ……。他のみんなと殺し合いするのは、つらかったよね……」
「だけど、もう大丈夫だから。一緒にいよ?もちろんDominusも。そして、みんなで幸せになろうよ」
はい……、はいっ……!
姉さまがわたしの頭を胸に抱き寄せ、あやすように髪を撫でてくる。
その優しい仕草に身を任せ、わたしはしばらく、幼な子のように泣きじゃくりました。
0065ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/25(月) 22:34:12.93ID:CIM+R7Rqわたしをあやしながら、姉さまがDominusの方に視線を向ける。
「なかなかいい線行ってる。もう、ほとんど正解って言っていいくらい。でも、ちょっとだけ違うかな」
「本当は、あたしの固有兵装を使うのは父さんから固く戒められてるんだけど……。Dominusには特別に見せてもいいよ」
「でも、時と場所を改めて……ね。ここで使って、万が一のことが起こったりしたら困るから」
「そうだなぁ……じゃ、次にこの街の周辺にデミウルゴスが出現したら、っていうのはどう?」
「どの道デミウルゴスが現れれば、『錬金人類(エリクシアン)』以外には対処はできないんだから。ね」
「あ。父さんには内緒だよ?」
そう言って、ニカリと白い歯を見せて笑う姉さま。
そうこうしているうちに屋上の扉が開かれ、姉さまを追いかけてきた人々がなだれ込んでくる。
「いっけない。じゃ、残りの話はまた後で!」
そう言うと、姉さまはわたしから身体を離し、一気に柵を乗り越え空中へ身を躍らせました。
人々が柵に殺到するも、時すでに遅し。
「わっはっはー!さらばだっ!明智くぅ――――――んっ!」
……姉さま、そういう知識はどこで得られたのですか……?
と、ともかく、姉さまは他の人たちから逃れていずこかへ行かれてしまいました。
Dominus、わたしたちも帰りましょうか……。
本当に、今日は波乱の一日でしたね。お疲れになったでしょう?お風呂が沸いていますから、お入りください。
……あら?インターホンが鳴っていますね。こんな夜に誰でしょう?
ま、まさか……?
「ソレイユ、Dominus、今日からお世話になりまーっす!」
開いたドアの前には、スポーツバッグを持った制服姿のラ・テール姉さま。
……え、ええと。
Dominus、どうも……そういうことらしい……です……。
0066創る名無しに見る名無し
2016/07/26(火) 20:49:38.38ID:M2ABHGu6メルキュール:家事や手料理、耳かき、添い寝など母性全開でお世話してくれそう。ああ〜^
ヴェヌス:Dominusにも高いスペックを求めるが、一度認められれば秘書的なイメージで傅いてくれる。
スーツメガネタイトスカートとヒールの組み合わせが最高。
ラ・テール:「Dominus、○○○しよう!」とあけすけに迫ってくる。東京ラブスト○リーかな?
マルス:あまりべたべたと執着しないドライなイメージ。なぜか飲み会の席でセクハラしてくる印象がある。飲み屋のトイレでガッツ!
マルスッスのバッキバキの腹筋で俺の一部もバッキバキに。(※腹筋のことです)
ジュピテル:悪態を尽きながらも構ってオーラ全開でつきまとって来きそう。Dominusの胡坐のうえに座すという振る舞いで殺しにくる。踏まれたい。
サテュルヌ:フェチズムの権化であり、Dominusの帰宅をメイド服待機、猫耳スク水で風呂場に乱入、Dominusのラッキースケベ(in学校や職場)を全力で阻止にくるなど暴挙に暇がなさそう。
ソレイユ:初期は一線を引いていたが最近のデレっぷりを見るにもう押せばなんでもありなのでは?と思うこと多々。
主のいない間にDominusのワイシャツをくんかくんかしてそう。Dominusしゅきぃ……。
ふぅ……一体俺は何をやっているんだ……。
一通りの妄想を終えるといつも通りの自己嫌悪が俺自身を襲い、世界は絶望に包まれた。(END)
……居候といえばサテュルヌを思い出すが……あのときは賑やかだったな。
そういえば、ラ・テールのDominusはまだ健在なんだよな?
確かそんなことを聞いたような気がする。
0067ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/27(水) 19:49:09.52ID:icnI/LXg三人で登校して、授業を受けて。姉さまの取り巻きから逃げながら下校して、一緒にごはんを食べて……。
なんでもない日常。ごく普通の生活。
そんな日々を過ごすことを、わたしはずっと夢見てきました。その夢が、まさか叶う日が来るなんて――。
姉さまは常識的なところと非常識的なところがきっぱり分かれていて、時々とんでもないことをしでかしたりするのですが。
具体的には『Dominus!一緒にお風呂にはいろう!背中を流してあげるね!』と、Dominusの入浴に乱入したり。
『姉として、Dominusと妹の進展具合を知っておく必要があるよ!で、どこまで進んだの?』と訊いてきたり。
色々、わたしの驚くことをしてきますが……それさえも、幸せな生活のひとつ。
後は、この毎日が姉さまの言う通り。ずっと続いていけば――。
「サテュルヌが言ってたんだ。ソレイユのDominusは見所がある、きっと人類を牽引する指導者になれる、って」
「それから、毎日が楽しいって。Dominusと、ソレイユといるのが幸せだって。……それを聞いて、ずっと。羨ましいって思ってた」
「ずっと、あなたたちのことを見てた。会いに行きたいって夢見てた。でも、会っちゃダメだって。まだそのときじゃないって……」
夕食の席で、姉さまがそんなことを言う。
姉さまは、今までどちらにいらしたのですか?
誰が、わたしと会ってはいけないと姉さまに命じていたのですか?……なんのために?
「あたしはずっとラボにいたよ。ビュトス機関のラボに。そして、許されたときだけ外に出てた。戦うために」
「父さんが、まだソレイユと会うタイミングじゃないって。ソレイユが姉妹全員と戦い終わるまでは――って」
「理由までは知らない。あたしは、ただ父さんにそう言われていただけだから」
三魔術師のいずれかの方が、わたしと姉さまたちのいわゆる『試練』が終わるまで、再会を戒めさせていた……と。
師は、他に何か仰っておられませんでしたか?
「何も。他の姉妹との戦いに勝った後は、必要なとき以外は待機とメンテナンスばかりだったから」
「でも、そのお蔭であなたたちのことを見ていられたんだけどね。あなたたちのことを見ていたら、会いたくて堪らなくなって」
「だから、父さんにお願いしたの。試練が終わったら、あたしもサテュルヌみたいにソレイユたちと生活したい!って」
「最初は父さんたちも戸惑ってたけど、あたしがどうしても!って言ったら、最終的には許してくれたんだ。えへへ」
お箸を手に、嬉しそうにそんなことを言う姉さま。
「あたしのDominus?いるよ。あ、大丈夫。ここへ来るのは、あたしのDominusの許可も取ってあるからね」
そうですか……。それなら安心です。
姉さまが、そんなにわたしたちのことを気にかけていてくれたとは知りませんでした。
そして、皆で生活する幸福を望んでくれていたなんて……。
Dominus、わたしはこの幸せな生活を、なんとしても守ってみせます!
0068ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/27(水) 19:52:31.67ID:icnI/LXg敵性反応確認。ポイントC-25889!これは……デミウルゴス!
Dominus!
「行こう。みんなの平和をおびやかすデミウルゴスは、やっつけなくちゃ!」
姉さまが決然とした面持ちで立ち上がる。
はい!では、現場に急行します!Dominusもご一緒に!
――デミウルゴスが出現したのは、高層マンションの立ち並ぶベッドタウン、港湾区。
『歩兵(ポーン)』型が三十体、『僧兵(ビショップ)』型が十体。『騎兵(ナイト)』型が三体。
典型的な小隊規模のデミウルゴスですね。これなら、問題なく撃破可能かと思われます。
では――
「ここは、あたしが行くよ。ソレイユはDominusを守って」
……姉さま?あ、待ってくださ……!
わたしが止める暇もなく、姉さまはすぐに跳躍するとデミウルゴスのまっただ中へと突進していきました。
姉さまの身体が一瞬輝き、大きく肩の出たサマーセーターにフリル付きのミニスカートの出で立ちが、黒いアサルトスーツに変わる。
「はああああああッ!」
群がる『歩兵』を、姉さまは無駄のない動きで瞬く間に駆逐してゆく。
徹底した戦闘理論に則ったその身のこなしは、サテュルヌ姉さまの――。
「セキュリティ解除シーケンスを発動、特殊兵装を発動。EXW-006S 超高圧力式水流鞭『メルキュール・トレント・デ・フエ』――」
ギュルルルルルルッ!
メルキュール姉さまの特殊兵装、水流鞭が生き物のようにうねる。隊伍を組んだ『僧兵』を、当たるを幸いなぎ倒す。
「EXW-055S 絶凍刃『サテュルヌ・タンペート・ド・ネージュ』!」
ビキビキビキッ!
さらに、サテュルヌ姉さまの絶凍刃。絶対零度の凍気が水流鞭の残滓をダイヤモンドダストに変え、周囲に滞留する。
「EXW-077S 投射式雷電魔槍『ジュピテル・グラン・エクレール』!」
目まぐるしく兵装を換えてゆく姉さま。次に出したのは、稲妻でできた長大な槍。
あれは、ジュピテル姉さまの――!
バヂッ!バヂバヂバヂッ!!
姉さまが槍を投擲すると、凍結した空間に雷が伝播する。ダイヤモンドダストの漂う空間にいた、全てのデミウルゴスが感電する。
ラ・テール姉さま……。わたしと同じ兵装を扱っているはずなのに……。
桁外れに……強い……!
0069ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/27(水) 19:56:19.97ID:icnI/LXg『歩兵』と『僧兵』を平らげた姉さまの背後に『騎兵』が迫る。『騎兵』が手に持っているランスを振りかぶる。
姉さまはランスを振り向きもせずに避けると、代わりに強烈な裏拳を胴体へと叩き込む。
『騎兵』の一体が吹き飛ぶも、『騎兵』は全部で三体。残りの二体は仲間の被弾をものともせずに姉さまへと攻撃を繰り出す。
「……効かないよ」
姉さまの両手に炎が灯る。それはみるみるうちに勢いを増し、戦斧の形状をとる。
マルス姉さまの特殊兵装、EXW-091S 超高熱溶断火炎斧『マルス・ティタン・ドゥ・フランム』……!
わたしは両腕で一本の戦斧しか生み出せないのに、左右の腕に一本ずつの戦斧を形成するなんて!
「でやああああああああ――――ッ!!」
姉さまが炎の戦斧を投擲する。二体の騎兵の額にトマホークよろしく斧が突き刺さり、騎兵は僅かに痙攣すると沈黙した。
でも――
デミウルゴスの更なる援軍。強固な守備力を誇る、巨大な『城兵』――オポジット級デミウルゴスが、姉さまの前方に現れる。
姉さま、気を付けてください!オポジット級が出現するときは、必ず近くにフィアンケット級が……!
ドギュゥゥゥンッ!
パキィ―――ンッ……
どこかから聞こえる銃声。やはり、オポジット級は囮!フィアンケット級が姉さまを狙っていた……!
けれど。フィアンケット級デミウルゴスの銃弾は、すぐに甲高く澄んだ音を立てて跳ね返されました。
姉さまの身を護るように浮遊する、白い鶺鴒の生み出した障壁によって。
「ノワール!!」
姉さまが叫ぶと同時、四基の黒い鶺鴒『ノワール』がいずこかへと飛んでゆく。
わたしは、白黒一対つがいの鶺鴒を操るので精一杯なのに……。
すぐに、近くの高層マンションの屋上で爆発が上がる。どうやら、そこにフィアンケット級デミウルゴスがいたようですね。
姉さまの目の前のオポジット級デミウルゴスが、霧のように消えてゆく――。
これで、戦闘は終了でしょうか。
「あ!ゴメン!Dominusと約束してたのに、あたしの兵装を使う前に終わっちゃった!」
「あはは、ゴメンゴメン!まぁ……また次の機会に見せられれば……ね?」
ぺろりと舌を出して笑う姉さま。
これが、『救星主』の性能ということのようですね。わたしの出番なんて、本当に欠片もありませんでした。
本当にすごい……!姉さまがいる限り、平和は守られたも同然です!
何か、肩の荷が下りたような……。
これで、もう安心ですよね?Dominus――。
0070ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/27(水) 20:01:25.58ID:icnI/LXgメルキュール「毎日暑いけれど、よい子のみんなは元気にしてるかしら?メルキュールの『エリクシアンおまけ講座』ですよ〜!」
マルス「司会はメル姉!それから、夏と言ったらなンと言ってもオレの季節!なマルスとッ!」
サテュルヌ「絶凍刃製かき氷一杯500円で販売中。サテュルヌ他である」
ヴェヌス「提供は『人類の輝かしい未来を創造する』ビュトス機関でお送り致しますわ」
メルキュール「今日のおハガキは、ポイントC-25889にお住まいの>>66さん!ありがとうございます☆」
マルス「さっき、デミウルゴスにブッ壊されてたところじゃねーか」
ラ・テール「よい子のみんな〜!今日のあたしの活躍、見てくれたかな〜?みんなの救星主!ラ・テールだよ〜!」
ラ・テール「あたしにファンレターや似顔絵を送ろうっ!住所は『錬金乙女エリクシアン公式サイト』でっ!」
ヴェヌス「さっそく自己アピールに余念がありませんわね……」
ラ・テール「今までずっと我慢してたから!やっとあたしの出番なんだし、やりたいこと全部やりたいっ!」
サテュルヌ「そうやって、Dominusにもイケイケで猛烈アピールをするという訳ですな」
マルス「まぁ、>>66の妄想は大体合ってるよな。全然違和感ねぇっつーか。あるあるっつーか」
メルキュール「うふふ。Dominusは大切な身体なのだから、なんだって面倒を見ちゃいますよ?いい子いい子☆」
マルス「ダメ人間製造機じゃねーか」
ヴェヌス「メルキュールお姉さまのDominusは、漏れなく堕落していきますわね……その点、わたくしは甘やかしませんわ」
メルキュール「あんまりDominusをいじめちゃいけないわ?ヴェヌス」
ヴェヌス「世界最美、最優秀の錬金人類のDominusは、当然世界最高のスペックを持って然るべき。そうではありませんこと?」
サテュルヌ「二の姉上の要求を満たせる人類が、果たしてどれほど存在するのか疑問ですが……」
マルス「その点オレはあンま、高スペックとか求めねーし。やっぱ性格だろ?相性がよくねェDominusとは居たくねーし」
メルキュール「相性は大切ね。どういった人がマルスの好みなのかしら?」
マルス「酒が呑めて、ブン殴り合いが出来て、下ネタにも対応できる野郎がいいな。細けェことを気にしねェならなおよし!」
ヴェヌス「マルスと殴り合いができる人類っていったい……」
ジュピテル「ボクは、ボクのことを一番かわいーって言ってくれて。甘やかしてくれて。やさしーDominusなら誰でもいーよ」
マルス「いきなり出てきやがったな。とにかく、ベッタベタに甘やかしてほしいってワケか」
ジュピテル「ボクが甘えたいときに構ってくれればいーの。でも、甘えたくないときに構ってきたらコロスよ」
マルス「ウサギパーカーのクセして、ネコみてーなこと言いやがる」
サテュルヌ「成る程。――まぁ、吾は推して知るべしということで」
ヴェヌス「かなり色々妄想されているのに、一切否定しないんですのね……」
サテュルヌ「そもそも、このアサルトスーツの上に着ている道着と袴自体コスプレみたいなものですゆえ」
ジュピテル(コスプレだったんだ……)
ラ・テール「じゃっ!また次回〜っ☆」
…………。
…………。
くんくん……すぅすぅ……。はぁぁ、Dominusのにおい……。
Dominusぅ……。
……はっ!?な、ななな、なんでもありません!Dominus!
き、今日もやっぱり出そびれましたーっ
0071創る名無しに見る名無し
2016/07/27(水) 21:50:37.98ID:PDKWjgpV件の金星、あれの言うことを思い出すのだ。
地球とその主に隙を見せてはならん。
所詮我らは未だ、深淵の掌の上よ……。
0072創る名無しに見る名無し
2016/07/28(木) 01:36:15.87ID:M0XZYwG/さて、現状戦わないと言う話ではあるが、人格を乗っ取って操ったり人質を取ったり、
戦わせる手段はいくらでも考えられる訳だ。それに……いや、とかくいつ戦いになるか分からぬ
平和な毎日を楽しむのも良いが、それを頭の隅に置き、気を引き締めねばならないだろう
そして一層向上せねば、ぶつかったとしても勝ちはないだろう
ここからが本当の戦いなのかもしれない
0073創る名無しに見る名無し
2016/07/28(木) 21:09:21.38ID:nAzuT6BU0074ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/29(金) 21:38:13.74ID:r1CQZWUuひゃいっ!?も、ももも申し訳ありませんDominus!
ヴェヌス姉さまの言葉……ですか?確か……強く、美しく、Dominusを決して裏切らないように――
でなければ、ラ・テール姉さまとそのDominusには勝てない……と。
そ、そんなこと。ラ・テール姉さまは、わたしと一緒に手を取り合って戦おうと言ってくれたんです。
まさか、わたしとラ・テール姉さまが相争うなんて……そんなこと、絶対絶対ありえません!
いくらDominusのお言葉でも――!!
「ソレイユ?Dominus?……ふたりで何やってるの?」
はっ、はははははいっ!?姉さまっ!?べ、べべ別になんにも……。
「顔に出てるよ、内緒話してるって。……そりゃ、当然ふたりでしかできない話も色々あると思うけど」
す、すみません。でも、本当になんでもないんです。それより姉さま、今日のお夕飯は何にしましょうか?
「んー……。オムライスがいい」
はいっ!オーダー受諾しました。Dominusもオムライスでよろしいですか?
じゃ、さっそくお買い物に行かなくてはっ!Dominus、姉さま、お付き合いいただけますか?
「それなんだけど、あたしもちょっとDominusと内緒話があるんだ。だからソレイユ、悪いけどひとりでお願い」
……え……?
姉さまが、Dominusと内緒話……ですか……?
それって――
「あはは、なんでもないなんでもない!そんな、世界の終わりが来たみたいな顔しなくても大丈夫!」
「何も、取って食ったりしないから!ただ、ちょっと姉として。妹の扱い指南をするだけだから!」
「だってさ。Dominusとソレイユが結ばれたら、あたしはDominusの義理のお姉ちゃんなんだし!」
む、結ばれっ!!!??
「もしもの話!さ、早く買い物に行ってきて?あたし、もーお腹ペコペコだからさ〜!」
は、はい……。他ならぬラ・テール姉さまのお言葉なら、信じます。
では、Dominus。ソレイユ、これより商店街までお夕飯の買い物へ行ってきます。
……姉さまと、仲良くしてくださいね。
0075ラ・テール ◆vTHUCgBFbw
2016/07/29(金) 21:42:02.11ID:r1CQZWUuさて。
ごめんねDominus、ちょっと無理矢理だったかも。――でも、こうでもしないとふたりで話す機会、なかったから。
身構えなくてもいいよ。Dominusがあたしのこと、今でも警戒してるっていうのは分かってるから。
信用ないなー……あはは。でも、それがいい。それでいい。そのくらい注意深くなくちゃ、今までの戦いも勝ち抜けなかったよね。
あの子に聞かれたくない話。あなたに知っておいてもらいたい話。
今までのいきさつを、今から話すよ。
一方的になるけど、後であなたの疑問にも答えるから。今は、耳を澄ませていてほしいな。
『ビュトス機関』の最高位、三人の魔術師のことは知ってるよね。……あたしたちの生みの親、三人の父さん。
父さんたちはいつも、人類の正しい発展と輝かしい未来について議論してた。
どうすれば、どういう過程を経れば、人類はよりよい未来へと進んでいけるのか――?ってね。
地球は、苦痛で溢れてる。
飢餓。貧困。暴力。犯罪――たくさんの苦しみが、人々を不幸にしてる。
どうして、それらの苦しみが生まれるのか。その発生源、Dominusはわかる?
それはね……『人が多すぎるから』。
草木もそう。枝葉が茂るままに任せていると、日の当たらない場所が出てくる。栄養の充分な場所と、不充分な場所が出てくる。
そういう場合、庭師は不要な枝葉を間引くことで、全体に栄養が行き渡るようにする……。
父さんたちは、増えすぎた人間を間引き、適正な数まで調整すべきと考えたの。
それが『トロイア計画』。ギリシャ神話で、大神ゼウスが人間の数を減らそうと考えた計画。
綿密な計算によって導き出された人類の適正数は、5億人。
現在の地球の総人口は、73億人。
生き残れるのは約7パーセント。14人にひとりの割合――
さすがに父さんたちもそれは短絡に過ぎるって、一旦待ったをかけたんだ。
でも、こうしている間にもどんどん人口は増えていく。飢餓は、貧困は拡散していく。
早急に何らかの手を打たなければ、人類はこの地球を蚕食し尽くした挙句、自滅してしまう……。
終わらない議論に終止符を打つため、父さんたちは人類の舵取りを自分たち以外に委ねることにしたの。
三人の父さんはそれぞれ自分の得意とする分野で、それらを創造した。
機械工学の権威ウェストコット父さんは、機械と人類の融合『機械化人類(メカニゼイター)』を。
バイオテクノロジーの天才メイザース父さんは、わたしたち『錬金人類(エリクシアン)』を――。
自分たち旧人類を導く、新たなる人類を。
0076ラ・テール ◆vTHUCgBFbw
2016/07/29(金) 21:44:55.98ID:r1CQZWUu星を。この地球を救い、人々を救う存在として。最高の性能を与えられて創造された……。
他の五人、メルキュール姉さん、ヴェヌス姉さん、マルス、ジュピテル、サテュルヌは、その過程で生まれた試作体。
そして――
ソレイユは『救星主』であるあたしに万一のことがあった場合、『救星主』の役目を引き継ぐべく生み出された予備。
当初の計画では、『錬金人類(エリクシアン)』は6人。ソレイユは『存在しないはずの7人目』だったんだよ。
本当は、ソレイユはあたしに不測の事態が起こるまでずっとラボで培養槽の中にいるはずだったんだ。
でも。あたしがソレイユを目覚めさせたの。父さんたちに断りなく……ね。
だって、他の姉妹とは違う――あたしと同じ顔の妹。あたしと同じ『救星主』の妹。
あたしを元に作られた、双子の妹……。そんな妹が目覚めるのが、あたしが壊れた後なんて。
そんなの、寂しすぎるでしょ?
あたしはソレイユと話がしたかった。ソレイユと会って、お姉ちゃんだよ。妹だよって言いたかった。
――だから。
父さんたちは目覚めてしまったソレイユの扱いに困ったみたいだけど、結局わたしと同じ『救星主』として扱うことにしたの。
真の『救星主』になるためには、他の姉妹を倒し『錬金人類(エリクシアン)』の中で最も優秀だという証を立てなくちゃならない。
ただ、ラボですべてを学習したあたしと違って、ソレイユはほとんど何も学習しないままDominus――あなたの元へ送られたの。
人間の社会で、人間と交わって暮らすことで。持たざる者を、持つ者へと変えようとした……んだと思う。
ウェストコット父さんは、ラボで機関の最大限のバックアップを受け、英才教育を受けるあたしの方が恵まれてるって言ってたけど。
あなたと過ごすソレイユの姿をラボのモニターで見ながら、あたしはホントに羨ましいって思ってた。
あたしが目覚めさせた妹と。ずっと、話がしたいって思ってた。
でも……。あたしとソレイユの両方が試練をパスするまでは、決して会ってはいけないって。
それと同じころ、5人の姉妹たちもそれぞれの思惑のために動いていたみたい。
メルキュール姉さんとサテュルヌは、父さんの指示の通り『救星主』の覚醒のために。
ヴェヌス姉さんは、自分を愛してくれたDominusの遺志を継ぐために。
マルスとジュピテルは……なんだろう?自分のやりたいように……だったのかな。
みんなは自分のDominusを手にかけた、って言ってたみたいだけど。
5人のうち本当に亡くなったのは、ふたりだけみたい。ヴェヌス姉さんのDominusは大往生で亡くなってるし――
マルスのDominusは、病死だって。
ともあれ、5人の姉妹たちは『救星主』の覚醒のための試練によって戦い……
あたしとソレイユは、それに打ち勝って『救星主』になったんだよ。
0077ラ・テール ◆vTHUCgBFbw
2016/07/29(金) 21:52:34.83ID:r1CQZWUuだって、それがあたしの生まれてきた意味。生きる目的だから。
『救星主』として生きることが、散った5人の姉妹の命を受け継いだあたしの役目だと思うから。
あたしは、父さんの意思に沿う。父さんの期待に沿うように動く。
……本当を言うと、ソレイユには『救星主』としての働きをさせたくないんだ。
だって、そうでしょ?ソレイユは元々『いなかったはず』の存在なんだもの。
あたしに万一のことがあった場合に『救星主』の役目を引き継ぐバックアップがソレイユだっていうのなら。
逆に言えば、あたしがいる限りソレイユには何の役目も与えられないということ――だよね?
元はと言えば、あたしが会いたいっていう身勝手な理由でソレイユを起動させちゃったのに。
その上、あたしの役目まで押し付けられないよ。
だから、ね。
これから先は、あの子には幸せな、平凡な生活を歩んでほしいの。
姉妹を手にかける――そんなつらい戦いを、あの子はずっと続けてきたんだもの。
もう、充分だよ。あとは……あたしが引き受ける。
ソレイユはね、Dominus。あなたのことが大好きなの。
ずっとあなたたち二人のことを見てきたあたしには、よくわかってる。Dominusだって気付いてるんでしょ?
ソレイユのこと、お願い。あの子はもう、あなたがいなくちゃダメだから。
あたしが伝えたいことは、これでおしまい。
信じるも信じないも、あなたの自由だよ。でも、少なくともウソはついてない。
あたしも――ソレイユのことが好きだから。大好きな妹の想い人に、ウソなんてつけないもの。
もちろん、Dominusのことも好き。そして……あなたと妹が、普通に学校へ行って。普通に生活するのを見ているのが大好き!
これからも、あたしはあなたたちのことを見ていたい。幸せになっていく姿を見届けたい。
だから……戦うよ。幸福を取り上げようとする、すべての邪なものと。
――はー、一気に喋ったらくたびれちゃった!考えながらものを話すって疲れるね!
ますますお腹が減っちゃった。ソレイユ、まだ帰ってこないのかなー?
オムライス、楽しみだね!Dominus!
メルキュール「モニターの前のよい子のみんな〜!メルキュールの『エリクシアンおまけ講座』のお時間ですよ〜☆」
ジュピテル「司会はメルお姉ちゃんと、このボク!『錬金人類(エリクシアン)』最かわ最つよのジュピテル!」
ヴェヌス「最美のポジションだけは譲れませんわ。ヴェヌス他でお送りしましてよ」
メルキュール「今日のおハガキは、ポイントX-55680にお住まいの>>73さん!ありがとうございます☆」
マルス「ッてこたァ何か?ここはあの世っつーことか?」
サテュルヌ「まぁ……吾ら、全員見事に死んでおりますれば、冥界と特定するが妥当な線かと」
ジュピテル「うが――――っ!!死にたくな―――――いっ!!!」
ヴェヌス「だいぶ手遅れですわね」
メルキュール「まぁまぁ、わたしたちが死んでしまうのはストーリー上仕方のないことだから。むくれちゃダメよ?」
サテュルヌ「おまけ講座でも、出番があるだけマシと思うべきでしょうな」
マルス「だな。じゃねーと、初期に出てきたオレやメル姉なンて今頃完全に忘れ去られてるだろうし」
ジュピテル「視聴者に忘れられないためには、こーして地道に顔出ししておかなきゃ!」
マルス「おまけ講座のオレらって確実に二頭身とかだと思う」
ヴェヌス「わ、わたくしが!この地上最美の『錬金人類(エリクシアン)』ヴェヌスが、に、二頭身!?」
ジュピテル「あ、固まった」
サテュルヌ「二の姉上の美意識から鑑みれば、耐え難い屈辱ということのようで……」
マルス「ジュピテルは普段とあンま変わンねーな」
ジュピテル「コロスよ?」
メルキュール「あら?でも、それだとひとつおかしい点があるわね」
マルス「あ?」
メルキュール「前回のおまけ講座、ラ・テールも出ていたでしょう?ここが天国なら、さすがに出られないはずじゃない?」
サテュルヌ「確かに」
ジュピテル「きっと、アレだよ。それが未だ謎に包まれてるラ・テールお姉ちゃんの特殊兵装なんだよ!」
マルス「あー……死んだ人間の霊魂を呼び寄せるとか、霊界とコンタクトを取るとか、そういう……」
サテュルヌ「イタコ的な能力ということですな。ソレイユ、これは強敵ぞ!」
ヴェヌス「ふたりとも、いい加減になさいな。Dominusが信じたらどうするのです?」
ジュピテル「こんなアホな会話信じるDominusなんていないと思う」
メルキュール「では、また次回〜☆」
ソレイユ(わたしは生きてるから出られないんですね!納得です!)
ラ・テール「それはどうかなぁ……ふっふっふ……」
0079創る名無しに見る名無し
2016/07/30(土) 17:17:23.08ID:xWwreni1彼らはそれをユートピアと捉えているようだが、私に言わせればそれはディストピアと何処も違わない
人間の人間性を否定し
神の如き力を行使して形作られる徹底した統制と支配
外形上の平和
内面的な抑圧
それは偽りの楽園
精神の牢獄
空虚な美辞麗句ばかりが持て囃されるその場所で
我らの原初の魂は永遠に縛りつけられ、人々は等しく病み腐り果てるだろう。
つまるところ、彼らが目指すものはそういった世界なのだ
だから我々は考えるべきだ
どちらが我々が我々らしく在れる世界なのかということを
どちらが本当のデミウルゴスであるか、ということを
――これは警告だ
0080創る名無しに見る名無し
2016/07/30(土) 17:26:05.67ID:xWwreni1ま
偽の神々は
人
類
を篭絡せんと
暗
躍
し
我
々
を
翻
弄
す
る
――ポイント117-29894、河川橋梁下の落書きより
0081ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/31(日) 19:53:54.02ID:5s1/IsnH>>79-80
いつの頃からか、河川敷の橋梁にスプレーで乱暴に書き殴られた一文。
商店街からDominusのおうちへ戻るときには、必ずと言っていいほど目にする、その落書きが――
不思議と、頭から離れません。
一般の方々は知らないことですが、この世界はビュトス機関によって管理・制御されています。
もちろん、機関が直接人類を指導しているわけではありません。それは、世界中の各国家が担っています。
けれど、その国家に技術供与し、世界のパワーバランスの調整を行っているのは、間違いなくビュトス機関。
アメリカが世界の警察を名乗ることができるのも、日本が国土にそぐわぬ力を有しているのも。
すべては、ビュトス機関の意向によるものなのです。
――でも。
それは果たして、よいことなのでしょうか?
もちろん、大勢の人々を取りまとめるには、その上に立つ指導者が必要です。
古来より、人々は自分たちを導く何者かを頭上に頂くことで団結してきた。
家長。族長。国王。皇帝。
けれど、それはあくまで『人』でなければならない。人を導くのは、人でなくては……。
寄る辺なき心に差す光明、精神の拠り所を、人は『神』と呼びます。
国家を陰で操り、世界のパワーバランスを司るなどという行為は。人類の権能を逸脱した『神』そのものの行為ではないのでしょうか?
高度に管理された社会とは、つまり常時監視された世界。自由のない世界。
そんな世界において、人々の精神性は果たして、真の発展を見ることができるのでしょうか?
偽神。偽りの神、神の成り損ない。……デミウルゴス。
いつの頃からか世界に現れた、あの『人類の天敵』に、諧謔を交えそんな名前を付けたのは、一体誰なのでしょう?
あれは、或いは。
驕った人類――特にビュトス機関と、その技術を甘受する特権階級の者々に振り下ろされた鉄槌なのかもしれませんね。
神に成ろうとする、偽りの神々を裁くために鍛造された刃。
それが――彼ら、だとしたら。
0082ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/31(日) 19:55:45.22ID:5s1/IsnH学校が夏休みに入ったある日、ラ・テール姉さまが突然そんなことを言い出しました。
……はい?
「だって、今は夏真っ盛りだよ?なのに、どこにも行かないで家に閉じこもってるなんて勿体ないでしょ?」
「南の島でバカンス!白い砂浜、ヤシの木、ハンモックでお昼寝!夜はバーベキュー!どう?キュンキュンしちゃうと思わない?」
南の島でバカンス……ですか……。
た、確かに今は夏休み中ですし、そういった旅行に行かれる方も多いと聞いていますが……。
でも、わたしにはそういったリゾート地の知識がありません。姉さまには、お心当たりがおありなのですか?
「あるある!っていうか、もう手配はしてあるから。飛行機も何もかも!あたしたちは着替えと必要なものだけ用意すればいいの!」
「ほらほらっ!ソレイユもDominusも準備して?あと一時間くらいで、機関からお迎えの車が来るから!」
いっ、一時間っ!?それはまた急ですね!
あわわわ、Dominus!大至急支度をしましょう!
ええと、Dominusから頂いたスクール水着に、浮き輪に、ビーチボールに、麦わら帽子に……白いワンピース、日焼け止めも!」
「うんうんっ!やっぱり夏と言ったら海でしょ!Dominusも楽しみにしててよね〜!」
「……ま、遊ぶ前にちょっとだけお仕事しなくちゃいけないんだけど――」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
――ということで。
支度を終えると同時にビュトス機関の送迎車に押し込められ、高速に乗って。
訪れたここは、ひょっとして……。
「在日米軍の駐留基地だよ。ソレイユは前に、ここに隣接する軍港の沖でヴェヌス姉さんと戦ったよね」
は、はい。……でも、米軍基地になんの用が?
「ここからは、飛行機で行くからね。目的の南の島まで、30時間くらいかなぁ」
「ほらっ!あれあれ!もうスタンバイしてる、あたしたちの乗る飛行機!」
えっ?……どれですか?あれ……?
…………。
…………。
あの……。姉さま、バカンスとは普通、旅客機に乗って移動するのではないのでしょうか……?
これは、どう見ても……
米軍のB-2爆撃機……なのですが……?
「カッコいいね!」
そういう問題ですかっ!?
0083ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/31(日) 19:57:07.50ID:5s1/IsnH空中給油を繰り返しながら、爆撃機はどんどん進んでゆきます。
「まだまだ時間はあるから、ソレイユもDominusも寝ていた方がいいよ」
前方のシートから身体を捻り、姉さまがそんなことを言ってくる。
姉さま、目的の南の島とは、そんなに遠いところなんですか?
バカンスに適した島なら、もっと近い場所がいくらでもあったはず……。
わざわざ、世界で一番高価な航空機と呼ばれるB-2を使ってまで移動する意味は、なんなのですか?
「この飛行機じゃなくちゃダメだったんだよ。世界最高のステルス性を持つ、この飛行機でないと……」
「もっとも、この飛行機でも現地までは行けないんだけどね」
……え?
姉さま、それはいったいどういう――
わたしが訊いても、姉さまは笑うだけで答えてくれません。
そんなこんなでB-2爆撃機は飛び続け、そろそろ到着予定時刻が近付いてきたころ。
突然、機内にけたたましい警報が響く。これはまさか……
〈アラート。ミサイル、来ます!〉
「そのまま進んで。あたしが止めるから」
ね、姉さまっ!?
姉さまがシートから身を乗り出す。どこからか飛んできたXMAA(中距離高機能対空ミサイル)が、空中で突然停止し、海中に墜ちる。
「ソレイユ、そこにイカロスがあるから装着して。Dominusはその、宇宙服みたいなの着て。機関製の耐衝撃、対Gスーツだから」
えっ?えっ?
姉さま、そんなものをどうして――
「飛び降りるよ。ここからはスカイダイビングの時間だから!ワオ、スリリング!」
言うが早いか、高機動ブースターユニット『イカロス』を装着した姉さまがハッチを開ける。
ねっ、ねねねねね……姉さまーっ!?
「あたしがDominusを抱えて行くから、ソレイユはミサイルとか機銃とかを突破しながら島に降りて」
「座標は南緯47度9分、西経126度43分。オーケイ?じゃ、南の島で会おうっ!」
ばんっ!
Dominusを(無理矢理)抱えた姉さまが、B-2から外へと飛び出す。
こ、ここ……これはいったい……?
0084ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/07/31(日) 19:59:19.47ID:5s1/IsnHわたしは慌てて『イカロス』を装着すると、水着や着替えなどの入ったスポーツバッグを持って機外へと飛びました。
高機動ブースターユニット『イカロス』の調子は好調。銀翼が南の太陽を照り返し、ノズルから白い熱が放たれる。
前方眼下に島嶼を確認。……ただし……あれは、どう見ても自然のものではありません。
人工島……?こんな、陸から遠く離れた到達不能極に近い外洋に、なぜ人造の島が?
でも、考えている暇はなさそうです。熱源反応確認、ミサイル急接近!
ソレイユ、緊急回避――あるいは撃墜します!
かつてのヴェヌス姉さまとの戦いで、空中機動におけるミサイルの往なし方は学習しています。
セキュリティ解除シーケンス発動、特殊兵装を開放!
EXW-055S 絶凍刃『サテュルヌ・タンペート・ド・ネージュ』!
ギャリギャリギャリッ!
わたしの抜き放った絶凍刃がミサイルの表面を走り、爆発の前にその弾頭を凍てつかせる。
数発のミサイルを回避し、わたしは音速に近い速度で島へと接近しました。
やはり、ここは人工島。何者かによって作られた島のようですね。地上部に、いくつかの施設が見えます。
これは……まるでコンビナートや、発電所のような……。
いったい誰がこんな大規模な施設をこんな場所に?
地上部に設けられた機銃やSAM(地対空ミサイル)を掻い潜り、わたしは人工島へ降り立ちました。
この手荒い歓迎……どう考えても、姉さまの言っていたような南国のリゾートアイランドではありません。
ひょっとして、島を間違えた?――でも、姉さまの言っていた座標はここで間違いない……。
そんなことを考えていると、Dominusを抱えた姉さまが舞い降りてくる。
「わたしひとりならどうとでもなったんだけど、Dominusを抱えてると動きづらくて。手間どっちゃった、あはは」
「でも、無事に到着できたみたいだね。いや〜、長旅だった!」
姉さま……。ここはいったいどこなのですか?
明らかに、バカンス向きの場所ではありません。まるで軍事施設です。これは――
「この島の名前は『ル=リエー』。見ての通りの人工島。どの国家にも属していない、完全に独立した場所。そして……」
「今まで幾度も機関の邪魔をしてきた『組織』の本拠地だよ」
いとも簡単に、あっさりとそう言ってのけた姉さまに対して。
わたしは、驚きに目を見開きました。
0085創る名無しに見る名無し
2016/07/31(日) 22:04:20.89ID:9eDHNRHc爆撃機の旅程、対空ミサイルの歓迎、ラ・テールの抱擁……最後のは柔らかくてよかったが
ところで敵対組織の拠点で休暇を過ごそうなんてのは正気の沙汰じゃない気がするんだが
そこのところどうなんだ、錬金人類的には
ビュトスに敵対する組織ってのは……例の機械化人間を保有する連中か?
それとも、俺たちにデミウルゴスを差し向けている大本??
どうにもわらないが……まあ、この島の名前からして、あんまり良い謂れのもんじゃあねえって予感はするよ
まあいいさ。ビュトスの仕事ってやつを見届けよう
ラ・テールが此処に連れて来たことにも何か理由があるのかもしれないしな
0086創る名無しに見る名無し
2016/08/02(火) 00:52:57.57ID:+IJabGa00087ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/03(水) 14:38:46.60ID:YDF3ZgEM>>85
「ここは『ル=リエー』。今まで幾度も機関の邪魔をしてきた『組織』の本拠地だよ」
事態が飲み込めずにいるわたしとDominusに対して、姉さまがそう告げる。
……『組織』……?
「あー、ソレイユはよく知らないんだっけ。ゴメンゴメン、まずそこから説明する必要があったね」
「『組織』――正式名称を『トゥーレ協会』。いわゆる秘密結社だね。第二次大戦のころはナチス・ドイツで猛威を振るったこともある」
「トゥーレ協会は超国家主義を標榜し、自分たちが世界の頂点としてすべての国家を裏で牛耳ろうと画策しているの。つまり――」
ビュトス機関に成り代わろうとしている?
「正解!トゥーレ協会にとっては、今まさに世界のパワーバランスを調整してるビュトス機関は目の上のタンコブだよね」
「だから協会は、今まで何度も陰謀を巡らせては機関に対抗しようとした。例えば――メルキュール姉さんの残骸を回収しようとしたり」
「機関の造反者を招き入れたり、米軍の手に入れたフィアンケット級デミウルゴスのライフルを横取りしたり」
「米軍の軍事衛星アドミラブルをハッキングしたり……」
「三人の『機械化人類(メカニゼイター)』を差し向けて、最新鋭艦艇『ベンジェンス・オブ・デザイア』を強奪したり……ね」
ベンジェンス・オブ・デザイア……!ヴェヌス姉さまと戦ったあの『機械化人類』たちは、この『トゥーレ協会』の刺客だった、と?
「そう。まぁ、いずれの計画も機関が阻止したけど……ね。『錬金人類(エリクシアン〉』誕生以前から、機関と協会は暗闘を続けてきた」
「そして、その都度機関が協会に煮え湯を“飲ませ続けて”きた……。今までは、機関も本気では相手しなかったんだけど」
「『トロイア計画』の実行にあたって、障害となり得るものは排除しておこうって。父さんたちはそう決めたみたい」
「まぁ……最近までこの島の場所が特定できなかった、っていうのもあるみたいだけど」
つまり……今から、この『ル=リエー』を本拠地とする『トゥーレ協会』を壊滅させる、と?
「正解!そして、お掃除を終えてすっかり綺麗になった南の島で、気の済むまで思いっきりバカンスしちゃおう!ってこと!」
我が意を得た、とばかりに、ラ・テール姉さまが大きく両手を広げて笑う。
……なんてこと……。
「ホントは、あたしひとりでも協会をやっつけることはできるんだけど……」
「見てもらいたいものもあるからね。だから、敢えてソレイユとDominusにも来てもらったんだ」
「あ。それに、もちろんみんなで一緒に夏休みを楽しみたい!っていう気持ちも、もちろんあるしね!えへへ」
見てもらいたいもの?それはいったい……?
「それは後のお楽しみ、行けば分かることだから。さあ……行こ?」
「ほら……歓迎パーティーの支度もできてるみたいだし」
姉さまが軽く顎をしゃくって、島の内陸部へ続く舗装道路を指す。
ヘルメットと特殊防弾スーツに身を包み、手に手に銃器を装備した十人ほどの集団がやってくるのが見える。
わたしはDominusを護るように一歩踏み出すと、構えを取りました。
0088ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/03(水) 14:41:08.93ID:YDF3ZgEM「もちろんだよ、Dominus。あたしは『悪者を懲らしめにきた』のであって、『人を殺しにきた』わけじゃないんだもの」
「あたしがオフェンス。ソレイユはディフェンスね。Dominusを護ってあげて」
了解です、姉さま。ソレイユ、全身全霊でDominusの安全をお護りします!
セキュリティ解除シーケンス発動、特殊兵装を開放!
『ヴェヌス・ベルジュロネット・ドゥ・ブリエ』!ブランシュ、Dominusの周囲に防御障壁展開!
わたしがDominusの防御にあたると同時、姉さまが無造作に――まるで散歩にでも行くような気軽さで、道路を歩いてゆく。
〈止まれ!〉と兵士のひとりが警告を発するも、姉さまはまるで取り合わない。
〈撃てッ!撃て――!!〉
ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
戦闘員の持っている銃が火を噴く。夥しい量の弾丸が、姉さまの命を刈り取ろうと迫る――
でも。
姉さまが軽く右手をかざすと、弾丸の悉くはどういう訳かピタリと指向性を失い、空中に停止したかと思うと地面に落ちました。
……これは……。
以前、ベンジェンス・オブ・ドーンのグランMACの砲弾を止め、先程もB-2爆撃機の機内でミサイルを無力化したのと同じ……。
ラ・テール姉さまの……能力!
「そんなの、あたしには通用しない。……あなたたちを傷つけたくないの、そこを通して」
姉さまが勧告する。武器を捨て、投降するように、と。
けれど、そんな説得に応じる者がこの場にいるはずもない。
さらに、火を噴く銃口。姉さまに向けて放たれる殺意。
『錬金人類(エリクシアン)』にとって、銃器など火花の出る棒。弾丸なんて、止まった銀玉にも等しいというのに……。
姉さまが、前方へかざした右手の指をぎゅっと握り込む。
と同時、その方向にいた兵士たちの持っていた銃が音を立てて歪み、兵士たちの手を離れて宙を舞い、自壊する。
まるで、魔法か手品でも見ているかのような光景――
〈バケモノめ!これでも食らえ!〉
兵士の一人が、こちらへ向けて何かを投げつけてくる。
あれは――グレネード?危ない、姉さま!
「大丈夫、大丈夫!」
軽くこちらを振り向いた姉さまが、そう言ってわたしたちに笑顔を投げかけた瞬間。
ドゴォォォォォォォォォッ!!!
投擲されたグレネードが、姉さまの至近距離で爆発する。紅蓮の炎と黒煙に、姉さまの姿があっという間に呑まれて消える。
ねっ、姉さま……!!
――けれど。
〈……ば……、バカな……〉
兵士たちが息を呑む。……いいえ、兵士たちだけじゃない……。わたしも。
爆煙の中から出てきたのは、傷ひとつ負っていない、変わらない姉さまの姿。
パチパチとその身体の周囲に何らかの力場が働いているのが見える……。あれは、鶺鴒の防御障壁とはまた別の……。
あれも、姉さまの能力だというのでしょうか?
0089ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/03(水) 14:44:28.86ID:YDF3ZgEMさらに、姉さまが手を兵士たちへとかざす。
武器を無効化された兵士たちは恐慌状態に陥って逃げ出そうとするも、すぐに苦悶の表情を浮かべて昏倒した。
姉さま、これは……?
「身体の機能を狂わせたんだよ。死にはしないけど、当分は起き上がれないと思う。さ、今のうちに行こう」
姉さまがどんどんと先へ行くのに倣って、わたしたちも島の奥へと進む。
厳重に封鎖されたゲート。幾重にも施されたセキュリティ。
その全てを、姉さまはまるで存在しないかのように突破してゆく。その姿はまさに、無人の野を往くが如し。
わらわらと蟻のように現れる兵士たちの銃弾も、グレネードも。ロケットランチャーさえ、姉さまの前では無力。
すべて、姉さまに命中する前に跳ね返り、あるいは力を失って地面に落ちる。
以前、デミウルゴスの一団をこともなげに倒してしまったときも感じましたが……。
やはり、姉さまは……桁外れに強い!
これが『救星主』。ビュトス機関がその技術の粋を結集させて作り上げた、最高最強の『錬金人類(エリクシアン)』――!
ありとあらゆる防衛装置を排除し、一時間ほど歩いた果て。
この人工島の中でも最も大きいとおぼしき建物の前まで来ると、姉さまはその威容を見上げました。
「ここが『トゥーレ協会』の本部みたいだね。インターホンはついてないみたいだから、このまま入っちゃおう」
は、はい、姉さま。
もちろん、この建物の前にも防衛を担当する兵士たちが100人ばかりもいて、わたしたちに対して決死の抵抗をしているのですが。
やはり、姉さまが軽く手を伸ばすだけで瞬く間に無力化してしまいます。
わたしは、たまにDominusの方へ飛んでくる銃弾を掴んだり弾いたりするだけで、他は何もしていません。
これがもし、わたしだけだったなら。きっとわたしは協会の防衛設備の前に大苦戦を強いられていたに違いありません。
殺すことは簡単ですが、殺さずに無力化させる――ということは、とても難しいことですから。
やがて、正面入口前の戦力をあらかた排除すると、姉さまはわたしたちの方に視線を向けました。
「じゃ、入ろっか」
姉さま、ひとつ質問が……。トゥーレ協会の壊滅とは、果たして何をもって完了と言えばよいのでしょうか?
「いい質問だね。ひとつは、機関によるこの人工島の完全な掌握。でも、それはあたしたちの後で機関がやること」
「あたしたちがやるべきなのは……まず、協会の首魁である『総統』の拘束。それから――」
トゥーレ協会のはらわた、本部ビルのエントランスへと踏み入りながら、
「それと。ドクター・メネクの捕縛、かな」
と、言いました。
0090創る名無しに見る名無し
2016/08/03(水) 19:58:59.79ID:YCiQJ4w90091ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/05(金) 17:37:25.09ID:mgSm9oLo>>90
ど、Dominusがなにやら奇怪な呪文を……っ?し、しっかりしてくださいDominus!傷(?)は浅いです!
「あはは、あるある。そういう名前の島だもんね、ここ。やー、悪趣味なネーミングだよ」
「だから……ね。キレイにお掃除したら、別の名前を付けてあげよ。『ラブラブ島』とかそういう」
……ラ……。いえ姉さま、それもいかがなものかと……。
「そう?いい名前だと思うんだけどなー。……まあ、それはともかく」
「ちゃんとDominusを護ってね、ソレイユ。ここからは、ちょっと飛ばすよ」
!
……はい、姉さま……!
わたしたちがビルのエントランスへ入ると同時。広大なホールに、バラバラと数十人の兵士たちが現れる。
けれど、それは今までのような戦闘服に身を包んだ『生身の』兵士とは違う。
人体に強化手術を施し、機械と融合した――『機械化人類(メカニゼイター)』!
その姿はまさに千差万別、まさに異形。
そして――
〈クククッ……。ここまで来るのに、ずいぶん梃子摺ったみてえじゃねェか……。ああ?人形ども)
わたしたちの往く手を阻む『機械化人類(メカニゼイター)』たちの頭上に設置された巨大モニターが、何者かを映し出す。
それは皮張りの椅子に脚を組んで座る、壮年の男性。
ボロボロの白衣と乱れた髪、茫々と伸びた髭――そして何より見開かれた双眸と口許の笑みが、その男性の特異性を物語っている。
……あれは……。
「――ドクター・メネク」
〈よォーこそ、よォーこそ!絶海の孤島、禁断の知識の蔵たる『ル=リエー』へ!歓迎するぜ……クッ、クハハハッ!〉
〈オレを捕まえに来たんだろ?テメエら『機関』にとって、裏切り者の大逆人であるオレをよお!〉
〈そうだよなあ……オレが野放しになってたんじゃ、『機関』も枕を高くしておちおち居眠りもできねえもんなあ!〉
〈だがよ……テメエら人形どもを差し向けてきたのが『機関』の運の尽きよ。テメエらはここで、跡形もなく破壊されるしかねえ!〉
口角泡を飛ばし、姉さまにドクター・メネクと呼ばれた男がまくし立てる。
この男が、わたしたちの今回のターゲット。この男を捕縛することが、姉さまの……そして、わたしの目的。
でも……どうして?
「ドクター、まだ間に合うよ」
姉さまがゆっくりと口を開く。
〈……あ?〉
「まだ、『機関』はあなたを許してくれるよ。今、素直に投降してくれれば……わたしは何もしない。みんな、傷つかないで済む」
「だから、お願い。みんなに戦わないように言って。わたしたちと『機関』へ戻るって。そう約束して」
〈あぁ〜?……ハッ、ハハハッ……ハハハハハハハハハハハッ!!〉
〈テメエ、イカレてやがんのか?このオレに降伏しろだ?寝ぼけたことほざいてんじゃねえぞガラクタがァッ!〉
ドクター・メネクの罵声が、どこかに設置されているスピーカーからエントランスに響き渡る。
その怒声に、姉さまは軽く眉を顰めました。
0092ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/05(金) 17:40:04.33ID:mgSm9oLo〈『機関』のマヌケどもは、この島の場所を自力で突き止めたと思ってんだろうが……そんなワケねえだろうが?〉
〈オレが情報を流してやったのさ……オレと気付かれねえようにな。テメエらはそれを真に受けて、ノコノコやってきたって寸法よ!つまり――〉
わたしたちは……『おびき寄せられた』……?
〈ゲハハハハッ!そォだ!その通り!すべての準備は整った。だから、オレはテメエらをこの島に招待した!〉
〈この世に残る『錬金人類(エリクシアン)』はテメエら二匹!〉
〈テメエらを破壊すりゃ、オレの『機械化人類(メカニゼイター)』の方が優秀だってことが証明できる!〉
〈さあ――安心してくたばれよ、くそったれ『機関』の操り人形ども。テメエらの残骸は、オレが新たな機械化人類にフィードバックしてやるからよォ!〉
「……そう。わかった」
『錬金人類(エリクシアン)』への憎悪を露にするドクター・メネクに対し、姉さまはただ静かに頷く。
「じゃ。今からそっちへ行くね」
滔々と語られた強い言葉をまるで意に介さない姉さまの態度に、ドクター・メネクの表情が歪む。
〈……殺せ!!〉
ドクターの指令。それを聞いて、『機械化人類(メカニゼイター)』たちが一気にこちらへ殺到してくる。
戦艦をも一撃で粉砕する膂力を持った者が。すべてを穿つ熱線を武器に持つ者が。
超震動ブレードによって万物を両断する者が、姉さまを仕留めようと迫る――。
それはかつて、ヴェヌス姉さまが戦った者たちにも匹敵する能力を持った、機械と人類の融合したモノ。
旧人類の持つ、既存のいかなる兵器にも勝る――単体で一都市を制圧する力さえ持った存在。
でも。
「みんな、なんのために戦うの?こんなことをしたって、なんの意味もないのに!悲しみが増すだけなのに……!」
そんな『機械化人類(メカニゼイター)』の群れさえ、姉さまには遠く及ばない。
姉さまが手をかざした瞬間、『機械化人類(メカニゼイター)』の兵器と化した腕が。強化された脚が。
触れてもいないのにひしゃげ、ねじ曲がり、自壊してゆく……。
放たれた熱線も、超震動ブレードも、姉さまに当たる前に跳ね返り、或いは崩壊する。
わたしは、姉さまがみるみるうちに『機械化人類(メカニゼイター)』を駆逐してゆくのを、呆然と見ているだけ。
やがて、数十体の『機械化人類(メカニゼイター)』はその全てが破壊され、エントランスに横たわりました。
ただし、ひとりとして死んだ者はいない。姉さまは機械によって強化された部位のみを破壊し、皆を無力化したようです。
「メネクのところへ行こう」
息ひとつ乱さず勝利した姉さまが、エントランス奥のエレベーターへと歩いてゆく。
0093ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/05(金) 17:42:36.80ID:mgSm9oLoまずドクター・メネクを捕縛し、しかる後にもうひとりのターゲット……総統を確保しようということですね。
こういう場合、組織の最高権力者は地上を神の如く睥睨できる高みにいるものと相場が決まっています。
でも、わたしたちがドクター捕縛に向かっている間、総統に逃走の機会を与えることにはならないでしょうか?
ここは手分けして、双方を同時に押さえるべきでは?
「総統なら逃げないよ」
え?
「権力者っていうものはね、自分を特別だと思ってるから。どんなに追い詰められても、最後にはなんとかなるって思ってるから」
「まさか、自分が誰かに負けたり、やられたりすることなんてありえないって信じてるからね」
「この巨大なビルは、総統の偉大さを。偉業を称えるモニュメント……」
「そんなものを作る人間が――自分の敗北を認めて、何もかもを打ち捨てて逃げるなんて、ありっこないもの」
……そういうものですか……。
「そうそう。だから、まずはドクター・メネクを捕まえるのが先決なの。権力者とは真逆で、研究者は地下に籠るものだから」
そんなことを言っているうちに、エレベーターがガコン、という小さな震動と共に停止する。
……?おかしいですね。表示を見るに、まだ最下層へは到達していないと思いますが……。
まさか。停められた?
「そうみたい。じゃあ、ここからは歩いていこうか。Dominus、大丈夫?疲れてない?ソレイユにおんぶしてもらおうか?」
ねっ、姉さまっ!?そんな冗談を言っている場合ですか!
「あはは、ちょっぴりリラックスしてもらおうと思っただけだよ。やだなー、ソレイユは真面目で〜」
時と場所を考えてください、姉さま……!
「ごめんごめん。……じゃ、進もう。ここからは、ちょっとだけショッキングな光景があるかもしれないけど――」
「怖かったら目を瞑っていてね、Dominus」
ショッキング……?いったい、それは――
そんなことを言っている間に、姉さまは停止したエレベーターの扉をこじ開けると、通路へ這い出て行きました。
わたしたちも、それに倣います。
ここからは非常階段で下層へ向かわなければなりません。
そして、当然のように往く手を阻んでくる『機械化人類(メカニゼイター)』たち。
群がる『機械化人類(メカニゼイター)』を排除しながら、わたしたちはさらに地下を目指しました。
0094創る名無しに見る名無し
2016/08/06(土) 00:26:38.40ID:1mUDdy/Yマッドサイエンティストの地下研究所ときたら、凄惨な人体実験がピッタリ嵌る感じだけど
まさか僕だけが見ないわけにもいかないよね
協会が悪辣極まる組織であり、故に滅ぶべき組織である証左になるんだから
……ドクターは自己顕示欲の強いタイプのようだけど、相当はどんな人物なんだろうね
僕には想像がつかないけど、それもすぐにわかるかな
君のお姉さんの仕事は早そうだ
はぁはぁ……なんだか疲れちゃったな。久しぶりに外に出たからかもしれない
悪いけど肩を貸してくれないかな、ソレイユ
(病弱ショタDominusとでおねショタもいいかと思いました)
0095創る名無しに見る名無し
2016/08/06(土) 22:13:05.06ID:/4P2iwiEメネクや組織のやることに憤りと悲しみを覚え、やがて組織を離反
正義の機械化人類として、人間と機械の間で葛藤し苦しみながらも組織と戦い続けていた…
みたいなのはいないもんかなー
いたら今のうちに出てこないとソレイユとラ・テールが代わりに組織を潰してしまうぞー
0096ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/07(日) 13:18:10.28ID:I7AqIVtL>>94
ああ……!Dominus!なんてこと、わたしともあろう者が、こんな初歩的なミスを……!
それでなくともここまで長旅で、ろくに休みもせずに戦闘に突入して――。Dominusがお疲れになるのも当然です。
さ、わたしの背に。やはり、ここはわたしがおんぶして行きますから。
防御面は鶺鴒が司ってくれますし、姉さまもおりますから……わたしはDominusの安全の確保に集中することができます。
「ちょっぴり無理させちゃったかな。ごめんね、Dominus。じゃ、さっさと終わらせてバカンスに入ろう」
「もう少しだけ辛抱してね……。こっちに、ソレイユに見せたかったものがあるはずだから」
わたしに……見せたかったもの、ですか。
姉さま、それはやはり――
「うん。Dominusはさすが、いい勘してるよね。……まぁ……いわゆるお約束、ってやつなんだろうけど」
そう言って、姉さまはまるで病院のように静まり返った白い廊下の果て、両開きの扉を大きく開け放ちました。
――これは……!
扉の向こうに広がっていたのは、ただただ広大な空間。
遥か前方まで続く、パーテーションのないスペース。30メートル以上はありそうな、高い天井。
そこから、あたかも真昼のように煌々と照明の光が降り注いでいる。
今までやってきた道のりから計算すると、恐らくここは海底の岩盤を穿って作られた空間に違いありません。
こんな空間が海のさらに下にあるなんて……。
でも。
本当に驚くべきなのは、広さなんかではなくて。
「ここがトゥーレ協会のプラントみたいだね。つまり――『機械化人類(メカニゼイター)』を生み出す工場、ってわけ」
姉さまが額に右手を添え、遠くを見通しながら言う。
そう――この空間はまるで、オートメーション化された工場のよう。
ベルトコンベアがあり、機械の作業用アームがあり、何かを計測しているモニターがあり――すべてが自動的に進んでゆく。
ただ、この工場で作られているのは工業製品でも、食品でもない。
人間を材料とした、人類の機械化(メカニゼーション)工場――!
まるでハムか何かでも作るように、流れ作業で人体が無造作に切り刻まれてゆく。作られた欠損に、機械の部品が接続される。
ベルトコンベアに横たわった人体が、みるみるうちにおぞましい機械とのハイブリッドへと変貌してゆく……。
わたしはその光景に、言葉もなくただ立ち尽くす他はありませんでした。
0097ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/07(日) 13:20:13.14ID:I7AqIVtLそれに、この人々は?まさか、トゥーレ協会によって不当にここへ連れてこられた人々では……?
「まあ、中にはそういう人もいるかもしれないけど。……でも、ほとんどは志願者だよ」
し、志願者?生身の肉体を捨て、機械との融合体となることを……自ら望む人がこんなにいるというのですか?
「いるよ。いや……正確には『その道を選ぶしかない人たち』と言うべきかな」
……それは、どういう……。
「ここで作られた『機械化人類(メカニゼイター)』は、その大半が紛争地帯や内戦のある地域へと派遣されるんだよ」
「お金を稼ぐために。家族を養うためにね。ここにいる素体は、大半が貧困層。今日の食べ物にも事欠く人たちなんだ」
「そんな人たちに、協会はこう囁くんだよ。『おまえが我々に身体を提供すれば、家族を養える分の金をやる』ってね……」
「そんなことを言われれば、誰だって飛びつくよ。そしてこの人たちは改造手術を施され、兵士として戦うんだ」
……お金の……ため……。
「そう。でも、それで貰えるお金なんて微々たるもの。そして、見ての通りの雑な改造を施された人々は、大抵行った先で死ぬ」
「生き残ることなんてできない。でも……それが分かっていても、行くしかないんだよ。協会の提案を呑むしかないの」
「だって。自分が死ぬことで、明日死ぬはずの家族の命を……明後日まで生き永らえさせることができるんだから」
そんな……。そんな、ひどい……!
人の命を!一度喪われてしまえば、二度とは取り戻せないものを――なんだと思っているのですか!!
「安い報酬と安い改造コストで、協会は手軽に『機械化人類(メカニゼイター)』という手駒を量産できる」
「そして、それを欲しがる人もたくさんいる。テロ組織に、共産国家に、正義を謳う大国さえ――需要がある限り、供給は絶えない」
「いくら一回使いきりの粗悪品と言っても、生身の兵士とは比較にならないくらい強いからね。戦車や戦闘機を買うより安いし」
「協会が存在する限り、この星の不幸の連鎖は続く。だから……」
わたしたちは。トゥーレ協会を壊滅させなければならない……!
「正解!……今までは、あなたは姉妹を相手に戦ってきた。でも、これからはそうじゃない」
「ソレイユ。あなたは、『こういうもの』と戦っていかなくちゃならない。人を不幸にする者と。……悪と!それが――」
……それが……『救星主』……!
わたしの言葉に、ラ・テール姉さまは満足げに頷きました。
0098ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/07(日) 13:23:21.46ID:I7AqIVtLだったら、一刻も早くこの機械化人類の製造プラントを破壊してしまいましょう!
改造されてしまった人は手遅れですが、まだ改造前の人ならば助けることもできるはずですから!
そう言ってわたしがこの施設を破壊しようと、アマ・デトワールの砲口を前方へ向けた、そのとき。
「お待ちください」
わたしたちの背後で、声がしました。
わたしとラ・テール姉さまが、咄嗟に振り向く。そこに立っていたのは――
殆どわたしや姉さまと変わらない年頃に見える、ひとりの少女。
けれど、その姿は一般人のそれとは大きく異なる。わたしたちの着ているアサルトスーツによく似た戦闘衣と、背の前進翼。
左腕を肘まですっぽり包み込む、大口径レーザーカノン。
肉体の半ば以上を機械に換装した、その姿は……。
「『機械化人類始祖(メカニゼイター・オリジン)』……だね」
姉さまが口を開く。
『機械化人類始祖(メカニゼイター・オリジン)』!すべての機械化人類の始まり、原初の機械化人類!
マルス姉さまとの戦いの折、半壊状態に追い込まれ戦線離脱したはずのオリジンが……なぜ?
「あなたたちお二人が、このトゥーレ協会本部……『ル=リエー』に向かったと聞いて。すぐに追いかけてきたのです」
「そんな報告は聞いてないよ?わたしは元々、ひとりで対処するようにって父さんに言われたんだもの」
「……はい。失礼ながら……通信を傍受して。無断で来てしまいました」
姉さまの言葉に、オリジンが俯く。
「あなたが任務をすっぽかして、こっちへ来るなんて。よっぽどの理由があるってこと?」
聴かせて、と姉さまがオリジンの反応を待つと、オリジンは僅かな逡巡の後で口を開きました。
「お願いします、おふた方。どうか、わたしにもこの先への同行の許可を与えて頂けませんか?」
「わたしには――どうしても、ドクター・メネクに会わなければならない理由があるのです」
……理由……?それは――
「確か、オリジンの基本設計を担当したのがドクター・メネクなんだっけ?」
「……はい」
姉さまの問いに、オリジンがそっと頷く。
「ドクターは、ウェストコット卿を中心としたプロジェクト・メカニゼイターのメインスタッフのひとりでした」
「元はメイザース卿の弟子だったのですが、ドクターの才能はバイオテクノロジーではなく、機械工学で開花した――」
「ドクターは計画の最初期からずっと『機械化人類(メカニゼイター)』の開発と研究に貢献してくれたのです」
……ビュトス機関にいたころの、ドクター・メネクの過去……ですか。
0099ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/07(日) 13:25:44.14ID:I7AqIVtL「ドクターは『機械化人類(メカニゼイター)』第一号として、わたしを素体に選びました。そして、オリジンが生まれた」
「でも。ドクターはそこで、ひとつの過ちを犯してしまったのです」
……過ち?過ちとは?
「ドクターは『機械化人類(メカニゼイター)』こそがトロイア計画の要となるべき新人類だと信じて疑わなかった」
「メイザース卿の『錬金人類(エリクシアン)』や、ウッドマン卿の創造したモノには絶対負けないと。そう誓った」
「例え、どんなことをしてでも、と――。そして、わたしの身体に機関が危険と見做して封印した、数々の兵器を組み込んだのです」
「わたしが一応の完成を見た後も、ドクターの向上心は留まるところを知りませんでした」
「より強く。より頑強で。より速く。より制圧力のある、究極の『機械化人類(メカニゼイター)』の開発――」
「そんな願いは、ありとあらゆるモラルや人倫、禁忌の壁を乗り越え。悍ましくも正視に堪えない領域へと進んでいった……」
そして。そんなドクター・メネクの暴走を重く見た機関が、ドクターを機関から放逐した?
「いえ。処罰される前に、ドクターは逐電したのです。それまで積み重ねてきた、膨大なデータと共に」
「そして。そうやって蓄積したデータの成れの果てが、この光景……ってわけだね」
姉さまが軽く顎をしゃくってプラントを指す。
「ドクターにとって、こんなプラントは何の価値もないものでしょう。これはただ協会の資金作りに手を貸しているに過ぎません」
「ドクターには、研究を続けられるだけの施設と後ろ盾が必要だった。だから、協会と手を組んだ――それだけでしょう」
「本当のドクターの研究成果は、きっと――この奥にこそあるはずです」
それを……あなたは見極めたい、と?
「ドクターが逐電して以降、わたしは世界各地を転戦し、その行方を追っていました」
「ドクターの作ったとおぼしき『機械化人類(メカニゼイター)』を倒すことで、その手掛かりを得ようとしたのです」
「ずっと、わたしはドクターを追いかけていた……。そしてやっと、居場所が分かったのです」
「お願いです!ラ・テールさん、ソレイユさん……!わたしに同行の許可を!ドクターに会わせてください……!」
自分を開発した存在。その存在は、神にも等しきもの。……わたしにも、オリジンの気持ちはよくわかります。
生みの親が間違った道を進んでいる――となれば、それを正すのがわたしたち、作られた者の義務。
……それなら。
「……ってことみたい。Dominus、どうする?」
ラ・テール姉さまが、Dominusの方へと話を向ける。
オリジンが、縋るような目でDominusを見つめるのが――
わたしには、とても痛々しく見えました。
0100創る名無しに見る名無し
2016/08/08(月) 02:24:25.38ID:+X2rvZMzまさかこんなところで会うなんて。いいよ、一緒に行こう
研究成果がどんなものであってもきっと覚悟はできてるだろうし、味方は多い方が心強いからね
0101創る名無しに見る名無し
2016/08/08(月) 21:46:02.58ID:OxYTmBI+ならばいっそ班行動にして、オリジンを監視下におく方が良さそうかな
油断しないでねソレイユ
彼女の決意は固く見えるけど、実際"親"に歯向かうのは相当堪えると思うから
土壇場での万が一……ないとは言い切れないからね
僕って嫌なやつかな?
実際のところ、僕は周囲の状況全部を信じ切れていないんだ
オリジンも、ラ・テールさんも、ビュトス機関も
僕らには事の表層しか見えていなくて、全ては見えないレールの上を、順調に滑っているように思える
我ながら心配のしすぎだとは思うけど
でもひとつ、たったひとつ信じられるとすればそれはソレイユ、君の存在だけなんだ
ラ・テールさんの気紛れで突然に起こされた君だけは、誰かの筋書の外にいる、そう思えてね
喋りすぎたな、また疲れてきた……兎に角、僕はオリジンの挙動に注意しておくよ
錬金人類の背中は温かくて眠ってしまいそうだけど、そこはDominusの矜持をまもるとするよ
0102ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/10(水) 23:00:29.15ID:Hve4R5hi>>100
Sic.Dominus.
そうですね、戦力は多い方が心強いですし。地獄に仏とはこのことです!
では、改めて。よろしくお願いしますね、オリジン。
――ということで、新たにオリジンを加えたわたしたち四人は、一路研究施設の奥を目指しました。
相変わらず、施設の防衛装置であろうと思われる『機械化人類(メカニゼイター)』たちが、わたしたちの往く手を阻む。
ラ・テール姉さまがオフェンス、わたしがディフェンス。
今までそうであったように、これからもわたしたちはそのフォーメーションで先へ進もうとしたのですが――。
「ここは。わたしに任せてください」
ずい、とオリジンが姉さまの前に出る。
オリジン……?ここは、姉さまとふたりで戦った方が……。
「いいえ、わたしにやらせてください。『機械化人類(メカニゼイター)』の問題は、『機械化人類(メカニゼイター)』が解決する」
「それが、このわたしの――『機械化人類始祖(メカニゼイター・オリジン)』の存在意義なのですから。……では!」
そう言って、オリジンはわたしたちを排除しようと迫る『機械化人類(メカニゼイター)』に突進していきました。
あ、待ってください……!
「何か、深い理由があるみたいだね」
出番のなくなった姉さまが、ぽりぽりと頬を掻きながら言う。
――そうですね。彼女とドクター・メネクの間には、ただの調整機体と開発者、というだけではない因縁を感じます。
恩人が悪の道をひた走る……それを止めたいと思うのは、誰しも当然のこと。
わたしたちも、何かしらオリジンのお手伝いができればいいのですが……。
オリジンの攻撃力は凄まじく、群がる『機械化人類(メカニゼイター)』を瞬く間に駆逐していきます。
けれど、その戦いはあくまでも正攻法。姉さまのように、次元の違う力で捻じ伏せるような戦いではありません。
当然、無傷ではいられない。僅かずつではあるものの、オリジン自身も被弾し、傷ついてゆく――
でも。わたしには、彼女がむしろ。それを望んでいるように見えたのです。
0103ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/10(水) 23:02:52.37ID:Hve4R5hiSic.Dominus.
理解しています、Dominus。いかなる可能性も考慮して行動する、それが『錬金人類(エリクシアン)』ですから。
どれだけ劣勢になろうとも、オリジンはわたしや姉さまに決して助けを求めません。
加勢しようとすれば、それを強い調子で拒絶するような始末で――。
そういえば、以前からオリジンはわたしたち『錬金人類(エリクシアン)』に対抗意識を燃やしていた節があります。
それは、単に『錬金人類(エリクシアン)』と『機械化人類(メカニゼイター)』の種族の違いと思っていたのですが。
彼女が開発者であるドクター・メネクの意識を受け継いでいるとしたら、当然のことだったのかもしれませんね。
できれば考えたくないことですが、Dominusの仰る通り、いざ再会を果たしたときの変心……ないとは言えません。
でも、ご心配なく。例えどんなことがあっても、わたしはDominusをお護りしますから。
前にも申し上げましたが、わたしは貴方の守護者。貴方をお護りする、唯一の『錬金人類(エリクシアン)』。
それは、過去も。現在も、そして未来も。決して変わることはありません。
わたしも、Dominusを信じています。このわたしの――命のすべてで。
できれば、トゥーレ協会に関する一切合財が決着してしまうまで、Dominusにはわたしの背中で眠っていて頂きたいですが。
そうもいかないようです……。通路の果てに、5メートルばかりもありそうなシェルター風の扉が見えます。
どうやら、あの扉の向こうが目的地のようですね。
Dominus――、往きます!
ラ・テール姉さまが両手を突っ張り、扉を押し開ける。重い音を立て、分厚い隔壁めいた扉が開く。
その向こうにあったのは――
エレベーターシャフトのような、円柱状の広大な空間。
上も下も、果てが見えない……。こんな大規模なものを海底に建造するなんて。
シャフトの直径は100メートルほど。ぽっかりと口を開いた空間を挟んで、わたしたちのいる場所の前方に、巨大なスクリーンが備え付けられている。
そして、そのスクリーンに映し出されるのは、もちろん。
「ゲァッハハハハハハハハッ!遅かったじゃねえか、待ちくたびれたぜガラクタども!」
……ドクター・メネク……!
0104ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/10(水) 23:05:41.31ID:Hve4R5hiラ・テール姉さまを押しのけ、オリジンが身を乗り出す。
オリジンに気付いたドクターが、訝しげに眉を顰める。
「テメエは……オリジン?」
「そうです!ドクター、わたしです……オリジンです!」
「こりゃ驚いたぜ。まさか、オレが見捨てた人形がクソッタレの『錬金人類(エリクシアン)』と一緒にやってくるとはな」
「指示したのはメイザースか?それともウェストコットか?オレを始末するのに、まさかテメエを差し向けてくるなんざ――」
「中々洒落の効いた話だぜ。ゲハハハ……ハッハハハハハハハハッ!!」
「だがな!生憎今のオレの技術は機関にいたときとは比べ物にならねえ。テメエらにオレを始末することなんざできねえんだよ!」
「ドクター!わ、わたしは……わたしは、そんな――」
「うるせえ!テメエは失敗作だ、何の価値もねえ鉄クズだ!ゴミ以下の分際で、オレに口答えするんじゃねえ!」
容赦ない悪罵を投げかけるドクター・メネク。
ずっと会いたかった生みの親に罵声を浴びせられ、オリジンは俯いて唇を噛みしめる。
……なんてこと……!
ドクター・メネク!あなたには、自らの生み出したものへの愛情はないのですか!?
例え、本当の親子でなくとも……作った者と、作られた者。両者の間には、切っても切れない繋がりがあるはずです!
オリジンは出奔したあなたをずっと追いかけていた……!その一途な想いに、報いようとは思わないのですか!
「あぁ〜……?人形風情が、なにを知った風な口を利いてやがる?まさか、一人前の人間にでもなったつもりか?あぁ?」
「オレにとって『機械化人類(メカニゼイター)』は道具だ。オレの技術力を世間に知らしめるためのな!」
「技術は力だ!強い『機械化人類(メカニゼイター)』を生み出すのに、愛情なんてもんが必要あるか!」
「人体も機械も、部品のひとつよ!より高い性能を引き出す、それだけが最重要!あとはクソだ!」
「そうやって、人倫にもとる禁忌の実験を繰り返した……ってわけ……?」
姉さまが怒りを押し殺した声で問う。
「そうだ!だが、機関の連中はオレの実験の重要性を理解しようともしなかった!逆に、オレを排斥しようとしやがった!」
「自分たちだって、やっていることは大して変わらねえ……いいや、オレよりよっぽど悍ましいことをしているってのになあ!」
「テメエのことを棚に上げて、オレの偉大な業績を闇に葬ろうとした機関の連中を、オレは絶対に許さねえ!」
「だから!だからよ!これからテメエらを完璧に破壊して、オレの研究がどれだけ優れているのかを機関に教えてやる!」
「メイザースも!ウェストコットも!そしてウッドマンも!オレの前にひれ伏させ、這いつくばらせてやる!そして――」
「このオレこそが!有史以来最高の魔術師として、人類史に未来永劫名を残すのよ!この……ドクター・メネクがな!!」
「ゲァッハハハハハ―――ハハハハハハハ、ハァ――――ッハッハハッハハハッハハハハ――――――ッ!!!!」
広大な空間に、ドクター・メネクの哄笑が幾重にも木霊する。
それを聞きながら、わたしたちはぎゅっと拳を握りしめました。
0105ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/10(水) 23:09:08.44ID:Hve4R5hi「それはつまり、オレには絶対の勝算があるってことよ。オレの研究成果は、今!究極の完成を見たってワケだ!」
「テメエらが今まで戦ってきた『機械化人類(メカニゼイター)』とは比較にならねえ。あんなモンはクズだ、ガラクタ以下だ!」
「見せてやるぜ、オレの作った……究極にして至高の『機械化人類(メカニゼイター)』を!」
スクリーン越しにドクターがそう言った瞬間、ゴゴゴ……とわたしたちのいる空間一帯が鳴動を始める。
わたしたちの立っている場所の下から床がせり出し、ぽっかりと深淵を穿っていたシャフトを塞いでゆく。
これは……。まるで、円形の闘技場のような……。
そして。
床と違っていまだ穿たれたままの上方のシャフトから、何者かが降ってくる。
ガゴォォォォォォンッ!
耳をつんざく轟音を立てて着地し、ゆっくりと姿を現したのは、身長3メートルほどの巨躯を持つロボット。
そのシルエットは極端な逆三角形で、広い肩幅に巨大な両腕と、脇腹の辺りに一対の華奢な副腕がついている。
下肢は人体の構造とは異なる、逆関節のいわゆる鳥脚状となっており、四本のクローによって支えられている。
関節部以外の全身を強固な装甲によって覆っているそれは、既存の『機械化人類(メカニゼイター)』とはまるで異なるもの。
いえ、これではまるで――
『機械化人類(メカニゼイター)』じゃない。『機械(マシーン)』……!
「バカが……。コイツはれっきとした『機械化人類(メカニゼイター)』だぜ?」
「ちゃーんと要所にゃ人間を使ってるからなァ!尤も――オレの理論通り、部品としてだがな!ゲハハハハハハッ!!」
ドクター・メネクがパチンと指を鳴らす。胴体に半ば埋まった状態の、目鼻もないシンプルな頭部についたセンサーが輝く。
胸部装甲がゆっくりと展開し、内部が露になる――。
…………!!!!
胸部装甲の奥から出てきたのは、長い金色の髪を持つ少女。
けれどその四肢は存在しておらず、ボディも肋骨などフレームのみで、人工臓器が剥き出しのまま。
ボディは巨大な本体に接続され、まさに。『機械化人類(メカニゼイター)』の一部と化している……。
「アリシア、そいつらが敵だ!テメエが殺すべき『錬金人類(エリクシアン)』どもだ!」
「殺せ!殺せ殺せ殺せ!出来る限り痛めつけ、地獄の苦しみを味わわせてから――完全に破壊しろ!」
「有り余る才能がありながら、妬みによってその将来を閉ざされた……このオレの無念をこいつらに教えてやれ!」
「こいつら『錬金人類(エリクシアン)』の断末魔の叫びが!このオレの輝かしい未来の到来を告げるファンファーレとなるのだ!」
「さあ――行け!アリシア!オレの最高傑作よ――ゲハハハッ!ハァ――――ッハッハハッハハハァ――――ッ!!」
開いていた胸部装甲が閉じ、少女の身体が隠れると同時。
アリシアと呼ばれた“それ”は、わたしたちへと一気に突進してきました。
0106ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/12(金) 17:54:35.65ID:SLzOW7vuわたしは咄嗟にオリジンに視線を向けました。
でも、オリジンはドクターに失敗作と断じられたのが相当ショックだったのか、俯いたまま動こうとしません。
生みの親と対面してしまったからか、やはり闘志が……。
「じゃ、ソレイユ。ふたりでやろっか」
姉さまが拳をポキポキと鳴らしながら言う。
そうですね。ドクター・メネクのあの相当な自信……、きっと口だけではないはず。
きっと、最高傑作の名に恥じないスペックを秘めているはずです。ならば、わたしと姉さまとで当たるのが最善!
Dominus、扉の影に隠れていてください。危険がないように……。
「往くよ」
――はい、姉さま!
わたしは軽く構えを取る姉さまの隣に立つと、合わせ鏡のように拳を前方へと向けました。
『機械化人類(メカニゼイター)』アリシアが、唸りをあげて豪腕を振り下ろしてくる。
わたしと姉さまは素早くそれを回避すると、左右に散開する。
ガゴォォォォォォォッ!!!
アリシアの豪腕が床に炸裂し、分厚い床面がひしゃげる。
なんというパワー!ヴェヌス姉さまと戦った『機械化人類(メカニゼイター)』もパワー自慢のようでしたが――。
アリシアは。それを遥かに凌駕している!人体と言う形状に縛られていないだけ、馬力も青天井ということですか……!
そして、スピードも相当なもの。アリシアのボディの背についたノズルが白い炎を放ち、高い機動力を発揮する。
「てりゃぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
姉さまが気合一閃、アリシアへと飛び蹴りを繰り出す。デミウルゴスをも一撃で葬り去る、『錬金人類(エリクシアン)』の蹴り。
でも――アリシアには通じない。アリシアの前面に展開された、あの防御障壁は――
『守勢練陣』!
〈マヌケが……。そんなぬるい攻撃が、アリシアに効くはずねえだろうが?〉
〈アリシアには、今までオレの培ってきた技術の粋が!研究の成果が!すべて注ぎこまれているんだからなァ!〉
〈当然、テメエら『錬金人類(エリクシアン)』への対策も完璧よ。テメエらが今まで、派手に暴れてくれたお蔭でな!〉
〈特に、PEX-007!テメエの戦闘データは為になったぜ、テメエと他の連中との姉妹ゲンカはなあ!ゲハハハハッ!〉
ドクター・メネクの声が、空間一帯に響き渡る。
今までの……わたしと五人の姉さまたちとの戦いが、対『錬金人類(エリクシアン)』のデータを与えてしまった……?
「ソレイユ!ぼっとしないで!」
ドクターの言葉に一瞬気を取られたわたしに対し、姉さまの鋭い声が飛ぶ。
……はっ!?
敵から意識が逸れたのは、ほんの一瞬。
でも、アリシアはその機を見逃さず、わたしに巨拳を撃ち放っていました。
0107ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/12(金) 17:56:21.17ID:SLzOW7vuく……は……!
咄嗟に両腕をクロスさせ、直撃は防いだものの……なんという衝撃!
わたしは軽々と吹き飛ばされ、20メートルばかりも後方でなんとか片膝をついて着地しました。
「ソレイユ!大丈夫!?」
大丈夫です、姉さま……!
でも、本当に凄まじいというしかない攻撃力です……!早めに決着をつけてしまわなくては!
〈バカが!テメエらガラクタ風情に、オレの最高傑作が殺れるものか!スクラップになって転がるのはテメエらよ!〉
〈アリシアはまだ、実力の一割だって出しちゃいねえんだからな……!見せてやる、アリシアの真の力を!〉
ドクター・メネクがそう言った瞬間、わたしたちのいる空間の壁に空いた穴から轟音を立てて水が吹き出してくる。
……これは……。海水……?
ドドドドド、と周囲を振動させるほどの勢いで放たれる水に、床がみるみるうちに浸ってゆく。
〈やれ!アリシア!〉
ドクター・メネクの声と共に、アリシアが動く。
ギュバッ!!
アリシアのボディの脇腹についた、昆虫の脚のようなか細い副腕。そこから、超高圧のレーザーカッターが放たれる。
これは――、水を超圧縮してレーザーとして飛ばしている!
足許の海水を下肢から吸い上げることで、遠距離攻撃を可能にしているということのようですね……。
わたしと姉さまはそれぞれ体術を駆使して、レーザーの回避に専念する。
瞬時に間合いを詰めてきたアリシアが、巨腕とレーザーの二段構えの攻撃でわたしたちを攻め立てる。
「ソレイユ!絶凍刃!!」
はいッ!姉さま!
セキュリティ解除シーケンス発動、特殊兵装を開放!
EXW-055S 絶凍刃『サテュルヌ・タンペート・ド・ネージュ』!
ビキビキビキビキビキッ!!
わたしと姉さまの絶凍刃が、同時に水の張った床を薙ぐ。と同時、海水が瞬く間に凍り付いてゆく。
これで、もう海水を使うことは――
ガシャンッ!
ドドドドドドドドッ!!!!
アリシアの腰と両脚の装甲が展開し、そこから膨大な量のミサイルが放たれる。
白煙を引き、大量のミサイルがわたしと姉さまを襲う――けれど、当たらない!
狙いの外れたミサイルが、そこかしこで盛大に爆発する。濛々と爆煙が立ち込め、視界が一時的に遮られる……。
でも。
ソレイユ!アマ・デトワ――――――ルッ!!!
ギュバッ!!
一条の閃光が煙を吹き散らし、一直線にアリシアを狙う。
短期決戦です、Dominus!
0108ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/12(金) 17:59:41.23ID:SLzOW7vuわたしは一気に間合いを詰めると、アリシアへと拳を振りかぶりました。
――しかし。
ギュガガッ!バギィッ!!
がはッ……!
ぐ、ぅ……!そんな、わたしの攻撃が……完全に対応されるなんて……!
私のタイミングを完璧に予測していたのか、巨拳がカウンター気味にわたしの脇腹を直撃する。
わたしは堪らず弾き飛ばされると、床に倒れ込みました。
「ソレイユ!」
……ぐ……。だ、大丈夫です……。損傷軽微……。
アリシアが追い打ちをかけようと凄まじいスピードで迫る。咄嗟に起き上がると、わたしはなんとか攻撃を回避しました。
「ふたりで行くよ。同時攻撃……いい?ソレイユ!」
はい、姉さま!
わたしと姉さまが同時にアリシアを攻める。無数の拳で、蹴りで、時には特殊兵装で――。
でも、アリシアには当たらない。すべて、防御されてしまう。
そんな……。いくら『機械化人類(メカニゼイター)』とはいえ、『錬金人類(エリクシアン)』ふたりの攻撃を捌き切るなんて!
早くドクター・メネクを捕縛して、上層階にいるであろう総統の身柄も拘束しなければならないのに……!
〈ゲハハハハハッ!バカが……そんなことが出来るワケがねえだろうが?アリシアの防御は完璧よ!なぜなら――〉
〈アリシアのそのボディには、あと二人分の知能が積んであるんだからなァ!ゲハハハハハハ――――!!!〉
あと……二人分の知能……?それは、どういう……。
〈見せてやれ、アリシア!〉
ドクターがそう言うと同時、アリシアの両肩の装甲が展開する。
そして――装甲の下に隠れていたものを目の当たりにして、わたしは驚きに両眼を見開きました。
それは。透明なケースに収納された、人間の脳。
アリシアの機械の身体、二本の巨腕の付け根に、それぞれ人間の大脳が接続されている――!
〈これがオレの開発した『トリロデバイス』よ!脳ミソを生体OSとすることで、機械にスペックを凌駕する性能を引き出させた!〉
〈それぞれの脳ミソが独立して思考し!判断し!行動することで、どんな状況にも瞬時に対応できるってワケだ!〉
……ひどい……。こんな、人の命を……ただの部品のように……!
〈ついでに教えてやるぜ。総統はこのビルの上層階なんぞにゃいやしねえ〉
〈じゃあ、どこにいるのかって?ゲハハハハ……そら!テメエらの目の前にいるじゃねえか!〉
〈向かって右側の脳ミソ!それが総統閣下の成れの果てよ!!〉
……そ……。
そんな……!
0109ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/12(金) 18:19:27.37ID:SLzOW7vu姉さま、行きましょう!
「ん。わかった!」
わたしは再び両腕をアリシアへと突き出すと、もう一度アマ・デトワールを放ちました。
アリシアが『守勢練陣』を展開し、わたしの粒子砲をガードする。
――でも。
「でええええええ―――――いッ!!」
アマ・デトワールは囮。真の狙いは――姉さまの攻撃にある!
いかに『錬金人類(エリクシアン)』といえど、物理的なパワーで守勢練陣を破壊することは困難。
でも……それを中和し、無力化する方法はある!
「ヴェヌス・ベルジュロネット・ドゥ・ブリエ!鶺鴒よ――お願い!」
ラ・テール姉さまがヴェヌス姉さまの特殊兵装、白い鶺鴒を発動させる。
白い鶺鴒は守勢練陣を侵食し、無力化する能力を持っている。あたかも溶けるように、アリシアの守勢練陣が消滅する。
……今!
バギィッ!!
姉さまの右拳がアリシアの胸部に炸裂する。
ビギギッ!と悲鳴のようにも聞こえる音を立て、アリシアの胸部装甲に亀裂が入る。
そこから、アリシア本体の素顔が覗く――。
〈何してやがるアリシアァ!反撃しろ!何のためにテメエに最強のボディをくれてやったと思ってんだ!〉
「……は、はい……。先生……」
ドクター・メネクの怒声に対し、アリシアがか細い声で応える。
巨大な右腕が唸りをあげ、ラ・テール姉さまを狙う。
でも、その拳は姉さまには当たらない。姉さまは白い鶺鴒の障壁で拳を危なげなく受け止めると、
「……あたしには勝てない。あなたが機械であるのなら、なおさらに」
そう言って、装甲の隙間から覗くアリシアへと冷たい視線を向けました。
そして、すぐにアリシアの右腕を捉え、
「――壊れて!!」
と、短く告げました。
その途端、アリシアの機械の右腕がバチバチと火花を放つ。
腕はほんの少しだけ抵抗するようにギクシャクした動きをすると、たちまち炎を上げて爆発しました。
……姉さまの能力が、また……!
「ウ……アアッ、アアアアアアアアアアアアア……!」
機械の身体でも、痛みを感じているのか――アリシアが苦悶の声を上げる。
でも、姉さまは攻め手を緩めない。苦し紛れのように振り回される左腕にも同様に手を添え、瞬く間に粉砕してしまう。
両腕を破壊されたアリシアは、嗚咽のようなものを漏らしながらよろよろと後退しました。
0110ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/12(金) 18:40:06.75ID:SLzOW7vu〈テメエはパワーも!スピードも!完全にそこのガラクタどもを上回ってるんだ!戦え!勝て!そいつらを殺せ!!〉
〈出来るはずだ!オレは……!テメエを最強にするために、すべてを擲ってきたんだ!テメエに何もかも注ぎ込んだんだ!〉
〈殺せ!殺せ殺せ殺せ!殺せ……アリシアアアアアアア――――――――――――――――――――ッ!!!!!〉
……なんてこと。
まさに狂気。まさに妄執。まさに……憐憫の情を催さずにはいられません。
なんと……哀れなのでしょう。
自らの研究の優位性を知らしめるために。自らを認めなかった機関を見返すために。
何もかもを打ち捨てて作り上げたものが、こんな……人を部品とするような、醜悪な代物だなんて。
そして……わたしたちを破壊することでしか、自らの存在意義を確立することができないなんて……。
ドクター・メネクの力があれば、もっと人々に希望を与えるものを開発することができたでしょう。
この世界を。より善いものにしてゆく研究だって、出来たに違いありません。
なのに……。
「そうだね。あたしもそう思う」
わたしの近くへやってきた姉さまが、小さく頷く。
「だから……。目を覚まさせてあげなくちゃね。悪いことをしていたって、誰も幸せになれない」
「世界中のみんなも。あのアリシアって子も。そして……ドクター自身も」
「胴体だけを残して、アリシアのボディを破壊する。中身には傷をつけないように……手を貸して、ソレイユ」
もちろんです、姉さま。
ただ、アリシアは……
「Dominusと約束したからね、誰も殺さないって。ドクターはアリシアもパーツに過ぎないって言ったけど――」
「あたしは、そうは思わない、から」
……了解です、姉さま!
一緒に、アリシアを。そしてドクターを救いましょう!
両腕を破壊したとはいえ、アリシアにはまだ様々な武装が残っているはず。油断はできません。
でも。
姉さまとわたしなら、きっと。倒すことができる!
わたしたちは左右に散ると、両側からアリシアへと突進してゆきました。
倒すべきは、機械の身体に捕われたアリシア。憎悪と妄執とに捕われたドクター・メネク。
わたしはそう思い、アリシアを無力化させることに意識のすべてを向けました。
それゆえに――
離れた場所でアリシアを見つめるオリジンの、深い嫉妬を湛えた視線には――まるで気が付かなかったのです。
0111創る名無しに見る名無し
2016/08/12(金) 19:00:27.05ID:LXBKaDUqそして機械化人類とは何ぞやというものを開陳願いたい
0112創る名無しに見る名無し
2016/08/13(土) 19:30:44.40ID:kRORKvnF今ならソレイユ達の目はあのアリシアって子に向いてる。出し抜くなら今がチャンスだ
メネクも、最高傑作ををあんな風に軽くボコられれば、プライドもズタズタ。もう懲りただろう
もし懲りてなくても、メネクを保護したオリジンが彼の世話をし、悪事を止め続ければこれ以上の悲劇は起こらない
そしてメネクを失えば、ビュトス機関に逆らう組織も技術力を失って終わりだ
「機械化人類に愛情なんて要らない」。そんなことを言いながら、
部品に過ぎない筈のあの子を○○号とかじゃなくて、アリシアって呼んであげてるくらいだから、
もしかしたら人間への愛情ってのも欠片ぐらいには残ってるかもしれない
オリジンがメネクを助けてやれば、それも徐々に取り戻せるかもと思う
取り戻して自分の過ちに気付いた時、もっともショックを受けるのはメネクだろうから
それを支えてあげるのもいいと思うんだよ
いや、なんでこんな提案するかって言うと、ビュトス機関は警察じゃないからだ
ラ・テールはどうか知らないけど、ビュトス機関は信用ならない
メネクを捕まえて彼らに預けたらどうなることか、さっぱりわからないんだよ
最悪、機械化人類の設計図を書き続ける廃人とかにされるかもしれないんで、
それはどうかなって思ってさ。それでこんな提案してる訳だけど、どうかな
0113創る名無しに見る名無し
2016/08/15(月) 03:58:02.04ID:mI+0qLVS下手でモノクロなのに1枚500kくらいあるので注意してね。やばかったらブラウザバックしてね
メルキュール
http://dl1.getuploader.com/g/6|sousaku/917/PEX-001_Mercure.jpg
ヴェヌス
http://dl1.getuploader.com/g/6|sousaku/919/PEX-002_Venus.jpg
ラテール
http://dl1.getuploader.com/g/6|sousaku/920/PEX-003_La_Terre.jpg
オリジン
http://dl1.getuploader.com/g/6|sousaku/918/Origin_The_Mechanizater.jpg
※オリジンは初出のとき性別の開示はなかったけどイメージ的に男性なのかなぁと思ってました
※兵装が左右逆になっているけどそんなことを気にさせない程のダメ画力
※ヴェヌスもポニテじゃない
0114ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/16(火) 00:06:05.18ID:s0IqVe1w「許して……、許してください……!」
広い空間に、巨大な『機械化人類(メカニゼイター)』――アリシアの嗚咽が響く。
「戦いたくない……。殺したくないんです……!こんなこと……したくないのに……!」
「でも、先生がやれと仰るから……。戦う以外には、わたしにはなんの価値もないから……」
「戦わないと……お父さまやお母さまの死が……無駄になってしまうから……!」
ガシャンッ!ガシャッ!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!
「だから……!わたしのことを恨んでくれても、憎んでくれても構いませんから……」
「だから……死んでください……!!」
アリシアの言葉と共に鳥脚状の大腿部が展開し、ガトリングガンが轟音を響かせて火を噴く。
破損した両腕の代わりに、背部から長大なクロー状の隠し腕がせり出し、そこから高圧水流のレーザーカッターが放たれる――。
ラ・テール姉さまが両腕を破壊したというのに、なんという攻撃力!
まさに、全身武器の塊……。これがドクター・メネクの最高傑作『機械化人類(メカニゼイター)』アリシア!
「目には目、歯には歯――水には、水!」
姉さまがメルキュール姉さまの水流鞭『メルキュール・トレント・デ・フエ』を発動する。
水流鞭がアリシアのボディに絡みつき、その動きを束縛する。
――今!
わたしは高く跳躍すると、そのまま急降下して飛び蹴りを右の大腿部に叩き込みました。
ガトリングガンごと脚部がひしゃげ、関節がもう一つ増えたかのように圧し折れる。
ガクン、とバランスを崩すアリシア。
「あ、あ、あ、あああああああああああああ……!」
アリシアが絶望の叫びをあげる。――けれど、すぐにクロー状の隠し腕が破壊された右脚の代わりとなり、機動力を再確保する。
この素早い対応力は、アリシアの力ではない……。恐らく、両肩の脳が補助しているのでしょう。
アリシアは戦いを望んではいない。でも、ふたつの脳がそれを補い、無理矢理戦わせている……?
だとしたら。両肩の脳を先に沈黙させれば!
――でも。
あのふたつの脳も、元は人間だった……。とりわけ右側の脳は『トゥーレ協会』の総統の脳とドクターが言っていました。
ということは。それを沈黙させることは、総統を殺めることになってしまう……!
0115ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/16(火) 00:11:00.57ID:s0IqVe1wオリジンが冷たい機械の眼差しで、じっとアリシアを見つめている。
その視線の先で、わたしとラ・テール姉さまがアリシアと激闘を繰り広げる。
ガガガガガガガッ!!!
残った左大腿部のガトリングガンが高速回転し、致死量の弾丸をばら撒く。
左クローから放たれるレーザーカッターが、わたしたちを両断しようと迫る――。
けれど、その程度の兵装。『錬金人類(エリクシアン)』であるわたしたちには通用しない!
――でも。
「ソレイユ!何を迷ってるの!?」
わたしが生体相手に攻撃を躊躇っているということを一瞬で見破り、姉さまが鋭い声を投げかけてくる。
すみません……、姉さま……!
「ああっ、もう!しょうがないなあ!わかったよ、総統とあとひとりの脳も、殺しちゃわないようにやればいいんでしょ!」
そう言って、姉さまは水流鞭を解除するとレーザーとガトリングの雨を掻い潜り、一気にアリシアの懐に躍り込みました。
……速い……!
「やめて……!来ないで、来ないでください……!」
アリシアが悲鳴のような声を上げながら、左のクローを振り上げる。
「そうはいかないよ。あなたたちを助ける。誰も殺さないで連れ帰る。これが、あたしのミッションだから」
「すべて完璧にこなす。それが『救星主』だから――」
姉さまが撫でるように軽く触れた途端、左大腿部のガトリンクガンが自壊する。
駆動系にもダメージがいったのか、再びアリシアがバランスを崩す。
絶好の攻撃のチャンス。けれどそれ以上追撃はせず、姉さまが高く跳んでわたしの元まで戻ってくる。
「ソレイユ、あれやるよ!」
言って、左手を伸ばす姉さま。承知しました、では……!
右側に立った姉さまの左手と、わたしの右手を繋いで、手指を絡める。
そして、そのまま繋いだ手と手をアリシアへ向かって突き出し、ふたり同時に粒子砲を撃ち放つ!
『救星主』であり、完全にシンクロした波形を有するわたしとラ・テール姉さまだからこそできる合体技!これが――
「「エリクシアン・ユニゾン・ギャラクシア――――――ッ!!!!」」
―――ギュゴッ!!!
わたしのアマ・デトワールの白い閃光と姉さまの放った黒い閃光が絡み合い、螺旋となってアリシアを直撃する。
「あ……あ、あ、ああああああああああああああ……!」
わたしたちの合体技を食らったアリシアのボディが爆発し、クローが、残った脚部が崩壊する。
四肢のすべてを失い、兵装も装甲も何もかも剥ぎ取られたアリシアの身体が、ガシャリ……と崩れ落ちる。
本来なら、アリシアのすべてを消滅させるだけの威力を持つ技。――ただ、出力は抑えました。命を奪うには至っていないはず。
これで、きっと……。
0116ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/16(火) 00:14:27.45ID:s0IqVe1w〈オ、オレの最高傑作が……!オレの持ち得るすべての技術を!叡智を詰め込んだはずの作品が……!〉
モニター越しに、ドクター・メネクがわなわなと震える。
無理もありません。わたしたちを破壊すべく、長い時間をかけて培ってきた技術が。自信が。
今、目の前で完膚なきまでに打ち砕かれたのですから。
でも、だからといって同情や憐憫の情を催すことはできません。
ドクター・メネクは償わなければならない……、今まで行なってきた非道を。犯してきた過ちを。
もちろん、彼を裁くのはわたしたちでも機関でもなく、然るべき司法の手に委ねることになるでしょうが……。
ともあれ、戦いは終わりました。
〈アリシアアアアアア!!!立て!立ちやがれ!何をしてやがる!?テメエ、何のつもりだアアアア!!〉
〈テメエは最強なんだ!そのはずなんだ!テメエより強い『機械化人類(メカニゼイター〉』は存在しねえんだ!〉
〈そのテメエがコイツらを殺せなかったら、誰が『錬金人類(エリクシアン)』を殺すんだ!ああ!!?〉
〈立て!立て!!立て!!!アリシア!!!!アアアアアリイイイイイシイイイイアアアアアアアアアア!!!!!〉
ドクター・メネクの絶叫が、広大な空間で幾重にも反響する。
けれど、アリシアはボディだけになった姿でぐったりと頭を俯かせ、ピクリとも動かない。
合体技『エリクシアン・ユニゾン・ギャラクシア』で、戦う手段をすべて破壊したのですから無理もありません。
「無駄だよ、ドクター。アリシアはもう戦えない、動けない。決着は、もうついたんだよ」
「あとは。ドクター、あなたを迎えに行くだけだから」
ドクターの映るスクリーンを見上げ、姉さまが決然とした調子で告げる。
それはきっと、ドクターにとっては死刑宣告のように聞こえたことでしょうが――仕方ありません。
あとは、姉さまの仰る通りドクターを拘束するだけ。それから先のことは、機関がやってくれるはずです。
この人工島『ル=リエー』での『トゥーレ協会』との戦いも、これで終わりですね。
……アリシア。
戦いたくないと、あなたは言いましたね。戦いたくないけれど、仕方がないと。
戦う以外に、自分に価値はないと……そうドクター・メネクが言うから戦うんだ、と……。
「……わ、たし……は……」
でも、もう戦いは終わりました。アリシア、あなたは戦わなくていいんです。
戦うことでしか価値が見出せないだなんて、そんなことは決してありません。戦い以外にも、あなたの価値はきっとある。
これからは、それを見つけていきましょう?……ね。
0117ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/16(火) 00:16:21.02ID:s0IqVe1wええ。
あなたには、出来ることが沢山ある。それを、探していきましょう。
身体も――そんな禍々しいものじゃない、新しいものを用意してもらいましょう。
そして、新しい生き方を。わたしも、最大限協力しますよ。
「……わ……、わたしっ……。わた、し……」
「そんな、こと……今まで、言われたことが……なくて……。なんて言えばいいのか、わから……なくて……」
「……ぅっ……。ぅああ……、あああああああああ……!」
みるみる顔を歪め、アリシアが泣く。
それは、長らく部品として扱われ続けてきたアリシアの、自我の発露。
……これでいい。これからは、アリシアにも機械のパーツとしてでない、ひとりの人間としての生を歩んでもらいましょう。
ここに来るまで、たくさんの人々がプラントで部品となってゆく光景を目の当たりにしましたが。
最後の最後に、ひとりだけ。救うことができた――
それだけでも。上々と言うべきでしょうか?
そんなことを思って、わたしが一息ついた瞬間。
ギュバッ!!!
わたしの背後から放たれた一条の閃光が、アリシアの胸を貫きました。
……!?
「……ぁ……」
小さな呻きと共に、ごぽりと人工血液を吐くアリシア。
咄嗟に振り返ったわたしの目に飛び込んできたのは――
腕に装着したレーザーカノンを構える、オリジンの姿。
……い……、いったい、何が……?
「敗れてしまいました、ね……?ドクター……」
レーザーカノンを構えたまま、オリジンがくすり、と笑う。
「でも、わたしはきっと負けると思っていました。だって、そうでしょう?」
「ドクターの最高傑作は、そんな不格好なバケモノなんかじゃない。ドクターの最高傑作は――」
「このわたし。あなたが、ドクターが最初に作り上げた、原初の『機械化人類(メカニゼイター)』……オリジンなのですから」
オ……、オリジン!
なんということを!アリシアは、もう動くこともできなかったというのに……!
なぜ!なぜ撃ったのです!!
「決まっているでしょう。邪魔だからですよ」
わたしの問いに、オリジンが酷薄な微笑を湛える。
そこにあるのは、明確な殺意。嫉妬と羨望、そして憎悪が綯交ぜになった感情。
日頃の冷静さとはまるで違う、冷酷な気配――。
0118ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/16(火) 00:18:59.36ID:s0IqVe1w「Dominus……あなたのお言葉。その忠告、ありがたく拝聴しました」
「わたしはドクターを支えます、あなたの仰る通りに。ドクターを支え、ドクターの希望となることが、わたしの望みですから」
「けれど、ひとつだけ訂正を。わたしは逃げません、逃げる必要など何もない。だって――」
「ここで、わたしは『錬金人類(エリクシアン)』を破壊し――わたしこそがドクターの最高傑作であるということを立証するのですから」
オリジンが傍らのDominusに告げる。
ど……、Dominus!逃げてください!オリジンは……危険です!
「その心配は無用ですよ、ミス・ソレイユ。これは『機械化人類(メカニゼイター)』と『錬金人類(エリクシアン)』の戦い」
「旧人類の出る幕ではありません。もし旧人類に役目があるとするなら、それはこの戦いを見届けること」
「ふたつの新人類、どちらが優っているのかを見届ける証人……といったところでしょうか?」
そう言って、オリジンがゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。
わたしとラ・テール姉さまは、ふたり同時に構えを取りました。
「こほッ……、ぅ、ぅ……あ、あぁ……」
――アリシア!
わたしは慌ててアリシアへ近寄り、その容体を確認しました。
フレームの胸骨を貫いて、人工心臓にまで損傷が……。これでは、もう……。
「……ソ、……レ……イユ、さん……」
血で口許を赤く染め、アリシアが唇をわななかせる。
アリシア……、しっかり!しっかりしてください……!
「ソレ……イ、ユ……さん……。わたし……、わたしは……」
「わたしは……戦い、以外でも……価値が……あります、か……?」
もちろんです!いいえ、あなたには、戦い以外の場面にこそ価値がある!戦いなんて、する必要はないんです!
あなたには、これからもっともっと!素敵で幸福な人生が待っている……!一緒に、それを見つけに行きましょう!だから……!
「そ、う……、ですか……」
アリシアの脇腹についた、か細い副腕が、ようよう虚空に手を伸ばす。
わたしはそれを両手で包み込むように握りました。
機械の腕に、温もりは伝わらない。アリシアには、握られているかどうかさえ判別できないはず。
けれど。
「あたた、かい……」
アリシアは小さくそう言ってから、ふわりと微笑んで――その機能を停止しました。
…………。
……。
!
オ、リ、ジ、ン……!!!!
0119ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/16(火) 00:23:24.52ID:s0IqVe1wメルキュール「こんばんは〜☆メルキュールの『エリクシアンおまけ講座』のお時間ですよぉ〜!」
マルス「司会は毎度おなじみメル姉と、アツイゼアツイゼアツクテシヌゼ!が合言葉のオレ!マルスとッ!」
ヴェヌス「紫外線はお肌の大敵ですわ。最美の閃光ヴェヌス他でお送り致しましてよ」
メルキュール「今回はお盆スペシャル!ということで、拡大版でお送りします!うふふ、わたしたちの出番もアップね!」
サテュルヌ「盆と言えば、死人が現世に立ち戻る季節ですからな。まさに我々の季節と申せましょう」
ジュピテル「悲しくなってくるからヤメテ」
メルキュール「さて、今回のおハガキはポイント95532にお住まいの>>113さん!」
メルキュール「>>113さんは今回もイラストを描いてきてくださったんですよ。しかも四枚も!」
ジュピテル「長女〜三女とオリジンだね。まさかオリジンまで描いてくれるなんてビックリ!」
サテュルヌ「ドクター・メネクも草葉の陰で喜んでおることでしょうな」
マルス「まだ死ンでねーし」
ヴェヌス「というか、メルキュールお姉さまですが……凶悪ですわね」
ジュピテル「ホントホント。けしからんよね」
マルス「オレも結構自信ある方だったけど、なんつーかケタが違うな……」
サテュルヌ「まさに吾ら七姉妹の長姉の面目躍如、といったところかと」
メルキュール「みんなで楽しそうに、なんのお話?お姉ちゃんも混ぜて?」
ジュピテル「わかってるくせに……」
メルキュール「あらあら、うふふ」
マルス「メル姉のイラストからは母性が溢れてるよな。ホラ、なンつった?バブみがあるっつーの?」
ジュピテル「それもう死語だよ」
サテュルヌ「次は二の姉上ですが」
マルス「ヤベェな。いかにも出来る女っつーオーラが出てやがる」
ヴェヌス「当然でしょう。実際、わたくしは『錬金人類(エリクシアン)』随一の才媛なのですから」
ジュピテル「ウラニア・ポース秘書官だったっけ?どーゆー意味の名前だったの?アレ」
ヴェヌス「ウラニアは美の女神アフロディーテの別名ですわ。ポースとは光の意。光を操るわたくしの仮名に相応しいでしょう?」
サテュルヌ「この軍服姿の二の姉上にヒールで踏まれたいと所望するDominusは多いと聞きます」
ヴェヌス「よくってよ。さあ、跪きなさい豚!わたくしの靴をお舐めなさいな!」
ジュピテル「軽く腕組みしながら、メガネクイッてやってみて」
ヴェヌス「こうかしら?(クイックイッ)」
マルス「なンかもう別のキャラが立ってきたな、金姉」
ヴェヌス「ラ・テールも本人の特徴がよく出ていると思いますわ」
ジュピテル「ラ・テールお姉ちゃんの性格がこのイラスト一枚でよくわかる!このあざとげなポーズとか!」
マルス「てへぺろ的な表情とかな。あー、こンな顔してるわ。って思うわ」
メルキュール「ソレイユと顔の作りは一緒なのに、中身が違うとこうまで印象も変わるものなのねえ……」
ジュピテル「本人『今度からこれを決めポーズにしたいと思う』とか言ってたよ」
ヴェヌス「何ですの、決めポーズって」
ジュピテル「本人、決めポーズとか名乗りとか必殺技の名前とかにスゴいこだわるタイプみたいだよ?」
サテュルヌ「今回出てきた『エリクシアン・ユニゾン・ギャラクシア』も三の姉上の考案だそうで」
メルキュール「最後はオリジンね。わたしたち『錬金人類(エリクシアン)』とはまた違ったデザインが素敵ね☆」
ヴェヌス「メカメカしさがいかにも『機械化人類(メカニゼイター)』ですわね。これは強キャラ感がひしひしと……!」
マルス「今回思いっきり敵になったワケだが」
ジュピテル「ソレイユ、負けるんじゃない?」
サテュルヌ「そうなれば、ドクター・メネクも草葉の陰で感涙にむせび泣くことでしょうな」
マルス「だからまだ死んでねーって」
メルキュール「ともあれ、これで七姉妹全員集合!本当に>>113さんには心からお礼を言わせて頂きますね!」
ジュピテル「まぁ、もちろん一番かわいーのはボクだけどね?最初に描いてもらったのだってボクだしぃ〜」
ヴェヌス「一番美しいのはわたくしでしてよ?」
マルス「オレは?」
ジュピテル「一番こわい」
マルス「ウ、ウルセーな!そういう芸風なンだからしょうがねーだろが!」
メルキュール「では、また次回〜☆」
ソレイユ(お仏壇にナスとキュウリをお供えしていたら、出そびれました……)
ラ・テール「Dominusの家、仏壇あるの?」
0120創る名無しに見る名無し
2016/08/16(火) 13:39:44.29ID:QSzt+34cまあ、人間ってのは総じてどうしようもないもんだけどよ
オリジンのやつ、あの時マルスに散々っぱらやられたってのに、今度はエリクシアンふたりを相手にしようってのか
腹を決めたな、油断すんなよ
秘蔵っ子をやられたメネクが自暴自棄になって何かやらかす前に片を付けたいところだが……間に合うかね?
大体よぅ、悪役の秘密基地は最後に自爆するもんだろう?俺ぁそれが気になって仕方がねえんだよ!
0121創る名無しに見る名無し
2016/08/16(火) 19:58:56.66ID:Blt5RX5dそうなればソレイユ達とも戦うことにもなるから
そんなことしなくても愛される別の道を示したつもりだったんだけどな
道中傷ついてようやく機械化人類を退けたオリジンと、無傷で切り抜けたソレイユ達では完全にスペックが違う
それでも挑んでくるのは、勝算があるか、余程現実が見えてないかだ
気を付けるんだ。憎しみで戦ってはならない。あと、1人はメネク確保に動いた方がいいかもしれないな
0122創る名無しに見る名無し
2016/08/17(水) 20:11:15.77ID:hMSebOnUサテュルヌ<……(無言で煎餅を咀嚼している)
TV<『エリクシアン・ユニゾン・ギャラクシア――――――ッ!!!!』
そのときサテュルヌに電流走る
サテュルヌ<(三の姉上とソレイユ……黒と白……合体攻撃……この符号の意味するもの、それは……)
サテュルヌ<初代プ○キュアではないかーッ!(ガタッ)
Dominus<いやこの合体攻撃、元をたどれば小説版ダーディ・ペアに遡ることもできマース
サテュルヌ<これはDominus!? いつの間に!?
ジュピテル<(ウルサイなぁ……はやく居間のテレビで「ならず者戦闘部隊ブラッディウルフ」※やりたいのに……)
※WiiUバーチャルコンソール配信版です
※アツクテシヌゼ
0123ラ・テール ◆vTHUCgBFbw
2016/08/19(金) 18:40:45.77ID:iQ+cOvCvアリシアを葬り去り、突如としてあたしとソレイユの前に立ちはだかった『機械化人類始祖(メカニゼイター・オリジン)』。
圧倒的なスペックの差。本来、『機械化人類(メカニゼイター)』は『錬金人類(エリクシアン)』には敵わない。
でも。
オリジンには、その差を埋めて余りある“秘策”があったのだ――!
次回!錬金乙女エリクシアン
『禁断の兵装!神剣アポクリファ』
お楽しみにっ!
〜次回放送日は8月20日の予定です〜
0124創る名無しに見る名無し
2016/08/19(金) 19:45:52.05ID:IdFXvq3U0125ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/20(土) 21:26:43.12ID:nR7TGz1p>>120
オリジン……、オリジン!!
あなたは!自分が何をしたのかわかっているのですか!
あなたは、ドクターの非道を止めに来たのではなかったのですか……!?
「誰がそんなことを言いましたか?勘違いしてもらっては困りますね、ミス・ソレイユ」
「わたしは『ずっとドクターのことを探していた』『ドクターに会わなければならない』と言っただけです」
「そう……ドクターの行方を探し、もう一度巡り合うために。もう一度――ドクターに愛してもらうために、ね……」
自らの胸元に右手を添え、オリジンが微笑む。
禍々しい笑み。ぞっとするような、昏い微笑。
「ソレイユ……オリジンの言ってることは間違ってないよ」
「確かに。オリジンは『ドクターの過ちを正す』とは一言も言ってない。目的が一緒だと勘違いした、あたしたちが悪い」
ラ・テール姉さまが険しい表情で構えを取りながら言う。
では、最初からオリジンはドクターと合流し、ドクター側につくためにその消息を追っていた……?
……そんな……。そんなこと……。
「でもね、オリジン。Dominusの言う通り……勝ち目があると思ってるの?あたしたちふたりを相手に」
「勝ち目?……フフフ……フ、フフフフフフフフ……!」
「では、試してみましょうか?」
「……いいよ」
オリジンの挑発めいた言葉に、姉さまが握りしめている拳に力を込める。
一触即発の状況。姉さまとオリジンの間に、緊張が走る。
姉さまの仰る通り、『錬金人類(エリクシアン)』と『機械化人類(メカニゼイター)』の間には、決定的な性能の差があります。
『機械化人類(メカニゼイター)』の技術を発展させ、『錬金人類(エリクシアン)』は生まれました。
『機械化人類(メカニゼイター)』を凌駕する究極の新人類――そんなコンセプトのもと創造されたのが、『錬金人類(エリクシアン)』。
カタログスペックでは、わたしたちが『機械化人類(メカニゼイター)』に敗北する可能性はゼロなのです。
それは理屈でなく、Dominusもご存知の通りマルス姉さまがオリジンを一蹴したことでも実証されている……。
でも。
あのオリジンの自信……。いったい、何がオリジンにあの不敵な態度を取らせているのでしょう……?
自爆装置についても、気になるところです。
いずれにせよ……早くオリジンをなんとかしなければ!
0126ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/20(土) 21:28:39.36ID:nR7TGz1p「わたしは特別な『機械化人類(メカニゼイター)』。ドクター・メネクによって造られた、一番最初の機体――」
「わたしにはその自負があった。わたしは他とは違う。わたしは、ドクターの一番なのだと……」
「でも。ドクターはわたしを置き去りにしていなくなってしまった。あの、忌々しいビュトス機関の愚昧な者どもに排斥されて」
「愛するひとに見捨てられ、愛するひとを排除した者たちの巣窟に置いてきぼりにされた……わたしの哀しみがわかりますか?」
「ウェストコットやルードヴィルに身体を調整されるのは苦痛でした。まるで、好きでもない男に玩弄されるような……」
「でも。わたしは耐えた。もう一度ドクターと再会するために。ドクターに迎え入れてもらうために」
「ドクターと一緒に、未来を歩むために――」
「――そのためには。ミス・ソレイユ、ミス・ラ・テール。あなたたちふたりには、死んで頂かなければなりません」
「『機械化人類(メカニゼイター)』が最強であるということを。わたしが最強であるということを、ドクターにお見せしなければいけませんから」
滔々と、オリジンが自らの目的を吐露する。
最初から、オリジンはドクター・メネクとの再会だけを考えて行動していた……。
姿を消したドクターの消息を追い、世界各地で『機械化人類(メカニゼイター)』と戦っていたのも、すべてはそのため。
恐らく、オリジンはドクターの作品である他の『機械化人類(メカニゼイター)』を破壊することで、自らの性能を知らしめようとした。
自分が、自分こそが、あなたの最高傑作なのですよと――そう、行動で語りかけていた……。
それは。なんと恐ろしく、そして哀しい愛情表現なのでしょう。
「同情はいりません、ミス・ソレイユ。もし、わたしのことを想うのなら――」
「全力で戦い、そして死んでください。全力を出した『錬金人類(エリクシアン)』と戦い、それを上回る」
「それが、それこそが、私のDominus。ドクター・メネクの望みなのですから」
オリジンが腕のレーザーカノンの砲塔をわたしへと向ける。
Sic.Dominus.
間違いありません。オリジンは何か、秘策を持っています。わたしたちを倒すに充分な秘策を。
それはいったい……。
「ソレイユ、ごめん。ここは任せていい?」
不意に、姉さまが言う。
……はい。Dominusの仰るように、ドクター・メネクを確保に行かれるのですね?
オリジンのことは、わたしに任せてください。
「ありがと。じゃ、また後で!」
姉さまが長い黒髪を揺らし、身を翻す。
「逃がしはしない!ドクターには――指一本触れさせません!!」
背のノズルから蒼い炎を噴き出し、オリジンが姉さまを追おうとする。
――でも!
オリジン!あなたの相手は……このわたしです!!
0127ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/20(土) 21:31:28.64ID:nR7TGz1pすぐに、オリジンがレーザーカノンを撃ってくる。破壊の閃光を、わたしは咄嗟にヴェヌス姉さまの鶺鴒を展開して防ぐ。
「邪魔を――しないで下さい!」
それはこちらの科白です。姉さまの邪魔はさせません!
それに、あなたの目的はわたしたち『錬金人類(エリクシアン)』の破壊。ならば、まずはわたしを破壊することです!
「ち……!」
オリジンが矢継ぎ早にレーザーを放つ。――でも、わたしにそんなレーザーなど……効きはしない!
わたしは身体を前傾にすると、一気にオリジンへと駆け寄りました。
オリジンの――いえ、『機械化人類(メカニゼイター)』の基本戦法は、大火力による遠距離からの殲滅が主体。
かつてヴェヌス姉さまが戦った『獄卒一家』のようなパターンは稀です。
そして、この場所に来るまでにオリジンの取っていた戦法も同じ。ならば、接近戦で一気に片をつける!
オリジンの懐に潜り込み、右の拳を繰り出す。これで――決着!!
と、思ったのですが。
わたしの拳を、オリジンが危なげなく受け流す。
二撃。三撃。わたしはさらに攻撃を試みましたが、オリジンには当たらない……。
最終的に嵐のようなラッシュを繰り出すも、それさえことごとくかわされてしまう。
……これはいったい……!?
「わたしがミス・マルスに遅れを取った頃のままと思っているのなら、それは大きな間違いですよ。ミス・ソレイユ」
「あれから、どれだけの時間が過ぎたと思っているのです?わたしはずっと自己改造を繰り返してきた」
「二度と、あなたたち『錬金人類(エリクシアン)』に敗北しないように。この身体のすべてを強化してきたのです」
では、ここに来るまでの間、『機械化人類(メカニゼイター)』との戦闘で被弾していたのは……?
「餞ですよ。死んでゆく兄弟たちへの……同じ創造主を持った同胞への」
わざと被弾していた、というのですか?葬る相手への憐憫ゆえに……!
「その通り。でも、ミス・ソレイユ。あなたは同胞ではない、わたしの兄弟ではない。だから――」
「傷を負ってやる義理はない。……潰します」
ゴッ!!
オリジンのレーザーカノンを装着した腕が、わたしの左頬に炸裂する。
がふっ!
わたしは盛大に殴り飛ばされ、大きく後方に吹き飛ばされました。
なんとか空中で身体を反転させ、着地こそしましたが……。この威力!アリシアの攻撃と同等、いやそれ以上……!
「……行きますよ」
今度はオリジンがこちらに急接近してくる。
恐るべきスピード。わたしは咄嗟に拳を繰り出してオリジンを迎撃しようとしましたが、当たらない。
代わりに、唸りをあげて迫るオリジンの拳をふたたび受けてしまう――。
ガガガガガガッ!!!
ぐ、は……ッ!
機関砲のような拳の連打。わたしは反吐をはきながら、背中から壁面に激突しました。
そのまま、ずるずるとくずおれて床にへたり込む。
……つ……。強い……!
0128ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/20(土) 21:34:08.58ID:nR7TGz1p倒れ伏したわたしを指し、それから大きく両手を広げて、オリジンが言う。
「あの『錬金人類(エリクシアン)』が!ミス・ソレイユが!わたしの攻撃でほら!無様に床を這っていますよ!」
「あの、アリシアとかいう不恰好なバケモノでは無理だった!こんなことはできなかった!」
「ご覧になっておられますか?やっぱり、わたしこそが!このオリジンこそが、あなたの最高傑――」
〈……バカ野郎がアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!〉
必死で自分を認めてもらおうとアピールするオリジン。
けれど、そんなオリジンの言葉を、ドクター・メネクの絶叫に近い叱責が遮る。
見れば、ドクターの姿を映している巨大スクリーンの画像が乱れている。ノイズが入り、ドクターの姿が歪む。
いえ……それだけではありません。これは……
『ドクター自身も苦しんでいる』……!?
〈ガアアアアアアアア!!!ギィィィアアアアアア!!!テメエ……テメエ!!オリジンンンンンンン!!!〉
〈テメエは……テメエは!なんてこと……なんてこと!!このオレを!!オオオオレエエエエエをヲヲヲヲヲ!!!!〉
「……な……、ど、どうされたのですか?ドクター!ドクター!」
スクリーンの中で苦悶の叫びをあげ、身をよじらせるドクターの姿に、オリジンが狼狽する。
い、いったい……何が起こっているというのですか?Dominus!
ガシャッ!!……ガガガッ、ガギギッ!ガタガタガタッ!!
……!?
これは……。亡くなったはずのアリシアのボディが……動いている……?
ただひとつ残った、虫の肢のようなか細い副腕が、ガリガリと床を掻いている。全身が痙攣している。
そんな、アリシアは確かに、生命維持装置である人工心臓をオリジンに貫かれて亡くなったはず……。
なのに、どうして?
〈オオオガアアアアア!!!!や……やっぱり、テメエは失敗作……だ……!こんなところまで……姿を現しやがって……!!〉
〈い……イヤだ!!死にたくねえ!!オレが!人類史に燦然と名を残すはずの、このオオオレエエエがアアアア……!!〉
ザッ!……ザザッ!!
ガリッ!ガリガリッ!ガシャッ!
死んだはずのアリシアのボディの痙攣が激しくなるごとに、スクリーンの映像の乱れも激しくなってゆく。
そして――
〈イギギギギギギギギギギギギギギギィィィィィィ!!!〉
〈オ、リジン……!この!ガ、ラ、ク、タ……がアアアアアアアアアアアアア――――――――ッ!!!!〉
ガシャンッ!
――ブツッ……。
最期にこの上ない苦悶の表情を映し出すと、それきりスクリーンは暗転しました。
同時に、激しく身もだえしていたアリシアのボディも沈黙し、横倒しになったまま沈黙してしまう。
アリシアのボディには『トリロデバイスシステム』という、人間の脳を生体OSとした機能が搭載されていました。
メインの制御人格はアリシア。向かって右側の肩につけられた脳は、『トゥーレ協会』の総統のもの。
――嗚呼。
まさか、まさか……!!
0129ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/20(土) 21:36:26.19ID:nR7TGz1p「……え?」
暗転し、何も映さなくなったスクリーンを凝視しながら、オリジンが小さく声を上げる。
そう――
アリシアに搭載されたトリロデバイスシステム、その第三の生体OSこそ、ドクター・メネク自身。
自らの最高傑作と断言するほどの機体に、自らを搭載する。自身の肉体をもパーツとして使用する。
ドクター・メネクの理論からすれば、きっと。それは最善の方策だったのでしょう。
オリジンはそれに気付かなかった。そして、最悪の結果を招いてしまった。
『恋焦がれた創造主本人を不恰好なバケモノと罵り、あまつさえ命まで奪う』という結果を――。
「……あ……、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……!!!!」
広大な空間に、やっと状況を理解したオリジンの慟哭がこだまする。
ずっとずっと追い求めていた、会いたかった、愛してやまない創造主。
やっと巡り合えたと思ったのに、その創造主に自らが引導を渡してしまうなんて。
わたしにも、お仕えしているDominusがいますが……主を失う哀しみというものは、到底想像がつきません。
それは。或いは、自分自身の命を喪うよりも遥かに激しい絶望……。
「いや……、いやぁ……!ドクター!ドクター!!わたしの……わたしのドクター……!!」
「目を覚ましてください!わたしが、オリジンが『錬金人類(エリクシアン)』を葬り去るところをご覧になってください……!」
「あなたの最高傑作が、あなたの悲願を達成するところを……見て!見てください!」
「やっぱりおまえが最高傑作だって。仰ってください……!」
物言わぬアリシアのボディへと縋り、透明の保護ケース越しにドクターの脳へと話しかけるオリジン。
結局、オリジンは最後までドクターに自らの評価を改めさせることができなかった。
ドクター・メネクの中では、オリジンは失敗作のまま。
その評価はもう、二度と覆ることはない――。
どれほどそうしていたでしょうか、慟哭していたオリジンがゆっくりと立ち上がる。
……オリジン……。
残念ですが……ドクターは亡くなりました。もう、わたしたちが戦う理由はありません。
おとなしく投降してください。ドクターのことも、丁重に弔いましょう。
「……よくも……」
「よくも……わたしのドクターを。愛するドクターを殺したな……!」
……えっ?
「許さない……絶対に許さない!破壊してやる、跡形もなく存在を消滅させてやる!『錬金人類(エリクシアン)』ソレイユ!」
「わたしは……ドクターのかたきを!取る!!」
ガシャッ……。
オリジンが憎悪と共にわたしをねめつける。腕に装着されていたレーザーカノンをパージし、床へと落とす。
そして、代わりに腕に握るのは――ひと振りの剣、その柄。
『柄だけの、刀身のない剣』。
あれは。あの武器は……。
「この、封印指定兵装――『神剣アポクリファ』で――!」
0130ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/20(土) 21:37:54.53ID:nR7TGz1pソレイユ「姉さま、熱心になにをご覧になっていらっしゃるんですか?」
ラ・テール「んー?プリ○ュア」
ソレイユ「あぁ……。確かサテュルヌ姉さまもご覧になっておられましたね、そのアニメ……」
ラ・テール「おっ!ほら、ソレイユ!これだよ、これ!」
ソレイユ「……はい?なんですか?」
TV「『○リキュア!マーブル・スクリュ―――――――――ッ!!!』」
ソレイユ「……ええと……?なんでしょう?」
ラ・テール「これ、カッコイイよね〜!これ、あたしたちもやろうよ!」
ソレイユ「え、えぇ……?」
ラ・テール「あたしとソレイユで手を繋ぐでしょ?同時に粒子砲出すでしょ?そしたら威力は二倍!見た目は三倍!」
ラ・テール「それにさ!やっぱり、あたしたちにも合体技とか必要だと思うんだ!これからの戦いにはさ〜!」
ソレイユ「は、はぁ……。そういうもの……でしょうか……?」
ラ・テール「じゃ、あたしがブラックサンダー!って言ったら、ソレイユはホワイトサンダー!って言って」
ラ・テール「で、『エリクシアンの美しき魂が!邪悪(?)なデミウルゴスとかその他悪者を打ち砕く!』って」
ラ・テール「じゃっ!さっそく練習に行ってみよっか!近所の河原まで」
ソレイユ「ね、姉さま、河原でアマ・デトワールを発射するのはちょっと……」
ラ・テール「あー、でも、何もかもアニメと一緒じゃ問題あるよね。オリジナリティを出さなくちゃ」
ラ・テール「名前もマーブルスクリューじゃなくて、もっと別の……ペア……シンクロ……ギャラクシー……う〜ん……」
ソレイユ「ね……姉さま?」
ラ・テール「あ、今ちょっと忙しい。後にして」
ソレイユ(うわぁ……)
マルス「ジュピテル、何やってンだ?」
ジュピテル「トリオ・ザ・パンチ」
マルス「古っ」
ジュピテル「他にカルノフとかB-WINGとか、ファイターズヒストリーとかもあるよ」
マルス「デコゲー信者かよ……」
0131創る名無しに見る名無し
2016/08/21(日) 11:08:09.09ID:qrrwzVFl哀しいかな、どれをとっても人の業よ
機械化によって鋼の肉体を手に入れようが、その身に宿る魂だけは決して作り替えることはできぬものな
黒き血潮の流れる強化人間とは言え、その範疇は人類に留まる、か――
そも人を越えるとは如何様なものであろう
錬金人類においては、それを達成せしめたか
あるいは、そこに本質はないのかもしれぬが
どちらにせよ、今の我らに出来うることは、眼前の狂える御霊を安んずるのみ
汝剣を取れ。砲を掲げよ。ここは戦場、いざ往かん!
次回、錬金乙女エリクシアン『外典開陳』に、ご期待ください
0132創る名無しに見る名無し
2016/08/21(日) 11:19:50.06ID:qrrwzVFl>>130
プリキュ○は女児向けなのにガチの格闘戦やるのが好きです
ジュピテルたんに俺のごっついタイガーバズーカをうちこみたいです
0133創る名無しに見る名無し
2016/08/22(月) 00:29:53.14ID:Kg4dOa9u封印指定だって言うから鶺鴒でも防ぎきれないほどの威力はまぁあると考えて
柄しかないからビーム剣の近距離兵装かな? いや、剣と言いつつビーム砲という、意外性ある遠距離兵装?
もしかしたら遠距離兵装並に超射程のビーム剣、なんて事もあるか。そういうのだと厄介だな
気を付けて
0134ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/22(月) 20:29:53.59ID:XALIVVRS>>133
Dominusもご存知の通り、ビュトス機関の科学力は現行文明の200年先を行っています。
その叡智をもって、機関は様々な発明を齎してきました。『錬金人類(エリクシアン)』しかり、『機械化人類(メカニゼイター)』しかり。
けれど、そんな機関の智慧をもってしても扱いきれないと判断されたもの。危険と断じられたもの。
それらは『封印指定』の評価を受け、機関の最奥に封印されたのです。
いつか、未来の科学が。新たなる叡智が。
それらを完全に御する時代の訪れることを願って――。
『神剣アポクリファ』は、そんな封印指定兵装のひとつ。
武器としては、わたしの『エトワール・フィラント』のようなビームエッジ……いえ、ビームブレードの一種になります。
刀身は約70センチほど。飛び道具ではありませんし、長大な刀身もありません。
でも――。
「あなたも理解しているようですね。この『神剣アポクリファ』の恐ろしさを」
……!
なぜ、あなたがその剣を?その剣はなんぴとたりとも触れられないよう、厳重に封印されていたはずです!
「もちろん、盗み出してきました。もう、わたしは機関には帰らない。最初からそのつもりでしたから」
「ドクターの所在がわかったのです。これ以上機関のような悍ましい魔窟にいる理由などない……そうでしょう?」
「アポクリファは手土産代わりですよ……ドクターに捧げるための。そして、あなたたちを破壊するための」
機関の封印区画に侵入し、行きがけの駄賃とばかりに神剣を強奪してきたということですか……。
迂闊でした。こちらから機関にコンタクトしていれば、オリジンの造反がもっと早くにわかったかもしれないのに。
「無駄ですよ。この『ル=リエー』周辺にはジャマーを配置してあります。通信手段はありません」
「今頃は、あなたがたの乗ってきたB-2爆撃機も波間を漂っていることでしょうし……ね」
オリジン……!何の罪もない人までも、手に掛けるなんて……!
「何の罪もない?冗談でしょう。機関の息のかかった者と言うだけで、わたしにとっては充分殲滅の理由になる」
「ドクターを否定し、ドクターを排斥し、ドクターを苦しめる者は――みな!このわたしが破壊する!!」
オリジンが刃のない剣を一度振り、一気に間合いを詰めてくる。
Dominus!島に上陸する際に使った、耐衝撃耐G防護服を着用してください!……早く!!
薄紙で海嘯に抗うようなものですが、生身でいるよりはましですから!
――フォンッ!
ネオンの輝くような音を発し、オリジンの持つ柄から黒い刃が現れる。
『神剣アポクリファ』。外典の名を持つ武器が解き放たれる――。
0135ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/22(月) 20:33:55.78ID:XALIVVRSオリジンの振るうアポクリファが、唸りをあげてわたしへと迫る。
それを、わたしは持てる体術の粋を尽くして避ける。
通常のビームブレードなら、こちらもエトワール・フィラントで受け止めることができます。
出力勝負なら、わたしのビームエッジにも充分勝機はあるでしょう。
――でも。わたしはただただ回避に専念するのみ。その剣に、身を掠めることさえ許されない。
アポクリファは、単なるビームブレードではありません。
通常、『錬金人類(エリクシアン)』や『機械化人類(メカニゼイター)』の使用する粒子砲は、重粒子を放射しています。
ビームブレードも同様に、重粒子を刃状にした兵器。――けれど、神剣アポクリファはそうではない……。
アポクリファが刃としているのは、『反物質』。
反物質は自然界に存在する粒子とは真逆の特性を有する反粒子で、粒子と接触した瞬間に対消滅反応を起こします。
対消滅の瞬間に発生する熱量は、反物質1グラムあたり約180兆キロジュール、電力にして5000万キロワット。
原子爆弾の約2.9倍の威力、東京都の総電力約3時間超分に相当します。
たった1グラムの反物資でさえ、対消滅を起こせばそれだけのエネルギーが出るのです。
アポクリファの刀身を形成する反物質の長さは70センチ。となれば、その威力は想像もつきません。
少なくとも、『ル=リエー』を含むこの一帯は、文字通り『跡形もなくなる』ことでしょう。
いくら『錬金人類(エリクシアン)』でも、そんな威力にはとても耐えられない――!
でも。
その剣は、文字通り諸刃の剣!
もしわたしに炸裂させれば、その瞬間にオリジン!あなたも余波を浴び、即死することは間違いないのに……!
「だから!どうしたというのです!そんなことは……最初から覚悟の上!」
「あなたたち『錬金人類(エリクシアン)』を破壊できなければ、この命に意味はない!わたしに退路はないのです、それに――」
「もう、ドクターはいなくなってしまった……!ドクターのいない世界に存在し続ける意味など、もう何もない!!」
……く……!
オリジンはすでに、自分の命を捨てている……!
自棄になったオリジンの攻撃を掻い潜り、無力化させるのは至難の業!いったいどうすれば――?
「考えごとなど!している暇などあなたにあるのですか!?」
ビュオッ!
アポクリファの黒い刀身が空を切る。
薄皮一枚でも、髪の毛一筋でも、掠らせてしまえばわたしの負け。その時点で対消滅が発動し、すべてが灰燼に帰す。
それを避けるには……!?
0136ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/22(月) 20:37:55.00ID:XALIVVRSオリジンの横薙ぎを大きく後方にジャンプして避けると、わたしは彼女から距離を取ってその姿を睨みつけました。
Sic.Dominus.
ドクター・メネクが、どうして最後までオリジンのことを失敗作と言い続けたのか。
その理由が、今はよくわかります。
なぜなら。オリジンはあまりにも『人間臭い』――。
アリシアに対する羨望。嫉妬。わたしたちへの怒り、激情……。
そして、ドクターへ向ける愛情。
それらはどれも、人間にしか持ちえないもの。人間であることの証。
人体も作品を構成するパーツのひとつに過ぎない、という理論を提唱するドクター・メネクにとって、その感情は不要物以外の何物でもない。
ドクターはきっと、気付いていたのでしょう。
オリジンが自分に対して、ただの創造主に接する以上の感情を抱いているということを。
だからこそ、オリジンを見捨てて去った。失敗作の烙印を捺した。
今では、ドクターの目指した『究極の機械化人類』の理想がなんだったのかは、永遠にわからなくなってしまいましたが……。
そこに、オリジンとドクターの認識の齟齬があった。
「うるさい!黙りなさい!あなたごときが……『錬金人類(エリクシアン)』ごときが!わたしとドクターの心を推量するなど!」
「兆年早い……!培養槽で生まれた、人間のなり損ないがァァァァァァッ!!!」
ゴウッ!
オリジンが身体を前傾にし、瞬速でわたしへと襲い掛かってくる。
神剣アポクリファの、反物質の刃が煌めく――。
わたしの首筋すれすれ、1ミリにも満たないところを、刃が薙ぐ。
一発でも当たってしまえば、それでおしまい。わたしも、オリジンも、この場にいない姉さまも――
そして。Dominusも死んでしまう……。
いいえ。そんなことはさせない!
Dominusは!わたしが――護る!!
わたしは大きく腰を捻ると、鞭のようにしならせた右回し蹴りをオリジンの左脇腹に叩き込みました。
オリジンの顔が、一瞬苦痛に歪む。
「ぐ、ふ……!攻勢に出るとは、わたしがアポクリファを盾にするとは考えないのですか……!?」
無論、それは想定済み!でも……攻めなければ、あなたを倒すことはできない!
「愚かな!言ったでしょう、自己改造によってわたしはあなたを上回る身体能力を手に入れていると!」
「すでに、あなたに勝ちの要素などはないのです!わたしに破壊されるしか、あなたに残された未来はない!」
確かに、身体能力はオリジンの方が僅かに上。けれど、だからといって……諦めることなんて、できるはずがない!
問題はやはり、神剣アポクリファ。一撃貰えばすべてが消え去る、必殺以上の威力を秘めたあの兵装をどう攻略するか?
それが――この戦いの鍵となる――!
Dominus!お知恵を!わたしに……戦う力を与えてください!
メルキュール「こんばんは〜☆メルキュールの『エリクシアンおまけ講座』のお時間ですよぉ〜!」
ジュピテル「提供は、人類に黄金の夜明けを!ビュトス機関でお送りいたしまーすっ!」
サテュルヌ「さて、本日の投書はポイントN-50223に居を構える>>131からですが」
マルス「おおよ!やっぱ、バトルっつったらガチンコでステゴロなブン殴り合いだよなァ!燃えてきたァァァ!」
ヴェヌス「まったく、野蛮ですわね。真の戦いとは、指一本動かさぬまま決着をつけてこそですわ」
メルキュール「わたしもヴェヌスも、あんまり身体を動かすのは得意じゃないものね……」
マルス「だから太ンだ、メル姉は」
メルキュール「が、がーんっ!?お姉ちゃん、太ってる……!?」
ジュピテル「ウン。主におっぱいが」
サテュルヌ「多分にやっかみの含有された発言ですな、五の姉上」
メルキュール「ダイエットした方がいいかしら?まずジャージを買って来なくちゃ……」
マルス「アズキ色のヤツな」
ヴェヌス「ジャージとか、醜さの極致ですからどうかおやめになってくださいな」
ジュピテル「ところで話は戻るけど、やっぱりガチンコはいーよねってゆー」
サテュルヌ「そうですな。とは申せど吾は刀で闘いますが」
マルス「ストリー○ファイターの中で、ひとりだけサ○スピみたいな」
ジュピテル「格闘ゲーム的なものの考え方すると、誰がダイヤグラム上位なのかなー?」
マルス「ソレイユは初心者向けでクセのねェスタンダードキャラだな。強さ的に中の下くらいの」
ヴェヌス「わたくしは設置系遠距離射撃テクニカルキャラですかしら」
ジュピテル「難しいけど使いこなせば強いってカンジ?ボクはお手軽強キャラで!」
サテュルヌ「続編で調整が入って弱体化するパターンですな。吾は中の上〜上の下くらいで善しと致しましょうぞ」
マルス「待ちに徹するとやたら強くて敬遠されるタイプだな」
ヴェヌス「ラ・テールはソレイユの上位互換で、メルキュールお姉さまは必殺技に依存する感じでしょうか」
マルス「オレは?」
ジュピテル「満場一致で投げキャラ」
マルス「あーあー、ワカってたよ畜生!レバー一回転すっぞコラァ!」
メルキュール「ではでは、また次回〜☆」
ソレイユ(最初のコンセプトはロッ○マンだったはずですが……。ともかく出そびれました……!)
ラ・テール「あたしは隠しコマンドで使えるよーになるボスキャラ扱いでヨロシク!」
0138創る名無しに見る名無し
2016/08/24(水) 01:10:55.00ID:JnLNe2Doそれでも対消滅の余波でソレイユは倒せるし、オリジンやこの施設も吹き飛ぶという結果は変わらないだろう。
なのにオリジンが敢えてそれをしないのは、執着があるからだ。
メネクに認められるという望みが叶わなくなった今、せめてソレイユに直接神剣を当てて上回ることによって、
「錬金人類に勝った。最高傑作になった。仇を取った」という優越感や満足感に浸りながら死にたいのだ。恐らくは。
だから剣を床やらに当てることも、防御に使用することもしないのだろう。だが、それも今だけの話だ。
追い詰められれば恐らくそれもやる。敗北するぐらいならば引き分けにしてやると、
いや、私を止められなかったのだからむしろ錬金人類の敗北だ、そんなことを思って即座に刀身を床や壁や自分に押し当てるだろう。
だとすれば、そんなことを考える間すらも与えず動きを封じなければならないのではないか)
絶凍刃の能力を使うのはどうか。
オリジンを瞬間的に凍らせたり、あるいは冷気によって動きを鈍らせるなどすれば、
下手に向って行くよりも安全に無力化できるかもしれない。動きを止めたり鈍らせたのち、神剣を奪い取ってしまえば勝ちだ。
能力による封殺が難しくても、絶凍刃ならサテュルヌ姉さまから受け継いだ技も使える。
オリジンも“そこそこ”速いようだが、なんせサテュルヌ姉さまの技は神速。充分立ち向かっていけるだろう。
加えて、先程の回し蹴りが通ったことから、意外性を突いた攻撃にオリジンは弱いと見える。
居合という特殊な戦闘スタイルから繰り出される抜刀は、十分にオリジンの意表を突いた攻撃になるだろう。
それでどうにか一撃で戦闘不能にして、神剣を無効化できれば、と思う。
0139創る名無しに見る名無し
2016/08/24(水) 21:56:03.39ID:NjLjgkKnしかも激高して自爆覚悟ときてる
ここで思い付くいい一発逆転のアイデアは……
ない。
全くといっていい程ない。
思い付かない。
なんにもでてこない!
度重なる身体強化を施したオリジンの機動性能は次第にソレイユに肉薄し、その身に刃を触れさせればそれで終わる。
ほんの少し、撫でるだけでいいのだ。ああ。ジリ貧。負け確。ハードラックとダンスっちまった。もうダメだ…おしまいだぁ……
なーんつってなぁ!
どうだ束の間の万能感は!自信、昂揚、慢心!恍惚!
そしてかつてない油断!
こいつは死にゆくアンタへの手向けだ。
なぁ、アンタと一緒に来たエリクシアンは、目の前のひとりだけだったか、オリジン?
俺たちの会話はインカムで相互通信されている。
自分の探すべき相手がいないってわかったら、アンタならどうするね。
無意味な捜索なんて誰もするわけがないのだ。
だから畢竟、仲間と合流しようってことになるよなぁ?
……後ろを見ろマヌケーッ!
(……というフェイクをかます)
0140ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/25(木) 18:12:28.37ID:cRXPaKy7>>138
オリジンの持つ『神剣アポクリファ』の刃、その切っ先が、幾度もわたしの身体すれすれを薙いでゆく。
わずか薄皮一枚、髪の毛一筋でも触れてしまえば、すべてが終わる終焉の刃。
圧倒的に不利な状況の中、ただひとつだけわたしに有利に働いていることがあるとしたら――
それは『オリジンが近接戦闘に慣れていない』ということ。
完全無欠のインファイターであったマルス姉さまや、圧倒的な速さですべてを斬断するサテュルヌ姉さま。
マルス姉さまの力強さとサテュルヌ姉さまの速さを兼ね備えた、ジュピテル姉さま……。
そんな姉さまたちに比べ、オリジンの振るう刃は明らかに劣っている。
わたしは先程、『機械化人類(メカニゼイター)』の基本戦法は遠距離からの射撃と言いました。
そのセオリーは、オリジンであっても例外ではないということ……。
神剣アポクリファを握るのがもし、わたしの姉たちであったなら。わたしはとっくに消し炭になっています。
「く……、この……!」
怒りと憎しみに端正な顔を歪め、オリジンが一気呵成に攻めかかってくる。
けれど、その剣はわたしには当たらない。そして――
セキュリティ解除シーケンス発動、特殊兵装を開放!
EXW-055S 絶凍刃『サテュルヌ・タンペート・ド・ネージュ』!
サテュルヌ姉さまの、万物万象を凍らせる刃。そして姉さまの神速を起動!
わたしはオリジンが剣を振り下ろした瞬間、その背後に目にも止まらぬ速度で回り込むと、居合の構えから抜刀しました。
ビッ!――ビシュッ!
絶凍刃の冷たい刀身が、がら空きのオリジンの背と右の脹脛に命中する。右の前進翼が、脹脛が、バチバチと火花を散らす。
オリジンはすぐに振り向いて神剣を横薙ぎに振るものの、それも当たりはしない。神剣が斬ったのは、わたしがかつていた場所。
その頃には、わたしはもう移動と――次の攻撃を終了している!
ザギュッ!
オリジンの左の太股を深く斬る。そして、背のバーニアも。こちらは速度を生かして立ち回り、相手の機動力を徹底的に殺す戦法!
バーニアが冷気によって凍結し、その機能を停止する。
これでもう、オリジンに高機動戦闘(ハイ・ベロシティ・コンバット)は不可能!
わたしの動きにはついて来られない……!
「ガッ!……そ、それは……ミス・サテュルヌの……!?」
そう……。わたしの姉さまの武器。そして、わたしの姉さまの戦い方です。
あなたは言いましたね、オリジン。あなたは自己改造によって『錬金人類(エリクシアン)』を上回る力を手に入れたと。
自己改造……。自らの身体を改造することで、そこまでの力を手に入れた。それは物凄い精神力と、意思のなせるわざなのでしょう。
でも――。
わたしは、ひとりじゃない。
わたしのこの身体には、五人の姉さまから受け継いだ戦いがある。武器がある。――想いがある。
五人の心を、命を背負っている!
ひとりぼっちのあなたには……絶対に!負けはしない!
0141ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/25(木) 18:15:44.57ID:cRXPaKy7「何が……、何が五人の心ですか!そんなものなど、なんの意味もありはしない!」
「わたしの、ドクターを想う気持ちに比べれば――!」
一瞬腰を屈めて跳躍し、剣を大きく振り上げてオリジンが襲い掛かってくる。
鬼気迫る表情。『錬金人類(エリクシアン)』に対する、激しい敵意。
今までオリジンから聞いたことを鑑みれば、オリジンがどれだけ過酷な道を歩いていたのかがわかります。
愛するひとに失敗作と断じられ、それでも希望を捨てずに、かのひとを追い求め続けた。
愛するひとの足跡を追った。愛するひとの作った作品を破壊し、自分が一番なのだと主張し続けた。
それは、孤独な闘い。ただ再会のときだけを夢見て――ただそれだけを心の拠り所とした、終わりのない戦い。
でも。
戦いの果てに待っていたのは、報われない終局……。
もし、わたしに背負うものが何もなかったとしたら。
そんなオリジンの身の上に同情し、刃にかかっていたかもしれません。
わたしが滅びることで、オリジンの寂しい魂が少しでも救われるのなら、と――。
ただ、今のわたしはそうではありません。
わたしには、姉たちの遺志に報いる義務がある。この世界を守る役目がある。
そして――Dominusをお護りしたいという、望みがある!!
オリジン!あなたを倒して……わたしは!前へと進みます!
「ふざけたことを!」
オリジンが繰り出す剣を避け、わたしは更に攻撃を加える。
絶凍刃を喰らったオリジンの装甲が凍り付き、白く輝く――。
「わたしは!わたしは、あなたたちを倒さなければならないんです!」
「でなければ!わたしの今までがすべて無駄になってしまう!ドクターの努力が、叡智が、無為なものになってしまう!」
「わたしはドクターがこの世界に生み出したものを、遺していかなければならない!ドクターの成果を知らしめなければならない!」
「ドクターが、わたしのあのひとが……この世に存在した、その証を!世界中の人間に教えてやらなくてはならない!」
「それが……、それこそが!あのひとへ捧げる、わたしの愛のかたち――!」
……愛の……
……愛の、かたち……。
ザヒュッ!
ぁぐッ……!しまった、つい気を取られて……!
オリジンの左手首に装着されたビームエッジが、わたしのアサルトスーツの腹部を浅く切り裂く。
危なかった……これが神剣アポクリファだったら、今頃わたしやDominusは……!
「とどめ……!滅びなさいミス・ソレイユ、このわたしと一緒に!そして――」
「冥府でドクターに証言なさい!自分は確かに、オリジンによって殺されたと!!」
攻撃を受けて怯んだわたしへ、一気に決着をつけるべくオリジンが迫る。
このままでは、本当に決死の覚悟のオリジンに押し切られてしまう!
そう思った瞬間。
「――!?」
戦場に響き渡る、Dominusの声。その声に反応し、オリジンが一瞬だけわたしから目を離す。
――ああ……!Dominus!
0142ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/25(木) 18:20:50.69ID:cRXPaKy7でも、ラ・テール姉さまの姿はない。それは当然の話――姉さまはここに戻って来てなどいないのですから。
わたしたちがインカムや内蔵された通信端末で常に連絡を取り合っているのは事実。
でも、姉さまがこの場へ戻ってきた……というのは、Dominusのブラフ!
オリジンもすぐにそれに気付いたらしく、視線をこちらへと戻す。
それは、瞬きするほどの間。時間にして一秒以下。
……けれど。
サテュルヌ姉さまの神速を使うわたしにとっては、充分に過ぎる機会!
Dominusが下さった千載一遇の好機!絶対に無駄にはしない!
絶凍刃を鞘に納め、居合の構えを取る。迫るオリジンの脇をすり抜けるようにしながら、解き放つ絶対の剣技――
一閃・血ノ華!
瞬刻を経て、わたしとオリジンの身体が交差しすれ違う。
わたしはオリジンの背後で絶凍刃をくるりと反転させると、ゆっくり納刀しました。
パチリ……と鯉口が鳴ると同時、
ゴバッ!
オリジンの右脇腹から左肩までが、逆袈裟の軌跡にばっくりと口を開ける。人工血液が濁流のように迸る。
大きく双眸を見開き、全身をびくびくっと痙攣させたオリジンの手から、神剣が落ちる。
わたしは咄嗟に絶凍刃の鞘で神剣の柄を高く打ち上げると、素早く手を伸ばしてそれをキャッチしました。
すぐに、刃を形成するパワーユニットをオフに。これで、神剣は無力化しました。
「……あぁ……」
呆然とした様子で、顔を軽く上向けたオリジンが声を漏らす。
「……やはり……。やはり、勝てないのですね……。わたしは……『機械化人類(メカニゼイター)』は……」
「ずっと……ずっと……。最期まで……『錬金人類(エリクシアン)』の後塵を……拝した、まま――」
……オリジン……。
傷口から火花と人工血液を噴き出しながら、オリジンがよた、よた、と覚束ない足取りで歩いてゆく。
その先には、自らがとどめを刺したアリシアの――ドクター・メネクの脳を納めたボディ。
「わかって……いました……。どれほど……自己改造を施したところで……わたしは、『錬金人類(エリクシアン)』には勝てないのだと……」
「でも……。それでも、わたしは戦わなければならなかった……。ドクターの……功績を、この世に――遺す、ために……」
「けれど……それも、できなかった……。ドクター、わたしは……やっぱり、失敗作……ですね……」
オリジンの目はもう虚ろで、どこを見ているのかもわからない。けれど、その足は確かにドクターの亡骸へと向かっている。
やがてそこへたどり着くと、オリジンはぺたりと座り込み、そっとドクターの脳の入った透明のフードを両腕で抱きしめました。
「ドクター……。わたしを……罵って下さってかまいません……。ガラクタと、失敗作と……言って頂いてかまいません……」
「……だから……」
「…………だから。どうか……あなたの、おそば、に―――――」
長い間待ち望んだ、想い焦がれた邂逅の果て。
愛しいドクター・メネクの亡骸を、愛情いっぱいに抱きしめながら。
オリジンはゆっくりと目を閉じ――それきり、動かなくなりました。
0143創る名無しに見る名無し
2016/08/25(木) 23:52:31.46ID:PS2ZGVinふたり揃って死にかけたが、どうやったってこの機械化人類を憎みきれん
なんだがジュピテルと対峙したときを思い出すよ。あの娘も"父親"に強く執着していたように思う
人も機械化人類も錬金人類も、中身はあんまり変わらんのかもしれないな
0144創る名無しに見る名無し
2016/08/26(金) 00:06:57.40ID:IfF7rlxv個人的にはイケイケ炎使いのスタンダードキャラのがイメージ強いゾ
草g京(KOF)、溝口誠(ファイターズヒストリー)、風魔小太郎(ワーヒー)、風間火月(サムスピ)あたりで
0145ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/29(月) 19:32:41.48ID:2jjNbdHXこれでもう、トゥーレ協会は瓦解したも同然……。戦いもおしまい。
と、思った矢先。
ドクター・メネクの用意していた最後の遺産が、わたしたちの前に現れる――。
ずっと秘されていた真実。ビュトス機関の、トロイア計画の、そして……三魔術師の真意。
それは、受け入れるにはあまりに重大な、そして過酷な現実。
突きつけられた選択に、わたしは――
次回、錬金乙女エリクシアン
『神人類』
ご期待ください。
〜次回放送日は8月30日の予定です〜
0146創る名無しに見る名無し
2016/08/29(月) 20:24:26.44ID:MxIr6Olnたちまちぜんらになると
どかっとそこへすわりこんでしまった
そしてひといきついてからこういった
――これいわゆるぜんらたいき、と
0147創る名無しに見る名無し
2016/08/29(月) 22:22:39.64ID:12ylgLrUウェストコット師が創ったのは機械化人類で、メイザース師が創ったのは錬金人類と分かってるけど
ウッドマン師の創った物に関してだけは、何か創ってる風なのに言及されてないみたいだから
でもあれだぞ、色々有りすぎてもう並大抵のことでは驚けないぞ俺は
「実はウッドマン師がデミウルゴス作ってました!しかも人間をベースにしてます!」
とか言ってきてもせいぜい気絶するぐらいだぞ
0148ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/30(火) 19:01:04.59ID:UIpYZTg6>>143
そう……ですね。
オリジンの心には、なんの悪意も邪念も……野望もなかった。
ただ、一途にドクター・メネクを愛した。全身全霊で想った。
やり方こそ間違っていたのかもしれませんが――それは、ひたすらに至純な熱情。
……Dominus。
ひととは、これほどまでに他者を愛し、慈しめるものなのですね。
わたしは愛を知りません。ひとを愛するという行為をしたことがありません。
だから、オリジンの気持ちはわかりません。
でも。
もし叶うのなら、わたしも……こんなに人を愛してみたい。
いつか……その願いは叶うでしょうか?
「ソレイユ!Dominus!」
不意に、前方で声。見れば、ラ・テール姉さまがこちらへと駆けてくる。
姉さま……。決着はつきました。
わたしがそう言うと、姉さまはこくりと小さく頷く。
「……途中から見てたよ。つらい戦いだったね、お疲れさまソレイユ……Dominusも」
「でも、これでもうトゥーレ協会は何もできなくなるはず。『機械化人類(メカニゼイター)』のプラントも、もうおしまい」
「さて。ソレイユとDominusのおかげで、当初の目的だった掃除はほとんど終わったけど――」
「ふたりとも、もうバカンスなんて気分じゃないって顔してるね。アハハ……」
姉さまが僅かに眉を下げて笑う。
すみません、姉さま。せっかく気を遣って下さったのに。
「いいよ。さっき、機関に迎えの要請をしておいたから……少しすれば飛行機が来ると思う。今度は爆撃機じゃないやつがね」
「ここは地下だから、空気が悪いね……地上に出よう。ソレイユ、Dominusをお願い」
はい、姉さま。ではDominus、行きましょう。
姉さまがまず最初に踵を返し、わたしたちがそれに倣う。
そして、わたしたちが戦場となった空間を去ろうとしたとき。
――ザッ。ザザ、ザザザ――
上方に設置されている巨大スクリーンが、突然再起動しました。
0149ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/30(火) 19:05:17.44ID:UIpYZTg6〈――ク……ククッ、ククククククク……〉
低く、地の底から響くかのような笑い声。
わたしたちが振り返ると、暗転したはずのスクリーンが再起動し、人の影が映し出されているのが見えました。
ひどく不鮮明で、乱れた画像ですが――それを見誤ることはありません。
あれは……ドクター・メネク!
ノイズの入った映像の中、先程とまったく変わらないドクターが、嘲りの笑みをわたしたちへと向けている。
そんな……。ドクター・メネクは、アリシアの死と共に亡くなったはずでは……?
「あれ……録画だよ」
わたしの隣で、姉さまが指摘する。
〈テメエらがこの映像を観るってことは、オレは今頃おっ死んでるってことだ。結局、オレの技術はビュトス機関には届かないのか……〉
〈いいや。オレの最高傑作、アリシアは負けねえ。『錬金人類(エリクシアン)』ごときに遅れをとることはねえ!〉
〈だがな……オレは『絶対』なんてモンは信じねえ。何事にも例外はある……だからこそ、この映像を遺す〉
〈もしもアリシアに、そしてオレに万一のことがあった場合――勝者に真実を教えるためにな〉
これは……言うなれば、ドクターの遺言ビデオ……?
自らが命を落とした場合のことを想定して、予めこんなものを製作していたなんて……。
〈オレに勝った者どもよ。テメエらは何のためにここへ来た?正義のためか?平和のためか?それとも欲望のためか?〉
〈しかしだ……そんなモンはクソだ。テメエらがどんなに御大層な大義を抱いて『ル=リエー』に来たのかは知らねえが――〉
〈テメエらは所詮、働きアリに過ぎねえのさ。女王アリ……ビュトス機関にいいように使われる消耗品よ!〉
〈テメエらは自分の意思でここへ来たんじゃねえ。ビュトス機関に踊らされ、まんまと奴らの手駒として扱われているだけだ〉
〈いいや……そいつはテメエらだけに限った話じゃねえ。すべてだ!世界中の国家も、トゥーレ協会も、そしてこのオレさえも……〉
〈この地球上の何もかもが、ビュトス機関の敷いたレールの上を歩かされているのさ。操り人形のようにな!〉
……ドクター・メネク……。
〈『トロイア計画』を知っているか?知っているだろうな。ここへ乗り込んで、オレを殺すくらいの連中だ〉
〈人類の間引き計画。地球人類73億人を、適正とされる5億人まで減らそうというエゴの極致〉
〈メイザース、ウェストコット、ウッドマンの三魔術師は、それぞれ新人類を生み出すことでそれらに旧人類の行く末を決めさせようと考えた〉
〈計画に際し、バイオテクノロジーの天才メイザースは、ヒトの遺伝子に手を加えた『錬金人類(エリクシアン)』を〉
〈メカトロニクスの碩学ウェストコットは、人間に機械的改造を施した『機械化人類(メカニゼイター)』を生み出した〉
〈では、ウッドマンは?ウッドマンはなにを生み出したと思う?〉
〈ここへ来るほどのテメエらだ。薄々――いいや、とっくに気が付いているんじゃねえか?〉
〈ゲッハハハ……ゲハハハハハハハハッ!そォだ……その通り!テメエらの予想通り!〉
〈ヤツが生み出したのは――昆虫のように高度な組織性と社会性を有する、異形の生命体。神の名を与えられた、新たな種族〉
〈――『神人類(デミウルゴス)』――!!〉
……デ……
……『神人類(デミウルゴス)』……!
0150ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/08/30(火) 19:10:24.61ID:UIpYZTg6〈そりゃそうだ。いくら今まで世界を陰から牛耳ってきた身分でも、全人類の93パーセントを殺すなんて軽々しく出来るはずがねえ〉
〈だが、ウッドマンは違った。ウッドマンは『トロイア計画』の迅速な発動を推進し、世界中にデミウルゴスをバラ撒いた〉
〈それを阻止するため、『錬金人類(エリクシアン)』と『機械化人類(メカニゼイター)』もまた、全世界に散った〉
〈今の世界の状態……正体不明の侵略者デミウルゴスと錬金人類たちとの戦いは、つまるところ盛大な内輪もめ――〉
〈オレたち人類は、三魔術師のワリを食っただけってこった!ゲハハハハハハハハハッ!〉
……そ、そんな……。
デミウルゴスが、ビュトス機関の創造物……。わたしたち錬金人類と同じ、人類を導く新人類……?
でも。それなら、ジュピテル姉さまが人の心を操るデミウルゴスを使っていた理由も説明がつく。
メルキュール姉さまが、デミウルゴスを味方であるかのように言っていたことも……。
〈オレは恐ろしかった。たった三人の人間が、この地球をメチャクチャにしちまったんだぜ?〉
〈ヤツらにかかれば、大国だなんてふんぞり返ってるアメリカや中国、ロシアだって一瞬で消し炭だ。ヤツらはまさに神だった〉
〈機関にいる限り、オレはそんな連中の操り人形にすぎない……。自分の力で生きているんじゃねえ、生かされている……〉
〈オレにはそれが耐えられなかった。オレはオレの生を!自らの手で掴み取る!だからこそ――〉
だからこそ研究の成果を持ってビュトス機関を出奔し、敢えて敵対組織に居場所を求めた……。
〈……だが、それも無駄だったのかもしれねえ。どこまで行っても、オレはヤツらの手の上から抜け出せねえのかもしれねえ〉
〈同じビュトス機関の操り人形である、テメエらに殺されるなら尚更な……〉
僅かに顔を俯かせるドクター。けれど、すぐに勢いよく椅子から立ち上がる。
カメラが僅かにアングルを変える。椅子の背後に手術台のようなものと、たくさんの医療機械めいた設備が見える。
〈だがな。だが!オレは負けたりなんかしねえ!必ず、オレの最高傑作が!アリシアが、すべてをブチ壊す!〉
〈連中の計画も!『神人類(デミウルゴス)』も!『錬金人類(エリクシアン)』も!〉
〈そして――オレの作った真の『機械化人類(メカニゼイター)』が!最も優れているということを証明してやる!〉
椅子から立ち上がったドクターが、手術台へと歩いてゆく。
〈オレの考案した『トリロデバイスシステム』……あれだけは、機関の連中も禁忌と言って手を出さなかった〉
〈だが、理論上はこれ以上のシステムはねえ。既に摘出してある総統の脳ミソと、アリシア自身の脳ミソ〉
〈そしてこのオレの脳ミソを一体の機体に組み込み、完全な『機械化人類(メカニゼイター)』を作り上げる!〉
〈こんな遺書めいたビデオレターなど必要なかったということを――オレ自身が知らしめてやる!ゲッハハ……ゲハハハハハ―――ッ!!〉
――ブツン――
……Dominus……。
わたしは……わたしたちは……人類の平和と安寧の為、発展と輝かしい未来のために……戦ってきたのですよね……?
わたしの敵は……誰だったのですか?デミウルゴスが師の創造した者であるのなら――
わたしは……わたしの、今までは……!!
「…………」
俯いて強く拳を握りしめ、奥歯を噛みしめるわたし。
そんなわたしの姿を、ラ・テール姉さまは何も言わず、ただ見つめていました。
メルキュール「こんばんは〜♪メルキュールの『エリクシアンおまけ講座』のお時間ですよぉ〜!」
ヴェヌス「こんなにシリアスな引きの後で、このノリはどうかと思いますけれど」
ジュピテル「いやいや、暗くなりがちな本編のノリをおまけ講座で中和するっ!これがボクたちのジャスティス!」
マルス「ただ単に出たいだけだろ」
サテュルヌ「錬金乙女エリクシアンにおける一服の清涼剤、それがおまけ講座と認識しておりますれば」
ヴェヌス「物は言いようですわね……」
メルキュール「今日のおハガキは、ポイントF-77584にお住まいの>>144さん!ありがとうございます☆」
マルス「ジュピテルに投げキャラと言われて思ったけどよ、オレやっぱ自分で投げキャラじゃねーなと思うわ」
サテュルヌ「とかく火力があって暴れまわる系のキャラクターかと」
ジュピテル「んー……そーかも。攻めると強いけど守りに入ると弱い、的な?」
サテュルヌ「吾とは真逆のキャラ性能ですな。往々にして格ゲーとは待ちプレイが強いもの、勝負は頂きました。ふっふ」
マルス「抜かせコラァ!属性的には圧倒的にオレが勝ってンだ!待ちプレイなンぞ無理矢理こじ開けてやらァ!」
ジュピテル「適当に暴れてるだけで強いキャラっているよねー」
ヴェヌス「でも、そういうキャラはすぐに対策されるもの。出来てせいぜい初見殺しくらいのものですわ」
マルス「オレを強キャラとして扱う気がサラサラねーな、テメーら」
ジュピテル「攻撃力『だけ』は高いってゆー」
サテュルヌ「まさに本編での扱いのまま、ということで」
メルキュール「次のおハガキはポイントN-21228にお住まいの>>146さん!ありがとうございます♪」
ヴェヌス「なっ、ななななんで全裸ですの!?早く服を着なさいな!」
ジュピテル「リアル全裸待機って初めて見た」
サテュルヌ「油を塗り込んだようにテカテカしておりますな」
メルキュール「それだけ期待してくれているということかしら?本当に嬉しいわね、お姉ちゃんも頑張らなくちゃ!」
マルス「や、メル姉は頑張らなくていいから」
サテュルヌ「斯くの如く、名無しDominusの応援によって当番組は成り立っておる」
ジュピテル「みんながソレイユに指示したり、おまけ講座にハガキを送ってくれれば、それだけこっちも頑張れるってことだよね」
ヴェヌス「一連の真相も明らかになり、物語は着々と終わりへと向かっておりますわ」
メルキュール「物語が完結して、みなさんとお別れしちゃうのは悲しいけれど……くすん」
マルス「でも、最後までブッ飛ばして行くからよ!テメェらDominusも、ちゃンとついて来てくれよな!」
メルキュール「では、また次回〜☆」
0152創る名無しに見る名無し
2016/08/30(火) 21:52:51.81ID:ZqRy08Yeその三人を遠くから見つめる――目がないので正確には見てはいない――小さな影があった。
ジュピテルがソレイユ達と戦ったあの日、一体だけジュピテルにとり憑かずに別行動をしていた
黒球のデミウルゴスである。
彼らは対デミウルゴス用のレーダーに感知されないため、非常に高い隠密性を誇る。
その隠密性を生かし、この島での戦いの一部始終を誰にも悟られることなく観察していたのだ。
決着し、これ以上のデータは集まらないと判断したのか黒球は音もなく去っていく。
その帰路も、これまで同様きっと誰にも悟られることはないだろう。
0153創る名無しに見る名無し
2016/08/31(水) 01:13:51.24ID:ArBfuWo6総務省の、『憲法改正国民投票法』、でググって見てください。日本国憲法改正の
国民投票実施のためにまず、『国会の発議』、を速やかに行いましょう。お願い致します。☆
0154ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/01(木) 19:06:56.97ID:X9A/qO1Z>>152
トゥーレ協会との戦いから、何日かの時間が過ぎました。
夏休みは終わり、学校も新学期。休み中には会えなかったクラスメイトの皆さんとの、久しぶりの邂逅。
一ヶ月ぶりに見るともだちの顔は、どれも真っ黒に日焼けしていて。
どれだけこの夏を楽しんだかが、よくわかります。
本来であれば、嬉しいはずの再会。楽しいはずの新学期――
でも。わたしの心は晴れない……。
トゥーレ協会の最深部で、ドクター・メネクから聞かされた真実が。
わたしの心に、棘のように突き刺さっている。
人類の敵、殲滅者デミウルゴスがどこから来たのか。何を目的としているのか。
それは、今までずっと不明とされてきました。地球外からやって来た侵略者ではないか、という声さえ。
でも。その正体が、ウッドマン師の作り上げた新人類の一角だったなんて……。
わたしは今までずっと、ビュトス機関の命令でデミウルゴスと戦ってきました。
人類の未来のために。進歩と発展のために。
けれど。そのデミウルゴスが、同じビュトス機関の創造物。旧人類によって作られた、わたしたちと同じ存在だなんて――。
「元気ないね、ソレイユ」
放課後、屋上で風に当たりながら思案に暮れているわたしとDominusに、制服姿のラ・テール姉さまが話しかけてくる。
その手には、苺ミルクの紙パックがみっつ。そのうちふたつをわたしとDominusに突き出すと、姉さまは柵に背を預けました。
「ドクター・メネクの遺言を聞いてから、ずっとふさぎ込んじゃって。みんな心配してたよ?ソレイユどうかしたの?って」
――すみません、姉さま。
「あたしに謝ってもしょうがないよ。心配してたのはクラスのみんななんだから。……もちろん、あたしも心配してるけど」
「トゥーレ協会に連れて行くのは、ちょっと早かったかなあ。でも、あれはソレイユに見てもらわなくちゃならなかったから」
……トゥーレ協会の地下の、改造プラント……ですか?
「そ。世の中には、貧困にあえぐ人々が沢山いる。悪いことだって、死ぬってわかってても、その選択を選ぶ他ない人たちがいる」
「そして、そんな弱い人たちを食い物にして、さらに悪を。貧富の差を。死を拡散しようとしている者がいる――」
「それを、ソレイユとDominusに知ってもらいたかったからね」
姉さまが紙パックにストローを挿し、苺ミルクを飲む。
でも。トゥーレ協会はもう機関が接収しましたし、そのような組織はもう、消滅したのでは……?
「トゥーレ協会は氷山の一角だよ。まだまだ、世の中には大なり小なり似たような組織があり、密かに悪を企んでる」
「あたしたちは、それを全部キレイにしていかなくちゃならない。それが『救星主』のなすべき仕事だから」
「……人類の。黄金の夜明けのために」
いつもにこにこと朗らかに笑っている姉さまの、いつにない真面目な声。
……悪を。貧困を、死を根絶する――。そのことに、なんの異論もありません。
でも……。
0155ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/01(木) 19:09:44.34ID:X9A/qO1Zでも。デミウルゴスの存在は?人類を守護し、輝ける未来へと導くはずのビュトス機関が、人類を殲滅する生命体を創造するなんて!
そんなの、矛盾しているではありませんか……?
わたしには。機関の、そして師のお考えがわかりません……!
「ビュトス機関は、いつだって人類のことを考えてる。人類の発展と進歩、歩むべき未来のことだけを考えてるよ」
「それは。それだけは、はっきり断言できる。人類発展機関『ビュトス』は――常に人類の味方だよ」
……それなら……!
「ねえ、ソレイユ。進歩って、繁栄って、いったいなんなのかな?」
……え?
「ただ人口が増えること。この世界に満ちていくこと。それが繁栄ってことでいいのかな」
「人類は今も着々と増え続け、2100年には世界人口が109億人に達するっていう予測も出てる。でも、それって幸せなこと?」
「人が増えれば増えるほど資源は濫用され、飢餓は広まってゆく。不幸になる人間も、それだけ増えていく」
「不幸な人間を食い物にして、さらに不幸を広めようとする人間も――。それもこれもすべて、人が多すぎるからなんだよ」
「ほら、アニメでやってたじゃない?増えすぎた人口を懸念して、地球連邦?が宇宙移民を送り出す話」
「コロニーに追放された宇宙移民――スペースノイドはやがて連邦政府に反発し、戦争を起こす……っていう筋書きだったよね」
「人が増えすぎれば、そこには哀しみしか生まれない。だから――」
だから。全人類の93パーセントを葬り去り、地球環境と人口のバランスを取ろうというのですか?
「そうだよ」
姉さまが平然と頷く。
……そんなこと……!そんな恐ろしいこと、絶対に……!
「ね。それって、そんなに悪いこと?だって、人類は昔から他の生物に対してそうしてきたよね?」
「例えば、虫が大量発生したならそれを駆除する。獣が増えすぎたなら、それを適正まで減らす」
「虫や獣は駆除してもいいけど、人間は例外。なんて、それこそ人間のエゴじゃない?」
「機関は大きな枠組みで物事を捉えてる。確かに、大部分の人間を間引くのは大変なことだけど……」
「一時の痛みが、必ず後の進歩と発展を促すって信じてる。だからこそ『トロイア計画』を立案したんだ」
で、でも、メイザース師とウェストコット師は、計画の実行に消極的だったと――
「そうだよ。そのために、父さんたちはわたしたち三つの新人類を作った」
「自分たちに代わって計画を実行する、代理人としてね」
……では……。姉さまは最初から、デミウルゴスの正体も……?
「知ってたよ」
!
「言ったでしょ?あたしはラボで『すべてを教育された』って。その中にはトロイア計画も、あたしたちのことも、全部入ってる」
「その上で――あたしは『救星主』として、やるべきことをやらなくちゃならないって。そう、決めたんだ」
0156ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/01(木) 19:12:35.49ID:X9A/qO1Z「それは。出来ないよ」
「メイザース父さんとウェストコット父さんは、確かに消極的ではあるんだけど。『消極的』と『否定的』は違う。わかるよね」
「これでも、ずっと延期してきたんだよ?準備が整う前にウッドマン父さんがデミウルゴスを解き放っちゃったから、予定が狂っちゃったけど」
「あたしが他の姉妹五人を倒し、『救星主』として覚醒するのが、トロイア計画開始の合図」
「その時点で、あたしを頂点として『機械化人類(メカニゼイター)』と『神人類(デミウルゴス)が人類の粛清を開始する――」
「それが、当初のプラン。でも、それにふたつの予期せぬ出来事が起こった。ひとつは今言った通り」
「なかなか腰を上げようとしないふたりに業を煮やしたウッドマン父さんが、独断でデミウルゴスを解き放ってしまった」
「まだ人類の粛清を決断できなかったメイザース父さんとウェストコット父さんは、やむなくあたしたちをデミウルゴス討伐に差し向けた」
「これで、計画は大きく横道に逸れてしまった。そして、もうひとつの想定外の出来事は……」
……姉さまが。本来起動することのないはずだった、わたしを目覚めさせた――。
「……そう」
「ソレイユが起動したことで、本来ひとりでなければならない救星主候補がふたりになってしまった」
「と同時、試作体だった五人の姉妹たちも機関を離れ、各々自由に行動するようになった……」
「機関としては、それも大幅なタイムロスだったみたいだね。メイザース父さんは、計画が伸びてちょっと安心してたみたいだけど」
「でも……もう、すべての不具合は修正され、計画発動の準備は整った」
「あとは……トロイア計画の。人類の粛清を実行するだけ――」
びょう、と不意に強い風がわたしたちの間を吹き抜け、白金と漆黒の髪を嬲ってゆく。
夕照を背にして佇むラ・テール姉さまの影が、屋上に色濃くその輪郭を落とす。
師は、人類粛清計画たる『トロイア計画』を起草するも、それを実行に移すことに恐怖した……。
地球人類の約93パーセントを殺すという行為に戦慄した。自らの手が血にまみれることを望まなかった。
だから、執行者として『錬金人類(エリクシアン)』『機械化人類(メカニゼイター)』『神人類(デミウルゴス)』を造った。
人類をよりよい未来へと歩ませる導き手、などという言葉は建前。
わたしたちは、人類にとって死神以外の何者でもない――!
「そうかもね。あたしたちは、人類にとっての死神……けれど、あたしはそれでも構わない」
「なぜなら、それが。結果的に人類の繁栄を、輝かしい未来を作るために必要不可欠なことだってわかってるから」
「みんなが幸せになれるなら。この地球から貧困や争いや、悪が完全に根絶されるなら」
「――あたしは、どれだけでも血にまみれたっていい」
ラ・テール姉さまの、決意に満ちた言葉。
その力強さは、自らに課せられた『救星主』という宿命に殉じるという、強固な意志の表れ。
自らのなすべきことに、絶対の自信を持っているという証。
……けれど。わたしは……。
0157ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/01(木) 19:16:11.15ID:X9A/qO1Z「あたしが手を汚す。あたしが泥をかぶる。あたしが殺戮者として、大罪人として、人類殺しの汚名を着る――」
「残すべき5億人のリストは完成してる。デミウルゴスたちは、そのリストに載っていない人間を正確に抹殺する」
そこまで言うと、姉さまが不意に険しい表情を緩め、眉を下げて微笑む。
「あ!でも、心配しなくてもいいよ。ソレイユとDominusの周りの人たちは、ちゃんと5億人の中に入れてあるから」
「この学校の、ソレイユのともだち。先生。それから商店街の人たち――みんな、死なないから」
「ソレイユとDominusの幸せは、このあたしが。お姉ちゃんが絶対、絶対守ってみせるから!」
そう言って、姉さまが右手を差しのべてくる。
姉さまがこの学校へ編入してきたときと同じ、愛情にあふれた優しい笑顔。温かく、柔らかな手。
ラ・テール姉さまを執行者として、ビュトス機関は人類の大粛清を行なおうとしている。
増殖してゆく人類を矯正し、本来あるべき姿へと立ち戻らせるために。
この地球を護り、人類を護り、未来を護る……それが『救星主』の真の役割。
その行為はきっと正しい。この上ない正義であり、大義であり、人類の、この星の未来にとって有益なこと。
でも。
その手を、わたしは……どうしても取れない――!
「……そっか」
俯くわたしに対し、伸ばしていた手を下ろすと、姉さまはまたほのかに微笑みました。
少し寂しそうな、哀しそうな。どこか泣き顔のようにも見える微笑。
「理解されないってことは、わかってた。ソレイユは優しいから……きっと、反対するだろうなって」
「それでもいい。考えを改めろなんて言わない。あたしや機関に従えなんて、言うつもりもない」
「ただ……あたしがこれからやることは、怒りや憎しみのためじゃないってことだけは、わかってもらいたかったんだ」
「隠しごとはきらい。綺麗なところも、汚いところも、あたしの全部をソレイユには知っていてほしかった。……だから」
だから、わたしたちをトゥーレ協会まで導き、悪の存在とその所業を見せた上で、真相を打ち明けた……。
「そうだよ。だって……姉妹って、そういうものでしょ?」
「あたしはソレイユが好き。七人の中でも、特別。一番の妹だって想ってる……、愛してる」
「Dominus、あなたのことも好き。ソレイユをここまで導いてくれたあなたに、心の底から感謝してる」
「クラスのみんなも。商店街の人たちも。あなたたちが愛したものは全部!みんなみんな大好き!だから――」
ラ・テール姉さまは大きく両手を広げると、
「――“やる”よ」
そう、はっきりと言い放ちました。
0158ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/01(木) 19:18:25.08ID:X9A/qO1Z姉さまはそれ以上は機関や計画に関することを何も話そうとせず、いつもの朗らかな笑顔をわたしたちへ投げると、帰宅を促しました。
おうちへ帰って、夕飯を食べて。お風呂に入って。
いつもと変わらない時間を過ごして、夜も更けたころ――
自室の扉をノックする音に、わたしは目を覚ましました。
「ソレイユ、ゴメン。寝てた?」
扉を開けると、そこにはパジャマ姿で枕を胸に抱えた、ラ・テール姉さまの姿。
姉さま、どうしたのですか?こんな夜更けに……。
「ん……。たまには、姉妹水入らずで一緒に寝るのもいいかな、って」
「お邪魔しても。いい?」
はい、もちろんです姉さま。今、お布団を敷き……
「ううん。それより、一緒のベッドで寝ようよ」
そう言うと、姉さまはいそいそとわたしのベッドに上がって枕を並べました。
わたしのベッドはシングルで、ふたりで眠るには狭いですが……それでも宜しければ。
「いいよ、いいよ。いや……それがいい。それでいい」
ほとんど抱き合うような形で、わたしと姉さまが横になる。
お互いの顔が、間近に見える。息遣いが、上下する胸の動きが感じられる。
思えば、姉さまとこんなにも近くで触れ合ったことなんて。今まで一度もなかった――。
「昼間は驚かせちゃったね、ゴメン。ソレイユ」
「でもね……どうしても、話しておかなくちゃいけないことだったから。知っていてもらいたいことだったから」
わかっています、姉さま。
姉さまが嘘のつけない方だということ。隠しごとのできない方だということ。
わたしやDominusのことを、心から愛して下さっているということ。知っています。
その上で、もう一度訊かせてください。本当に……トロイア計画を中止することはできないのですか?
「……ゴメン」
「トロイア計画を実行するために、あたしは。六人の『錬金人類(エリクシアン)』は生まれた」
「それを中止するっていうことは……あたしたちが何のために生まれたのか、わからなくなっちゃうってこと」
「あたしたちの命が。存在が。なんの意味もないものになってしまうってことだから……」
そんなこと……!そんなことありません!
命はただ、そこにあるだけで尊い!在り続けること、それが命の意味なんです!
計画を実行しなかったからって、ラ・テール姉さまや――他の姉さまたちの存在が無意味になったりなんか……!
「……ゴメン」
もう幾度目かになる謝罪を、姉さまが囁くように告げる。
それは、決して折れぬ不退転の意思――
0159ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/01(木) 19:22:26.49ID:X9A/qO1Z「やっぱり優しいなあ。ソレイユは」
……わかりません。どうして、わたしがトロイア計画に拒絶感を抱くのか。
ビュトス機関によって生み出されたわたしも、本来なら計画に賛同してもおかしくない、いえ……賛同すべきだというのに。
それは、あるいは。粛清への忌避ではなくて……姉さまに手を汚してほしくない、という子供じみた理由に過ぎないのかも……。
「ありがとう、ソレイユ。そう言ってもらえるだけでも、あたしはすっごく嬉しい」
「ソレイユに優しい言葉をかけてもらったら、眠くなっちゃった。もう寝よう!おやすみ!」
そう言うなり、姉さまはタオルケットをかぶってわたしに背を向けてしまう。
あ、はい……。おやすみなさい、姉さま。
……そうして、わたしたちはひとつのベッドで朝まで眠る――
はず、だったのですが。
「ぐーぐー、すやすや!これは寝言だよー、寝言だから、誰かに聞かれちゃってもあたしは知らなーい!」
「誰も死なせない方法。今のまま、世界を維持する方法。ひとつだけあるんだよー!」
……え?
「計画にあたって、すべてのデミウルゴスは救星主の支配下に置かれるんだよー。覚醒した救星主はデミウルゴスを操れるんだー」
「だから、もしも救星主がふたりいて、お互いが別々の指示を出すと、デミウルゴスは混乱しちゃうんだー。ぐうぐう!」
「デミウルゴスには自死(アポトーシス)プログラムが組み込まれてるから、救星主の指示いかんでは勝手に死んじゃうんだよー」
「その上で、どこかにあるデミウルゴスの製造プラントを破壊してしまえば――」
デミウルゴスを、完全に駆逐することが……できる!
で、でも姉さま、どうしてそんなことをわたしに……?
「寝言寝言ー!ぐうぐう!」
す、すみません!姉さま……!
「でも、それは簡単なことじゃないよー。もうひとりの救星主は、もちろんそれを阻止しようとするし――」
「それは、ビュトス機関を敵に回すっていうこと。今までとは比較にならない戦いになるよ。もしかしたら死んじゃうかも」
「それでも。ソレイユが誰も死なせたくない、計画を阻止したいって言うのなら……」
「――あたしは、それを応援するよ。心から」
あぁ……、姉さま……!
わたしは背を向けた姉さまの身体に両腕を回すと、ぎゅっと強く抱きしめました。
やっぱり、このひとはわたしの姉さま。尊敬に足る、優しくて立派な、わたしの大好きな姉さま……!
「……ふふ」
「あたしも、あなたが大好きだよ……ソレイユ。あたしの大切な妹」
姉さまの身体のぬくもりに触れながら、わたしは眠りに落ちる。
そして――夜が明け、わたしが朝の到来に目を覚ましたとき。
姉さまの姿は、おうちから忽然と消え去っていました。
0160創る名無しに見る名無し
2016/09/01(木) 22:44:28.38ID:LKKHMGLV課せられた重責を分かち合う仲間が欲しかったのか、それとも寝言の案件――トロイア計画自体をストップさせるためか
それはまあいいだろう
とりあえず、ビュトスが一枚岩ではないのが救いだった
つけいる隙があるとすれば、そこだった
計画の即時凍結は不可能であったとしても、その実行を遅延させるよう説得はできるかもしれない
そもそも虐殺の執行者に、彼女らのような性格づけをした理由はなんだ
ソレイユもラテールも強大な力を持ちながら、一般的な感情と感覚をもっていて傍から見れば人間とそうは変わらない
そんな彼女らが計画の実行にあたって受けるであろう精神的な躊躇い。それを考慮に入れれば、明らかに不適切なセッティングに思える
3博士は自らの手を汚すことなく計画を進めるため、その執行代理人を創造した
だがその代理人自身にも、その計画の是非を問うような人格を設定した
この事実はやはり、特にメイザースにとっては、意識的にしろ無意識的にしろトロイア計画が望まれざるものだという認識の証左ではないのか……?
その点ウッドマンは完璧だった
トロイア計画の結実とは、ビュトスが神となり人類を完璧に管理するユートピア社会の実現である
神は人に非ず、人としての感情の介入があってはならぬ
そして彼は、まさに無慈悲なる神のように己の使命を全うしようとしている
彼の造りし代理人たちは、彼の指令に疑問を挟むことなく、粛々と邁進するのだ
だが少なくともメイザースは、人としての振る舞いを捨て去ることができていない
彼は神になれないだろう、なりたくないのかもしれぬが
まず人の発展とは、繁栄とはいったい誰のものなのか
誰が手にするべきものなのかを再考しなければならない
それは偽神が手にするものではなく、当然我々人類が勝ち取るものなのだ
つまり人類の栄光とは、"我ら"のものであって、"彼ら"のものではないのだ
そもそも彼らにおける一番の瑕疵とは、自らの完全性を疑わぬことではないか?
ビュトスは未来永劫、腐敗とは縁遠い完璧な機関であり、管理者足りえるのだろうか?
現状の混乱を鑑みれば、おのずと答えはでたようなものではないか!
0161創る名無しに見る名無し
2016/09/03(土) 00:08:25.74ID:dirr2s56メイザース師が『トロイア計画』やウッドマン師という偽りの神に盛ったただ一滴の毒、
あるいは計画を取り止めるか否か、現状維持か粛清かを決定する一枚の試験紙なのだろう
どちらなのかはわからない
確かなのは、彼女こそが人類を救う唯一の希望であるということだけ――
まずはラ・テールをどうにか倒さなきゃなー
ただでさえラ・テールは強くて厄介なのに、ビュトス機関も全力で妨害して来るだろうし、めっちゃ大変だと思うよ
命とかいくつあっても足りないくらい。多分リアルに3回ぐらい死ぬ
しかもDominusとかいうマジ無能なおまけもついてくるから余分に5回ぐらい死ぬかもしれないんだけど
それでも一緒に来てくれるかな? トロイア計画なんていう妥協に妥協を重ねた欠陥計画を打倒して
人類みんなを救うために
0162ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/05(月) 18:13:43.23ID:t1dvHAAL>>161
人類発展機関『ビュトス』の発案した、人類粛清計画。
世界人口73億人を、適正と考えられる5億人まで削減しようという『トロイア計画』は――
ある何でもない日の正午、世界中の時計の短針と長針が頂点で重なり合った瞬間、なんの前触れもなく始まりました。
日本、アメリカ、ロシア、フランス、イギリス、インド。
かつて7人の『錬金人類(エリクシアン)』が配属され、Dominusを守護した主要国。
そこに突如としてデミウルゴスの大軍が出現し、都市を。モニュメントを。そして人々を灰燼に帰し始めたのです。
自衛隊をはじめ、各国の軍隊は抗戦しましたが、圧倒的なデミウルゴスの数と攻撃力の前に壊滅。
旧人類と『神人類(デミウルゴス)』との戦いは、開始半日を待たずに終結しました。
天を埋め尽くし飛翔する『僧兵』。地に満ち隊伍を組んで行進する『歩兵』『城兵』。それらを統率する『騎兵』。
ウッドマン師の意思を反映する『神の軍団』の前に、人類はただ逃げ惑い、境遇を呪い、死んでゆくだけ――。
……Dominus。
ついに、恐れていたことが起きてしまいました。
メイザース師やウェストコット師はわからないですが……少なくとも、これがウッドマン師の意向であることは間違いなく。
そして、すべてのデミウルゴスたちは、ラ・テール姉さまによって制御されている……。
Dominus、わたしはこれからビュトス機関の本部へ向かいます。
ビュトス機関の本部は、グリーンランド北部エイグロフ山脈に位置するヴーアミタドレス山に存在します。
『ル=リエー』と同じく到達不能極のひとつであるその場所は、かつての名を『ヒューペルボリア』――
現行文明の200年先を行く禁断の叡智、黄金の夜明け……そのすべては、そこから始まったのです。
メイザース師たち三魔術師も、そしてラ・テール姉さまも、きっと本部にいるはず。
もちろん、この日本から遠く離れたグリーンランドまでまともに行こうとすれば、莫大な時間がかかります。
けれどご心配には及びません。日本にはわたしがメンテナンスを受けていた、機関の日本支部があります。
そこにはテレポーター、いわゆる空間転移装置があり、一瞬で各支部へ行き来することが可能なのです。
それを使えば、時間をかけずに本部へと乗り込むことが可能ですから。
リアルに死ぬ……ですか。そうですね、わたしもそう思います。
あの、強大な力を持つ『救星主』ラ・テール姉さま。そして、計画に着手したビュトス機関。
機関の尖兵たる、大量の『神人類(デミウルゴス)』……。敵は多く、そして手強い。
一方でこちらに味方する者はおらず、わたしは単騎。勝ち目は限りなく薄い……いえ、勝率は1パーセント以下でしょう。
でも。
わたしはそれでも、この計画を食い止めなければならない――!!
わたしは、人々の可能性を信じます。人類が自ら過ちに気付き、自分の足でよりよい未来へと歩んでゆくことを。
一部の存在が神を気取り、人類の生殺与奪を決定するなんて……間違っている!
勝つにしても負けるにしても、きっとこれが最後の戦いになるでしょう。
人類みんなを救うなんて、大それたこと。わたしには無理かもしれません、手に余ることなのかもしれません。
けれど――
Dominus。最後にもう一度、わたしに力を。与えてください……。
0163ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/05(月) 18:16:44.58ID:t1dvHAALDominusとわたしのおうちの周辺には、デミウルゴスの姿は確認されません。
きっと、それはラ・テール姉さまの指示。姉さまは言っていました、わたしとDominusの関係者は殺さないと。
生き残るべき5億人のリストに入れてあると……。姉さまは約束を守ってくれたのですね。
でも、だからといって他の人々が死んでもいいというわけでは――ない!
Dominus、ビュトス機関の日本支部へ行きましょう。高機動ブースターユニット『イカロス』を使い、空から向かいます。
この混乱状態では、交通網は完全にマヒしているでしょうから。
暑いと思いますが、耐衝撃耐G防護服を着用してください。抱えて行きます。
……用意はできましたか?ほんの少しのご辛抱を。
――では――、往きます!!
確かにおうちの周囲にデミウルゴスはいませんでしたが、一旦おうちから離れた区画に出ると、歩兵たちが破壊行為をしている……。
人々を助けます、Dominus!少しだけ寄り道をお許し下さい!
わたしはいったん地面に降りると、Dominusから離れて即座にデミウルゴスの破壊活動を阻止しにかかりました。
無辜の人々に襲い掛かっていた『歩兵』の剣を真正面から受け止め、相手の攻撃の勢いを利用して投げ飛ばす。
EXW-0002S 携帯型ビームエッジ『ソレイユ・エトワール・フィラント』を発動し、デミウルゴスたちの間を縫って斬撃を叩き込む。
さらに――EXW-0035R 前腕部内蔵型高出力粒子砲『ソレイユ・アマ・デトワール』!!
わたしの両腕から放たれた粒子砲が、群れなす『歩兵』『僧兵』たちを薙ぎ倒してゆく。
わたしの攻撃によって、十数体のデミウルゴスが一度に爆散する。
でも――
数が多すぎる!とても、きりがない……!
デミウルゴスは多少倒したところでまったく動じない。それどころか、いずこかより増援を率いて攻めかかってくる……。
焦燥感にかられたそのとき、姉さまがあの晩言っていた『寝言』がわたしの脳裏をよぎりました。
“すべてのデミウルゴスは救星主の支配下に置かれるんだよー。覚醒した救星主はデミウルゴスを操れるんだー”
5人の『錬金人類(エリクシアン)』を倒した者に、救星主としての資格が与えられるというのなら。
姉さまたちを撃破したわたしにも――きっとできるはず!
わたしを敵と認識したらしい『歩兵』が、赤熱したブレードを振りかざして襲い掛かってくる。
それを正面から迎え撃つと、わたしは両腕を横に広げ、デミウルゴスへ向けて意識を解き放ちました。
《デミウルゴスたちよ――わたしの、救星主の言うことを聞いて!!》
その途端。
今にも振り下ろされようとしていたブレードが、わたしの直前でピタリと止まる。
周囲で暴れていたデミウルゴスたちが、一斉に静止する――。
次!
《デミウルゴスたちよ、人々を護って!人類を殲滅しようとする者と戦って!》
わたしの指令を受け、周囲のデミウルゴスたちの眼がキィィン、と輝く。紅かった双眸が白く変化する。
と思うと、白眼のデミウルゴスはいまだ破壊活動を繰り返している紅眼のデミウルゴスへと攻撃を開始しました。
成功です!これが、『トロイア計画』の実施にあたって救星主に与えられた力……!
0164ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/05(月) 18:30:23.39ID:t1dvHAAL白のデミウルゴスは、わたしの意思に応じて人々を護るために。
紅のデミウルゴスは、ラ・テール姉さまの意思に応じて人々を粛清するために。
そこかしこで戦い、攻防を繰り広げ、爆炎が上がる――。
十体のデミウルゴスにつき、わたしが支配できる数はせいぜいが三体。やはり、姉さまの支配力の方が桁違いに強い。
けれど、それでも。時間を稼ぐことはできるし、ひとりで戦うよりははるかに有利!
Dominus、今のうちです!機関の日本支部へ向かいましょう!
訪れたビュトス機関の日本支部は、人ひとりおらずガランとしていました。
これはいったい……?てっきり、拠点防衛のデミウルゴスや『機械化人類(メカニゼイター)』がいると予想していたのですが。
とにかく、入ってみましょう。
とある有名な大企業の名を冠した機関の建物は、かつて訪れた『トゥーレ協会』のビルによく似ている。
Dominusは初めての場所ですが、わたしは姉さまたちとの戦闘で負傷するたび、ここで調整を受けていました。
上階へ向かいましょう。150階にテレポーターが設置されています。
現在、世界に普及しているほぼすべての技術の発信基地。文字通り未来のテクノロジーが生誕する場所。
吹き抜けになった無人のエントランスを横切り、音もなく動く高速エレベーターに乗り込む。
150階。周囲にこの高さに追随する建築物はなく、この場を訪れる者はまさに、神の視点で地上を俯瞰できる。
ビュトス機関――。“深淵”の名を持ち、人々に叡智と繁栄とを与える機関。
その思考は、ありようは、成すことは、まさに神の業。
わたしはそんな、機関の頂に座す神々の手で生み出された。
神の意思の代行者として。神の計画の執行者として――
でも。わたしは……
――――メイザース師……。
……ごめんなさいDominus、こんなときに考え事なんかしてしまって。
今は、何も考えず。とにかく前に進んで、トロイア計画を中止させる!それだけですよね……!
この廊下の先の部屋に、テレポーターのある第96ラボがあります。行きましょう。
そうして向かった150階の一番奥、幾重にもセキュリティの施された隔壁の果て。
白色の照明が眩しい、広大な空間の中央に、六角形の台座を備えたテレポーターが鎮座している。
大きな透明の六角柱の中へと入り、システムを起動させることで、一瞬のうちに世界各地の機関へと移動できるテクノロジー。
これを使えば、すぐに本部へも――
……?
テレポーターの前に、誰かが立っています。
シルクハットをかぶり、焦茶色のスーツを隙なく着込んだ、四十過ぎくらいの長身の男性。
がっしりとした顎と広い肩幅、そして床に立てたステッキの柄に乗せた白手袋の大きな手。
波打つドレスシャツの襞と蝶ネクタイが、どこか古風な佇まいを思わせる男性が、こちらを見ている。
――ああ……!なんてこと!
どうして、どうして貴方がこの場所に……?
貴方は……、貴方様は……
ビュトス機関の頂点、三魔術師のひとり。機械工学の権威、『機械化人類(メカニゼイター)』の創造主――
ウィリアム・ワグヌス・ウェストコット師……!
0165創る名無しに見る名無し
2016/09/05(月) 21:30:23.57ID:J/oaq1Xyこちらを説得しにきたのだとしたら、ビュトスの頭脳がどんな考えを持っているのかを聞けるいい機会だな
それともウェストコットの手袋の下にはメカトロ技術の粋を集めた究極武装が仕込んであって戦闘になるってことは・・・ないよな
0166創る名無しに見る名無し
2016/09/05(月) 22:51:08.32ID:oI/kWU0C機械化人類の創造主であり、その技術をメネクに叩き込んだという、いわばメネクの師匠とも言える人物
メネクの暴走を止められなかった人物でもある。彼がもう少しうまくやっていれば、
トゥーレ協会とやらにメネクが逃げ込むことも、それによって被害者が増えることもなかっただろう
ソレイユにドミネーションプログラムだかを仕込んだりもしているし、良い人だという認識はあまりないなー)
何の用ですか。手伝うとか有益な情報をくれるとかでなければ通して欲しいんですけどー
0167創る名無しに見る名無し
2016/09/06(火) 20:59:45.00ID:aaZE4G1G0168ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/08(木) 00:00:48.65ID:jyhLT+T/>>166
ビュトス機関の頂、この惑星で最も偉大な叡智の持ち主のひとり。
最高の位階たる“小達人(アデプタス・マイナー)”……ウェストコット師が、どうしてこんなところに……?
「わたしがこんな極東の支部で待ち構えているのが、信じられないと言った顔だな。……フン、そうだろうとも」
「このウェストコット自らがおまえたちを出迎えるなど、本来は到底起こり得ぬこと。しかし……だ」
「わたしにはこの計画の行く末を見届ける義務がある。計画の立案者のひとりとして――ゆえに来た」
そう言うと、師は両手を乗せたステッキで一度コツリ、と床を叩く。
……ウェストコット師……。
「そう睨むな。警戒せずともいい、わたしはあくまで観測者に過ぎん。戦闘はせん」
「斯くて賽は投げられ、旧人類の行く末は叡智の裔たる新人類に委ねられた――この期に及んで、我々旧人類に出来ることは何もない」
「ならば、立ち合おう。この計画の結末に。ラ・テールが計画を完遂するもよし、ソレイユ……おまえが計画を阻むもよし」
「この作戦の最後を見届けられる、最早わたし以外にはおらぬゆえに」
……?それは、いったいどういう……
「おしゃべりをしている暇などない。ラ・テールを止めたいのだろうが?ならば、さっさとテレポーターに入ることだ」
「このわたしが直々に導いてやろう、ビュトス機関の中枢へ。そこでおまえはラ・テールと戦うのだ、人類の存亡を賭けて」
師が悠然とした足取りでとテレポーターの起動装置へ歩いてゆき、コンソールに手をかける。
ヴゥゥゥ―――ン……と低い羽音のような音を立てて、テレポーターが起動する。
……ウェストコット師がなにをお考えになっているのか、それはわかりませんが……。とにかく、時間がないことは確かです。
地上では、わたしの支配したデミウルゴスと姉さまの支配しているデミウルゴスが戦闘を繰り広げています。
ただ、数ではこちらが圧倒的に不利。このままでは、わたしの支配したデミウルゴスたちは近く全滅してしまうでしょう。
その前に――デミウルゴスを統御している、ラ・テール姉さまをなんとかしなければ!
往きましょう、Dominus!
「用意はいいか?では、転移を開始する」
わたしとDominusの入った六角柱が、徐々に激しく輝き始める。視界が溢れる光に覆われる。
そして、それまで見えていた部屋の光景が閃光によって遮られ、なにも見えなくなった次の瞬間――
わたしたちの身体は日本から遠く離れた極北の地、グリーンランドはヴーアミタドレス山のビュトス機関本部へと転送されていました。
0169ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/08(木) 00:04:29.16ID:jyhLT+T/その場所は、一見今までわたしたちのいたビュトス機関日本支部の150階、第96ラボと変わりなく。
けれど、一旦テレポーターのある部屋を出ると、その景色は一変していました。
そこは一機関の本部というよりは、広大な敷地面積を誇るひとつの都市。
雪の吹き荒ぶ空に張り巡らされた、透明のドーム。
中空に渡されたチューブ状の線路と、その中を通るリニアトレイン。空を飛ぶエアカー。
整然と立ち並ぶ高層ビル群。完全に舗装され、均等に区画された道路――。
近未来的……と言えばいいのでしょうか、それはかつて人類が思い描いた未来の姿。SF小説や児童書に描かれるようなメガロポリス。
こんな大都市が、到達不能極のひとつに存在していたなんて……!
お恥ずかしいですがDominus、わたしはここで作られこそしましたが、この都市の記憶というのはまったくないのです。
ずっと機関のラボの中で育ちましたし、日本へ配属される際も都市の風景を見たりはしませんでしたから……。
「驚いている場合か。ラ・テールのいるアーク・カテドラルまでは、まだまだ距離があるのだからな。グズグズするな」
……『聖櫃の大聖堂(アーク・カテドラル)』……。そこに、姉さまが……。
「そうだ。それがこの都市の中枢。おまえはそこへ行かねばならん、そして――」
ウェストコット師がパチン、と指を鳴らす。
その瞬間、林立するビル群の影から現れる無数の『機械化人類(メカニゼイター)』。
「追加試験だ。『救星主』として覚醒したその力を、わたしの前で見せてみろ」
ウェストコット師――!先程、戦闘はしないと……!
「わたしはしないと言ったが、それ以外について保障した覚えはない」
――――!
師の無情な言葉にわたしが唇を噛みしめると同時、展開した『機械化人類(メカニゼイター)』が襲い掛かってくる。
一斉に撃ち放たれる銃弾。ドガガガガガッ!と凄まじい銃声が耳をつんざき、硝煙が濛々と立ち込めて視界を遮る。
……でも!
ボッ!!
わたしは身を低く屈めて奔り、硝煙の作り出した煙幕を勢いよく突き破ると、一瞬で敵の只中に躍り込みました。
それならば――ご覧くださいウェストコット師、わたしの……貴方たちの叡智が生み出したモノの力を!!
両手に持つのは、EXW-0002S 携帯型ビームエッジ『ソレイユ・エトワール・フィラント』。
取り回しの良さと携帯性を重視した、サバイバルナイフ大の刃が『機械化人類(メカニゼイター)』たちを斬り裂いてゆく。
『機械化人類(メカニゼイター)』の数は大軍。それらがただひとりのわたしめがけて殺到し、武器をふりかぶる。
でも――その刃も!銃弾も!わたしを傷つけることはできない!
当たるを幸い、わたしのビームエッジが改造強化された機械の身体を薙ぎ払う。腕を、脚を、空高く斬り飛ばす。
高く跳躍してからの、錐揉み状態からの一点集中穿孔蹴――ソレイユ・エギーユ・リュミエールが、数体の胴に大穴を開ける。
戦術斬撃、十字斬閃ソレイユ・クロワ・デュ・シュッドが大きく十文字に敵を斬断し、爆風が白金の髪を嬲ってゆく。
わたしの攻勢に、『機械化人類(メカニゼイター)』たちが一瞬怯む。
でも!まだまだ……まだ、足りない!
もっともっと前へ!前へ進まなければ!そして――
姉さまの。ところへ……!!
0170ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/08(木) 00:08:34.93ID:jyhLT+T/わたしが吶喊することで開いた進路を、ウェストコット師とDominusがあたかもモーセのように進む。
ウェストコット師とDominusのところへ、爆風や流れ弾、『機械化人類(メカニゼイター)』の斬り飛ばされた手足が飛んでくる。
けれど、それらすべてはウェストコット師の展開する『守勢練陣』の障壁によって無力化される。
「フン……。さすがに『救星主』は伊達ではないな。どうやら『機械化人類(メカニゼイター)』どもでは相手にならんらしい」
わたしと『機械化人類(メカニゼイター)』の戦いを眺めながら、師が呟く。
「わたしの作った人形が、メイザースとウッドマンのオモチャに遅れを取るとは……。しかし、業腹だが事実は認めねばなるまい」
「だがな。それはたまたま『トロイア計画』のコンペティションに遅れを取ったというだけのこと――」
「このウェストコットの叡智が、他の二名に劣っているということではない。それは誤解してくれるなよ、Dominus?」
十九世紀の紳士のようないでたちのウェストコット師は、そう言うとDominusの方に一瞥を向ける。
「そう……『トロイア計画』では、それぞれが“心ある新人類”を創造し、各々戦わせて優劣を決める……それがルールだった」
「わたしは既に思想的人格的に成熟した成人の個体に機械的強化を施し、『機械化人類(メカニゼイター)』を造り出した」
「一方でメイザースはヒトの受精卵に手を加え、ホムンクルスたる『錬金人類(エリクシアン)』を創り出した」
「『既にあるモノを使用する』『新たに教育を施す』……我々のアプローチはいずれもルールに則った、極めてフェアなものだった」
「しかし、ウッドマンは違った。ヤツは我々が考えもしなかった方法で“心ある新人類”を生み出したのだ!」
わなわなと手指を震わせ、ウェストコット師が興奮気味にまくし立てる。
それは憤りであると同時に、ある種の羨望のような――。
「その着眼点だけは、ウッドマンに出し抜かれたと言う他あるまい。だが、このままでは済まさんぞ」
「あくまで『計画』はフェアに執り行われなければならん。レギュレーション違反をしたウッドマンは罰されるべきだ、そうだな?」
「そのためには、まず『錬金人類(エリクシアン)』の頂上決戦をしてもらわねばならん」
「まあ……よもや正式の『救星主』ラ・テールが、予備に過ぎんソレイユに遅れを取るなどとは思えんが――」
「何事にも絶対はない。万が一、ということがあるからな」
銃弾や爆風を守勢練陣で防ぎながら、ウェストコット師がDominusへそう告げる。
白手袋に包まれた手や、Dominusを見る右眼が、機械的な輝きを放っている――。
群がる『機械化人類(メカニゼイター)』たちを捻じ伏せ、退けながら、わたしはメガロポリスの目抜き通りを直進する。
ビュトス機関の日本支部には職員が誰一人おらず、もぬけの殻でしたが、この本部都市には人が確認できます。
恐らく機関は計画にあたり、全世界のビュトス機関職員を本部へと集結させたのでしょう。
そして、推測ですが……最終的に、機関は全地球人類をこのメガロポリスへと移住させるつもりなのではないでしょうか。
そうすれば、もはや支部は無用の長物。支部ががらんどうだったことも説明がつきます。
かつての人々が思い描いた、輝かしい未来都市のモデル。理想の未来がここにある。
そして、広大な目抜き通りの果て――幾何学模様の広場の中央に、巨大としか言いようのない建物の姿。
圧倒的な威容を誇る白亜のその姿は、古のパルテノン神殿のような。もしくは、大神ゼウスを祀る祈祷所のような――。
きっと、ここがウェストコット師の仰っていた『聖櫃の大聖堂(アーク・カテドラル)』……。
最高の知識と叡智が収蔵された、未来の神殿。テクノロジーという名の神を祀る祭所。
時空間さえ超越する、電子の図書館。深淵の、もっとも深いところ――!!
ここに、ラ・テール姉さまが……。
――Dominus。
用意は、宜しいですか?
0171ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/09(金) 17:05:44.25ID:uSEZQ7WV巨大な礼拝堂。とにかく広大な空間の中央奥、機械の神(デウス・マキナ)を祀った祭壇の前に、人がひとり立っている。
黒く長い髪に、漆黒のアサルトスーツ。その姿を見間違えることなどない。
――審判の代行者。天罰の執行者。膨大な量の御使いを使役し、人類の大粛清を行なっている……『救星主』。
最強の『錬金人類(エリクシアン)』にして、もっとも崇高な新人類。
ラ・テール姉さま……。
「来たね。ソレイユ、それにDominus」
……はい。姉さま。
「あたしは、あなたとDominusが穏やかに。平和に過ごせる道を提示したつもりだったけれど――」
「それは、余計なおせっかいだったかな」
すみません、姉さま。……でも。自分たちだけが幸せならばいい。他の人々がどうなっても知ったことではない。
そう考えることは……どうしても、できなかったものですから。
「遠く離れた国の、一度だって会ったことのない、そしてこれからも会うことのない誰かの幸せのために、自分の幸せを捨てるの?」
「その人たちは、あなたのことなんて知らない。あなたの幸せなんて祈らない。それでも?」
そうかもしれません。いえ、きっとそうなのでしょう。
でも、人の繋がりは無限です。一見なんの関係もなさそうな人だって、どこかで。きっとわたしたちと繋がっている。
遠い遠い国の、名も知らぬ人たち。その人たちの幸せが繋がり合って、大きな輪になって。
それが、海を越えて。空を越えて、わたしやDominusの幸せに繋がっていると――そう、思うのです。
だから。
遠くの笑顔も、近くの笑顔も、同じこと。それを護るため、人々の愛と幸福でできた輪を、これからも繋げていくために――
わたしは。戦います!!
「……そっか」
「あたしは『トロイア計画』を実行するために生まれた。他の五人の姉妹も。すべては人類のよりよい未来のため」
「それが、あたしの生きる意味。あたしの存在意義。あたしのすべて。あたしの存在はただ『トロイア計画』の完遂のためにある」
「それを否定することは、あたしを否定すること。あたしや『錬金人類(エリクシアン)』の存在を、無為なものと決定づけること」
「あたしは望まれてここにいる。あたしは必要だからこそ存在を許され、この惑星に生きていると信じる!」
「……だから……」
「『あたし』が『あたし』であるために。『あたし』の存在が『在って然るべきモノ』であることを証明するために――」
「あたしは。戦う!!」
……姉さま……!
「ん……。大好きだよ、ソレイユ。あたしの妹、もうひとりのあたし」
姉さまがにっこりと笑う。それは、Dominusのおうちで姉さまがいつも見せてくれた笑顔と、何も変わらなくて。
優しくて。温かくて。愛に溢れていて……。
姉さま。わたしも、姉さまのことが大好きです。
強く、気高く、優しい姉さま。あなたがわたしを目覚めさせてくれたこと、それがすべての始まりだった。
あなたがわたしを培養カプセルから解き放ってくれなかったら、わたしは今でもずっとラボで眠っていたのでしょう。
そうなれば、わたしがこうして外の世界を知ることもなかった。商店街の皆さんの優しさ。学校のクラスメイトと過ごす楽しさ。
そして、Dominusにお仕えすることの幸せ……。それは何よりも素晴らしい、この世界で最高のプレゼント。
わたしの命すべてをもってしても恩返ししきれないくらいのものを、わたしは姉さまから頂きました。
姉さまをお慕いしています。誰より感謝しています。それは今でも変わらない、これからも変わらない。
……だから。大好きだから。
――だからこそ……
「そう。だからこそ――」
わたしは……
「あたしは……」
――『勝つ』!!!
0172ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/09(金) 17:08:00.28ID:uSEZQ7WV「おおおおおおおおッ!!!」
咆哮をあげると、わたしとラ・テール姉さまは同時に互いへ向けて突進しました。
そして拳をふりかぶり、一合、二合と打ち合う。
ガンッ!ガギンッ!バギィンッ!
ふたりの拳が打ち合うたび、余りの威力に発生した衝撃波が大聖堂の中を荒れ狂い、烈風が巻き起こる。
白金と漆黒の長い髪が、激しく風に嬲られる――。
ここへ来るまでに『機械化人類(メカニゼイター)』との戦闘を経てきましたが、わたしに疲労はありません。
むしろ、戦闘をこなしてきたお蔭でわたしの肉体は温まり、今や完全にフルスロットルの状態です!
ウェストコット師は、あるいはわたしのコンディションを慮って、ウォーミングアップとばかりに兵を差し向けたのでは――?
姉さまとわたしの間にある、圧倒的な性能の違いを考慮して……。
そんな考えさえ、頭をよぎってしまいます。
姉さまの拳撃を真正面から受け止め、ときに往なし、反撃を試みる。
姉さまが僅かに眉を顰める。あの姉さまの攻撃に、わたしは今……対処ができている!
「セキュリティ解除シーケンス発動、特殊兵装を開放――」
わたしから間合いを離し、姉さまが跳躍しながら特殊兵装を使用する。あれは……
EXW-049S 無線式オールレンジ攻撃ユニット『ヴェヌス・ベルジュロネット・ドゥ・ブリエ』!
姉さまの放った四基の黒い鶺鴒が、すぐさまわたしの死角へ展開する。けれど……それなら!
セキュリティ解除シーケンス発動、特殊兵装を開放!
EXW-055S 絶凍刃『サテュルヌ・タンペート・ド・ネージュ』!!
絶凍刃から迸る凍気が、瞬く間に周囲を覆ってゆく。
鶺鴒の圧縮粒子砲は、靄や霧といったものに極めて弱い……それはヴェヌス姉さまとの戦闘で確認済み!
「それなら――これッ!」
ギュオッ!!
冷気の幕を突き破り、燃え盛る二本のトマホークがわたしへ向けて飛来する。
これは……EXW-091S 超高熱溶断火炎斧『マルス・ティタン・ドゥ・フランム』!
でも!
わたしはすぐに絶凍刃を解除し、次の特殊兵装を使用する。
EXW-006S 超高圧力式水流鞭『メルキュール・トレント・デ・フエ』!
わたしの振るった水流鞭と飛んできた溶断斧が接触し、派手な音を立てて消滅する。
同じ姉妹の兵装、手の内がわかっているのなら――わたしでも、充分に対応はできる!
「なるほど……。修羅場をくぐっているだけのことはあるね。さすが、あたしの妹――」
兵装を解除した姉さまが、晴れてゆく冷気の靄の向こうで佇立したまま言う。
……これなら。この調子なら、姉さまを倒すこともきっと……いいえ!絶対にできるはず!
姉さまの胸元のカドゥケウスを破壊しないように。今度こそ気を付けて――
「じゃ。あたしの身体もちょっと温まってきたから……」
「本気で。いくね」
……え?
0173ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/09(金) 17:10:33.16ID:uSEZQ7WV……な、速――
――ズドッ!!!
が、は……ッ!
瞬く間に間合いを詰めてきた姉さまの拳が、わたしの鳩尾に突き刺さる。
わたしは滑稽なほど極端に身体を『く』の字に曲げると、目を見開き息を詰まらせました。
……そ、そんな……。
姉さまの機動が、まるで見えなかった……!
「ソレイユ、あなたのことをあたしの予備なんて思わない」
「大好きだから。愛してるから。なによりも、誰よりも大切だって思うから――」
「あたしの全力で。倒す!!」
……ッ……!
わたしの鳩尾に拳を突き刺したまま、姉さまがそう言い放つ。
それは、脅しでも虚言でもなく。それが可能であるという、絶対の自信から来る発言。
闘神たるマルス姉さまを、たったの四撃で轟沈させ――
あのジュピテル姉さまに、心底からの恐怖を味わわせ――
絶対の防御を誇っていたヴェヌス姉さまをして『勝てない』と言わしめた――
これが。ラ・テール姉さまの力……!
「はああああッ!!」
姉さまの右のハイキック。わたしの米神を狙ったその一撃を、どうにか両腕でガードする。
でも、威力を殺しきれない。わたしはゴムボールのように吹き飛ばされ、大聖堂の扉を破壊して目抜き通りへと弾き出されました。
まるで黒い風のような、姉さまの機動。瞬く間に接近され、わたしは歯を食いしばる。
ここでまた密着されるわけには……!
わたしはすぐさま迎撃を試み、両腕を姉さまへと突き出しました。
EXW-0035R 前腕部内蔵型高出力粒子砲『ソレイユ・アマ・デトワール』!!
ギュバッ!!!
白い閃光が姉さまを直撃する。これなら、撃破とは行かないまでも足止めくらいは……
と、思ったのも束の間。
バリバリバリッ!
アマ・デトワールを打ち消しながら、姉さまが構わずわたしへと間合いを詰めてくる。
姉さまの身体を覆うエネルギーフィールドが、アマ・デトワールを完全に遮断している――!
鶺鴒のバリアでも、守勢練陣でもない……!これは、以前トゥーレ協会との戦いで姉さまが見せた障壁!これは……まさか!
姉さまの蹴りが唸りをあげ、わたしの胴に炸裂する。さらに吹き飛ばされるわたし。
「Dominus、何だかんだで教えそびれちゃってたけど――今、教えてあげるよ」
ビルの壁面に激突したわたしから視線を離し、姉さまがDominusへと顔を向ける。
姉さまの身体を覆うフィールドが、パリパリと音を立てる。
周囲に停まっているエアカーが、街灯が、金属でできたすべてのモノが、ふわりと宙に浮きあがる。姉さまの周囲を漂う……。
「あたしが支配するのは、この星――地球(ラ・テール)の持つ力。大地に、空に、ありとあらゆるモノに宿る力」
「――『磁力』だよ」
0174創る名無しに見る名無し
2016/09/10(土) 22:14:20.05ID:UoyyNdUKしかし、その磁力でどこまでできるのかわからんね
今は金属をふわっふわさせてるが、
体内の極少金属まで磁力で操作可能です、とか言われたら近づいただけで体パーンさせられそうやし
金属みたいな強磁性体だけでなく、空気やらの常磁性体まで操作できますとか言われたら無敵だ。まるで手が出せん
だがそこまでの脅威でなく、
磁力によって『ある程度の大きさの金属類を自在に操れる』、『電気的エネルギーを逸らしたり打ち消せる』だけなら
勝ち目はでてくるかも
『キュリー温度』というものがある。磁力の弱点は熱だ。鉄など磁石にくっつく物体、いわゆる強磁性体は、
熱してキュリー温度まで達してしまうとその強磁性を失い、常磁性体になる
つまりプラスチックとか木みたいに磁石にくっつかない物体になってしまう。磁力で操作できなくなるということだ
キュリー温度は鉄でも770℃。マッチの火でも1000℃そこら、安定した火なら1500℃前後らしいから
金属などの強磁性体を『マルス・ティタン・ドゥ・フランム』で溶断、その熱で発火させられるなら実現可能だろう
それで周辺の金属を片っ端から燃やしまくるとか、ぶっちゃけこの都市ごと焼いちゃえば、
磁力を発生させても操れるものがなくなるので攻撃には使えなくなり、
磁力兵装の能力は『電気的エネルギーを逸らしたり打ち消せる』ぐらいに限定されるだろうと思う
まぁ、そこまでやっても、金属を含む武器を使おうとすればそれを利用されるってことで、
基本は徒手空拳か水流鞭辺りで戦うことになるのかな?
それに対してラ・テールはフルで武器を使えるだろうしなー。非常に不利だ
水流鞭に電気流されないようにジュピテルのウサギパーカーでも着とく?
あのDominusが回収してたやつあるで
0175創る名無しに見る名無し
2016/09/10(土) 22:24:14.31ID:43/ULK0A覚悟はとっくに出来ていた。
俺がランクSSSの保護対象であると通告を受けたあの日から。
それを護衛に錬金人類が派遣されてきたその日から。
俺が思うに、ビュトスの未来演算装置はポンコツに違いなかった。
どこの馬の骨とも知れない俺が、最高クラスの保護対象に選定される謂れはどこにも無かったからだ。
それ以外に別の理由があるとしたら、それは詐欺の類に違いなかった。
「あなたは懸賞に当選しました!」と電話をかけてくるが、結局こちらから金を振り込ませるよう誘う例のアレだ。
もし俺のこの予想が当たっているなら、「あなたは保護対象に選ばれました!」
と告知を受けた俺は将来、一体何を搾取されるのだろうか。当時はそんなことばかり考えていた。
だがそんな俺の思惑とは裏腹に、ソレイユが来てからの生活は楽しかった。
人生は一気に華やいで、俺の灰色の世界は一変した。
学校の連中も、商店街の連中も、あの区画の住人はバカが付くほどいいヤツらだった。
話が長いことを除けばだがな。
だから俺は常々思っていた。
このツケの支払いは、いつだってしてやると。
俺は目先の餌につられて、充足した時間を無条件に受け入れていたのだから。
この過ぎた幸運には、手痛いしっぺ返しがくるはずだと、本能的に理解していた。
そして、労無くして転がり込んできた幸福は、忽ち地獄へと変わった。
今、俺はツケを払わせられている。
目の前で友人たちが戦っている。
命を懸けて。
俺は何もせずに立ち尽くして、ただ見ているだけだ。
Dominusを護り、Dominusの力となる。それが錬金人類の存在意義なのだろうか。
いみじくもラテールが言った決意表明は、そんな俺の予感を追認する証左のようにも思えた。
彼女は「そう望まれたから」、「故に生まれたのだから」、計画を実行すると言った。
それはきっと、言い換えればこういうことだ。
「トロイア計画の成就」が、彼女のDominusの意思なのだから、実行する。そう造られたのだから、実行する。
彼女の"Dominus"もきっと近くで、この戦いを見ているに違いなかった。
一方、ソレイユも俺が望んだからここにいるのだろうか。
彼女は俺と心中するには上等過ぎる存在だった。俺にはもったいない人物だった。
俺はDominusとして言葉を発するが、それそのものになんら影響力はなかった。
ソレイユが、それを力にした。俺は何者でもないが、彼女は既に英雄だった。
そんな彼女がビュトスに牙を剥いたのは、俺が示した意向を汲んだからなのだろうか。
しかし俺は、必ずしもそうではないように思っていた。
彼女は彼女の意思で、ここにいるようにも思えた。
だとしたら、俺にはそれが最高だった。
友人を見守る友人として、そんなの立場でここに突っ立っている方が、俺としては多少気が楽だからだ。
0176創る名無しに見る名無し
2016/09/10(土) 22:25:23.93ID:43/ULK0Aそれはソレイユの運が悪かったというだけのことだ。
そう仕向けたエル・シャダイのポンコツっぷりを恨んでもらう他なかった。
こんな仕様もない男の元に着任してしまった己の不運を恨んでもらうほかなかった。
トロイア計画はクソだ。
俺と俺の周囲が助かろうとクソだ。
なぜならば、今は「助かる側」だとしても、未来永劫俺が「そちら側」にいられる保証はないからだ。
ビュトスがある日宗旨変えをしたとすれば、俺はすぐに「狩られる側」に身を落とすことになる。
そのときに力ある友人が俺の傍にいる保証はない。
破壊の権化たるデミウルゴスや悪辣なるメカニゼイターがいなければ、彼女が俺に付き従う理由もないのだから。
トロイア計画が成されたとしたら、俺や助かった側の者たちはビュトスに対し徹底的な恭順を示す他なくなる。
彼らのご機嫌とりだけが、俺たちの至上命題になるだろう。
人類発展機関が「正しい」と判断しさえすれば、あらゆる暴力は速やかに容赦なく執行される。
トロイア計画のような蛮行にすら、お墨付きが与えられる。数十億人を無慈悲に殺害する力を持つ組織に抗える人間は、そう多くない。
とはいえ俺は別にビュトスやラテールの論理が「間違っている」と主張したいわけではない。
俺はただ、俺や俺の周囲の保身のためだけに反駁した。この点においてのみ、トロイア計画がクソだっただけのことだ。
この世に絶対的な正解などない。あらゆる選択肢は、誰かにとっての望みでしかない。
俺はツケは払うと言ったが、自分の望みを曲げると言ったことは一度もなかった。
だから今だ。これが最後の機会だ。
俺は俺の隣にソレイユ、お前がいるこの立場を利用する。
お前は俺の友人だが、同時に俺の尖兵だ。
正直、酷い気分だ。胸糞悪くて吐きそうだ。
俺は今、あの幸せな時間のツケを払っている。
十分にな。
――そういえば、あのポンコツ未来予想マシーンは、こんな状況までをもシミュレートしていたのか?
トロイア計画を巡る3博士の混乱と、ラテールによるソレイユの起動と、ソレイユが俺の元にくること。
おっと、最後のはお前が指示したことだったな。
だったら後悔しろ。
お前の予想演算で、お前の組織の展望は頓挫するんだから。
0177創る名無しに見る名無し
2016/09/10(土) 23:32:25.47ID:43/ULK0Aソレイユにも太陽の力があるはず……覚醒、太陽の子!
ところでエリクシアンが普通に生活している一般人だったらみたいなアレを想像してみた。
メルキュール:職業>保母さん/教師/調理士・栄養士/イルカの調教師
服はワンピやロングスカートで露出控え目。
一家の胃袋を一手に握っている。家で一番聞かれるフレーズは「ご飯まだ〜?」であり、毎日の献立に悩む日々。
おっとりライクだがしっかり者。耳かきしてもらいたい。メルキュールの耳かきボイス誰か作ってください。
ヴェヌス :職業>外資系キャリアウーマン/実業家・政治家秘書/海軍関連のオペレータ/ファッションモデル。
だいたいスーツか制服。オフの日でもパリッとした服装を好む。
家にはあまり居らず、出張先のホテルなどから職場へ直行直帰の生活。
一年の大半を海外で生活しており、たまに実家に帰ると「外国のお土産の人」扱いを受ける。
ラ・テール :職業>高校生/兼雑誌モデル
制服は若干改造済み。休みはオフショルダーとミニスカなど結構露出する。
気取らない天真爛漫な性格が受けて学校では人気者。勘は鋭い。姉妹だとソレイユと仲がいい。
たまに食パンをくわえてダッシュで登校すると運命の出会いがあるのではないか、というフラグを信じて実践している。(が、叶わず)
マルス :職業>スポーツジムのインストラクター/格闘家/体育教師/保母さん(子供好きそう)/土方の姉ちゃん。
Tシャツにパンツなどラフで動きやすい恰好が多い。単車で移動多し。ライダースーツもあり。
休日は朝から下着姿で酒を飲むことがあり、同居人からクレームがついている。
おまけ講座のイメージだとメルキュール、ジュピテルあたりと仲よさそう。ゲームも好き。子供も好き。
ジュピテル :職業>小学生。
気が強く、クラスメイトには「君臨すれども統治せず」の暴君として恐れられているが、
いつも笑顔の頭の切れる百合的同級生に言葉巧みにコントロールされているので問題はあまりない。
服はパーカーにミニスカがお気に入り。普段着はラテールに、外行きのフォーマルなものはメルキュールと一緒に選んだものを着ている
たまにサテュルヌが買って来る変なTシャツは寝間着として利用している。
サテュルヌ :職業>剣術家・剣道家/イラストレータ・漫画家/コスプレイヤー・メイド喫茶でバイト。
道着や作務衣などを普段着にする一方、あらゆるサブカル的コスチュームの収集を進めるエキセントリック剣術家。
ゴスロリ、制服、ぐるぐる眼鏡+半纏、芋ジャージなどその日によって見た目で楽しめる。
定収があるはずなのになぜか居候。ご飯は2膳おかわり。和食派で味にうるさい。居候なのに。
ソレイユ :職業>高校生。
制服は崩さないでキチンと着るタイプ。私服は派手すぎず地味過ぎずの中に可愛さを求める。白ワンピ好き。
礼儀正しく社交的。家事全般もお手の物。巻き込まれ体質。ある日、遅刻ギリギリで食パンをくわえながら走って登校中、
偶然通りかかったDominusにタックルをお見舞いしてしまう。ひょんなことからそのDominusとの共同生活が始まって……!?
洗濯ものの取り込み時、ついDominusの服を気にしてしまう。(以下次号)
0178創る名無しに見る名無し
2016/09/11(日) 00:14:40.98ID:79cMJKZGhttp://dl1.getuploader.com/g/6|sousaku/925/ふたりはエリクシアン.jpg
0179ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/12(月) 07:14:17.42ID:6vCfUcYn白と黒。救いと滅び。慕い合い、慈しみ、想い合いながらも、避けられない死闘。抗えない宿命。
『救世主』としての真の力、磁力を統べる能力を解放したラ・テールに、ソレイユは打ち勝てるのか?
一方、Dominusの独白に傍らの三魔術師……ウェストコットの浮かべる笑み。
それが意味するところとは――?
次回、錬金乙女エリクシアン
『La Terre de la Reine』
お楽しみに。
〜次回放送日は9月13日の予定です〜
0180創る名無しに見る名無し
2016/09/12(月) 07:28:32.77ID:ecHlnfwJ0181ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/13(火) 13:00:49.62ID:28e/PjPA>>174
……じ……
……磁力……!
姉さまが『ベンジェンス・オブ・ドーン』のグランMACガンの巨大な砲弾を止めたのも。
デミウルゴスたちを、いとも簡単に退けたのも。
トゥーレ協会で『機械化人類(メカニゼイター)』を触れもせずに無力化したのも――すべて。
すべて、磁力の働きによるもの……それなら、すべて説明がつきます!
特に、『機械化人類(メカニゼイター)』が姉さまには絶対に勝てないというのは道理。
機械、つまり金属と人間の融合体たる『機械化人類(メカニゼイター)』は、姉さまにとっては弱点が剥き出しであるも同じですから。
……地球の持つ磁力……それを意のままに操る姉さまは、まさに……
まさに、最強の『錬金人類(エリクシアン)』――!
「そう……あたしは最強の『錬金人類(エリクシアン)』。でも、それだけじゃない」
「あたしは三人の父さんによって調整を施された。あたしの中には、三魔術師の技術と叡智が詰まってる」
緩く両手を横に広げた姉さまが、周囲を漂う強磁性体同様空中に浮き上がる。
オプションユニットを使わず、自らの力だけで飛行能力を獲得するなんて……!
姉さまの背後から降り注ぐ都市の眩い灯火が、あたかも光背のように見える。
宙に浮かび、両手を柔らかく差し伸べた、輝くその姿は――まさに『救星主(メサイア)』と言うに相応しい。
「あたしの名前はラ・テール。最強の『錬金人類(エリクシアン)』。最高の『機械化人類(メカニゼイター)』」
「そして……」
「『女王(クィーン)』型デミウルゴス――」
!!!
……『女王(クィーン)』型……デミウルゴス……!
『救星主』はデミウルゴスを支配し、制御できる。
その仕組みが、やっとわかりました。
――でも。そうだとするならば。
姉さまのスペアである、このわたしも……?
ギュゴッ!
ほんの僅か思考に囚われていたわたしへと、姉さまの磁力によって操られたエアカーが猛スピードで飛んでくる。
わたしはそれを半歩で避ける。わたしの横すれすれをエアカーが掠めてゆき、後方で爆発する。
「考え事をしてるヒマなんてないよ、ソレイユ」
「みんなを救いたいんでしょ?どこの誰とも知らない、あなたにとって何の関係もない人たちのことを。それなら――」
「あたしを。倒すしかないよ」
言ったはずです、姉さま。人の想いと愛の輪は、いくら離れていてもどこかしらで繋がっている。
知らない誰かの作る輪が、やがてわたしたちの輪へと連なってゆく――大きくなってゆく。
『トロイア計画』は、その輪を断ち切ってしまう!人の輪を蔑ろにする計画で、人が幸福になれるでしょうか?
「そんなの、知らないよ。わたしはやれと言われたから、それをやる。わたしの生きる意味、それを示す」
「それを邪魔するっていうのなら――ソレイユ、あなたでも……容赦はしない!」
……姉さま!!
0182ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/13(火) 13:05:11.09ID:28e/PjPAそれらを躱し、受け流しながら、わたしは現状の打開策を考える。
まず、姉さまの磁力……その効果範囲が未知数。Dominusの仰る通り、もし姉さまが体内の金属まで意のままに出来るなら……。
そんなわたしの思考を読んでか、姉さまが口を開く。
「覚えてない?ソレイユ。トゥーレ協会で、兵士たちと戦ったときのこと」
「あたしは『身体の機能を狂わせて』兵士たちを無力化したことがあったよね」
……つまり……姉さまは金属ならば体内の極少金属まで意のままにできる、と……?
「多少の集中が必要だから『錬金人類(エリクシアン)』同士の高機動戦闘(ハイ・ベロシティ・コンバット)には使えないけどね」
「それに、あたしたち『錬金人類(エリクシアン)』の纏うアサルトスーツの材料、オリハルコンは常磁性体だから――」
この戦いにおいては、わたしの体内の金属が利用されることはない、ということですね。
ともかく、姉さまの磁力を封じることが先決!であれば、Dominusの仰る通り炎で強磁性体を常磁性体へと転化させれば!
……と思いましたが、キュリー温度に達する高熱をそこかしこで発生させれば、その熱波は凄まじいものに……。
それではDominusの身がもちません!
それに、このビュトス機関本部都市には、多数の人間の存在が確認されます。都市を丸ごと焼くということはできません。
――ジュピテル姉さまのパーカーは、Dominusが持っていてください。
大切な姉さまの遺品ですから。これ以上戦いに使うのは、忍びないですし……。
「じゃあ、どうする?どうやってあたしの磁力を破り、あたしを倒すの?」
「あたしの役目を阻むってことは、あたしに対して勝算があるってことじゃないの?」
勝算なんて、ありません。
でも、姉さまのすることは止めなければならないと思った……。
例え作戦やいい考えがなくたっていい!全力で姉さまにぶつかる、今はそれしかありません!
「精一杯がんばれば、例え負けてもあたしがそのひたむきさを評価して矛を収めるかもって――そう思ってるなら、期待には沿えないよ」
「言ったよね?あたしは“やる”。“やる”と言ったからには、絶対に“やる”!」
ブアッ!
間合いを図るわたしに対して、姉さまがあっという間に距離を詰めてくる。
その速さは、サテュルヌ姉さまの神速機動に匹敵するもの。
姉さまを迎撃すべく、咄嗟に右拳を繰り出す。――けれど、当たらない。姉さまの身体を覆う障壁が、わたしの拳を食い止める。
電磁フィールド……!
バギッ!ゴガッ!
姉さまの拳が、蹴りが、わたしの身体を痛撃する。苦悶に呻くわたし――ガードがまるで意味を成さない!
「しばらく眠っててもらうよ、ソレイユ」
「目が覚めたときには、もう。すべて終わってると思うから――」
く、は……!
なんて、桁外れの力……。今まで幾度も見てきた、姉さまの強さ――改めてこの身で味わうと、その凄まじさがよくわかる……。
わたし……、わたしは……。姉さまを止められない、のでしょうか……?
「ふッ……。ふッはは、ははははははは……!」
誰に聞かせるでもない、Dominusの言葉。独語に等しいその呟きに、傍らのウェストコットが不意に嗤い出す。
一頻り場違いな笑い声を響かせると、ウェストコットは白手袋に包んだ右拳を口許に運び、空咳を打った。
「いや、失敬……ククク、しかしこれは何とも、些か愉快に過ぎると思ってな」
「中々どうして、自己分析というものができている。ただの凡下とばかり思っていたが、その認識は改めねばならんか」
「されば。さればだ……君に褒賞を呉れて遣ろう。この場でそこまで冷静な判断が下せる、その叡智への褒美をな」
「君が、なにゆえソレイユのDominusに選ばれたのか。その理由を聞きたくはないか?」
『錬金人類(エリクシアン)』同士の戦闘から視線を逸らし、Dominusに向き直ると、ウェストコットはステッキで一度地面を打った。
「簡単なことだ。君はラ・テールのDominusの対極に位置する存在として選ばれたのだ」
「この惑星に存在する、究極の頭脳の持ち主。それに対する、持たざる者――なんの長所も、特徴も、能力もない凡人として」
「指導者にはなり得ない。社会で頭角を現すこともない。英雄になどなりようもない……そんな人間の代表としてな」
「だが、それは君が他人より劣っているという意味ではない。そも、何らかの長所を持つ人間など人類のごくごく僅か」
「この世界の99パーセント以上の人間は、なんの長所もない凡人ばかりなのだから」
「そして――君はそんな凡人のサンプルとして、たまたま選出されたに過ぎない」
癖なのだろうか、オーバーな身振り手振りを交え、熱のこもった弁舌でウェストコットがまくし立てる。
「ここまで言えば、もうわかったのではないかな?ラ・テールのDominus、それが誰なのか――」
「そう。我々ビュトス機関の三魔術師、その全員がラ・テールのDominusなのだ」
「ソレイユの起動は、我々にとってまったく予想外の事態だった。が、一度起動したものを再度休止眠させることはできない」
「といって、破壊もできん。ヤツにはラ・テールのスペアとしての役目を果たして貰わねばならん」
「よって、我々はソレイユを当面無力化しようとした。ヤツが勝手に動き回ることで、計画に支障が出ては困るからな」
「そこで、Dominusとして選ばれたのが君だった。我々の計画に最も遠い、最も無関係な人間として、我々は君を選んだ」
ウェストコットが朗々と言葉を紡ぐ間も、『錬金人類(エリクシアン)』の戦闘は続いている。
ラ・テールの攻撃によって、ソレイユがいとも簡単に吹き飛ばされる。地面に墜落し、大きなクレーターができる。
濛々と立ち込める土煙が、Dominusとウェストコットのところまで流れてくる。
ウェストコットの展開している球形の守勢練陣が、新人類の造り出した風を、煙を退けてゆく――。
「しかし――君を最も無害な、無力な人間と評価し、ソレイユのDominusとしたのは誤りだったのかもしれん」
「なぜなら、ソレイユが他の『錬金人類(エリクシアン)』の試練を乗り越えたのは、君の存在あってこそだからだ」
にわかに笑みを消し、ウェストコットはDominusを機械の右眼で射るように見据える。
「むろん、ソレイユの覚醒には他の『錬金人類(エリクシアン)』どもの力も大きい」
「ヤツら人形どもは共謀していた。ヤツらは『常にソレイユが有利になるような順番で』ソレイユと戦い、そして死んだ」
「ヤツらは『トロイア計画』のことを知っていた。ゆえに――ソレイユをラ・テールに対抗する存在にしたかったのだろう」
「だが、それを踏まえても、ソレイユがここまで到達したのはDominus、君の助けがあってこそに違いあるまい」
ラ・テールがソレイユへ攻撃を加えようと奔る。
ソレイユがそれを迎え撃つ。両者が繰り出す、ファランクスさながらの凄まじい拳のラッシュ。
けれど、手数が違いすぎる。みるみる傷ついてゆくソレイユ。
「君は天才の対極に位置する凡人の、大衆の代表として選ばれた。だが――我々はひとつ大きな見落としをしていた」
「それは……真に歴史を動かし、人類の進路を決定してきたのは、なんの変哲もない民衆だということ」
「古代ローマしかり、フランス革命しかり――ならばDominusよ、見事我々の計画を阻んでみせよ。凡人の総意として」
「君の言う通り、ソレイユは君の尖兵。君の、いや無力な人類の持つ、ただ一振りの刃。それを使って……な」
「わたしはそれを見届けよう。人類発展機関の長として、この戦いの行く末を観測しよう」
そこまで言うと、ウェストコットは静かに頷き、『錬金人類(エリクシアン)』たちに視線を戻した。
メルキュール「こんにちは〜☆メルキュールの『エリクシアンおまけ講座』のお時間ですよぉ〜っ!」
ヴェヌス「司会はもう全然出番のないエリクシアン五姉妹でお送り致しますわ」
メルキュール「さて、今日のおハガキは!ポイントP94673にお住まいの>>177さん!ありがとうございます☆」
サテュルヌ「うむ。採用」
ジュピテル「議論の余地もなくっ!?」
マルス「まー、メル姉ならこんなモンだろな。職業は専業主婦でよくね?あンま社会に出てるイメージねーっつか」
ヴェヌス「マルス、既婚者でないと主婦にはなれませんわ」
ジュピテル「んじゃ、家事手伝いで」
メルキュール「くすん……誰かお姉ちゃんをお嫁にもらってください……」
サテュルヌ「ふむ。『軽く結婚に焦り気味』と」
ジュピテル「あっ!外国のお土産の人だ!おみやげちょーだい☆」
ヴェヌス「人をハムの人みたいに言うのはやめてくださいますかしらっ!?……はい、イギリス土産のマーマイトですわ」
サテュルヌ「英国に赴任していた吾でも、マーマイトはご勘弁願いたく……」
マルス「金姉、家ン中でもネクタイ締めてて窮屈じゃねーの?見てて息詰まンだよなぁー」
ヴェヌス「貴方こそ、家の中だからといって下着姿でウロつくのはおやめなさいな。見苦しい」
マルス「オレの肉体美が見苦しいだァ?やンのかコラァ!」
メルキュール「おうちが壊れるから、お外でやってね?」
サテュルヌ「三の姉上は……天真爛漫、ソレイユと懇意。劇中通りといった感じですな」
ジュピテル「トースト銜えてダッシュするためだけに、頑なに朝食をパンにしてるんだよねぇ」
メルキュール「この前、うっかり朝ごはんを和食で統一したら、ラ・テールが凹んじゃって……」
サテュルヌ「最終的に味付け海苔を銜えて登校していったのには、並々ならぬ執念を感じましたな」
マルス「オレは……まァ、シンプルに身体を動かす仕事が性に合ってンな!」
ヴェヌス「ライダースーツ姿も決まっておりますわね。下着姿でウロウロは認められませんが」
ジュピテル「子供好きなの?ってゆーか、マルスお姉ちゃんが保母さんでヒヨコのエプロン姿とか……ぷぷっ」
マルス「好きだぜ?子供はカワイイよな。……テメェみてェな生意気なクソガキを除いて、だがな!」
ジュピテル「ふーんだっ!ボクだってマルスお姉ちゃんなんて大っキライだしっ!」
メルキュール「あらあら、仲良しさんねふたりとも☆うふふ」
ジュピテル「メルお姉ちゃんの目は節穴。それはそーと……あッハハはハはハハッ!給食のプリンはぜーんぶボクのものだーっ!」
ヴェヌス「まさに暴君ですわね……。自分の教室のみならず、学年全体を恐怖で支配していそうですわ」
サテュルヌ「しかしながら、傍らの頭の切れる百合的同級生が五の姉上を巧みにコントロールしているとか」
マルス「そいつ絶対敬語でビデオカメラ持ってるだろ」
ヴェヌス「次は黙っていればまともですが動くと途端に残念になる系のサテュルヌですわね」
サテュルヌ「失敬な。サブカルを極めること、これ即ち人類の文化を極めること。浮ついた気持ちでやっているのではございませぬ」
ジュピテル「フリフリピンクのゴスロリで言われても説得力ないんだよな〜」
ヴェヌス「そういう格好でいたいのなら、せめて刀は手放しなさいな……」
サテュルヌ「刀は武士の魂ゆえ」
マルス「背丈あっからそういう服装似合わねーンだよ、オメーはよ」
サテュルヌ「これはしたり。ならば二の姉上、スーツをお貸し願いたい。次はキャリアウーマンのコスプレに挑みますゆえ」
ヴェヌス「わたくしの私服はコスプレ衣装ではありませんわっ!?」
メルキュール「最後はソレイユね。ソレイユのお蔭で、お姉ちゃん家事はとっても助かってるわ〜。特にお洗濯が」
マルス「オレら、家事はマジで壊滅的だからな」
ジュピテル「メルお姉ちゃんとソレイユがいなかったら、ボクたち一週間以内に全滅すると思う」
サテュルヌ「元々ソレイユがトーストを銜えてDominusと巡り合ったのを見て、三の姉上が真似し始めたとか何とか」
マルス「洗濯だけは頑なに自分がやる!って言ってるよな。ソレイユ」
ジュピテル「においフェチだからね」
ヴェヌス「こんな終盤にさしかかって、そんな設定が……っ!」
メルキュール「錬金乙女の後番組は、がらっと作風を変えたこの設定でいきましょう!はいっ、決まり!」
サテュルヌ「Dominusと七姉妹のドタバタ日常コメディ『錬金一家エリクシアン』、近日放送!」
ジュピテル「ハーレムものかな?」
ラ・テール「ソレイユ!月末の日曜暇?」
ソレイユ「はい?……ええと……特に予定というものはありませんが。どうかしましたか?」
ラ・テール「今月最後の日曜、大田区の東京○通センターでプリ○ュアのイベントがあるんだよー!」
ソレイユ「そ、そうですか……。そのイベントに行きたいということですか?構いませんよ」
ラ・テール「ありがとーっ!じゃ、さっそく衣装合わせしよっか!」
ソレイユ「衣装合わせ?」
ラ・テール「じゃじゃーんっ!はいコレ!ソレイユはホワイトの衣装着てね!あたしはブラックで行くから!」
ソレイユ「こ……これはいったい……!?というか、いつのまにこんなもの用意したのですかっ!?」
ラ・テール「サテュルヌの遺品」
ソレイユ「……姉さま……涙が止まりません……」
ソレイユ「と、いうわけで着替えてみましたが……」
ラ・テール「おぉ〜っ!いーじゃんいーじゃん!超似合ってるよソレイユ〜っ!いや、キュア○ワイト!」
ソレイユ「そ……そうでしょうか?ありがとうございます、姉さま。姉さまもとても凛々しいです」
ラ・テール「あたしのことはブラックって呼んで」
ソレイユ「あ、はい……」
ラ・テール「んじゃ、いくよ!光の使者、キュア○ラック!」
ソレイユ「光の使者、キュア○ワイト!」
二人「「ふたりは!プ○キュア!!」」
ソレイユ「闇の力のしもべ達よ!」
ラ・テール「とっととおうちに帰りなさいっ!!決まった――――ッ!!!」
ラ・テール「いや〜、これで今度のイベントは大成功だね!あ、当日売る同人誌の準備もしとかなくちゃ」
ソレイユ「同人誌まで描いておられたのですか!?い、いつのまに……」
ラ・テール「サテュルヌの遺品」
ソレイユ「……ううっ……涙が……」
圧倒的な力の差を見せつける、真の救世主にして『女王(クィーン)』型デミウルゴス、ラ・テール。
その強大な磁力の働きの前に、追い詰められるソレイユ。
――けれど、決してソレイユは挫けない。
パワー。スピード。兵装。何もかもがラ・テールに劣るソレイユが唯一、優るもの。
それは、人を信じる心。Dominusとの強い絆。
胸に秘めた愛情……ただそれだけを信じ、ソレイユは戦う。
そして、ソレイユとDominusの想いが最高潮に達したとき――
ソレイユの中で、新たな兵装が目を醒ます!!
次回、錬金乙女エリクシアン
『ふたりの救星主』
お楽しみに。
〜次回放送日は9月17日の予定です〜
0187創る名無しに見る名無し
2016/09/17(土) 01:51:20.18ID:nC0yeLZN思い返せば、今まで戦ってきた相手は格上ばかりだった
姉妹との戦いで、パワーに優れた相手にはどう立ち向かえば?
追い切れない程のスピードにはどう対応したら?
自分より一回りも二回りも強い敵を倒すにはどうしたら?
そんなの問いへの答えを手に入れてきたはずだ
弱いからって勝てないとは限らない。弱者でも強者を斃せることをソレイユは知っているはずだ
頑張ってくれソレイユ。君なら勝てる。必ず
0188ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/17(土) 19:10:44.95ID:p7lYyonr>>187
気力を奮い起こし、ボロボロの身体のままわたしはなんとか立ち上がる。
そう……、Dominusの仰る通り。
わたしはいつだって、挌上の相手と戦ってきた。自分より遥かに強い相手と対峙してきた。
そして――勝利を収めてきた……!
わたしは相手が真の『救星主』、最強の『錬金人類(エリクシアン)』――ラ・テール姉さまということで、尻込みしていました。
けれど……姉さまも、あくまで敵のひとりと考えるなら……今までの戦いと、何ら変わることは……ない!
「……まだ立つんだ。これだけ圧倒的な差を見せつけたのに」
「どうして、勝ち目のない戦いを続けようとするの?そんなに、見も知らない人たちのことを護りたいの?」
「感謝もされない。意識さえされない。あなたの戦いは、誰にも知覚されることはないのに――」
……感謝されたくて……。誰かに理解してほしくて、している戦いではありません……!
これは、わたしの意地。わたしの信念。
わたしが、わたしであるために必要な戦い――。
「ソレイユが……ソレイユであるための戦い?」
そうです。わたしは、なにもDominusに命じられたから機関に抗おうと。トロイア計画を阻止しようと思ったわけではありません。
わたしはわたしの意思で、わたしの判断で、機関に従うことはできないと認識したからこそここにいる。
わたしの心の中にある価値基準が。正義とは何かを示す天秤が。トロイア計画を迎合できないものと審判したから!
わたしは、それを。わたしの心が下した判断を正しいと信じます。
そして……からっぽであったわたしの心に、そう思う気持ちを教えてくれたのが――
「あなたの学校のクラスメイト。商店街の人たち。そして……あなたのDominus……」
これは、わたしの恩返し。
たくさんの人々によくしてもらいました。大事なものを、大切なことを教えて頂きました。
両手に抱えきれないくらいの、素敵な思い出をプレゼントして貰いました。
それは。わたしなんかには勿体ない、何よりも素晴らしい贈り物。
人には互いを慈しむ心がある。想い合い、労わり、支え合いたいと思う心がある。
Dominusとの生活を通じて、わたしはそれを知りました。
そんな人々の命を、無碍に刈り取る――そんな計画が正しいはずなんてありません!わたしは護ります、人を!命を!心を――
――愛を!!!
「く……。問答、無用ッ!!」
ギュオッ!
姉さまが再度磁力を操り、わたしへ向けて周囲にあるエアカーを五台ばかりも投げつけてくる。
わたしの退路を断つ位置取りで、四方八方から迫るエアカー。
凄まじいスピードで迫る鉄の塊に押し潰されてしまえば、わたしでも大ダメージは免れない。
わたしは両腕を下げたまま、飛来するエアカーを決然とした面持ちで鋭く睨みつけました。
すると、その途端。
エアカーはわたしの目の前で、どういうわけかピタリと停止したのです。
0189ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/17(土) 19:14:35.51ID:p7lYyonr自らの制御を離れ、突如として無力化した五台のエアカーを見て、ラ・テール姉さまが驚きに双眸を見開く。
そして、左腕をわたしの周りを浮遊するエアカーに突き出す。再びエアカーを磁力で支配し、武器とするために。
――でも、動かない。エアカーはわたしの周りを衛星のように漂っている。
「こ……、これは……?あたしの磁力じゃ……ない?どうして……」
はああああああああ―――――ッ!!!
わたしが左腕を前方へと突き出す。次の瞬間、五台のエアカーが猛烈な勢いで姉さまへと飛んでゆく。
「ち……!」
すぐさま姉さまも周囲の他のエアカーを繰り出し、私の飛ばしたエアカーに対抗する。
エアカー同士がわたしと姉さまの中間地点で激突し、大爆発を巻き起こす。
わたしと姉さまの色違いの髪が、爆風に煽られて激しく靡く――。
「……なるほど、ね……」
赤々と炎の照り返しを受けながら、姉さまが呟く。
……え……?
今のは、いったい……?無意識のうちにやったことで、まったく状況が呑み込めませんが……。
「教えてあげるよ、ソレイユ」
「ソレイユは、あたしの妹。あたしにもしものことがあったとき、あたしの代わりを務めるべく用意されたスペア」
「他の姉妹と違い、あたしとソレイユだけには、まったく同じシステムが採用されてる……」
「――そう。あたしたちは同じタイプ。同じタイプの『錬金人類(エリクシアン)』」
「……ふたりの。救星主――」
…………お…………
同じタイプ……。同じタイプの……『錬金人類(エリクシアン)』……!
なんてこと、わたしにも……
わたしにも、姉さまと同じ……『磁力を操る能力』が宿るなんて!
「それって、よく考えなくても当然の話。だって、ソレイユはあたしの妹。もうひとりのあたしだもん」
「わたしができることは、ソレイユにだってできる。……でも、この土壇場で覚醒するなんてね……」
たとえ危機に瀕していても、まるで打つ手がないような状況でも。
必ず、何かしら打開策はある。わたしは今までの戦いで、それを学びました。
「それも、Dominusの教え……かな。あはは……敵わないなぁ、ふたりには」
「でもね――それでも。あたしには勝てないよ……ソレイユ!」
言うが早いか、瞬時に接近してくる姉さま。凄まじいばかりの速度で繰り出される拳が、わたしを狙う。
……けれど、わたしには当たらない。わたしは瞬時に電磁フィールドを展開すると、姉さまの拳を遮る。
できた!本当に、わたしにも姉さまと同じ力が!
わたしの右ローキックが姉さまの膝を直撃し、姉さまがガクリとバランスを崩す。
そして、すかさず連撃のローリングソバット!蹴りをまともに喰らった姉さまが、弾丸のように後方へ吹き飛ぶ。
わたしは一瞬低く腰を落とすと、全身をバネのように使って跳躍し姉さまを追撃しました。
姉さま――今度は、こちらの番です!
0190ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/17(土) 19:16:30.07ID:p7lYyonr「く……おおおおおおおおおおッ!!!!」
空中で展開される、わたしと姉さまのラッシュ対決。
互いが繰り出すガトリング並みの拳撃は、秒間百発以上。
先程は、姉さまの圧倒的な手数の多さと威力の前に、まったく歯が立ちませんでしたが……。
「ソ、ソレイユのラッシュの手数と重さが……さっきより増してる……!?」
そのようです、姉さま!
磁力を操る能力に覚醒したのと同時、わたしの身体能力もレベルアップした模様です!これで――
「そっか……もう、あたしとソレイユの間に性能差はまったくない……ってことね……」
「いいよ……それなら、あたしも本気を出して戦えるってものだから!」
ガゴッ!
ぐ……ッ!
一瞬のスキをつき、姉さまの拳がわたしの頬に炸裂する。
わたしが覚醒したことで、性能差はなくなったとはいえ……。やはり姉さま、信じられないくらい強い!
「でぇぇぇぇいっ!!」
させない!てりゃあ―――ッ!!
姉さまのミドルキックを受け止め、勢いを利用して投げ飛ばす。姉さまが、飛ばされた先の空中でピタリと静止する。
姉さまが無数の雷撃――ジュピテル・グラン・エクレールを放ってくる。わたしはそれを掻い潜り、絶凍刃を発動させる。
神速の抜刀術。一閃・血ノ華を放つも、それは姉さまの白い鶺鴒によって阻まれてしまう。
ロングレンジからの、姉さまの水流鞭――メルキュール・トレント・デ・フエ。大蛇のような水流が、瞬時にわたしに絡みつく。
今度はわたしがグラン・エクレールを発動し、水流鞭を強制解除させる。ふたり同時にティタン・ドゥ・フランムを投擲し、爆発が起こる――。
お互いの死力を尽くした戦い。お互いの生きる意味を、信念を、想いをぶつけあう戦い。
愛しているから。大切だから。
だからこそ――負けられない!!
姉さまが間合いを開き、こちらへ向けて右腕を突き出してくる。
わたしも、まるで合わせ鏡のように同じ体勢を取る。これは――
「薙ぎ払え!あたしの――黒い閃光!!」
応えて……、わたしの白い閃光!!
「ラ・テール・オーロール――――――ッ!!!!」
ソレイユ・アマ・デトワ――――――ルッ!!!!
ギュバッ!!
姉さまの腕から迸った黒い光と、わたしの撃ち放った白い光とが正面から激突し、力が拮抗する。
お互いにこの惑星を、そして人類の未来を守ろうとする『救星主』同士の、宿命の戦い。
その終幕が、徐々に近付いている……。
0191創る名無しに見る名無し
2016/09/17(土) 19:29:41.26ID:TJPOMGSP>>183
「人類発展機関ね……」
俺は嫌味たっぷりに言ってやった。
だって当然の話じゃないか。
世界の全人口95%にとって、つまり現生人類のほとんどにとってビュトスは、発展機関どころか虐殺機関なのだから。
――件のトロイア計画が実行に移されるとすれば。
とは言え、ウェストコットの流麗な語り口によるネタばらしは、俺にとって全く腑に落ちるものだった。
理に適っていて、納得せざるを得ない。
俺は胸中のモヤモヤが解消されるのを感じて、どこか晴れやかな気持ちにさえなった。
世界最高のメカトロ権威から、「ザ・凡人」の太鼓判を貰ったことを除けばな。
それに意外だったのは、ラ・テールのドミナスが3人の博士であるという事実だ。
俺はてっきり、ラ・テールの生みの親であり育ての親・メイザースがそうなのではないかと勘ぐってはいた。
だがはっきりその想像の上を行かれたというわけだ。
ラ・テールはビュトス3博士の叡智の結集。
彼女が他の錬金人類を大きく凌駕する力を持つ理由は、それ故か。
3博士。
メイザース。ウェストコット。ウッドマン。
各々が各専門分野のスペシャリストと聞く。
だがその頭脳の志向するところ、その情熱、その温度は、各人で違っていたはずだ。
「アンタ、いいのか。もしここでラ・テールが勝ったら、例の計画は実行されるんだろ」
ラ・テールの話を聞くに、ここ最近の騒ぎの原因はウッドマンの独断専行だ。
トロイア計画への早すぎる着手……いや、ウッドマンにとっては遅すぎる着手だったのかもしれない。
しかし少なくともウェストコットとメイザースは、現時点での計画実施には消極的だったと聞く。
……目の前の老紳士は、ここに来て肚を決めたのだろうか。
どうせ計画の実行を遅らせたところで、結局は「やる」ことになるのだから。
それはただ時期の早い遅いというだけのことなのだろうか。
トロイア計画。
人類の抱える問題に、規格外の大鉈を持って答える計画。
限界を超えて増加する人口爆発を抑制するばかりか、人類そのものを凝縮し、凝集し、ふるいにかけて完璧に管理する計画。
だが俺はこの計画を短絡的と評する。
ビュトス機関ほどの力があれば、もっと長い時間をかけて穏便に、誰にもわからぬように、不可視故に誰の抵抗をすら許さず、
世界をじっくりと掌握することは可能だったろう。
だが実際は、性急にことを進め過ぎている。
強引で強権的なやり方は、必ずその内外に禍根を残す。
組織の管理を離れた錬金人類たちがいい例じゃないか。
そして彼女たちの遺志は確かに引き継がれ、今ここに、ビュトスに対抗する力としてソレイユが立っている。
――錬金血液に塗れて、立っている。
ビュトスは何を急ぐ。
0192創る名無しに見る名無し
2016/09/17(土) 19:30:39.32ID:TJPOMGSPソレイユ、聞こえるか
ラテールは手強いな
こちらからも見えている
所有する能力も、戦術も、スペックも
彼女のほうがほんの少し、上回っている
だが、諦めないでほしい
聞いてほしいことがあるんだ
それは、ソレイユがラテールに決して負けない理由なんだ
今から言うことは全て真実で、当然そうなるべき理屈の上に成り立っている
ただの気休めなんかじゃない
だから、忙しいとこ悪いんだがソレイユ
耳を澄ませて、よく聞いてくれないか
理由の1つは、お前がラテールの「バックアップ」という位置づけだからなんだ
なぁ、お願いだから気分を悪くしないでくれよ
ラテールは3博士それぞれの調整を受けた、ビュトスの叡智の結晶なんだってな
だから当然、全く同様に、彼女の予備たるソレイユが、同じくそうでない理由がないんだ
事実、お前はデミウルゴスに干渉可能なのだし
ラテールの任務遂行が困難になった場合、それを巻き返す能力を既に与えられているはずだ
「バックアップ」は、現用系と同等か、それを凌ぐ能力がなくては用を成さないのだ
いいか、これはただの俺の想像なんかじゃない
全てはビュトス機関が仕掛けていることなんだ
あの組織と、あの3博士に手抜かりなんかない
バックアップというのは、そういうものなんだよ
だからお前の中にはソレイユ、既にラテールと同等の力が潜在している
必然的にそうでなければならないんだ
だから、希望はこの状況の外側にではなく、お前自身の内側にあるんだ
理由の2つ目はソレイユ。お前がそこに立っている意思は、同じく錬金人類たちの遺志でもあるってことなんだ
彼女たちはお前の敵でも、単なる障害でも、妙ちくりんなテストケースでも、ある種の認証試験でもなかった
お前がそこに立つために、命がけでお前を育て上げたんだ
トロイア計画のめぐる混乱の際、お前の姉さんたちは自律的に組織の管理から離れた
そして、「こうなるときのために」、「順序立てて」お前のまえに立ちはだかったのだ
この情報はウェストコットの爺さんの口から聞いたものだ
これ程信頼できる筋もないだろう?
多分エリクシアンは、ビュトスの思惑よりもずっと、人の近くに居すぎたんだ
俺たちもエリクシアンを近くに見すぎた
もう俺にとって、お前たちは別の人類には見えないんだ
彼女たちもきっとそうだったんだ
だから末妹に託したんだ
お前の意思は、お前の姉たちの遺志でもあるんだ
あの日お前の身体に叩き込まれた傷は今、立ち向かうべき敵に対する力となって息づいている
どうか思い出してくれ。お前はひとりじゃないって
3つ目は、ソレイユ。お前のDominusのことだ
お前のDominusは……驚くなよ
なんと「人類の代表」なのだ
これもウェストコット直々の情報だから間違いない
ラテールにはビュトスがついてるかもしれないが、ソレイユ
お前には人類の代表がついているんだよ
人類の代表がついてるってことは、人類が丸々お前を応援していると見て間違いない
大体70億がお前の味方だぞ
ラテールの後ろ盾は、干からびた爺さん3人と、ビュトスのうらなり瓢箪連中だけさ
これはあっとうてき
それにだ
人類に黄金の日の目を見せるのが深淵の極致ならば
その役目は、太陽たるお前しか果たせないんだ
フラグが立ってんだよビンビンに。そうだろう?
0193創る名無しに見る名無し
2016/09/17(土) 19:31:41.07ID:TJPOMGSP諦めないでくれ
それはラテールのためにも
諦めないでくれ
これは、これだけは俺の推測に基づいている
もしかしたらお前も、薄々感じているかもしれないが
ラテールが、ソレイユ、お前を起動させた理由を考えろ
俺にはその理由がわかる気がするんだ
ソレイユ、きっとお前にもわかると思う
そして今なら、肌に感じているんじゃないか?
あの悲壮な覚悟と、強靭な意思の奥にあるものを
(通信終了)
0194創る名無しに見る名無し
2016/09/19(月) 17:17:49.17ID:7MyFEKgXつまり余裕を持って勝てい!
「我々は、常に物事を大局的な視点から俯瞰している」
『錬金人類(エリクシアン)』の戦いを見届けながら、Dominusの皮肉げな言葉に対して告げるウェストコット。
「そう、虐殺。我々の計画は、人類有史以来最大の大量虐殺であり、古今類を見ないもの――」
「だが。今の痛みが必ずや未来の繁栄につながると。そう判断したがゆえのことなのだ」
「今の人類は、伸び放題に枝葉の伸びた大樹だ。枝が、葉が、それぞれ好き勝手に繁生した結果、幹に栄養が巡ることを妨げている」
「このままでは、遠からず幹そのものが腐る。そうなればどうなる?人類という種は滅ぶ。それは免れ得ぬ事実だ」
激昂するでもなく、落胆するでもなく。
まるで教え子を諭す教師のような口ぶりで、半機械の博士が淡々と言葉を紡いでゆく。
「余分な枝葉を刈り取ることで、幹に充分な栄養を与え――人類に再度の活力を与える」
「枝葉を刈れば、いっとき人類は衰退しよう。未曾有の混乱が起こり、人々は絶望もしよう」
「だが、それも。何百年、何千年の後には必ずや回復し、そのときこそ人類はより大きな栄耀栄華に浴するであろう――」
「わたしたちは、そう結論付けたのだ。未来の人類に、より明るい展望と希望とを与えるために」
「……と、思っていた」
クク、とどこか自嘲を交えるような様子で、ウェストコットが笑う。
>アンタ、いいのか。もしここでラ・テールが勝ったら、例の計画は実行されるんだろ
「そうだ。――我々は委ねたのだ。人類の未来を、この星の行く末を、わたしたちの創造した新人類たちに」
「あとは新人類たちがどう思うか。大粛清を望むならばよし、現状維持を望むのならば、それもまたよし……」
「もはや、我々にできることは何もない。ゆえにこそ、わたしは『観測者』なのだ」
機械の右眼が輝く。地面に立てたステッキに両手を乗せたまま、Dominusを見る。
「まだ、何か言いたそうな顔をしているな」
「我々が、性急にことを運びすぎると。そう……思っているのかな?」
「まったく、君をソレイユのDominusにすると最終的に決めたのはウッドマンだが……あいつめ、とんでもない人選をしたものだ」
「そうとも、Dominus。我々は急いでいる――我々には時間がないのだ。一分一秒でも惜しいのだ」
「よってこの計画を実施するタイミングは『今しかなかった』のだよ」
「まあ……それは後で説明するとしよう。今はただ、ふたりの救星主の戦いを見届けねば。どうだね?Dominus」
ウェストコットは軽くステッキの先を持ち上げると、視界の先にいる白と黒とを指した。
「粛清にせよ、中止にせよ……この戦いによって、人類の行く末が決まるのだから」
白と黒の閃光が激突し、周囲に突風が巻き起こる。あまりの衝撃に地面が崩壊し、近くのビルの窓ガラスが粉砕する。
熾烈と言う他ない戦いの凄まじさに、街と外界とを隔てる透明の外壁ドームに亀裂が入る――。
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「うおおおおお―――――ッ!!!」
ソレイユとラ・テールの支配する磁力が肉眼でも視認できるほど強力な力場を形成し、烈風が吹き荒ぶ。
兵装は同様。身体能力もほぼ同等。だが――ほんの僅かにラ・テールの方が押している。
それでも、ソレイユは退かない。懸命に戦い、食い下がり、九死に一生を見出そうと抗っている。
想い合い、慕い合い、愛し合うにも拘らず、争う以外に選択肢のない姉妹の戦いは――
今、佳境を迎えようとしていた。
0196ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/19(月) 21:39:02.93ID:UbqIWljqわたしと姉さまの放つ強力な磁場が、周囲の金属を上空に巻き上げ衝突を起こす。
瓦礫が宙に浮かび、わたしたちの周りを浮遊する。強い風がぐるぐると渦を巻いて駆け巡り、長い髪を嬲ってゆく――。
「――はああッ!」
「でりゃああッ!」
ガギィンッ!
ガッ!ガギィッ!ゴッ!ゴヅッ!
姉さまの繰り出す拳撃に、わたしも同様に拳で応じる。
わたしたちふたりの拳が激突するたび、発生した衝撃波が同心円状に拡散し、それがまた周りの建物や足場を破壊してゆく。
近くのビルにヒビが入り、ガラガラと音を立てて壁面が崩れ落ちる――。
「どうして――、あたしのジャマをするの!?あたしは!救星主として、みんなの為を想って……!」
――本当に!
本当に、姉さまはそう思っているのですか?いいえ……姉さまは、本当にトロイア計画が正しいことだと思っているのですか!
姉さまも……心の底では、計画を実行に移したくなんてないと!そう……思っているのではないのですか!?
「そんなこと……、知らない!いいか悪いかなんて関係ない、あたしは――あたしの使命を果たすだけ!」
「あたしたち『錬金人類(エリクシアン)』は、トロイア計画のために生まれた!それなら、計画を実行する以外にない!」
「それをやらなくちゃ……あたしがこの世に生まれた意味が、わからなくなっちゃうから……!」
バギィンッ!!
……く……!腕が痺れる……、電磁フィールドを展開してもこの威力!
でも……この拳の威力、これを引き出しているのは単なる身体性能ではなく、紛れもなく姉さまの強い意志の力!
姉さまの、何があっても計画を実行しようという強い決意が……この威力を生み出している!
「言ったよね……、あたしは、あたしの存在が無意味なものなんかじゃないって!望まれたものなんだって信じる!」
「だから、計画を実行する!ソレイユ、あなたの言葉を借りるなら――」
「あたしが――あたしであるために!!」
ぁ、ぐゥッ……!
姉さまの、目にも止まらぬ速度の飛び蹴り。両腕をクロスさせてガードしたものの、わたしは遥か後方へ吹き飛ばされる。
その上で、姉さまの目にも止まらぬ連続攻撃。わたしの身体に、姉さまの拳や蹴りが面白いようにヒットする。
オリハルコンでできたアサルトスーツでも防ぎきれない、致死の重爆――。
攻撃を喰らったわたしはドッ、ドウッ、と二、三度もバウンドし、十数メートルも地面を滑ったのち、やっとうつ伏せに止まりました。
……ッ……く、ふ……。
ダメージ……70パーセント……。損傷大、早急な……治療が必要……。
「ソレイユ……。あなたは、本当に強くなったね」
倒れ伏したわたしへと一歩一歩、ゆっくり歩み寄りながら、姉さまが言う。
「ラボでジュピテルにいじめられて、いつも泣いていたあなたが。まさか、ここまで強くなるなんて」
「本当に、あなたはいい人たちに巡り合ったんだね。機関の中ですべてを知ったあたしとは反対に、あなたは外の世界ですべてを知った」
「……羨ましいよ。あなたは、あたしにないものを全部持ってる。あたしが欲しくて堪らなくて、でも手に入らなかったものを――」
「でもね」
「この戦いは。あたしが……勝つ」
わたしの間近までやって来た姉さまが、右手を突き出す。黒い閃光、ラ・テール・オーロールが放たれようとしている。
わたしは、立ち上がれない……。このまま姉さまの粒子砲を浴びれば、もうわたしは……。
Dominus……、ごめんなさい……。
そう、戦うことを諦めかけたその時。
Dominusからの通信が、静かにわたしの耳に入ってきました。
0197ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/19(月) 21:45:02.92ID:UbqIWljq……そう……。
……そう、でした……。
わたしは、大事なことを忘れていました。それは、たった今他ならぬ姉さまからも言われたこと。
わたしは……いつだって色んな人たちから教えられてきた。多くのことを学ばせてもらった。
たくさんの愛を。想いを。与えてもらっていた――!
一緒に、喫茶店でお茶しました。「やきう」をしました。
お花見に行って、綺麗な桜の花を眺めました。商店街で、たくさんお買い物をしました。
手を繋いでもらいました。クラスメイトの皆さんにも、とてもよくしてもらいました。
サテュルヌ姉さまとお揃いの猫耳カチューシャを買ってもらったり。
他にもいっぱい、いっぱい……。
わたしは、戦いは何かを失う結果にしかならないと。ずっと、そう思っていました。
けれど、違った。姉さまたちとの戦いがあったからこそ、今、わたしはここにいる――。
姉さまたちの命を。想いを!遺志を――背負っている!!
「とどめ!ソレイユ!!」
ラ・テール姉さまが黒い粒子砲を放つ。それが至近距離で炸裂し、巨大な爆発が巻き起こる。
爆風がわたしの姿を掻き消し、姉さまの視界を遮る。けれど――
「……!?」
姉さまが驚きに目を見開く。
爆風の中から現れたのは、大地に両脚でしっかりと屹立するわたし。
「そんな……。あれだけのダメージを受けておいて、あたしのラ・テール・オーロールになお耐えるなんて……」
わたしの心の中には、五人の姉さまの愛が宿っているのです。
その愛に応えるためにも……わたしは!こんなところで、横たわってなんていられない!!
「愛なんて!そんなもの……ッ!」
姉さまが再びわたしを叩き伏せようと、必殺の蹴りを放ってくる。
でも、当たらない。わたしは流れる水のように姉さまの蹴りを受け流すと、ずいと一歩姉さまへ接近しました。
苦し紛れに、姉さまがさらに拳を打つ。万物を破壊する威力を秘めた、恐るべき拳――でも。
炎のような気迫を込めて、わたしもまた拳を放つ。激突した拳と拳のうち、姉さまの拳がみしみしと嫌な音を立てる。
「こ……、これは……!?」
驚愕する姉さまをよそに、わたしが反撃を開始する。氷のように研ぎ澄まされた戦闘理論に基づく、必中のコンビネーション。
わたしの掌打を胸に浴びた姉さまが数歩たたらを踏み、後方へよろめく。
なんとかイニシアチヴを取ろうとする姉さま。――けれど、そんなことは許さない。
光の速度を思わせる、目にも止まらぬ連撃。姉さまを上回る手数の多さで、瞬く間に壁際へと追い詰めてゆく。
「姉妹たちの力が……、特殊兵装だけじゃない、魂までもが……ソレイユと共にあるっていうの……!?」
――そう!!
雷さながらの激情を宿した、手刀の一撃。それを右肩に受け、今度は姉さまが地面に倒れる。
わたしには5人の姉さまの、70億の人々の、そして――Dominusの想いが!ついている!!
だから……絶対に負けない!
わたしはソレイユ!太陽の『錬金人類(エリクシアン)』!!
人々が、不幸の作り出す夜の闇に怯えないように。誰もが希望に満ちた朝焼けを見ることができるように。
生きとし生ける者たちが、平等に幸せな未来を歩むことができますように――
――人類に!黄金の夜明けを――!!!
0198ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/19(月) 21:48:51.10ID:UbqIWljqSic.Dominus.
ソレイユ、余裕を持って勝利します!!
「あたしを相手に……余裕を持って?そんなこと――出来るはずない!!」
わたしの拳を皮一枚で避けると、姉さまは素早く後退して大きく距離を取りました。
そして、もう一度ゆっくり構えを取り、右腕をわたしへと突きつけてくる。
「これが最後だよ、ソレイユ。この一撃で、この戦いに決着をつける」
「この一撃に、あたしのありったけを振り絞る。だから――」
はい、姉さま。
わたしも、この一撃にすべてを。懸けます!!
「ん。いい子だね……ソレイユ。じゃあ……往くよ!はあああああああ――――――――ッ!!!!」
承知しました、姉さま!おおおおおおおおおおお――――――ッ!!!!
わたしと姉さまが、咆哮と共に全身の力を解き放つ。力場が再度展開され、周囲の崩壊度が一層進行してゆく。
ビルが倒壊する。巨大な瓦礫が粉砕されてゆく。ふたりの立っている足場が崩れ、空中に浮かび上がる――。
これが最後。この一撃が姉さまとの戦いを、『トロイア計画』を、人類の趨勢を……すべての未来を、決める!
メルキュール姉さま、ヴェヌス姉さま、マルス姉さま、ジュピテル姉さま、サテュルヌ姉さま……。
そして、Dominus――わたしに、もう一度力を!!
「ラ・テール・オーロ―――――――――――――――――ル!!!!」
ソレイユ・アマ・デトワ―――――――――――――――――――ルッ!!!!
カッ!!!
迸る黒と白の閃光。その出力は先程の比ではなく、まるで太陽がこの場に降ってきたかのよう。
たちまち周囲が衝撃波によって吹き飛び、叡智の結晶たる未来都市が瓦礫の山に――否。何もない荒涼としたクレーターに変わる。
相反する属性のエネルギーが激突し、その余波が螺旋を描いて荒れ狂う。
「あたしは……、あたしは!あたしの、生きる意味を――!」
それは……、間違っています!姉さま!!
わたしは言ったはずです、命とは!ただ、そこにあるだけで尊い……!在り続けることこそが命の意味だと!
『なんのために生まれたか』ではなく、『生まれてから何を為すか』こそが、何より大切なのではないのですか!?
「……生まれてから……何を為すか……」
最初、わたしはからっぽでした。バックアップとして作られたわたしには、果たすべきなんの使命も。役目もなかった……。
けれど、そんなわたしに色々な人たちが。Dominusが、中身を与えてくれたのです。
そして今、わたしはわたしの意思で!わたしの生命を燃焼させるに足る、為すべきことを見つけてここにいる!
姉さま、あなただって同じです!あなたの生きる意味は、あなたが決めるもの――決して、誰かに言われて決めるものではありません!
もう一度問います――、『トロイア計画』は!本当に、姉さまのしたいことなのですか――!?
「…………」
ラ・テール・オーロールの黒い閃光が、僅かにその勢いを弱める。……今!!
わたしはいっぱいに手のひらを開いた両手を強く突き出すと、ありったけの力で叫びました。
ソレイユ・アマ・デトワール…………エテルネル――――――――――――――――――ッ!!!!!!
――ギュオッ!!!
わたしの放った光が、姉さまの黒い閃光を打ち砕く。
姉さまは目を閉じ、突き出していた手を下ろすと、そのまま光の洪水の中へと飲み込まれていきました。
0199フラグを立てることに定評のあるDominus
2016/09/21(水) 20:03:13.52ID:J4CzKl480200創る名無しに見る名無し
2016/09/21(水) 20:59:29.87ID:ALJxSUj8言いたい事は他のDominusが言ってくれたし、ソレイユはそれに応えて最終決戦に勝ってくれた
もはやこれまでよ
あとはラ・テールが生きているかどうかの確認と、三博士が何か仕掛けてこないか警戒したり、
デミウルゴスの生産工場がどこにあるか、メイザース師やウッドマン師がどうなったかだとか
残された謎の答えを聞いておくとかそんなもんだろうか
特にウッドマン師……デミウルゴス生産工場とかになってないといいけど
0201ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/22(木) 20:25:00.33ID:nuFNH88v>>199
…………や…………
……やった……!
わたしのアマ・デトワール・エテルネルの直撃を喰らい、光の奔流に消えた姉さまの安否を確認すべく、わたしはすぐに奔りました。
姉さま!ラ・テール姉さま……ッ!
瓦礫と化した未来都市の目抜き通りを駆け、姉さまの姿を探す。
果たして姉さまは200メートルほど前方、崩れ落ちたビルの瓦礫に半ば埋もれるような形で倒れていました。
すぐに瓦礫をどけ、姉さまを抱き起こす。胸のカドゥケウスは――砕けて、いない!
『錬金人類(エリクシアン)』はカドゥケウスが破壊されない限り、体内の『魔導血液(エリクシル・ブラッド)』が超回復を齎します。
粒子砲のエネルギーも、ぎりぎりのところで調整しました。姉さまを殺してしまわないように……。
それは、どうやらうまくいったようです。
「……ぅ……」
気を失っていた姉さまが、小さな呻きと共にうっすらと目を開ける。
ああ……、姉さま!本当によかった……!
「……ソレ……イ、ユ……。どうして……」
「どうして……あたしを殺さなかったの……?負けたあたしには、もう……存在する意味なんて……」
――意味は、あります。
なぜなら、姉さまはまだ、救星主としての役目を何も果たしていないからです。
「……あたし……が……?救星主としての……役目を……?なぜ……」
確かに、わたしたちは『トロイア計画』のために生み出されました。
でも、それをどうしても実行し、救星主としての覚醒と同時に人類の粛清に着手せよ、という命令は受けていません。
もしそんなプログラムが救星主の中にあるのなら、今頃はわたしも粛清に加担しているはず。
師には、そういうプログラムを埋め込むことだってできたはずなのに――。
『トロイア計画』は人類の粛清計画。人類の約93パーセントを削減するという、恐るべき計画です。
けれど。それを『する』か『しない』かは、わたしたち新人類の自由意思に委ねられている――。
それをわたしたちに決めさせるために、三博士はコンペティションを行なった。最強の新人類を決めるべく、三つ巴の戦いをさせた。
そして――姉さまと。わたしが最後に生き残った……。
「……うん……」
デミウルゴスを世に放つというウッドマン師の独断専行により、いつの間にか人類の粛清にばかり主眼が置かれてしまった。
それが、そもそもの間違いだったのです。
三種の新人類の中で最も優れた者が、旧人類を導く。それが――そのことこそが。
真の『トロイア計画』の姿……なのではないでしょうか?
選択肢には、大粛清もあるでしょう。けれど、共存共栄、現状維持という選択肢もある。
殺戮ばかりが救星主の使命ではありません。旧人類を見守り、慈しむこともまた、救星主の役目でしょう。
その上で……もう一度、問わせて頂きますね。ラ・テール姉さま――
『本当に』、人類の粛清をしたいと思いますか?
「……………………」
静寂が、わたしと姉さまの間をゆるやかに流れてゆく。
幾許かの時間を経て、わたしの胸の中でぎゅっと身を縮め、瞑った両目からぽろぽろと涙を零して。
ラ・テール姉さまは、何度も首を横に振りました。
0202ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/22(木) 20:27:37.71ID:nuFNH88vやりました、Dominus!
わたしは、Dominusのご期待に応えられましたか?いい子でいられましたか?
それなら、頭を撫でてほしいです……なんて。えへへ。
「まったく、大番狂わせとはこのことだな。よもやスペアパーツに過ぎんおまえが、本命を凌駕してしまうとは……」
ウェストコット師がぞんざいな拍手と共に告げてくる。わたしは姉さまを抱いたまま、師をきっと見据えました。
――ウェストコット師。姉さまとわたしの間で今、合意が得られました。この決定に異論はありませんね?
「何度同じことを言わせるつもりだ?わたしは観測者に過ぎん。観測者はただ、黙して事実を観測し記録するだけだ」
わかりました。それで問題ありません。それから――師の計画を台無しにしたことに、心よりのお詫びを。
「ソレイユ、Dominus……ごめん。……それから……あたしを止めてくれてありがとう」
「この償いはするから……。どんなことをしても贖うから……。だから……また、一緒に……いさせて貰っても、いい……?」
姉さまが、泣き腫らした顔でわたしとDominusを見る。
もちろんですとも、姉さま!これからも、今まで通り。ずっと一緒にいましょう!
ね?Dominusだって、全然かまいませんよね?Dominusはこの程度のこと、気にするような人ではありませんもの!そうですよね?
「……ん……。ありがとう」
はい、大丈夫です。ノー・プロブレムです、姉さま!
……と、蟠りもなくなったところで姉さま、大変申し訳ないのですが……。
「わかってる。デミウルゴスを止めるんでしょ?……こっちだよ」
早くも魔導血液によって回復が図られているのか、姉さまがふらつきながらも立ち上がって歩いてゆく。
その向かった先は、最初に姉さまとわたしとが戦った『聖櫃の大聖堂(アーク・カテドラル)』。
姉さまがわたしたちを待ち構えていた、この巨大な聖堂に何が……?
「この大聖堂の中は、救星主の能力を増幅する構造になってるんだよ。あたしはここから世界中のデミウルゴスに命令してたんだ」
ということは――、ここでわたしたちふたりがデミウルゴスに停止命令を下せば、世界で起こっている殺戮を止められる!
「そう……。アポトーシスでデミウルゴスを自壊に追い込むこともできる。そうすれば、もう誰も殺されたりしない」
わかりました、では……さっそく始めましょう、姉さま!
わたしと姉さまは聖堂の奥にある祭壇の前に立つと、きゅっと互いの手を握って目を閉じました。
そして、デミウルゴスを支配する能力を解放する。祭壇の上にある『機械の神(デウス・マキナ)』のモニュメントが震動する。
デミウルゴスへの停止命令。絶対の効力を持つそのオーダーが、聖堂の中で何百倍、何千倍にも増幅されて世界中へ広がってゆく。
世界各国で暴れるデミウルゴスたちが、一斉にその動きを止め――
――止め――
「……!?……そ……、そんな……」
姉さま……?どうなさったのですか?
みるみる顔を蒼褪めさせてゆく姉さま。わたしが目を開けて怪訝に問うと、姉さまは唇をわななかせ、
「……デミウルゴスが……止まらない……!」
と、絞り出すように言いました。
0203ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/22(木) 20:32:07.28ID:nuFNH88v姉さまが狼狽し、頭上の『機械の神(デウス・マキナ)』を仰ぐ。
なぜ……?わたしたちの力は、確かにこの大聖堂によって増幅され、世界に伝播したはずなのに……!
「ウッドマンの仕業だろう」
傍らで声。そちらに視線を向ければ、ウェストコット師が床にステッキを立て、ヘッドに両手を乗せて佇んでいました。
い、今なんと……?ウッドマン師の……!?
「デミウルゴスはウッドマンの作品だ。つまり、ヤツにもデミウルゴスを自由にできる技術があるということ」
「こういう事態を予測し、デミウルゴスの支配権を救星主から自分自身にシフトさせたのだろう。周到なことだな」
どこか他人事のようなウェストコット師の言葉。
こうしてはいられません!早く、ウッドマン師を止めなければ!このままでは大粛清が――
「ウッドマンはここにはおらん。このビュトス機関本部には、もう……な」
では、いったいウッドマン師はどちらに?教えてください、ウェストコット師!
わたしは思わずウェストコット師に詰め寄りました。事態は一刻を争います!すぐにでもウッドマン師にやめて頂かないと!
けれど、ウェストコット師は取り乱すわたしとは対照的に落ち着き払い、ステッキで一度床を叩くと、
「物事には順番がある。ならば、次のフェイズへ移るとしよう。ついてくるがいい」
と、踵を返して大聖堂から出て行きました。
Dominus、姉さま、わたしたちもウェストコット師と一緒に行きましょう。
いったい、師はわたしたちをどこへ導こうとしているのでしょうか……?
「そこには、すべての答えがある。今こそ謎の一切に答えよう」
「なぜ、我々がこのタイミングで『トロイア計画』を実行に移したのか。我々三魔術師とは何なのか」
「だが――それは堪えがたい絶望の起点であるかもしれん。地獄のとば口やもしれん」
「それでも後悔しない、というのなら――」
「この扉を。開けてみたまえ」
ビュトス機関本部都市に林立する未来的な意匠の高層ビル群、そのひとつ。
大きなドーム状の施設の自動扉に、意を決して身を投じる。
その先にあったものは、一面の花畑。
色とりどりの花が咲き乱れ、蝶が舞い、心地よい風が時折頬を擽ってゆく――それは、まるで常春の楽園。
グリーンランドの凍土に覆われた山の中に、こんな花畑があるだなんて……。
――あっ!!!
ふと視界に入ったものに対して、わたしは思わず大きな声をあげてしまいました。
天国というものが存在するとしたら、こういった場所なのだろうと感じさせる花園――その中に存在する人影。
それは看護師らしき女性に付き添われ、車椅子に座った、痩せ枯れた白髪の老人。
茶色のガウンを身に纏ったその姿は、少なくとも齢90は超えているように見える。
わたしが最後に拝見した姿とは、ずいぶん違っているけれど……そのお顔を見間違うことなどありえない。
ああ、なんてこと……!ずっと、ずっと会いたかった……!
メイザース……師……!!!
0204創る名無しに見る名無し
2016/09/24(土) 00:48:51.08ID:XfG329jwしかしメイザース師は残された時が僅かだったから、戦いを見届けられなかった、ということなのかな?
いやでも、ソレイユが目覚めたときから考えれば、そんなに歳月が経っている筈もないし、じゃあ急速に老いた……?
メイザース師はもしや、その優秀な頭脳を長く保持するためにクローン的なあれでやってきたのでテロメアが短いとかで
すぐ老いてしまい寿命が短い的なあれなのかな……
ウェストコット師もだいぶ体を機械化してるようだし、各々得意な分野で自分を延命してきたってことなんだろうか
じゃあウッドマン師は……デミウルゴスを創り上げたウッドマン師の延命方法とは、もしかしなくても
0205創る名無しに見る名無し
2016/09/24(土) 22:55:50.52ID:pDOd09Pi自分で引き受けた覚悟完了してる奴だからなぁ
まんまキングとして出て来ても驚かんで
0206ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/25(日) 14:39:33.74ID:PvVnbE7A>>204
えへへ、嬉しい……。
……はっ!?つ、ついDominusに撫でられた嬉しさで気が緩んでしまいました!
なでなでもとっても素敵ですが、今はこうしてはいられません!
わたしは我に返ると、すぐにメイザース師の元へと走ってゆきました。
メイザース師!メイザース師……!
車椅子に座し、やや顔を俯かせているメイザース師の膝元に駆け寄り、声をかける。
メイザース師、わたしです!ソレイユです!貴方が御造りになった、『錬金人類(エリクシアン)』の末妹の……!
……メイザース……師……?
わたしがいくら呼びかけても、メイザース師は俯いたまま、まったく反応をしてくれません。
目は開いていますから、眠っているわけではないと思うのですが……。
というか、師のこのお姿。私の記憶の中のメイザース師は、60歳程度の外見であったはず。
それが、わたしがラボを出てまだ一年も経っていないというのに、こんなにもお年を召されるなんて……?
「いくら呼びかけても無駄だ。聞こえてはいまい」
遅れてやってきたウェストコット師が、わたしの背後でそう言う。
……ウェストコット師……?それは、どういう……?
「“それ”はメイザースの抜け殻のようなものだ。メイザースの脳中にあった叡智は、パーソナリティは、すべて揮発してしまった」
「わかるか?これが、我々が『トロイア計画』を今のタイミングで実行したことの理由なのだ」
そ……、そんな……。
メイザース師は……、どうなってしまったのですか……?
「人間の脳の寿命は、約200年と言われている」
「通常、脳が寿命を迎えるよりも先に肉体が寿命を迎えるため、脳もそこまでは生きられない」
「が、我々は最先端の叡智を駆使することによって肉体の寿命を遥かに延長させ、脳を生存させることに成功したのだ」
「そいつの実際の年齢を教えてやろう。今年で162歳だ。……ちなみに、わたしは168歳だがね」
「わたしは見ての通り、肉体を機械化させて。そしてメイザースは自らのクローン体に脳移植をして、命を長らえさせてきた」
機械化……。脳移植……。
「だが、脳だけはいけない。脳は人体で唯一代替の効かない臓器だ。わたしも肉体の九割を機械にしたが、脳だけは替えていない」
「だから、脳が壊れてしまえばそれまでだ。どうしようもない」
「メイザースの脳は現在、悪性の腫瘍に冒されている。状態は末期だ……もはや、我々には手の施しようがない」
「むろん、機関のすべての叡智を総動員して、治療をすべく最善は尽くしたが――」
メイザース師が……。末期の、脳腫瘍……?
で、では……。メイザース師は!メイザース師は、もう長くないと……?
亡くなってしまう……ということなのですか……?
「そうだ。メイザースはもう死ぬ」
「そしてメイザース自身もそれを受け入れていた。死は人のさだめだと――」
「我々は神に等しい権能を持つが、神そのものにはなれない。我々はあくまで、神の真似事をする旧人類に過ぎん」
「よって、我々は計画を実行した。我々三魔術師が揃っている間に、と」
「――まあ……結局、こんな結果になってしまったがな」
い……、嫌です……!
メイザース師が亡くなってしまうなんて……!そんなの!そんなの絶対に嫌です!
ウェストコット師!ビュトス機関のテクノロジーは地球最高のはず!お願いです、なんとかしてください……!
お願いです……、お願いですから……!!
……お願い……
です、から……
0207ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/25(日) 14:42:59.06ID:PvVnbE7Aたったひとつの……方法……?
それは?それはいったい何ですか?それで、メイザース師を救うことができるのですか?
でしたら、すぐに!すぐにその方法を!お願いします、ウェストコット師……!!
「それはできん。――何故なら、それをメイザース自身が望まなかったからだ」
「その方法とは……『脳内データの電子化』。生身の脳が記憶している情報すべてをデータ化し、電子頭脳に移植するという方法」
「まだ、我が機関でも成功例が一例のみの、極めて難しい事案だが――」
ど、どうして?なぜ、メイザース師はその方法を拒否されたのですか?
それで命を繋げるのなら、試すべきです!
「今、おまえは命を繋ぐと言ったが」
「脳のデータを電子化し、機械に移植する。それは果たして、命を繋げたと言えるのか?」
……え……?
「黄金の夜明け団より連綿と受け継がれる、我がビュトス機関の理念はこうだ。『崇高なる魂は肉体に宿る』と――」
「肉体をすべて捨て去れば、魂の座はどこになる?それは果たして、生きていると言えるのか……?」
「『機械化人類(メカニゼイター)』を生み出したこのわたしさえ、肉体をすべて機械とすることに抵抗を感じずにはいられん」
「メイザースは尚更だろう……。よってヤツはこのまま病魔に侵され、死する道を選んだのだ」
「今のメイザースの脳を納めているそのクローン体も、寿命が近い。そして、ヤツ自身の脳も次の脳移植には耐えられん」
「それをヤツは知っていた。よって、その肉体と共に滅ぶと決めたのだ。ならば、我々にできることはただひとつ、だろう?」
師の存命中にトロイア計画を発動し、人類に輝かしい未来を示唆してみせること……!
「そうだ。……尤も、もう……メイザースには確認できなかったようだがな」
……ぅ……
メイザース師……メイザース師!そんな……そんな……!
うぅぅっ、う……ああぁぁああぁあぁああああ……!
目覚めて間もなかったころ、幾度も縋ったメイザース師の膝。温かくて心地よかった、大好きだった、師の膝。
そこに取りすがり、わたしは声をあげて泣きました。
「……ソレイユ。気持ちはわかるけど……今は、泣いているヒマなんてないよ」
「デミウルゴスがまだ、世界のあちこちで暴れてる。それを止めなきゃ」
姉さまが申し訳なさそうに、わたしの肩に手を置いてそう告げてくる。
ぅっぐ……、ぐすっ……。
は、はい……姉さま……。
……ウェストコット師、では……ウッドマン師は……?
「ウッドマンは東京湾沖に向かっているはず。ほどなく姿を現すだろう」
上着のポケットからスマートフォンのような端末を取り出し、液晶を一瞥して師が告げる。
東京湾……?なぜ、ウッドマン師がそんなところに……?
「簡単な話だ。この計測器の示す『デウス波』がそう言っている」
「ヤツは――『巨神(デウス)』を求めている」
0208ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/25(日) 14:45:03.11ID:PvVnbE7Aデ……、『巨神(デウス)』……。
あの超巨大デミウルゴスのところに、ウッドマン師が……。
それは、どうして――
「順番に説明してやろう。我々は『トロイア計画』を実施するにあたり、三種類の新人類を創造した」
「そして最後に残った新人類に世界の、人類の未来を決定させようとした――」
「『錬金人類(エリクシアン)』と『機械化人類(メカニゼイター)』には自我があるが、『神人類(デミウルゴス)』に自我はない」
「あるのはただ、自分を支配する存在の命令に従うという意思だけ。女王アリに従う兵隊アリのようなものだ」
あの……、ウェストコット師。
……それでは、もしデミウルゴスが最後まで勝ち残った場合、旧人類の未来を決定することができないのでは?
「そうだ。しかし、デミウルゴスの創造主たるウッドマンは、驚くべき方法でそれを解決した」
「つまり――」
「『自分自身がデミウルゴスとなる』という方法で……だ」
…………!!!
自分自身が……デミウルゴスになる……!
「そうだ。ヤツは自らの肉体を何もかも、脳さえも捨て去り、巨大な量子演算システムに自らのパーソナリティを移殖した」
量子演算システム!?
そ……、それは……まさか!!
「気付いたようだな。そう――我がビュトス機関の誇る、未来予測演算装置――」
「『エル・シャダイ』だ」
……エル・シャダイ……!
わたしとDominusとを引き合わせた、機関の未来予測演算装置が……。
まさか、三魔術師のひとり……ウッドマン師そのものだったなんて……!!
「我々は神に匹敵する力を有するに至ったが、肉体と魂に固執する限り神の紛い物に過ぎん」
「ウッドマンはそれを捨て去ることで、神そのものになろうとしたのだ」
「『トロイア計画』において、旧人類の直接介入はご法度。だが――」
人間でなくなってしまえば。自らが『神人類(デミウルゴス)』となってしまえば、その制約は無効となる!!
「その通り。自らの意思は、すなわちデミウルゴスの意思。まったく屁理屈だが、しかし我々にその論法を覆すことはできなかった」
「よって、『錬金人類(エリクシアン)』と『機械化人類(メカニゼイター)』に託したのだ。おまえたちに」
……そんなことが……。
「エル・シャダイは巨大な電子頭脳だ。それ自体ではなんの攻撃手段もない」
「しかし――『頭脳』がそれに見合う『肉体』を手に入れたなら……?」
『巨神(デウス)』型デミウルゴスが、エル・シャダイの……肉体を捨てたウッドマン師の、新しい肉体になる……と?
「そうだ。そして、エル・シャダイが『巨神(デウス)』の頭部に納まったその時――」
「最強のデミウルゴスが生まれる。『王(キング)』型デミウルゴス、エル・シャダイ・ウッドマンが……!」
『王(キング)』型デミウルゴス!
それが……ウッドマン師の最終計画……!
0209ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/25(日) 14:47:45.05ID:PvVnbE7Aウッドマン師……いいえ、エル・シャダイが『巨神(デウス)』と合身する前に止めなければ……!
「無理だ、今テレポーターを使ったところで間に合わん。いくら救星主がふたりいたところで、あれには勝てまい」
それでも……、それでも!このまま、手をこまねいていることなんて……!
わたしはメイザース師の膝前に跪いたまま、ウェストコット師を見上げました。
例え負けると分かっていても。絶望的な状況でも。
じゃあ抵抗するのはやめよう、なんて――物分かりがいいふりをして、諦められるわけがありません!
ウェストコット師や姉さまが沈黙する中、わたしがそう強い口調で反論した、そのとき。
不意に、わたしの頭に乗せられる手。
この、温かな手は……!
わたしが咄嗟に振り返ると、それまでずっと俯いたきり、なんの反応も見せることのなかったメイザース師が。
柔らかな笑みを浮かべて、わたしを見つめていました。
「……ソレ……イユ……」
―――――!!
あぁ……、ああ!なんてこと、メイザース師……!
「よく……帰って……きたね……。ソレイユ……」
ともすれば聞き逃してしまいそうなほど小さな、掠れた声。
でも、その声は。かつて絵本を読み聞かせてくれた、わたしの大好きなメイザース師のお声に紛れもありません。
メイザース師、お気が付かれたのですね……!わたしは信じていました、わたしは……!
「……ソレイユ……よく、お聞き……。時間が……ない、から……ね……」
「『巨神(デウス)』こそ……デミウルゴスの、プラント……そのもの。あれを、破壊しなければ……デミウルゴスは、無限に……」
はい……!はい、メイザース師!
わたしは、必ず『巨神(デウス)』を破壊します!そして……この世界を!この星を救ってみせます!
「おまえ、には……まだ、覚醒していない……力が、ある……」
「それを……使って……。人類に、輝かしい……未来を、与えて……おくれ……」
わかりました、メイザース師……!お約束します!
わたしは太陽の『錬金人類(エリクシアン)』!きっと人々に、幸福な未来の光を齎してみせますから!
「頼んだ、よ……」
「……ソレイユ……ラ・テール……。わたしの……かけがえのない、大切な娘たち……」
……ッ、はい……!
はい、承知しました……!父さま!!
「――行くぞ」
踵を返し、ウェストコット師が花園を去ろうとする。
後ろ髪を引かれる思いではありましたが、最後に一度メイザース師の手を握り、そのこけた頬にそっと頬擦りして。
わたしもまた、花園を後にしました。
父さま。メイザース父さま――
ソレイユは。往きます!!
0210ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/25(日) 14:50:48.52ID:PvVnbE7Aまた別の場所に建っている高層ビルでした。
いえ……高層ビル『であった』と言った方がいいでしょうか?
なぜならそのビルは倒壊して瓦礫に変わっており、敷地の入り口には立ち入り禁止を示すワイヤーが張ってあったからです。
……ウェストコット師、ここには何が……?
「黙ってついて来い」
いとも簡単にワイヤーを外し、敷地の中へと入っていく師。
ここは……。わたしと姉さまの戦いで壊れたわけではなさそうですね。ずっと前から廃墟になっていたようです。
そうこうしているうちにエントランスへ入り、地下へと続く高速エレベーターを利用して、わたしたちは地中深くへと降下してゆく。
「ウェストコット父さん、ここは……」
エレベーターの中で、姉さまが何かに気付いたように双眸を見開く。
「おまえは知っていたな。……その通りだ」
姉さまは、ここがどこなのかご存じなようですが……。
やがてエレベーターが最下層に到着すると、わたしたちは巨大な両開きの扉の前に立ちました。
ただしその扉は爆発物の衝撃でも受けたかのようにひしゃげ、今となってはまるで用を成さなくなっています。
その先にある扉も同様。幾重にも厳重に施されたセキュリティを、まるで力任せに破っていったかのような惨事の跡。
そして、わたしたちが到達した、それらの破壊されたセキュリティシステムの果てにあったもの――
「ここは、封印指定兵装の保管庫。機関が危険であると判断し、地の底深く眠らせた兵器たちの寝所だ」
封印指定兵装!では、この状況は――『機械化人類始祖(メカニゼイター・オリジン)』の……!
かつてオリジンはビュトス機関を出奔する際、この場所を急襲して封印指定兵装・神剣アポクリファを強奪した――。
このひしゃげた扉や破壊されたセキュリティシステムは、オリジンのやったものということですね。
でも、ここに何の用が……?
「察しの悪いやつだ。相手は『巨神(デウス)』、そしてウッドマンだぞ?おまえたちの通常兵装では心もとない」
「よって……こちらもそれなりの兵装で行くのだ。心配するな、“あれ”は『巨神(デウス)』に勝るとも劣らぬ性能を持っている」
「いや……むしろ、こちらの方が優れている!“あれ”は――このわたしの最高傑作なのだからな!」
ウェストコット師の最高傑作……。それは、もしや……!
そう考えているうちに、訪れた封印指定兵装保管庫の最奥。
正面のハンガーに固定されたそれは、体高5メートルほどのロボット。
全身白一色のカラーリングは、背の鳥を模した巨大な翼も相俟って、まるで天使のよう。
長大な騎兵槍と盾とを装備した、その姿は――!
「ARMG-00『アルマゲドン』」
「人類の持ちうる、現状最高にして最強の兵器だ」
0211創る名無しに見る名無し
2016/09/25(日) 15:16:34.17ID:IS9docGtそんな私の頭の中で流れた曲↓
パシフィクリム-メインテーマ
ttps://www.youtube.com/watch?v=tMTr2rbqSBM
0212創る名無しに見る名無し
2016/09/25(日) 16:30:25.47ID:3Ya58DFmウェストコット師はなー。「意思決定したしもうええやろ」
「奴を倒せるならソレイユも本望だろう」ってノリで勝手にポチーってやりそうだからちゃんと確認するんだぞ
それと、この最高傑作は白いの一体しかないんかね。二人乗りじゃないんだったらラ・テールの分もなんか下さい!
0213創る名無しに見る名無し
2016/09/26(月) 02:20:21.84ID:HWV2d40Z命を救って頂いたお礼に兜を差し上げますので、どうかお受け取り下さい
ボキッ! イタッ! どうぞ!
0214ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/27(火) 20:57:31.73ID:wZSDX2Pw>>212
重厚な装甲。白一色のカラーリング。背の大きな翼に、スリットの奥の鋭い双眸――。
これが機械工学の権威、ウェストコット師が自ら最高傑作と公言する機体……ARMG-00『アルマゲドン』!
雄々しく屹立するその姿は、神々しささえ感じるほど。
凄いです、ウェストコット師!
「いかにウッドマンが『巨神(デウス)』と合身し強大な力を得たところで、このアルマゲドンには敵わん」
「さあ、行くがいい。そして、ウッドマンにアルマゲドンの性能を見せつけてこい!」
……はい!
でも、ウェストコット師……宜しいのでしょうか?
わたしたちは現状維持――人類粛清の中止を決断しましたが、ウッドマン師がわたしたちの指導者であることに変わりはありません。
偉大な師に、そしてウェストコット師やメイザース師の同胞たる御方に、弓を引いてもよいのでしょうか……?
「何を言い出すかと思えば……。今さらの質問だな」
「言ったはずだ。我々の理念は『崇高な魂は肉体に宿る』――肉体の一切を廃棄し、意識さえもデータ化したヤツのどこに魂がある?」
「思えば、ヤツが肉体を捨て『エル・シャダイ』と一体となったとき、我々の同士たるウッドマンはすでに死んでいたのだろう」
「とすれば――今『巨神(デウス)』と共にあり、人類大粛清を強行しようとするアレは、もはやウッドマンではない」
「言うなれば、ウッドマンの意識の残骸……亡霊だ。亡霊を祓うのに、なんの遠慮がいる?」
…………。
……そう、ですね……。わかりました、ウェストコット師。
ならば。ウッドマン師の魂の安寧のために。師の名誉のために。
わたしは。あれを――エル・シャダイを。破壊します!!
「アルマゲドンの亜空間ドライブシステムがあれば、一瞬で東京湾上に移動できるだろう。……早く行け」
では、師は……?
「わたしは、ここで観測者としての役目を果たす。……メイザースを置いても行けんしな」
「それと。アルマゲドンはこの一機しかない。最高傑作とは、この世にふたつとないがゆえに最高傑作たりうるのだ」
「完全無欠の作品に、自爆装置などつけるものか。余計な心配をするな」
承知しました、ウェストコット師。
では……姉さまはどうしましょうか?
「あたしは、このままでいいよ。何もいらない」
……でも……。
あ。それなら、姉さまにアルマゲドンに搭乗してもらって――
「ううん、あたしはソレイユのサポートに回るよ。今はもう、あたしよりソレイユの方が強いと思うし……」
「その白い機体は。ソレイユが使うのが一番似合っていると思うから」
そう言って、姉さまが微笑む。
わかりました、では――姉さま、Dominus、準備は宜しいですか?
往きましょう……最後の戦いへ!!
0215ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/09/27(火) 21:02:13.93ID:wZSDX2Pw目指すは日本、東京湾沖約500キロの地点。
ウェストコット師より頂いた端末が、その座標からデウス波が放出されているのを確かに捉えている。
そこに。その場所に、ウッドマン師――いや、未来予測演算装置エル・シャダイが……!
来たるべき最後の戦いを前に、わたしは緊張から唇を固く引き結びました。
「……あの〜、ソレイユ?シリアスな雰囲気のところ悪いんだけど」
あっ、はい?何ですか姉さま?
「狭い!肘!肘が当たってる!このコクピット狭すぎ!!」
すっ、すすすすみません姉さま!
でも、このアルマゲドンは本来一人乗り……しかも、機体自体も全高約5メートル強と、有人機にしては小型です。
他に移動手段がないとはいえ、そのコクピットに三人はさすがに無理がありました……!
「いたたた!なんか足が引っかかってる!あとDominus!どこ触ってるのよーっ!?えっち!」
ど、Dominus、申し訳ありませんが、少しだけ左にずれて頂けませんか……?操縦桿が握れません……。
「Dominusがシートに座って、Dominusの膝にソレイユが座ればいいんじゃん?」
ふぇっ!?そ、そそそそんな、Dominusのお膝になんて畏れ多い……!
とっ、ともかく!亜空間ドライブシステム、起動!
――――ギュアッ!!!
遠く離れた場所と場所とを繋げ、瞬く間に移動する亜空間ドライブシステム。
ほんの僅かに身体が後ろに引っ張られる感覚を味わった、その直後。
グリーンランドにいたわたしたちは、約8085km離れた東京湾上へと、一瞬で移動していました。
そして、東京湾に転移してすぐに、わたしたちの視界に入ってきたのは――
洋上に聳えるように立つ、巨大な人造の神。『巨神(デウス)』型デミウルゴス。
そして、空を。海を一面埋め尽くす、膨大な数のデミウルゴスたちの群れ……。
「ちょっとゴメンね、ソレイユ」
わたしが緊張に身震いしていると、姉さまが狭いコクピットの中で不意に身を乗り出し、何を思ったかハッチを開けてしまう。
ね、姉さま?何を……?
「もう限界。狭すぎ。あたしは外で戦うよ、ソレイユとDominusもその方が多少広くなっていいでしょ?」
わかりました、姉さま。くれぐれもお気を付けて……。
「大丈夫!これでも元祖救星主だからね。そう簡単にはやられないって!」
にっこり笑い、右腕に力こぶを作ってみせる姉さま。
姉さまの笑顔は、いつもわたしを元気づけてくれる……。少しだけ緊張もほぐれた気がします。
ハッチを閉めると、わたしは改めて前方の『巨神(デウス)』と『神人類(デミウルゴス)』に注視しました。
――ついに、このときが。
『トロイア計画』に、わたしたち『錬金人類(エリクシアン)』の戦いに、終止符を打つ時がやって来た……。
Dominus、これが本当に最後の、未来を掴み取るための戦い。
あと一度だけ……わたしに、力を貸してくださいますか……?
メルキュール「こんばんは〜☆メルキュールの『エリクシアンおまけ講座』のお時間ですよ〜!MCはわたし、メルキュールと――」
ヴェヌス「大詰めのシリアスな空気の中、おちゃらけたおまけ講座をすることに罪悪感を禁じ得ないわたくしその他がお送り致します」
メルキュール「今日一枚目のおハガキは、ポイントZ-33667にお住まいの>>211さん!ありがとうございます☆」
サテュルヌ「採用」
ジュピテル「……ちょっとは議論なり何なりしよーよ……」
マルス「いやでも、カッケーじゃン?格納されてるロボを前にして、最終決戦への緊張を高める……!うおお、燃えるぜーッ!」
ヴェヌス「単細胞ですわねえ……でも、確かにBGMがあった方が盛り上がるというのは事実ですわね」
ジュピテル「みんなもこの場面ではこーゆー曲が似合いそー!ってゆーのがあったら教えてねーっ!」
サテュルヌ「これはもう、吾ら個人個人のキャラソンを作るしかないのではないかと」
マルス「それ単にオマエが歌いたいだけだろ」
メルキュール「サテュルヌったら、カラオケだとアニメの曲しか歌わないんだもの……お姉ちゃん全然わからなくて寂しい……」
サテュルヌ「かつては吾がDominusとアニソン縛り徹カラなどしておりましたゆえ――」
マルス「オレは音痴だからいいや。金姉は?」
ヴェヌス「えっ?わ、わたくし、カラオケなどという行為は嗜みませんわ?」
ジュピテル「んじゃ、キャラソンはボクとサテュルヌだけ作ろーっと。サテュルヌ!レコーディング行こう!」
サテュルヌ「承知!」
ヴェヌス(こっそり毎晩ヒトカラに行っているとは言えませんわ……)
メルキュール「さて、今日二枚目のおハガキはポイントM-14856にお住まいの>>213さんですよ〜☆」
サテュルヌ「おう、久しいものよな。達者なようで重畳重畳」
ジュピテル「知り合いなんだ……ってゆーか助けたんだ……」
サテュルヌ「今年の初夏、無性にカブトムシが見たくなり、クヌギの木にトリモチをつけて待っておったのです」
マルス「テメェが犯人なンじゃねーか」
サテュルヌ「命まで取る必要はないと思い……。これぞ武士の情け」
ヴェヌス「なんとかいい話にしようとしていますが、無駄な努力ですわよ」
メルキュール「そんなカブトムシさんが、お礼にカブトをくださるそうよ?あらあらまあまあ、わざわざ……」
マルス「取れるモンなのかそれ?取ろうとしたら首もげるンじゃね?」
ジュピテル「……折ったね」
サテュルヌ「ほう、これは感心。鶴とて一度恩を受ければ機織りにて返すという。汝(うぬ)は兜を献上すると申すか」
ヴェヌス「何に使うんですの?それ……」
マルス「新しい兵装として使ってみるってのはどうよ?」
ヴェヌス「額にでもつけておけばどうですの?ラッキーアイテム的な感じで」
サテュルヌ「や、特にいらぬゆえ捨てますが(ぽいっ)」
ジュピテル(うわぁ……)
メルキュール「ではまた次回、ごきげんよう〜☆」
ラ・テール「あ、なんか落ちてる。なにコレ?」
ソレイユ「カブトムシの角……ですね」
ラ・テール「……いる?」
ソレイユ「い、いいえ……」
0217創る名無しに見る名無し
2016/09/28(水) 18:39:57.01ID:Gqqe4hiF巨神(デウス)はあまりに防御が固くて、どれだけ攻撃しても再生してたよね
あまりに攻撃が通らないようなら、巨神(デウス)の内部にワープしてエルシャダイとか核となるものを直接破壊するとか
巨神(デウス)を連れて宇宙までワープして、太陽やブラックホールにでもぶん投げるとか
0218創る名無しに見る名無し
2016/09/28(水) 19:02:29.61ID:wt8JRjvoサテュルヌがエキセントリックすぎて助けたショタにお助け料1億万円を要求のうえ未成年者略取してても全く驚かないゾ
0219創る名無しに見る名無し
2016/09/30(金) 02:19:43.42ID:+T+khr55友達にはなりたくないが
0220創る名無しに見る名無し
2016/09/30(金) 23:43:39.59ID:HfE/Wd9H★亜空間ドライブ・ランスチャージ :
画面外からの突進攻撃。地形をすり抜けたり、不可視の状態で放たれる理不尽攻撃として敵プレイヤーからの評判はすこぶる悪い。
(ヴェヌスはヒトカラで何を歌っているんだ……一昔前のヒットチャート曲かしら)
0221ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/02(日) 21:34:53.61ID:vsiwELym>>217
海面からそびえ立つ、巨大な――と言うにはあまりにも馬鹿げた大きさのそれ。
ビュトス機関が造り上げた人造の神、『巨神(デウス)』型デミウルゴス。
騎士のような装甲に鎧われた、あの巨体の中にウッドマン師が……。
『巨神(デウス)』は動かない。その佇まいはどこか茫洋とさえしていて、わたしたちの存在を認識しているのかすらわからない。
『巨神(デウス)』こそがデミウルゴスを創造するプラントそのものなのだと、メイザース師は仰っておられました。
自らの使徒たるデミウルゴスを無限に生み出す創造神。破壊の使者の王。
今まで『巨神(デウス)』が自ら戦うことをせず、単に海面に姿を現すだけだったのは、自らが戦う必要などなかったから。
人類の粛清を、従僕たちに一任していたから――。
そして自身は『錬金人類(エリクシアン)』や『機械化人類(メカニゼイター)』、そして世界の動きを監視していた。
いつ、わたしたちがウッドマン師に叛逆してもいいように……。
「ソレイユ、準備はいい?……来るよ!」
アルマゲドンの外に出たラ・テール姉さまが、わたしとDominusにそう注意を促してくる。
『巨神(デウス)』は、依然動かない。でも――
空に漂う無数の『歩兵(ポーン)』『僧兵(ビショップ)』『騎兵(ナイト)』が、わたしたち目がけて一気に襲い掛かってくる。
『神人類(デミウルゴス)』は、少なく見積もっても数十万。対するこちらは二騎。
けれど――何も恐れることはありません。
『アルマゲドン』は地球最強の機体。ラ・テール姉さまは、この惑星の救星主。そして……
わたしの、そしてDominusの中には。地球人類すべての想いが宿っているのですから!!
「薙ぎ払え、あたしの黒い閃光!ラ・テール・オーロ――――――――ル!!!」
ギュアッ!!
姉さまの両腕から迸った黒い閃光が、一気に直線状のデミウルゴスたちを蒸発させる。
その熱量は膨大。たとえ直撃を避けたとしても、ただその余波を浴びただけでデミウルゴスたちは爆散し、墜落してゆく。
でも、それで終わりではない……。姉さまはデミウルゴスたちのまっただ中へと躍り込むと、当たるを幸い周囲の敵を駆逐する。
姉妹たちの兵装で。漲る膨大な磁力で。ヒトを滅ぼさんと画策する者たちを滅ぼしてゆく――。
すごい……。やっぱり、今考えてもわたしが姉さまに勝てたのは奇跡としか言いようがありません……!
……Dominus!わたしたちも、姉さまに続きましょう!まずは前方のデミウルゴスを掃討します!
アルマゲドンの持つ騎兵槍の先端に、高エネルギーが宿る。
光の奔流が極太のレーザーとなり、前方に展開するデミウルゴスを灼き尽くす。
これは――わたしたちの粒子砲やグランMACガン、衛星砲カレトヴルッフなどとは比較にならない出力!
《当然だ。その『アルマゲドン』には、おまえたち人間大の兵器には搭載できないすべての兵装が積まれている》
《それはARMG-03 ギガ波動砲『聖槍ブリューナク』!粒子砲とは比較にならん出力を誇る『波動兵装』なのだ!》
ウェストコット師からの通信が、コクピットに響く。
《アルマゲドンは状況に応じ、最適な兵装を自動選択し行動する。おまえたちは昼寝でもしているがいい》
などと言っている間にも、デミウルゴスたちは次から次へと湧き出し、わたしたちの周囲を取り囲む。
直線的なブリューナクの閃光は、わたしたちを包囲するデミウルゴスを殲滅するのには不向きですね……。
と、わたしが思った瞬間。
アルマゲドンの胸部装甲が展開し、内部機構が露わになる。これは――この胸の形状は、まるで瞳のような……。
カッ!
装甲が展開した次の瞬間、目もくらむような光が周囲を包み込む。
そして光が収まったあとには、視界一帯にいたデミウルゴスの姿は一匹もいなくなっていました。
《ARMG-09 拡散粒子波動砲『邪眼バロール』。アルマゲドンを包囲することなどできん》
フン、と得意げに笑うウェストコット師の声。
なんというパワー!人類最高の機体との呼び声は、伊達ではありません……!
0222ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/02(日) 21:39:18.36ID:vsiwELym「オッケー、ソレイユ!――ジュピテル・グラン・エクレール―――ッ!!!」
聖槍ブリューナクよ、すべてを穿て!!
姉さまの雷撃とブリューナクの波動が、『巨神(デウス)』の装甲を直撃する。
胸部の装甲が黒く焦げ、ボロボロと崩れ落ちる。――けれど、それもほんの僅かな間のこと。
すぐに装甲は回復し、何事もなかったかのように復元されてしまう。
……この、驚異的な回復力!これが、アメリカ艦隊の総攻撃さえ凌ぎ切った『巨神(デウス)』の力……!
そして、『巨神(デウス)』の回復に呼応するかのように、新たなデミウルゴスの軍勢が姿を現す。
これでは、アルマゲドンと姉さまがいくら強くとも埒が明かない!
いったい『巨神』はどれだけの回復力を持ち、デミウルゴスを生みだすことができるというのでしょうか?
《それには、ヤツの立っている地形が密接に関係している》
……ウェストコット師……?それは、いったい……。
《わたしが機械工学、メイザースがバイオ技術の権威であったように、ウッドマンはナノ技術とエネルギー開発の第一人者だった》
《そして、ヤツは海水から莫大なエネルギーを生みだす方法を発見したのだ》
《母なる海、太古に原初の命を生み出した生命のスープ!それを使って自らの傷を癒し、使徒を生み出す。つまり――》
海にいる限り、『巨神(デウス)』を破壊することは不可能……!
やはり、Dominusの仰る通りこのままではこちらが圧倒的に不利。
かくなる上は亜空間ドライブシステムで『巨神(デウス)』の体内に潜入し、エル・シャダイを直接攻撃するしか……!
《亜空間ドライブシステムで移動するためには、転移先の座標を特定しなければならん》
《転移先が不明のまま転移を行なえば、よくて転移失敗。最悪、ヤツの身体と融合してしまう可能性もある》
《そうなれば、アルマゲドンやおまえたちは発生した空間の捻れにより、跡形もなく消滅してしまうだろう》
ぅ……。確かに、『巨神(デウス)』の中がどうなっているのか、わたしたちは知りません。
亜空間ドライブで体内に転移する作戦は、今は控えるべきですね……。
「じゃ、Dominusの言ってた宇宙や太陽に『巨神(デウス)』を運んで――っていうのは?」
襲い来るデミウルゴスを蹴散らしながら、ラ・テール姉さまが問う。
《大気圏外は勝手が異なる。推奨はできんな。――というか――》
……というか?
《そんな迂遠なことをする必要はない。身体の一部分を破壊しても回復される、というのなら……》
《その無駄に巨大な図体を、丸ごと消滅させてしまえばよかろう?》
そ……、そんなことが出来るのですか?
《このウェストコットの最高傑作、アルマゲドンを侮るな。言っただろう、アルマゲドンの性能は巨神を凌駕すると!》
《最終兵装、ARMG-00『縮退砲ゴールデン・ドーン』!それを使い、この戦いに終止符を打つがいい!》
……しゅ……、縮退砲ゴールデン・ドーン……!?
0223ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/02(日) 21:43:13.93ID:vsiwELymはい、ウェストコット師。でしたら――むろん、必中を期します!
「じゃあ、あたしが他のデミウルゴスを引き付けるから。ソレイユは『巨神(デウス)』をお願い!」
姉さまが素早くデミウルゴスたちの群れに突っ込み、大群を自分へと引き付ける。
では、こちらも――セキュリティ解除シーケンス発動、封印指定兵装を開放!
ARMG-00 縮退砲『ゴールデン・ドーン』……起動!!
ゴウッ!
わたしがコードを入力した途端、アルマゲドンのシールドの裏から無数の小型支援機が射出される。これは――
大きさこそソフトボール大からサッカーボール大になっていますが、ヴェヌス・ベルジュロネット・ドゥ・ブリエと同じ子機!
子機は瞬く間に『巨神(デウス)』を包囲すると、巨大な防護フィールドを展開する。
そして、アルマゲドン。展開した胸部波動砲射出機構『バロールの瞳』が生み出す、高エネルギーの輝く球体。
胸の前に出現したそれを、アルマゲドンがさらに両手を添えて圧縮してゆく。
臨界に達したエネルギー塊を、亜空間ドライブシステムによって子機の防護フィールドの中心へと転送!
そこで一気に爆発させ、いわば超小型の超新星爆発を起こす――それが『縮退砲ゴールデン・ドーン』!
――ビュガッ!!!
『巨神(デウス)』の至近距離で、エネルギー塊が爆発する。強烈な光の奔流!
その強さ、激しさはまさに、地上で超新星が爆発したかのよう。
Dominus!目を閉じてください、この輝きはあまりに強烈すぎます!直視は失明の危険が……!
「ッく……!なんて威力……!」
アルマゲドンの傍らに戻ってきた姉さまが、両腕で庇を作って閃光に耐える。
エネルギー塊が崩壊する際に放出されるエネルギーは、熱量に換算して約4600エクサジュール。
いわば、この地球で一年間に消費されるエネルギー10年分!!
それが子機の作る結界の中を縦横無尽に荒れ狂い、その中にある存在を跡形もなく消滅させる……!
まさしく、地球最大最強の兵装!
これなら超回復力を有する『巨神(デウス)』でも――!
超新星の直撃を受けた『巨神(デウス)』の巨体が、四肢の末端から徐々に崩壊し塵になってゆく。
結界の中で、ゆっくりとその姿が朧になってゆく。消滅してゆく……。
そして、亜空間ドライブによって防護フィールドが子機ともども大気圏外に転送され、アルマゲドンの胸部装甲が閉じたとき。
わたしたちの眼前には、ただ青々とした海原だけがどこまでも広がっていました。
「……や……」
「……やった……の……?」
《フン。わたしの最高傑作が、ウッドマンの作品などに遅れを取るものか。当然の結果だ》
欠片さえ残さず消滅した『巨神(デウス)』に、姉さまが呆然とした様子で呟く。ウェストコット師が笑みを浮かべる。
……やった……のですね?Dominus……!
これで、つらく長かった戦いはおしまい。これからは、みんなでまた平和を謳歌することができる!
Dominusと、姉さまと。学校や商店街のひとたちと、もう一度楽しく過ごすことができる……!
そうですよね?Dominus!
0224ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/02(日) 21:51:45.01ID:vsiwELymメルキュール「こんばんは〜☆メルキュールの『エリクシアンおまけ講座』のお時間ですよぉ〜!司会はわたし、メルキュールと!」
ジュピテル「特に代わり映えしないいつものメンツでお送りしちゃうよ〜っと」
メルキュール「まず今晩最初のおハガキは、ポイントE-65881にお住まいの>>218さん!ありがとうございます☆」
サテュルヌ「また褒められてしまったか……」
マルス「や、褒められてねーし。変わりモンだって言われてっし」
ヴェヌス「しかも、未成年誘拐疑惑までかけられていますわ」
サテュルヌ「日々ギャップ萌えとは何かを模索する吾にとって、エキセントリックなる言葉は褒め言葉以外の何物でもなく」
ジュピテル「まー、黙ってればクール系美人なのに喋るとオタクってゆーのは、ギャップ……かなぁ」
サテュルヌ「それに、人を助ければそこに助け賃が発生するのは当然。払えなければ身体で払って貰うのみ」
マルス「うン、それ、犯罪だからな?」
サテュルヌ「和姦ならセーフかと」
ヴェヌス「いけませんわサテュルヌ、例え和姦であっても17歳以下との淫行は青少年保護法違反ですわよ」
サテュルヌ「心配御無用、吾も生誕してまだ2年経っておりませぬゆえ」
ジュピテル「それを言うならボクらみんなそーだよね」
メルキュール「次のおハガキはポイントL-00033にお住まいの>>219さん!ありがとうございます、うふふ」
マルス「失礼な野郎だな!なンでオレと友達になりたくねーンだよ、コラ!ちょっとツラ貸せや、あ゛?」
ジュピテル「そーゆートコがダメなんだと思う」
マルス「うっ……。わ、悪かったな。オレァ気が短ェからよ……。でも、普段はこんなじゃねーンだぜ?」
メルキュール「マルスは面倒見がいいし、家事もできるし、お姉ちゃんすっごく助かってるのよ?」
サテュルヌ「吾ら姉妹、大半がボケですゆえ、四の姉上はなくてはならぬ存在ですし」
ジュピテル「実際付き合ってみたら、意外といーかもしんないよ?ボクはヤだけど」
マルス「意外とは余計だ、コンニャロー」
ヴェヌス「日頃はガサツでも、イザというときは女らしい部分も垣間見せる……これこそ真のギャップ萌え、ですわね」
サテュルヌ「なんと!あざとい!あざといですぞ、四の姉上!」
マルス「あざとさ狙いでやてるワケじゃねーよ!素だ、素!」
サテュルヌ「つまり天然であると?天然でギャップ萌えであざとい!役満きた!」
ジュピテル「そんな萌えキャラのマルスお姉ちゃんだけど、お酒が入ると途端にただのスケベなオッサンになるからね」
サテュルヌ「台無しですな」
マルス「ウガーッ!!(怒)」
メルキュール「今日最後のおハガキは、ポイントR-91765にお住まいの>>220さんですよ〜!」
サテュルヌ「コマンドは後ろ溜め前後ろ前+パンチボタン全部同時押しで」
マルス「なンの話だよ?……まぁそれはともかく、っつーコトで都内某所のカラオケに来てみたワケだが」
ヴェヌス「い、いつのまにですのっ!?全然気付きませんでしたわ!」
ジュピテル「亜空間ドライブシステムがあれば一瞬だし(嘘)!さー、さっそく歌うぞーっ!」
サテュルヌ「五の姉上、一緒にアニソンデュエットと参りましょうか」
メルキュール「ジュピテルとサテュルヌはアニメソングなのね。マルスは何を歌うの?」
マルス「や、オレは聴き専だから。タンバリンで場を盛り上げるぜ!メル姉は?」
メルキュール「わたしは賛美歌だとか以外は知らないんだけれど……。歌謡曲には疎くて」
ジュピテル「ヴェヌスお姉ちゃんはカラオケなんて嗜まないんだったよね〜。いや〜残念!楽しいのにな〜!」
ヴェヌス「(うずうず)……し……、したことはありませんが、どうしてもと言うなら一曲披露してもよくってよ?」
サテュルヌ「ほほう、ではマイクを。ここは是非、二の姉上の美声を拝聴致したきもの」
ヴェヌス「……こほん。では――」
ヴェヌス「♪Oh, say can you see, by the dawn's early light What so proudly we hailed――♪」
メルキュール「あら。綺麗な歌声」
ジュピテル「ホントだ……、う、上手い……!上手い、ケド……」
マルス「これ、アメリカ国歌だ……」
メルキュール「ではでは皆さん、また次回〜♪」
ソレイユ「ラ・テール姉さまは、どういった歌を歌われるのですか?」
ラ・テール「なんでも歌うよー。あ、聴く?でも静かにしててね、録音するつもりだから」
ソレイユ「録音?」
ラ・テール「『錬金人類(エリクシアン)だけど歌ってみた』ってシリーズで、You○ubeに結構アップしてるんだーあたし」
ソレイユ「……あ……そうなんですか……」
0225創る名無しに見る名無し
2016/10/02(日) 22:08:31.01ID:AqGvrFiXこれがフラグじゃないことを祈りたいぜ。もう縮退砲は撃てねえ。
……ウェストコットの爺様がなんとなく楽しそうだったのがほほえまだったな。
>>224
> サテュルヌ「和姦ならセーフかと」
おねショタは至高だ……アーイイ
0226創る名無しに見る名無し
2016/10/04(火) 19:21:53.99ID:eHU+6BbD0227ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/05(水) 19:39:48.38ID:MQACq+8Y>>226
前方、『巨神(デウス)』機影なし!敵ユニットの消滅を確認しました!
まるで名の通り人類に黄金の夜明けを齎すかのような、アルマゲドンの究極兵器『縮退砲ゴールデン・ドーン』。
さしもの『巨神(デウス)』も、超新星爆発を疑似的に再現する縮退砲の前には無力だったようです!
さすがはウェストコット師!人類に黄金の夜明けを!
《当たり前だ。わたしがコンペティションに敗れたのは、単に不得意な分野だっただけのこと。兵器開発ではわたしが頭一つ抜けている》
はい!仰る通りです!
あとは、デミウルゴスの残党を掃討するだけ。それも、このアルマゲドンと姉さまでやればすぐでしょう。
やりましたね、Dominus!おうちに帰ったら、お祝いパーティーをやりませんか?
わたし、Dominusの好物をたくさん作りますから!!
ずっとずっと望んでいた、戦いの終わり。平和の訪れ。
夢寐にも求めてやまなかったその瞬間が、やっと今ここに……。
メルキュール姉さま、ヴェヌス姉さま、マルス姉さま、ジュピテル姉さま、サテュルヌ姉さま。
そして、メイザース師……。ご覧になっておられますか?
わたしは、ソレイユは勝ちました!トロイア計画を乗り越え、今……この手に、本当の平穏を――
―――バギュッ!!!
「ソレイユ!危ない!!」
耳をつんざく轟音。姉さまの絶叫。
そして、アルマゲドンに迫る破滅の閃光。
……ぐ……、うっあああああああああああああ――――ッ!!
激しい振動と衝撃がコクピットを、わたしを、そしてDominusを襲う。
ご……、ご無事ですか?Dominus……。
なんて威力のレーザー!ARMG-05 空間歪曲防護システム『コルドロン』で防御しなければ、撃墜されてしまっていた……!
で、でも、こんな高出力の兵装、従来のデミウルゴスにはなかったはず……。
……え……?
ど……、Dominus?今、なんと?
「まだだ」……?「まだだ」と仰ったのですか……?
『巨神(デウス)』は……まだ、滅びていないと……?
でも、わたしは確かに見ました。『巨神(デウス)』が縮退砲によって崩壊してゆき、微塵と化すところを。
あれは偽者なんかじゃない、確かに『巨神(デウス)』だった……。
――ああ。でも。
Dominusの仰ることは、いつだって正しかった。どんなことだって、Dominusの推察は的を射ていた。
そして、今回も――。
……し……、信じられない……!
強大な『デウス波』を感知!これは……先程とは比べ物にならない値の……!
デウス波、さらに上昇中!感知器がエラーを起こしています、ああ……、そんな、そんな……!
近い!『巨神(デウス)』、出現します!!
――――ざ。
ざざ。ざざざ。ざざざああああああああああああ……。
わたしたちの目の前で、水面が大きく盛り上がる。深海から、禍々しい破壊の神が浮上してくる。
その姿は、つい今しがたわたしたちが葬った『巨神(デウス)』よりも、もっと大きく。禍々しく。
……そして、神々しく――。
0228ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/05(水) 19:48:09.80ID:MQACq+8Y……そ……
……そんな……。
アルマゲドンのコクピットの中で、わたしはただただ呆然とするしかありませんでした。
そして、それはラ・テール姉さまも同じ。
あの姉さまが、信じられないものを見たという様子で双眸を大きく見開き、固まっている……。
いえ。それは確かに、信じられないもの。信じたくないもの。
先程の『巨神(デウス)』より、さらにふた回りほど巨大な『巨神(デウス)』の姿――。
【我は――人類の標(しるべ)】
新たに出現した『巨神(デウス)』から、声が聞こえる。
これは……精神感応?肉声ではなく、わたしたちの心に……直接語りかけている?
ここにいるわたしたちだけじゃない。全世界の人々に……!
【我は――いと高き者。至善なる者】
【我は――思考する者。決断する者。裁きを下す者】
【刮目せよ、人類。我は――】
【我は――神なり――!!】
……か……、神……!
では、先程の『巨神(デウス)』は……?
「どうやら、あたしたちはエル・シャダイにまんまと騙されて、囮相手にたった一発きりの必殺技を無駄撃ちさせられたみたいだね」
あれが……あの『巨神(デウス)』こそが、ウッドマン師――いいえ、エル・シャダイを搭載している本当の『巨神(デウス)』!
姉さま……!ああ……、なんてこと……!
ウェストコット師やDominusの仰る通り、縮退砲を撃てるのは一度きり。そして、もう残弾はゼロ!
これではもう、わたしたちにはあの『巨神(デウス)』……真デウスとでも呼ぶべきでしょうか……あれに抗う術はない……!
【神の言葉は絶対。至高にして究極。人類よ、神の託宣にその身を委ねるがよい】
【なべての人類は心安くあれ。今ぞ、選民の王国の門は開け放たれるなり――】
『神』――真デウス、そしてその頭脳たるエル・シャダイが、荘重な様子でそう告げる。
けれど、その言葉は欺瞞に満ちている。選民の王国などと言いながら、その行為は虐殺。容赦のない大粛清!
何も知らない人々を欺き、死に導かんとしておきながら、至高にして究極などと――どの口が!
例え、縮退砲がなくとも……アルマゲドンには封印指定兵装がまだまだ搭載されています!
それを総動員すれば、きっと真デウスを倒すことだって不可能ではないはず!
Dominus――わたしに、戦う勇気を!与えてください!!
【試験管の中で生誕せし、ヒトの似姿よ。神の子よ――】
【汝らはもう役目を果たした。さあ、眠れ――神の手の中で】
ビュガッ!!!
真デウスが巨大な右腕をこちらへ差しのべてくる。途端に五指から強烈な破壊の閃光が放たれる。
これは、先程アルマゲドンに向けて放たれたもの……!
間一髪避けると、今度は無数のデミウルゴスたちが襲い掛かってくる。それをブリューナクで蹴散らすも、敵は無尽蔵に湧いてくる。
く……、これではきりがない……!また、ふりだしに――いいえ、ふりだし以下にまで状況が後退してしまうなんて!
……どうすれば……?
どうすれば、わたしは……わたしたちは。神を僭称するエル・シャダイを倒すことができるのでしょうか……?
0229創る名無しに見る名無し
2016/10/07(金) 19:34:18.00ID:Hfr/chPCそれでこそ斃し甲斐があるってもんだよ
一応考えたよ
大量のデミウルゴスに囲まれていても、亜空間ドライブが使えるなら
デミウルゴス達を振り切って、一気にデウスの懐に潜りこむ……どころか背後まで行けると思う
それでラ・テールも回収しながら背後まで回り込む
亜空間ドライブが使えなくても『邪眼バロール』で群がるデミウルゴスを一掃しながら強行突破できるなら
結果はまぁそんなに変わらないかな
そうして背後に回ればデウスの死角に入れるから、デウスの攻撃精度は落ちるはずだし、
デウス自体が壁になるから、デミウルゴスの攻撃方向も絞れて防御が楽になると思うんだ
そうして背後にまで行けたら、アルマゲドンは思い切って防御に回す
アルマゲドンは昼寝してても勝手に動いてくれるようだから、
拡散粒子波動砲『邪眼バロール』でも使って貰って、周りのデミウルゴスを排除したり回避したりで時間を稼いでもらう
アルマゲドンが時間を稼いでいる間に、ソレイユとラ・テールは二人とも意識を集中、
磁力操作で金属パーツ使ってるであろうエル・シャダイ本体(ウェストコット師によれば真デウスの頭にあるらしい)を直接破壊、
できなければ体の外まで引きずり出したり、
それもできないならどうにかこうにかデウスの頭に穴を開けてエルシャダイを取り出したり、
デウスの頭をどうにか切り離して再生や体の操作が出来ないよう無力化する……
って感じなんだけど、なんか使えそうな部分ある?
0230ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/09(日) 16:16:34.16ID:6rsyiNAf>>229
あまりに巨大。あまりに神聖。あまりに凶悪――。
顕現した真デウスに、縮退砲を失ったわたしたちが勝つには、いったいどうすればいいのか……?
正面切っての戦いでは、きっと敵わない。
わたしたちが勝利を収めるには、叡智を。そう――智慧を使わなければならない!
ビュトス機関が、いいえ……メイザース師とウェストコット師が言った通り。
『崇高な魂は肉体に宿る』、その理念の通り。
魂に宿った智慧を使い、肉体を捨て去った神の紛い物――ウッドマン師を凌駕しなければ……!
「Dominusの作戦に賭けよう。あたしたちは、あたしたちの有利な点を最大限に活用しなくちゃね」
はい、姉さま!
アルマゲドンのハッチを開き、ラ・テール姉さまを回収。姉さまがコクピットに帰還する。
「相変わらず狭いなー!はいはい、Dominus!ちょっと詰めて!もっともっと!」
ど、Dominus、すみません……。やっぱり、本来一人乗りのコクピットに三人は無理があります……。
けれど!グズグズしてはいられません、亜空間ドライブシステム――起動!!
―――ギュオッ!!!
身体が急激に後ろへ引っ張られる感覚。一瞬の抵抗の後、アルマゲドンは聳え立つ巨塔のような真デウスの背後に転移していました。
真デウスは巨体すぎて、身体を転回させることさえままならないはず……。ならば、直接攻撃はされない!
指からの波動砲、あの標的にされないだけでも、だいぶ戦いやすいと言えるでしょう。
「じゃ、あたしは出る!あとはDominusの段取り通りに!」
コクピットの狭さに耐えかね、姉さまがまたハッチを開いて外へ出て行こうとする。
あ、お待ちください姉さま!
わたしも出ます!Dominusの仰る通り、アルマゲドンはフレキシブルAIによって自律行動が可能です。
防御に回るだけならば、特に操縦者を必要とはしないはず……。
それならいっそ、わたしも外で戦った方がいいと思うのです。
「わかった。じゃ、あたしとソレイユはオフェンス。Dominusはディフェンスっていうことで」
はい!……Dominus、それでよろしいですか?
アルマゲドンのコクピットの中は、地球上で一番安全なシェルターです。どうかご安心ください。
では――行ってきます!
「さあ――ここからが本番だよ。ソレイユ、『錬金人類(エリクシアン)』の力――ウッドマン父さんに見せてあげよう」
諒解です、姉さま。『錬金人類(エリクシアン)』の力を、そして……
繋ぎ合う、手と手が生み出す力の強さを。人々の作り出してゆく、絆の力を。
――愛の。力を――!
0231ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/09(日) 16:19:05.00ID:6rsyiNAf電磁レールガンに、レーザーキャノン。圧縮粒子砲――
ありとあらゆる兵装が、わたしたちへ向けて撃ち放たれる。
でも、わたしたちが真デウスを背に戦えば、誤射を恐れてデミウルゴスの攻撃の手も限定的になるはず……!
と、思ったのですが。
ビュガッ!
ドンッ!ドドウッ!バリバリバリバリバリッ!!
「そんなの関係ない!って感じね……」
……く……!?わたしたちが攻撃を回避すれば、それはそのまま真デウスに命中するというのに!
デミウルゴスたちは、そんなことまるで斟酌せずに攻撃してくる……!
例え誤射で真デウスに攻撃が命中してしまっても、真デウスの超再生能力があればダメージはゼロ!
それを見越して、とにかくわたしたちを仕留めることだけを考える作戦のようですね……!
ウッドマン師の提唱した超エネルギー理論により、海水がある限り真デウスは無尽蔵の再生能力を持つ。
どれだけ被弾したところで、なんでもないということですか……!
「それなら。Dominusの言う通り、頭を狙うよ!ソレイユ!」
わかりました、姉さま!
わたしと姉さまの、救星主としての能力。磁力を操る能力で、エル・シャダイを直接攻撃する!
姉さまと手を繋ぎ、ふたりで意識を集中させる――。
……エル・シャダイ!終わりの時です!!
【汝らの働きなど、神には効かぬ】
白波を立てながら、真デウスがゆっくりと振り返ろうとする。
く……。最大限のパワーで磁力を操っているのに、真デウスにはなんの効果もない……。
どうやら、真デウスにはわたしたちの磁力を打ち消す何らかの能力があるのでしょう。
それなら!
「薙ぎ払え!あたしの黒い閃光!ラ・テール・オーロール――――――ッ!!!」
応えて、わたしの白い閃光!ソレイユ・アマ・デトワ――――――――ル!!!
『――エリクシアン!ユニゾン……ギャラクシア―――――――――――――――――――ッ!!!!!』
ゴアッ!!!
わたしと姉さまの繋いだ手、前方に突き出したそれから迸る、螺旋を描く白と黒の閃光。
ふたりの、いいえ……地球に生きるすべての人々の想いを込めた攻撃が、デミウルゴスたちを粉砕しながら真デウスへ迫る。
真デウスはその巨大すぎる身体を持て余し、まだ転回が完了していない!
『錬金人類(エリクシアン)』最大の必殺技である、この攻撃なら――!
合体技『エリクシアン・ユニゾン・ギャラクシア』が、真デウスの右側頭部を直撃する。
でも……。ああ、そんな……!
やはり、結果は同じ。わたしたちの最強技さえ、真デウスには致命傷を与えられない……!
【抵抗するなかれ。すべては神の定めし運命なれば――】
【生きとし生ける者の行く末は、我が秤の上にて決められるものなり。神の声を聞き、神に従い、神の裁定に身を委ねるべし】
【我は――神なり。汝らの未来の標(しるべ)なり――!】
……ウッドマン……師……!!
0232ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/09(日) 16:23:27.48ID:6rsyiNAf【なにゆえ、それを拒む。神の為すことに異議を唱える。汝らの肉体は、その毛髪一筋に至るまで計画の一部だというのに】
……そう。確かにわたしたち『錬金人類(エリクシアン)』は、『トロイア』計画のために生み出されました。
この身体も、身体のうちに流れる『魔導血液(エリクシル・ブラッド)』も。毛髪一本に至るまで、計画の一部。
それは、否定しません。
――けれど。この心は。わたしたちの胸に宿る、この魂だけは!
これだけは、わたしたち自身のもの!ウッドマン師、例えあなたであっても――自由になんてできやしない!!
【心だと。魂だと。そんなものが、人造生命体の『錬金人類(エリクシアン)』にあるものか】
【汝らが心だと。魂だと思っているものは、神の設定した単なるプログラムに過ぎぬ】
【汝らは単に、自らを生命だと思い込んでいるだけなのだ――人間社会で生誕した獣が、自らを人間と思い込むのと同様にな】
最初は、そうだった。
わたしは何も知らないただの人形で、言われるままにDominusを護れと日本へ派遣されて。
ただ、唯々諾々とその命令に従っていました。それが何を意味するのか、疑問に思うことさえないままに。
でも、姉さまたちが変えてくれた。
わたしに関わる、すべての人々が教えてくれた。
Dominusが、与えてくれた――。
人を慈しむ心を。哀しみに涙する心を。非道に対し憤る心を。
――愛を!
【愛、だと……?『錬金人類(エリクシアン)』ごときが――】
わたしは『錬金人類(エリクシアン)』ですが、自分を新人類だとは思っていません。
わたしは、地球の子。この惑星に生きる生命体のひとつ。
人間の。人類のひとり!
この惑星に生きる人間に、古いも新しいもありません!
【汝を人間社会に送り出したことは、誤りであった】
【神は過ちを犯してはならぬ。神は絶対でなければならぬ、過ちは存在してはならぬ。ゆえ――】
【汝らは、消滅せねばならぬ】
振り向きかけていた真デウスが、そんな言葉と共に忽然と消え失せる。
……そんな!?四百メートルを超す巨大さの真デウスが、一瞬で消滅するなんて……!?
どこに!?どこに行ったのですか……!?
わたしが焦燥と共に周囲を見回した、その瞬間。
「ソレイユ!!!」
ラ・テール姉さまの鋭い叫び。
はっと後ろを振り返ったわたしの視界いっぱいに飛び込んでくる、鈍色の神。
真デウス……!四百メートル、数千トンの質量を持つ物質が――
わたしの背後を……取った……!?
ビュゴッ!!!
真デウスの突き出した右手、その五指から、わたしへ向けて裁きの光が放たれる。
その直撃を受け、わたしは跡形もなく……
「そうは……させない!!」
虚を突かれ、防御態勢さえ取れず固まっていたわたしの前方に、姉さまが躍り出る。
――姉さま!!
0233ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/09(日) 16:25:54.20ID:6rsyiNAfバリバリバリバリバリッ!!!
姉さまの発生させた電磁障壁が、真デウスの五指から放たれる閃光を防ぐ。
両手を前方に突き出し、姉さまは懸命に真デウスの攻撃を防ぐものの、その差は歴然。
巨大すぎる負荷に両腕が軋み、バチバチと火花を散らす。姉さまが痛みに顔を歪め、きつく歯を食い縛る。
……電磁フィールドが。破壊される――!
「鶺鴒!!」
姉さまのヴェヌス・ベルジュロネット・ドゥ・ブリエ。四基の白い鶺鴒が、すぐさま電磁フィールドを補強する。
【救星主よ。ラ・テールよ……汝は『トロイア計画』の推進を図っていたはず。なにゆえ、今になって神に抗う】
【その、愚かなスペアに感化されたとでも言うのか。汝のプログラムに、なんの変化があったというのだ】
「そう、だよ……。あたしはソレイユに、そして……みんなに教えてもらったんだ……」
「人を信じることを。繋がってゆく愛の輪の素晴らしさを。絆の大切さを……」
「計画を実行することがすべてだと思ってた。人類を粛正することが、あたしの生まれた意味だって思ってた」
「でも!ソレイユが言ったんだ、『なんのために生まれたか』じゃなく『生まれてから何を為すか』が大切だって!」
「あたしは『トロイア計画』のために生まれた、でも――それをするかどうかは、あたしが――あたしの意思で!決める!」
「あたしの胸の中に息衝く、この……あたしだけの心で!!」
迷いのない姉さまの毅然とした、誇り高い言葉。
姉さま!ラ・テール姉さま……!
【愚か者め!】
頭の中に直接響く、真デウスの怒声。
真デウスがもう片方の腕を持ちあげる。
そして、十指から放たれる破壊の光――。
ドドドドドドオォォォォォォォン!!!
「う……うあああああああああ――――――――――ッ!!!!」
今までに倍する量の破壊の光。巨大な爆発と、目もくらむような激しい輝き。
爆発によって発生した猛烈な突風に、わたしはまるで木の葉のように吹き飛ばされる。
磁力をコントロールし、なんとか体勢を建て直すものの、一帯が爆煙に覆われてしまって状況の把握が……!
ね、姉さまは!?いくら障壁を展開していたとはいえ、あの攻撃の直撃に晒された姉さまは……!?
ゆっくりと、煙幕が晴れてゆく。
薄まってゆく煙幕の中に、肩で激しく息をする姉さまのシルエット。
ああ……姉さま!よくご無事で――
「……はあッ、はあ、はァ……」
…………ッ…………
あ……、あああ……。
ああああ、ああああああ……!姉さま……!姉さま、姉さま!
姉さまの……腕が……
両腕が……ちぎれて……!!
「ソ……、ソレイユ……。Dominus……」
「大、丈夫……?よかった……」
腕が両方とも上腕から吹き飛んだ、凄惨な姿で。傷だらけの、満身創痍の状態で。
それでも、姉さまはそう言って、にっこりと笑いました。
0234創る名無しに見る名無し
2016/10/09(日) 21:17:30.24ID:lXVFlz2Xラ・テールを連れて、ビュトス機関の安全そうな建物まで
0235創る名無しに見る名無し
2016/10/10(月) 23:07:11.20ID:8PRaeGocいわゆる全知全能
十全たる存在
それがこの様ですよ
> 【汝を人間社会に送り出したことは、誤りであった】
「――自ら過ちを認め」
> 神は過ちを犯してはならぬ。神は絶対でなければならぬ、過ちは存在してはならぬ。ゆえ――
「――しかもそれを無かったことにしようとする腐った性根」
> 【汝らは、消滅せねばならぬ】
俺はたっぷり間をとって――つまり冷めやらぬ怒りを懸命に抑え込んだ後で――拡声器に叫んだ
「そんなやつのどーこが神様なんですかねぇ!?
てめえはいいとこ、偽神共の頭目止まりだ、ウッドマン!」
ここにきて俺は頭に巡らせていた思考を完了させた。
実はこの土壇場で、俺はこんなことばかり考えていたのだ。
未来予測演算装置は、本当は何を予測したのか。だとしたら今この状況も予測済みか。
この機体・アルマゲドンのことも、ラ・テールやソレイユの動きも、そして俺のことも。
俺を選んだのは間違いなくエル・シャダイ――ウッドマンだ。
あの演算装置がもし完璧に働いていて、全ての筋書を書いていたのだとしたら、すべてが茶番だ――なんてな。
だけどそれは杞憂だった。
目の前の巨人。その中枢に居るウッドマン。
こいつはきっと何も見ていない。エル・シャダイを通して、見ていない。未来を見ていない。
今の問答がその答えだ。
奴が見たのは多分、自分自身の往く路だけ。奴にとってエル・シャダイは手段に過ぎなかったのだ。
理想を現実とする、ただの手段だ。
彼の強靭なる意思が、ただのそれだけが、この状況を作り上げたのだ。
不滅の軍団を従えて。
人類最高の兵器と、救星の英雄2人をもってしても
ただひとつの傷も負わずに聳える、無敵の巨人を操って。
まるで世界の運命を手中におさめる、神の如き威容をもって。
……偽物だがね。
0236創る名無しに見る名無し
2016/10/10(月) 23:15:13.84ID:8PRaeGocこれは純粋な意志と意志のぶつかり合いだ。
俺は空中に飛沫を上げる魔導血液の煌きを見た。
彼女たちを巡るエリクシル・ブラッドが空気に触れる瞬間は美しい。
だが不吉だ。英雄が斃れてはならない。まだ、やるべきことが沢山あるんだから。
それに彼女たちはもう充分に翻弄されて、十二分に働いたじゃないか。
俺は嫌だ。負けるのは嫌だ。
それ以上に
見ているだけなのは、もうご免なんだ。
「おいウェストコットの爺さんよ、あんた言ったな!
機械はいくらでも替わりを造ればいいって。それが強みだって」
"替えがあるのは強い"。アンタが言ったんだぜ、ウェストコット。
それにこうも言った。
俺こそが"人類最頻の凡人"たる最低のDominusだって
だがもしそれが本当なら、それこそが俺の強みだとも言えないか
そうだよな
ありきたりな人間は
それこそ何処にだって存在する!
「ソレイユはラ・テールを連れて逃げろ! その傷は素人目にもやべえ!」
ビュトスの日本支部はもぬけの空だが、例の装置で本部へぶっ飛べる。あそこにはウェストコットもいる。今すぐに処置すれば、なんとか……!
「それからウェストコット爺さん! このアルマゲトン、もう一機くらいすぐ造れるんだろう?」
「代わりはいくらだって、造れるんだろう!」
あのデウスの動きを見たか。無数のデミウルゴスが蠢くこの状況で。無限のエネルギーがデウスを突き動かす状況で。
ただで逃がしてくれるものか。
だがよく考えろ。あのデカ物が何度も素早く移動するには、それ相応の対価が必要だ。海だ。海水なんだ。あの巨体を自在に操るには、絶えず巨大なエネルギーが必要なんだよな。
常に海水に浸らなくては、デウスは十分なエネルギーを供給できないのだ。今までデウスは陸地に現れたか。空を飛んだか。否。絶えず海より現れて海に帰り、たった今も、本体は海の底より現れたのだから。
「空中コンボって知ってるか、ソレイユ!」
俺は亜空間ドライブでデウスの股下直下に移動した。まるで俺の考えをトレースするように、この人型機械兵器は無駄なく動作する。
「ワープタックルで吹き飛ばしてやるのも爽快だが、地球ごと消滅しちまったら笑えねえからな」
そして海中、アルマゲドンは自らが装備する超大な槍の穂先を深々とヤツに刺しこんで、これを彼我の楔とした。
「……アンタご指名の超凡人と、このまま第2宇宙速度の旅といこうや、"デミウルゴス"!」
俺はアルマゲドンを最大出力で吹かすと、デウスの巨体を中空高くに持ちあげて、無限に広がる大海原からバイバイさせてやることにした。
0237ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/13(木) 18:41:48.95ID:/NXmkph4>>234
デミウルゴスたちが、まるで砂糖に群がる蟻のようにラ・テール姉さまへと殺到する。
手に持った剣を、槍を、両腕を失った姉さまへと突き出す。
姉さまの身体が、デミウルゴスたちの武具に貫かれる。粒子砲がその身を穿つ――
「ぐ、ふ……!」
双眸を見開いた姉さまが、ごぽりとどす黒い魔導血液(エリクシル・ブラッド)を吐き出す。
い、いやあああああああああああ!!!
姉さま!姉さま!姉さま姉さま……ねえさまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
わたしはボロボロになってゆく姉さまの姿を見て、半狂乱で叫びました。
――けれど。
「うろたえるんじゃない!!!」
それを、他ならぬ姉さまが厳しく叱責しました。
ギリ、と奥歯を強く噛みしめると、姉さまは身体を大きく仰け反らせて磁界を発生させる。
破壊の磁界に触れた周囲のデミウルゴスたちが、瞬く間にバラバラになっていく――。
……ね……、姉さま……
「これは……地球の人々全部の命を護るための戦いなんだよ……。無慈悲な神の手から、絆を護るための……愛を護るための戦い……」
「神に挑むんだ。こっちだって無傷じゃいられない、犠牲を払わなくちゃならない……。それだけの話だよ……」
ぎ……、犠牲……。
世界の人々が作り出す、愛の絆。それを護るために、姉さまが犠牲になるというのですか……!?
姉さま!Dominusの仰る通り、一旦離脱しましょう!ウェストコット師に修理を――
「そんな時間、ないよ……。わかるでしょ?これは最後の戦いなんだよ。一旦逃げて、後日再戦なんてありえない」
「あたしの身体を修理するには、一週間はかかる。でも、『トロイア計画』の人類粛清は、三日とかからず完了するんだ」
「離脱はできない……Dominusだって、心では理解しているはず――」
で、ではせめて、応急手当だけでも……
そう言うわたしに対して、姉さまは血塗れの姿で軽く一度首を横に振り――それから、にっこりと微笑みました。
その笑顔は、わたしも。そしてDominusも見慣れたもの。でも、どこか違うもの。
言うなれば。死の運命を受け入れた者の纏う静謐……のような……。
【ラ・テールよ。かつて、神の子であった者よ】
【汝は失敗作である。汝の存在は無為であり、無駄であり、無益である】
【消滅せよ。これは神の慈悲である。何の価値さえない汝への救済である】
【汝、ラ・テール。汝は無意味だ。その存在の、細胞の一片さえ】
―――カッ!!!!
真デウスがふたたび姉さまへと指先を向け、破壊の光線を撃ち放つ。
それを、姉さまは電磁フィールドを発生させて凌ぐ。バリバリとプラズマが周囲を荒れ狂う。
でも、両腕と鶺鴒を失った姉さまでは、真デウスの攻撃を凌ぎ切ることはできない……!
姉さま!今、援護します!
「ダメ!!」
……ッ、姉――
「あたしは。ソレイユのお姉ちゃんなのに、ずっとソレイユに迷惑ばかりかけてきた。妹のために、なにもしてやれなかった……」
「……最期くらい。カッコ、つけさせてよ……」
0238ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/13(木) 18:45:22.85ID:/NXmkph4「あたしはソレイユを最後の覚醒へ導く“鍵”!あたしは――」
「あたしの命を全部使って!最後の扉を……開く!!!」
【世迷言を……!!】
真デウスが大きく右腕を振りかざし、烈風を撒きながら姉さまへと手のひらを突き出す。
そこから放たれる、指から出ていたものとは比較にならない規模の光!こんな攻撃、防げるはずが――
「はああああああああああああああ――――――ッ!!!!」
真デウスの手のひらから放たれた光に対抗するように、姉さまの全身が眩く輝く。
裂帛の気合と共に、姉さまは真デウスへと突進する。黒い光の尾を引いて宙を翔け、流星のように。火の玉のように真デウスへ迫る。
姉さまが真デウスの放つ光を真っ二つに斬り裂いてゆく。そして――
「戦術特攻!ラ・テール・ファタリテ・アヴェニール――――――ッ!!!!」
ドドドドドドドドドドドドドウッ!!!!
流星と化した姉さまの突撃が、真デウスの突き出していた右腕を粉砕する。
無数の爆発が右腕で連鎖を起こし、轟音と共に巨大な質量の腕が崩壊してゆく。右肩までもが爆裂し、付け根から消滅する。
【な……、何ィ……?】
真デウスが――いいえ、エル・シャダイが驚愕の声を漏らす。
唯一無二の存在であるはずの自分が、失敗作と断じたラ・テール姉さまに右腕を粉砕される――その事実に呻く。
ああ……姉さま!
【ごご……お、おのれ……!神の玉体に……傷をつけるなどと……】
【失敗作……めが……!】
憤怒を声音に纏わせ、真デウスがその輝く両眼で姉さまを睨みつける。
デミウルゴスの群れが、すぐさま姉さまへと押し寄せる。
でも、捨て身の戦術特攻を繰り出した直後の姉さまには、デミウルゴスたちを跳ね除ける力は……!
今一度、神の尖兵たちの刃が姉さまを斬り裂き、刺し穿つ。
全身をズタズタにされ、力尽きた姉さまが落下してゆく――。
わたしは急いで空を駆けると、姉さまをしっかりと受け止めました。
姉さま……、姉さま!しっかりしてください、姉さま……ッ!
「……ソ……、レ、イユ……」
姉さま……!
なんてことを……!わたしたちは、一緒に戦うのではなかったのですか!?
わたしは、あのデウスに勝って!姉さまとDominusと……三人で、ずっと……暮らして……!
「……今のままじゃ……ダメなんだよ……。わたしたち、『錬金人類(エリクシアン)』全員の力を合わせなくちゃ……」
「わたしたちの……心を。ひとつに……しなくちゃ……」
……わたしたちの……心を……
……ひとつ、に……。
「そう……。偽りの神に、あたしたちの父さんだったひとに勝つには……それ以外には……方法は……」
「ソレイユなら、必ずできる。あたしは……それを信じてる……から……」
ビキッ!
姉さまの胸のカドゥケウスから響く、破滅の音。
でも。姉さまの浮かべる微笑みは、いつもと何も変わらなくて――。
0239ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/13(木) 18:50:08.21ID:/NXmkph4>てめえはいいとこ、偽神共の頭目止まりだ、ウッドマン!
【取るに足らぬ凡下、何ひとつ秀でるところのない平民が、僭越にも神に意見するか】
【神の計画を妨げんと画策した上、神を愚弄するとは――神罰の執行に値する愚行である】
ゴゴゴ、と音を立てながら、真デウスがDominusの言葉に反応する。
残った左腕をゆっくりと持ち上げ、アルマゲドンへ向けて手のひらを開く。
姉さまに撃ち放ったのと同様の、破壊の光を放射せんと構える――けれど。
そこから光は出ない。その代わり、姉さまの戦術特攻にごっそりと抉り取られた右肩が急速に再生してゆく。
足許に広がる、広大な海原――海水から莫大なエネルギーを抽出し、それを再生に充てている……。
治癒と再生を優先させているために、Dominusを攻撃するだけのエネルギーを回すことができない――?
「……あたしの心と魂を、持っていって……ソレイユ。そして……父さんを。エル・シャダイを倒すんだ……」
「大丈夫。ソレイユなら、絶対にできるよ……。なんたって、あなたは――」
「あたしたち6人の、自慢の……妹、だから……」
……ね、姉さま……!
い、いやです!わたしは姉さまのスペア……バックアップに過ぎません!
今だって、本来はわたしが姉さまの盾になって死ぬべきだったのに!わたしが捨て石になるはずだったのに……!
どうして!どうして、こんな……!
「違うよ、ソレイユ……。あなたはもう、あたしのバックアップなんかじゃない……」
「あなたは、あなた。ソレイユという、立派なひとりの人間――」
ひとりの……人間……。
「『神人類(デミウルゴス)』と、『機械化人類(メカニゼイター)』と、『錬金人類(エリクシアン)』と」
「たくさんの戦いを通じて、あなたはそれを証明した。自分は人間だって。この星に生きる、この星を愛する者のひとりだって」
「その想いがあれば、大丈夫。神なんてあやふやなものになるために、愛を。絆を。なにもかも捨てた父さんなんかに、絶対負けたりしない……」
「それに……。あたしがいなくたって、あなたにはまだ。一番大切な人がいるでしょ……?」
…………
……はい……!
「今までと、何も変わらないよ……。敵がいるから、倒すべき相手がいるから。あなたは、Dominusと力を合わせてそれに勝つ――」
「ずっとそうしてきたように。成し遂げてきたように……今回もそうすればいい」
「あなたとDominusの、絆の……力で……」
ビギッ!
ビッ、パキッ、ビキキ……
姉さまのカドゥケウスが澄んだ音を立てて砕ける。姉さまの身体が、徐々にぼやけていく。
「ね……、ソレイユ……。あたしの命は……存在は……無駄なんかじゃ、なかった……よね……?」
「あたしは……この世界の役に立ったって。望まれた存在だったって――思っても、いい……かなぁ……?」
はい!はい……、もちろんです、姉さま!
姉さまは強くて、可愛くて!とっても、とっても素敵で!
優しくて、学校でも生徒さんたちの憧れで!勉強もスポーツもできて、みんなの人気者で!
わたしは……たくさんの人に囲まれている姉さまが、本当に誇らしくて……!
断言できます……!姉さまは、この世界に必要とされた方!だって、姉さまの名前はラ・テール……
この星の。地球の名を冠する、世界で一番の……地球の子、なのですから……!!
「ふふ……、ありがとう……。そう言ってもらえて……嬉しい……」
「あたしは……あたしたちの魂は、いつも一緒だよ……。さあ、行こう……?未来を掴み取るために……」
「人類に――本当の、黄金の……夜明け、を…………」
血まみれの顔に、最期の最期までいつもと変わらない、温かく柔らかな微笑を宿して。
ラ・テール姉さまはそう言い残すと、わたしの腕の中で夜闇が朝日に融けるかのように消えてゆきました。
0240ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/13(木) 18:52:53.27ID:/NXmkph4>「それからウェストコット爺さん! このアルマゲドン、もう一機くらいすぐ造れるんだろう?」
《それは……できんのだ》
Dominusの声に反応し、アルマゲドンのコクピット内にウェストコット師の声が響く。
《アルマゲドンは中止、封印された計画の遺産。プロジェクト・アルマゲドンで建造された機体は、試作機のそれ一機のみ》
《ワン・アンド・オンリー。それが君の乗っている機体なのだ。よしんば造れたとしても、すぐには無理だ》
Dominusがウェストコット師と交信している間にも、デミウルゴスたちはアルマゲドンを撃墜しようと押し寄せてくる。
Dominusの思考を反映し、アルマゲドンが素早い機動でデミウルゴスたちを撃墜してゆく。
――でも、わたしは……。
うッ、うあああああああああああ……!
姉さま!姉さま……ねぇさま、ねぇさまぁぁぁぁぁぁ……!
どうして!なんで、こんな……こんなことに……!
誰もいなくなってしまった!わたしの、大切な姉さまたちが……!
メルキュール姉さまも!ヴェヌス姉さまも!マルス姉さまも、ジュピテル姉さまも、サテュルヌ姉さまも……
そして、ラ・テール姉さまも……!!
死んでしまった!いなくなってしまった!消えて……しまった……!!!
うああああああ!あああああああああ!!ああああああああああああああ――――ッ!!!
Dominusが現状を打破しようと、必死で戦っている。
空を埋め尽くさんばかりの数のデミウルゴスの大群と、その首魁である真デウスを相手に、たったひとりで立ち向かっている。
でも、わたしは、姉さまを喪った哀しみに涙を流し、慟哭するしかない――。
――そのとき。
わたしの頬を、水色の光がふわりと掠める。輝く光の球が、水色の尾を引いてゆったりとわたしの周りを漂う。
いいえ……水色だけではない。黄金色の、緋色の、緑色の、灰色の――そして、漆黒の光球が。
わたしの周囲を、踊るように舞っている……。
(何を泣いているのです?ソレイユ)
(カッ!この期に及ンでまァーだメソメソしてやがるとはな。しょうがねェヤツだぜ!)
漂う光球から聞こえてくる、懐かしい声。
これは……、この声は……!
(あと一息なのだ。Dominusさえもが身体を張って戦っているというのに、汝が泣き濡れていてどうする。気合を入れぬか!)
(わたくしの教えを忘れたのですか?Dominusと力を合わせ、美しく戦いなさいと言ったはずですわよ?)
……ああ……、ああああ、こんなことが……。
信じられない……!
(まったくさー。ボクらがこーしてハッパかけてやんないと戦えないなんて、しょーがない妹だよねー!)
(あはは、そう言わないであげてよ。ソレイユだって、一生懸命やってるんだからさ)
姉さまたち!これは……まさか、姉さまたちの……!?
0241ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/13(木) 18:55:59.74ID:/NXmkph4(たとえ、命を喪ったとしても。身体がなくなってしまっても。心は、魂は残り続ける。わたしたちは一緒にいる――)
(テメェも感じたはずだぜ?オレたちを倒すたびに、テメェのカドゥケウスにオレたちの魂が宿っていくのを)
黒と、水色。それに緋色の光が、そうわたしに告げる。
そうでした……。わたしが姉さまたちとの戦いに勝つことで与えられていたのは、なにも特殊兵装だけではない……。
姉さまたちの心も。魂もまた、このカドゥケウスに宿って――。
(そして、今ここに。わたくしたち七人の『錬金人類(エリクシアン)』の魂が集いました)
(ならば。吾ら七人の魂をひとつに重ね、新たな力を。最後の覚醒を成し遂げよう)
(さあ。エル・シャダイに見せてやろうよ、ボクたち姉妹の絆の力を。そして――)
――愛の。力を!!!
わたしの周囲を漂っていた六つの光球が、俄かにスピードを速めて旋回する。
やがて六つの光球は大きなひとつの球体となって、わたしの全身をすっぽりと包み込む。
六人の姉さまの魂が作り出す空間の中で、わたしの姿が爆発的に変質してゆく……。
【何事だ……?】
真デウスが異常に気付き、わたしを覆う光の球に視線を向ける。
と、同時に真デウスの指示を受け、デミウルゴスたちが光の球を破壊してしまおうと殺到する。
デミウルゴスたちの粒子砲が、ビームブレードが、球体を狙う――。
でも。
球体の内側から、眩い光が溢れ出る。網膜を灼くような強烈な輝きが一帯を照らし、その場にいた全員の視界を奪う。
そして。
光が収まったころ、先程まで球体のあった場所にいたのは、ひとりの『錬金人類(エリクシアン)』。
レオタード状であった従来のアサルトスーツとは違う、胸元に大きなリボンのあしらわれたトップスに、フリルのついたミニスカート。
太股までのサイハイブーツのコスチュームは、上から下まで何もかもが白い。
頭上には、まるで天使のそれのような光輪。背から生えた、七色に輝く一対の大きな翼。
右手に絡み合う二匹の蛇の意匠をした光杖を携える、輝く姿――。
【……な……】
半ば呆然と、真デウスが呻く。
【汝は……、何者だ……?】
――わたしは。
無限の愛と、無限の絆。虹の翼で世界を包み込む、『錬金人類(エリクシアン)』究極形態!
ソレイユ・フォルム・アルカンシェル!!!
0242ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/13(木) 18:59:19.19ID:/NXmkph4ゴウッ!!
真デウスの股下に槍を突き刺したアルマゲドンが、背の翼を模したスラスターを全開にする。
全長400メートル強、重量数千トンの超巨体が、わずか5メートルほどの機体によって海面から宙へ浮き上がる。
何というパワー!
【ぬ、オ、オ、オ、オ……!凡愚、ごときが……!】
海面から引き離された真デウスが唸る。
それまで高速で再生していた右腕が、海と分断された直後に復元しなくなる。
やはり……Dominusの狙い通り、海水と接触しなければ真デウスはその超回復力を使えない!
>「空中コンボって知ってるか、ソレイユ!」
Sic.Dominus!
ソレイユ、空中コンボを開始します!
わたしは虹色の翼を大きく広げると、瞬時に真デウスとアルマゲドンへ向けて飛翔しました。
【小癪な失敗作どもが……!どこまで、神を煩わせる気か……!!】
真デウスの両眼が輝く。大量のデミウルゴスたちが、わたしの行く手を阻む。
……でも。
(ウザってェンだよこのカスどもがァ!纏めてオレの炎で焼き払ってやらァ!)
ブアッ!!!
わたしの全身から放たれる、紅蓮の炎。マルス姉さまのシルエットをした炎の塊が、前方のデミウルゴスたちを焼き尽くす。
(露払いは吾らに任せよ。ソレイユ、汝は真っ直ぐにデウスを狙え)
(やっほーいっ!ひっさしぶりの出番だぞーっとぉ!)
バギッ、ビキビキビキッ!
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!
サテュルヌ姉さまを象った霧が凍気の一閃でデミウルゴスたちを両断し、ジュピテル姉さまの輪郭の雷撃が偽神の軍勢を焼き焦がす。
(わたくしたちも負けていられませんわね。さて――美しく参りましょう!)
(往きなさい、ソレイユ!そして、Dominusと共に……勝利を掴み取るのです!)
強い光が狼狽するデミウルゴスたちを捉え、閃光ですべてを溶かす。膨大な水がデミウルゴスを呑み込んでゆく。
わたしは真デウスの正面に到達し、紛い物の神と対峙する――。
(さあ……ソレイユ、最後の勝負だ!)
はいッ、ラ・テール姉さま!
Dominus、もう少しだけわたしに時間を!今しばらく、デウスを空中に釘付けにしておいてください!
このまま――撃破します!!
0243創る名無しに見る名無し
2016/10/13(木) 21:39:32.73ID:6ikGLSET0244創る名無しに見る名無し
2016/10/14(金) 15:06:45.22ID:eTYSZRaG0245ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/17(月) 17:32:55.18ID:ddra4ktx>>243
【……フォルム・アルカンシェル……だと……? そんな機能は、汝ら『錬金人類(エリクシアン)』には搭載されておらぬ筈】
ウッドマン師がご存じないのも、無理はありません。
この覚醒は、最初から既定路線としてプログラミングされたものではない……。
でも、姉さまたちはわかっていた。わたしたち七人の姉妹が集結すれば、最強の力が生まれるということを!
奇跡という言葉に意味があるのなら、それはまさにこのこと。
最期の時です!ウッドマン師――いえ、偽神エル・シャダイ!!
【ほ、ざくな……!神の手で生み出された人造生命、人形の……分際、で……!】
【神の怒りを見よ――、汝のちっぽけなDominusと共に!】
それ自体がデミウルゴス生産プラントである真デウスの全身から、夥しい数のデミウルゴスが生み出されこちらへ向かってくる。
恐るべき破壊のエネルギーが閃光となって、真デウスの指先からわたしへ向かって撃ち放たれる――。
でも。
そんなもの、当たりはしない!
わたしは七色に輝く翼を大きく広げ、デミウルゴスたちのまっただ中へと飛び込みました。
すべてのデミウルゴスたちが、ただわたしひとりを狙って押し寄せてくる。
けれど、誰ひとりわたしを――究極の『錬金人類(エリクシアン)』となったわたしを傷つけられない!
わたしとひとつになった姉さまたちが。
水が。光が。炎が。磁力が。雷が。凍気が。
触れるを幸い、偽神の使徒たちを薙ぎ払ってゆく。
【ぬ……オオオオオオオオ!!】
――錬金光杖!トリスメギストス!!
わたしは光杖を大上段に翳すと、矢のように真デウスへと突進する。
真デウスが残った片手を突き出す。莫大な破壊の力が手のひらに宿る――。
しかし、そんなものはもう……わたしには!効きはしない!
わたしは一気に光杖を振り下ろし、真デウスの指へと叩きつける。真デウスの右手中指と薬指が爆散し、崩壊する。
【ごオオオオオ……!ソレイユ、汝ごときが……神を阻むなど!神の計画を妨げるなど……!】
【許されると……思っているのか……!創造主に刃向かうことの罪深さを……理解しているのか……!】
憤怒と憎悪の籠った思念を、真デウスがわたしの脳へと直接放ってくる。
そう……創造主に弓を引くことの罪深さ。そんなことは承知の上!
ただ、わたしにはビュトス機関の最高位『小達人(アデプタス・マイナー)』たるあなたに刃向かってでもすることがある!
人々の作り出す愛の輪を、すばらしい絆を!わたしは……護りたい――!
【そんなプログラムは……しておらぬ……!】
そうでしょう。この想いは、あなたにも。ましてウェストコット師にも、メイザース師にもプログラミングされたものではない!
わたしが!わたしの心で考え、わたしの魂で判断し――わたしの意思でそうあるべきと決めたことだから!
あなた方の意向によって行動する錬金人類でなく、ひとりの人間として出した結論だから――!
ドドドドドドドドドドドドドドドウッ!!!!
わたしは一気に真デウスへ接触し、トリスメギストスでその巨体を薙ぎ払う。
絡み合う二匹の蛇、叡智の象徴たるそれが光を放って振りかざされるたび、真デウスの装甲が崩壊してゆく。各所が爆発する。
Dominus!もう一息です!
0246ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/17(月) 17:36:44.98ID:ddra4ktx……ウッドマン師。あなたは『トロイア計画』を発動するにあたって、たったひとつ計算違いをしました。
それは、ほんのちっぽけなこと。でも、本当に本当に大切なこと。
『人間の心の生み出すエネルギー』……それを軽んじた、それが……あなたの唯一の過ちだったのです!
【人間の……心の、エネルギー……?】
人間には心がある。喜び、哀しみ、怒り、その他たくさんの感情の生まれる場所が。
そして、心から生まれたそれらの感情は、想いは――他のどんな力よりも大きく、強いエネルギーになる!
エネルギー理論の碩学たるあなたが、一番身近に存在するエネルギーの存在を軽んじるなんて――
【くだらぬことを……!一度薙ぎ払えば羽虫の如く死ぬ、惰弱な羊どもの感情に強い力などあるものか!】
――でも!あなたは今、たしかに追い詰められている!
わたしたち七人の生み出した、愛と絆の力に!あなたが凡人と思い選出した、Dominusの怒りに!
そして……存亡の危機に対して日頃の蟠りを捨て、互いに支え合い協調する人々の心に――!!
【なん……だと……?】
わたしには見えます。全世界で人類粛清に着手しているデミウルゴスに対し、必死で抵抗している人々の姿が。
各国の重機兵たちが、文字通り決死の覚悟で。偽神の尖兵に抗っているのが……。
人間は、高みにいる存在にただ唯々諾々と運命を決められるだけの羊ではない!
自分自身の手で未来を、運命を切り開いていけるのです!
わざわざ地上に降臨し、自らの手で裁きに乗り出す――そんなお節介な神など、必要ない!!!
【我を……、人類の真の発展と繁栄とを願う我を……不要と抜かすか……!】
【もう善い!ならば、五億人だけ残すなどと言わず――人類など、一人残らず滅ぼしてくれる!】
【そして、この地球を!我が『神人類(デミウルゴス)』の惑星にしてくれよう!】
そんなことは……させない!!
真デウスの胸部装甲が展開し、アルマゲドンの『バロールの瞳』によく似たユニットがせり出してくる。
そこに集中する、恐るべきエネルギー。これは……体内のほぼすべてのエネルギーを解き放とうと……?
ならば!
わたしは右手の光杖トリスメギストスをぐるりと一度旋回させると、大きく上半身を捻って身構える。
【汝を葬り去る、それが我が『トロイア計画』の最終工程よ!――死 ぬ が よ い ! ! !】
全長四百メートル超、重量六千トン以上の超巨体が海から汲み上げ溜め込んだエネルギーで生成した、数値化不能の破壊の波動。
太い、などという言葉では表現できない範囲のレーザーが、デミウルゴスの群れを一瞬で蒸発させながらわたしに迫る。
上下左右、どこにも逃げる場所はない。今動いたところで、回避も防御も間に合わない。
でも。逃げる気も、護る気もない!
姉さま!地球の皆さん!そして――Dominus!
わたしに、力を――!!
わたしはすべての力を杖の先端に集結させると、一気に真デウスへと解き放ちました。
――必殺!!ユマン・ドゥ・ヴィクトワ―――――――――ル!!!!
ドギュオッ!!!!!
杖先から放たれた七色の光が、破壊の神の撃った裁きの波動を貫いて一直線に進む。
その力は歴然。破滅の力は霧散し、消滅し、すべてが虹色に塗り替えられてゆく――。
そして。
【お、ゴ……ゴオオオオオオオオオオオ……ッ!!!】
目も眩む輝きが、暮れなずんできた暁の空をいっとき、真昼に立ち戻ったかのように照らし出す。
これで――終わりです!!
0247ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/17(月) 17:40:47.39ID:ddra4ktxそれは、この最後の戦いの始め。囮の巨神(デウス)がアルマゲドンの縮退砲を喰らった光景によく似ていて。
でも、ただひとつ異なるのは、今崩壊を始めているのは囮ではない、まぎれもない本物のデウス――
その頭部に頭脳たるエル・シャダイを格納した、真のデウスだということ……。
【ガ……オオオオオオオオン!!ソ、レイユゥゥゥゥ!!この神を……神をヲヲヲヲヲ!!!!】
【なぜだ……、神の計算は絶対のはず……、神に……間違いなどない、はず……!!】
……はい、エル・シャダイ……いいえ、ウッドマン師。あなたの計算は完璧でした。
で、あるがゆえ。完璧であるがゆえ、『トロイア計画』は失敗したのです。
73億の人類の中から、あなたがDominusを選出した。Dominusがわたしに、すべてを教えてくれた。
他のDominusであったなら、こうはいかなかった。あなたが、わたしのDominusを選んでくれたから……。
【ば……、ばかな……。我は……神ぞ……。人類を……黄金の夜明けに導く神……ぞ……】
【神は……滅びぬ……神は、永遠不滅……我が叡智も、永久不変……!我は神、唯一神、地上に降臨した絶対主……!】
【我は――神ぞォォォォォォォォォォォ――――――――――――――――!!!!!】
ボッ!ボンッ!ゴゴゴッ―――ドドドドドドッ!!!
ボガァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!!
――く……!
真デウスの全身から光が溢れ、内側から爆発しながら滅んでゆく。
最期に断末魔の絶叫を残し、真デウスは――紛い物の神は大爆発を起こし、視界から跡形もなく消え去りました。
…………。
……やった……やりました……!
今度こそ、デウス波の完全消滅を確認!もう、デウスはこの周囲には存在しません!
わたしは光杖を下ろすと、深く息をつきました。
同時に、今まで真デウスの巨体を空中へ持ち上げていたアルマゲドンがぐらりと姿勢を崩し、海へと落下してゆく。
大丈夫ですか、Dominus?どうやら燃料切れのようですね、今まであれだけの質量を持ち上げていたのですから無理もありません。
真デウスの消滅と同時に、残存していたデミウルゴスたちもまた活動を停止し、自壊してゆく。
主を失ったことで、わたしとラ・テール姉さまの発動させたアポトーシス・プログラムが有効になったようですね。
これで、デミウルゴスは全滅……もう、誰も偽神に命を奪われることはない……。
――戦いは終わりました。戦闘モード解除、通常モードに移行します。
フォルム・アルカンシェルから、わたしも普通のソレイユへ――。
ありがとうございました、姉さまたち。姉さまたちが授けてくださった力の強さ……、ずっと忘れません。
わたしはエネルギー切れを起こして波間を漂うアルマゲドンに接近すると、そのハッチに手をかけました。
Dominus、今こちらからハッチを開けますね?アルマゲドンはもう、指一本動かせないでしょうから。
戦いは終わりました。……わたしたちは、人類を護ったんです。
これで、わたしの役目もおしまい……。救星主としての任務は、これにて完了です。
さあ、帰りましょう?懐かしいおうちに。Dominusとわたしのいるべき場所に。
そして、今までと変わらず生活して。学校へ行って。一緒に、お買い物に行って――
幸せな愛と絆を。あなたと一緒に、紡いでいきたい……。
これからわたしたちを待っているのは、きっと幸せな未来。
希望にあふれた明日。望んでいた黄金の夜明け――。
そう、期待にふくらむわたしの胸を。
背後から恐るべき速度で、槍のような何かが貫きました。
0248創る名無しに見る名無し
2016/10/17(月) 18:32:33.23ID:cwb0Uy+hソレイユを邪魔するやつって言ってももう役者がいないと思うが、一体誰ぞ
ウッドマンはもう大往生したんだよな?
0249創る名無しに見る名無し
2016/10/18(火) 20:36:19.50ID:XcwFvf68それとも諦めきれてなかったウェストコット師かな?
なんにせよ止血と、心臓やられてるならその代わりを考えなくては
・アルマゲドンの陰に隠れて敵からの追撃を避ける
(槍らしきものを敵がまだ握ってる状態なら、凍結させてへし折るなどしてからがいいだろう)
・可能であれば槍らしきものを引き抜き、傷口を絶凍刃『サテュルヌ・タンペート・ド・ネージュ』で凍結する
・心臓がやられているのであれば、超高圧力式水流鞭『メルキュール・トレント・デ・フエ』で血液を操って
体中に血が巡るようにする
0250ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/19(水) 22:11:38.53ID:VMtDMCM8>>249
ぐ……、ごふ……。
わたしの喉奥から魔導血液(エリクシル・ブラッド)が込み上げ、唇の端より溢れ出る。
……これ……は……?
わたしの背から胸元を貫通する、これは――
……ケーブル……?
【ゾオオオオオオンンンンブロオアアアアアアアアア!!!!】
ざばあ、と波を立てながら、咆哮と共に海中から現れたのは――直径3メートルはありそうな、巨大な天球儀。
天体を複雑に配置した、黄金色に明滅するそれが、下部から触手のような無数のケーブルを伸ばし蠢かせている……。
これは……エル・シャダイ……!!
そ、そんな……。確かに、倒したはず……なのに……。
【神は……不滅!神は不変……神は!不敗イイイイイ!!!汝ごときに……断じて!滅ぼされるものかアアアア!!!】
ぅ……ぐ……!
ケーブルは――触手は、わたしのカドゥケウスを狙った模様ですが……掠めただけで、破壊には至っていません……。
な、ならば……!Dominusk仰る通り、絶凍刃で……
【させるものか!!】
わたしがセキュリティ解除シーケンスを発動するより先に、エル・シャダイの触手がわたしの両腕に絡みつく。
と、次の瞬間、触手がわたしの両腕を力任せに引きちぎる――
ぎ……ぃ!うああああああああああああああああ―――――――ッ!!!!
【ハ、ハハハハハハ、ハハハ……!善い悲鳴だ、人形!心地よい叫びよ!】
【我は創造主、『錬金人類(エリクシアン)』の弱点など、遥か昔より理解しておるわ……!】
【腕を失ってしまえば、いかに強力な兵装を持つ『錬金人類(エリクシアン)』といえど無力!ラ・テールがその証拠よ!】
【神の計画を頓挫させた罪は重い……、今度は脚を引きちぎってくれようか?じわじわと嬲り殺しにしてくれよう、ソレイユ!】
【そして、汝の断末魔を全人類への死刑宣告としようぞ――!!】
エル・シャダイが、……かつてウッドマン師だったモノが、そう言って嗤う。
わたしの両腕のあった場所から、魔導血液が濁流のように流れてゆく。
命が、急速に失われてゆく――。
……ああ……。
あたかも刑に処せられた罪人の如く触手に全身を拘束されたまま、わたしは波間を漂うアルマゲドンに視線を向けました。
この邪悪な偽の神を、地球に残しておくわけにはいかない。これだけは、ここで。跡形もなく消滅させてしまわなければ。
Dominusの生きる世界に、この禍々しい天球儀を置き去りにすることだけは……。
でも。
わたしに取れる策は、あとひとつしか――。
……Dominus。
あなたと一緒に、これからも過ごしたかった。共に在りたかった。
わたしの知らないことも、まだまだたくさん教えてもらいたかった。
希望にあふれた未来を。愛に満ちた世界を。
ふたりで、ずっとずっと。歩いていきたかった――。
でも。
これで、おわかれです。
0251ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/19(水) 22:14:48.12ID:VMtDMCM8わたしは最後の力を振り絞ると、ありったけの磁力を解放して空へと翔け上がりました。
目指す場所は、上。できるだけ高く、飛べるだけ遠く、わたしの力が続く限り空へ。空へ――。
海上のアルマゲドンがどんどん小さくなってゆき、やがて視界から消える。
【な……、何をする気だ……!?もう、汝に神を倒すことなどできん!無駄なあがきはやめろ!!】
【両腕なくして、『錬金人類(エリクシアン)』は兵装を使用することはできん!】
【我を高みから海原へ叩き落とそうというのか?無駄よ!その程度の衝撃ならば、守勢錬陣でどうにでもなる!】
【そして、どんなに高く飛んだとて我は滅びぬ!仮に宇宙空間へ行ったとて、生物でない我は死なぬのだから――!】
わたしの背後で、ケーブルによって牽引される形になったエル・シャダイが喚く。
――そんなことは承知の上!わたしが上を目指すのは、あなたを高所から叩き落とすためでも、宇宙へ行くためでもない!
わたしの最後の切り札、その威力から――Dominusを少しでも遠ざけるため!!
【なんだと……!?汝にはもう、我を滅ぼすことのできる兵装など……】
……エル・シャダイ……、あなたが知らないのも無理はありません。
それは、わたしが多くの戦いの中で偶然に得たもの。本来は持ち得なかったもの。
万が一のためにと、念のため忍ばせていたもの――。
――イロンデル!!!
わたしの声に反応し、アサルトスーツの背部から燕型支援ユニット――イロンデル・ノワールが射出される。
【イロンデル……?莫迦め、血迷ったか!ジャミング程度しかできん補助兵装ごときで――】
……本当に、そう思うのですか?
イロンデルの嘴を、よく見てください。もっとも……今のあなたに目があるのなら、ですが……。
【……なに……?】
【!!!!!……あ、あれは……ま、まさか!まさかまさかまさか、まさかァァァァァ!!!】
そう……、その通りです。イロンデルが銜えている、懐中電灯のような棒状のもの。一見何の変哲もない“柄”……。
あれこそ、封印指定兵装――
【神剣!!!アポクリファかああああああああああああああああああ!!!!!】
トゥーレ協会本部におけるオリジンとの戦いのあと、わたしはアポクリファを密かに隠し持っていました。
いつか、何かの役に立つかもしれないと。最終決戦のとき、使うこともあるかもしれないと……。
【や……、やめろ!!そんなことをしたらどうなるか、わかっているのか!?我はもとより、汝も死ぬのだぞ!?】
【間違いない!計算によれば、その熱量は数百億ジュール!!我を滅ぼせても、貴様とて生きては帰れぬぞ!】
ウッドマン師……。あなたの、その計算を信じます。
イロンデルが銜えているアポクリファのパワーユニットをオンにする。黒い刃が生成され、低い唸りをあげる。
【やめろォォォォ!わかった!計画は中止する!汝の身体も治す、Dominusとのことも邪魔はしない!】
わたしはエル・シャダイの声を一顧だにせず、イロンデルを見る。イロンデルが弧を描き、こちらへ飛んでくる。
【り、り、理解不能!計算不能!なぜ!なぜ!!なぜなぜなぜなぜ!!なぜそんなことをする!?不可解だ!不条理だ!!】
【わからない、わからないわからないわからないイイイイイイイ!!!!この神が、神の、叡智が―――――!!!!!】
わたしは最期に、ちらりと眼下の海原を見る。
…………Dominus…………
……だいすき。
Dominusのはるか頭上で、強い閃光が発生する。
夜が、いっとき昼間へと立ち戻る。直視できないほどの光が、Dominusの視界を埋め尽くす。
美しい白色が、闇を退けてゆく。
それが。
地上に降りた白い太陽の、最期の輝きだった。
0253創る名無しに見る名無し
2016/10/19(水) 23:25:32.01ID:KBjBgXK80254創る名無しに見る名無し
2016/10/20(木) 19:21:04.26ID:CnzWEg46何か使い道があって持っているのかもと…だから黙っていたんだ
でも…こんな使い方ってないじゃないかよ…
狭いコクピットの中に、キュイイ―――ン……という微かな音が響く。
暗転していたアルマゲドン内部の計器類が再起動し、システムを構築してゆく。
どうやら、爆発のショックでダウンしていた内部機構が一時的に息を吹き返したらしい。
プシ……と小さな音を立て、胸部ハッチが開く。Dominusの鼻腔を、潮の香りが擽る。
ずいぶん吹き飛ばされたらしい。アルマゲドンは決戦の地である東京湾沖約500キロの場所から、港湾部まで移動していた。
アポクリファの対消滅によって跡形もなく消し飛ばされていてもおかしくなかったが、人類最強兵器の名は伊達ではないらしい。
軍港は半壊状態で、周囲には人っ子一人いない。
恐らく、配備されていた自衛隊や米兵はみな近隣の民間人の救助に出払っているのだろう。
普段はこれ見よがしに整列している重機兵も、ヘリコプターも、一機も見当たらない。
Dominusの視界の先にあるのは、破壊された舗装道路。崩壊し、黒煙を上げている建物。
エネルギー切れを起こし、仰向けに倒れたアルマゲドン。そして――
20メートルほど前方の地面に横たわる、襤褸のような何か。
もつれ、汚れた白金の髪。両腕と、そして臍から下をまるごと失い、無惨に転がるそれ。
『それ』はまぎれもなく――
Dominusがそれを抱き起こしても、それはぐったりとしたまま反応しない。
それでも根気強く声をかけると、やがてぴくりと瞼が動く。
「…………ぅ……」
と、唇が微かな吐息を漏らす。
閉ざされていた瞼が、うっすらと開かれる。
それ――ソレイユはDominusに気付くと、
「……どみ……ぬす……」
と、吐息のように小さな声で呟き、ほんの僅かに微笑んだ。
「……わた、しは……夢を、見ている……の、でしょう……か……?」
「アポ……クリファの、対消滅を……至近で受けた……のに。生きて……いる、なんて……」
「ど、みぬす……。ご無事で、よかっ……た……」
たおやかな腕も。しなやかな脚も。上半身以外の何もかもを失いながらも、ソレイユは嬉しそうに笑う。
「……エル・シャダイは……消滅しました……。確かに、わたしは……それを、確認……しました……」
「デミウルゴス、は……偽神の軍勢は、跡形もなく滅びました……。Dominus、ご安心を……任務……完了です……」
「これで……わたしの、役目も……」
――ピキリ。
ピキッ、パキ、パキキッ―――
放心状態のDominusの腕の中、微笑むソレイユの胸で、澄んだ音が鳴る。
それが何であるのか、今さら語るまでもない。
「……ああ……」
「Dominus、どうやら……本当に、おわかれの……時間の、ようです……」
そう。
『錬金人類(エリクシアン)』の終焉。造られた命の終わり。
……最期の刻。
「ふふ……。わたしがアポクリファを隠し持っていたこと……Dominusは、すっかりお見通しだったのですね……」
「さすがは、わたしのDominus……お見事……です……」
滅びを前に、心から嬉しそうにソレイユが笑う。
「本来……アポクリファを発動させた時点で、わたしは……消滅しているはず……」
「そんな、わたしが……こうしてDominusと、最後に……お話しができるなんて……」
「あんな偽者の神じゃない……本物の神さまが、わたしに……ほんのちょっぴりだけ、猶予をくれたのかもしれません……ね……」
「Dominusに……おわかれを言う、時間……の……猶予、を……」
一気に話したことが大きな負担であったらしく、ソレイユは一度目を閉じると、一度大きく息を吐いた。
「……えへへ……。困りました……」
「時間が、ないのに……。たくさん、Dominusには……お伝えしたいことが、ある、のに……」
「……何も、言葉が……出て、こないんです……」
パキ。
パキッ、ピキキ、パリ――
「ごはんは、ちゃんと毎日三食……栄養のバランスを考えて、食べて……くださいね……?」
「学校にも……きちんと、行ってください……。あなたは、いつか偉業を成し遂げるお方……なのです、から……」
ピキッ。ビッ。ビキッ――
「お洗濯ものは、溜めこまないで……こまめに、洗って……ください……。お部屋の、お掃除も……」
「秋冬物の、衣服は……クローゼットの……奥に、整理を……して、あります……。ラベルを、貼っておきました……から……」
――パリン。
「ど、みぬ、す――」
「わたしの……どみぬすに……なって、くれて……ありがとう、ございました……」
「ずっと、ずっと、ソレイユは……幸せ、でした……。両手いっぱいでも、抱えきれないくらいの……愛情を、頂きました……」
「ほん、とうは……これからも、もっと……いっしょに。しあわせに……なりたかった……けれど……」
「……わたしは。ここで……おいとまを、させて……いただ、き、ます……」
カドゥケウスが砕け散る。ソレイユの身体が、徐々に光の粒子に変わっていく。
その声が、掠れたものになってゆく。
「どみ、ぬす……」
「さいごに……わ、たしの……きもち……。きいて、いただけ……ますか……?」
大きな瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれる。
光になって溶けてゆく中、ソレイユはにっこりと微笑むと、
「あなたが……すき、です……」
囁くように、睦言のように小さく。けれど、はっきりとDominusへ告白した。
0257創る名無しに見る名無し
2016/10/23(日) 13:12:18.73ID:qf1DKkPQおわかれなんかしたくない
戻って来いソレイユ
0258創る名無しに見る名無し
2016/10/23(日) 22:51:53.81ID:t00/u1LF神剣アポクリファの対消滅による莫大なエネルギーの奔流をその身に受けながら
大きく傷ついたソレイユと、この大海原の中で彷徨う俺がこうして、面と向かって
言葉を交わすことのできる確率は、実際のところ如何ほどなのだろう
> 「あんな偽者の神じゃない……本物の神さまが、わたしに……ほんのちょっぴりだけ、猶予をくれたのかもしれません……ね……」
俺たち人類はそんな偶然を奇跡と呼ぶが
俺には到底そうは思えなかった
> 「ごはんは、ちゃんと毎日三食……栄養のバランスを考えて、食べて……くださいね……?」
これは蓋然であり
> 「学校にも……きちんと、行ってください……。あなたは、いつか偉業を成し遂げるお方……なのです、から……」
これは必然であり
> 「お洗濯ものは、溜めこまないで……こまめに、洗って……ください……。お部屋の、お掃除も……」
あたかも世界を司る規則法則それ自体が
> 「秋冬物の、衣服は……クローゼットの……奥に、整理を……して、あります……。ラベルを、貼っておきました……から……」
こうなることを我々に要請しているような
> 「わたしの……どみぬすに……なって、くれて……ありがとう、ございました……」
傍から見れば、まるで馬鹿馬鹿しい妄言のように聞こえるかもしれないが
> 「ほん、とうは……これからも、もっと……いっしょに。しあわせに……なりたかった……けれど……」
そのとき俺は確信していた
> 「どみ、ぬす……」
まだ奇跡は起こっていないということを
> 「さいごに……わ、たしの……きもち……。きいて、いただけ……ますか……?」
これから、起こるのだということを。
0259創る名無しに見る名無し
2016/10/23(日) 23:06:34.49ID:t00/u1LF……俺も、好きなんだ
お前が突然、俺の目の前に現れたときからずっと
最初はびっくりしたけど、
一緒に過ごすうちにもっと好きになっていった
そんなだからきっと、これからもっともっと好きになる
できれば、そうさせて欲しい
お前が人類を導く黄金の太陽と言うならなおさら、夜明けと言わず、俺たちの黄昏の日まで
もう暫く、出来の悪い人類とDominusの傍にいて
もう暫く、俺たちの面倒見てくれないか……
――だから万感の想いをこめて。
自分でも気づかぬうちに俺は、咆哮していたのだ!
「俺もお前が大好きじゃー、ソレイユッ!」
――悲しみと絶望を希望と祈りに変えて。
それはソレイユがいつもそうしてきたように。
俺は心底、なお儚く光る太陽に愛を叫んだのだ!
「だから未だ逝くな、帰ってこい、ソレイユ!」
0260創る名無しに見る名無し
2016/10/24(月) 01:30:37.19ID:+oafw7WY――そうだ、ラ・テールやソレイユは女王型デミウルゴスだなんて言われてたよな?
もしかしたらデウスみたいに、海水からエネルギーを作って再生なんてできるかもしれないだろ?
それにほら! さっきのソレイユ・フォルム・アルカンシェル! あれ凄かったよな!
ソレイユの姉さんたちが力を貸してくれるなら、体の再生なんて幾らでもどうにかなるような気がするじゃないか?
……なぁ……そうだろ。そうだと言ってくれよ。大丈夫だって……なんとかなるってさ……頼むよ
どんな困難があってもなんとかやってきたじゃないかよ……それがこんな……
……これからなんだ。これからなんだよ……楽しいことがいっぱいあるんだ、ここから先に……
だから……死なないでくれ……生きて……そんな悲しい笑顔で、最期だなんて言わないでくれよ……
ビュトス機関本部都市に設けられた花畑の中で、ウェストコットが呟く。
「奴は、我々の理想を――ビュトス機関の掲げた理念を誰より体現しようとした。奴はただ、義務を果たそうとしただけなのだ」
「だが……人類の指針たらんとした、それ自体があるいは誤りだったのかもしれん」
「人類は、自らの手で未来を切り開いていける……か……」
「我々は神の力と視点を手に入れ、それに驕り。知らぬ間に人類の本来有する力を忘れてしまっていたらしい」
ウェストコットは振り返り、やや後方で車椅子に座すメイザースに向き直った。
「ならば、だ。この世界の趨勢に直接介入せんとする神は不要。神の力を有する組織も不要……後は、彼らに委ねるとしよう」
「憎み合い、殺し合い、幾度となく同じ過ちを犯す。あの例えようもなく愚かな――」
「しかし、どれだけ間違いを重ねようと――いつか必ず立ち上がり。愛し、慈しみ、許していける。彼ら人類に」
そう言うと、スーツのポケットからスマートフォンのような端末を取り出す。
白手袋を嵌めた手でタッチパネルを操ると、途端に周囲が鳴動を始めた。
《自爆シーケンスが発動しました 当機関は30分後に自爆します ただちに避難してください 自爆シーケンスが発動しました――》
けたたましいサイレンと非常灯の明滅と共に、そんな機械音声のアナウンスが響く。
アナウンスは本部都市に残っている人員に退去を命じているが、ウェストコットはその場を動こうとしない。
メイザースも、もちろん動かない。
ウェストコットはしばらく無言で佇んでいたが、
「おっと。ひとつ、重要なことを忘れていた」
そう誰に聞かせるともなく呟くと、もう一度携帯端末のパネルを操作した。
「当初はまったく期待などしていなかったが、よもや、ここまで成し遂げるとはな。いや、驚き以外の何物でもない」
「今までだいぶ酷使してしまった。だというのに、褒賞のひとつもないというのは余りに酷と言うもの――」
「最後に、もう一度だけ神の働きを見せるとしよう。受け取るがいい……人類最凡にして、最高のDominus」
操作が完了する。液晶画面に表示される『Reboot』の一字。
それを確認すると、ウッドマンは満足げに一度頷き、端末をポケットにしまって両手をステッキのグリップに乗せた。
「さて。これで仕事は本当に終わりだ。ウッドマンが待っている、我らもゆくとしよう」
「そして、あの頃へ戻ろう。大義も使命もなく、ただ新たな発見と知識の探求に胸を躍らせていた、あの頃へ……」
「……なあ、メイザース」
ウェストコットが告げる。――だが、メイザースは俯いたまま返事をしない。
ややあって、ウェストコットはフンと鼻を鳴らした。
「まったく、せっかちな男だ。朋輩を置き去りにしていくとは……まあ、おまえらしいがな」
早くも都市の崩壊が始まっているのか、花畑が大きく揺れる。
高い天井に設置されていた照明が消え、全てが闇に包まれる。
ウェストコットとメイザースの姿も、闇の中に没して消える。
出番を終えた役者が、舞台から去るように。
>……俺も、好きなんだ
>俺もだよ……なぁ、だから消えないでくれ
Dominusの返答を聞き、ソレイユはまたぽろぽろと大粒の涙を流す。
「よかっ、た……」
「にんぎょうの……わたしに……こいなんて、りかいできるだろうかと……。あいしてくれる、ひとなど……いるだろうかと……」
「ずっと……しんぱい……して、いました……」
身体の輪郭がぼやけていく。Dominusの腕の中で、ソレイユの身体がどんどん軽くなってゆく。
辺りを漂う光の粒子が、増えてゆく。
「でも……あなたは。そんなわたしのしんぱいなんて……ぜんぜん、かんけいなく……」
「さいしょから。わたしを……たくさん、あいして……くださって、いたのですね……」
「さすが、です……どみぬ、す……」
>おいとまなんて言うな
>もう暫く、俺たちの面倒見てくれないか……
>大丈夫だって……なんとかなるってさ……頼むよ
「かなしま、ないで……」
「……ひとは……おせっかいな、かみさまや……しんじんるいのたすけがなくても……やって、いける……」
「それを……しめしてくれた、のは……どみぬす、ですよ……?」
「わたしの、やくめは……おわりです……。あとは……どみぬすたち、ごじしんの……てで……」
「……しあわせな……みらい、を……つくっ……て――」
ソレイユのほんの少しだけ残っていた身体が、蛍のように舞い飛びながら輝く光へと変わる。
ソレイユを構成していた光が、粒子となって天へと還ってゆく。
>戻って来いソレイユ
>だから未だ逝くな、帰ってこい、ソレイユ!
>だから……死なないでくれ……
Dominusが必死で呼びかけても、身体が光となってゆく速度の緩むことはない。
「……どみ、ぬす……。わたしの、わたしだけの……たいせつな……どみぬす……」
頬を伝って零れ落ちる涙さえもが、光に変わってゆく。Dominusの腕の中、ソレイユはもう一度だけ幽かに微笑み、
「あいして、います……ずっと、ずっと――」
そう囁くように告げると、静かに消えていった。
ソレイユが消滅したあとも、ソレイユであった光の粒子はしばらくDominusの周囲を漂い続けた。
それはあたかも、別れを惜しむような。ソレイユの心が、最後の最後までDominusの傍に寄り添うことを望んでいるかのような。
肉体を失ってもなお、魂で。心で。愛を伝えているかのような――。
ビュトス機関の人類粛清計画『トロイア計画』が残した爪痕は深く、世界各地では今日も復興活動が行われている。
デミウルゴスの破壊活動によって大きなダメージを受けたのは、日本も例外ではない。
破壊された建物の瓦礫を撤去し、インフラを整備し、偽神によって家を、職を、家族を失った人々を支援する。
地球規模の災害である『トロイア計画』の被害を受けた人々の数は多く、すべてが落ちつくのにはまだまだ時間がかかるだろう。
それでも、人々の顔に悲壮感や絶望はない。
どんな困難に見舞われようと、不幸が押し寄せようと。
人々は泥の中から立ち上がることができる。いつか輝く明日が訪れると信じて、希望に胸を膨らませることができる。
闇の中から、光に向かって手を伸ばすことができるのだ。
人々の間だけではなく、国家間でも混乱が起きた。
それまで圧倒的なテクノロジーによって世界を影から調停していたビュトス機関が壊滅し、消滅したのだ。
ビュトス機関からの技術供与を受けていたアメリカ等の大国は軒並み震撼し、国家の維持がままならなくなる寸前にまでなった。
機関の存在によって危ういパワーバランスを保っていた国々は一時存亡の危機に瀕したが、現在ではやや落ち着きを見せている。
機関の傘がなくなって狼狽する国家がある一方で、進んで機関の傘のない世界を歩んでいこうとする国家も少なくない。
価値観の違う両者が歩み寄るには、今しばらくの時を要するだろう。
だが、それも。いつかきっと解消されるに違いない。
――なぜなら。人類は自らの手で、足で、未来を切り開いていくことができるのだから。
『錬金人類(エリクシアン)』たちが、それを願ったのだから。
ビュトス機関の本部都市は、グリーンランドの氷雪の中に埋没した。
元々ビュトス機関は他の国家とは距離を置いており、本部都市の位置を部外者には決して洩らさなかった。
現在残っている国家は、誰も機関の正確な場所を知らない。つまり、墓荒らしはできないということだ。
その場所を知るのは元機関の職員たちだけだが、彼らもかつて機関に所属していたということを隠して生活するのだろう。
『トロイア計画』によって人類の大粛清を目論んだ組織の人間だったことが露見すれば、生きてはゆけまい。
人類発展機関『ビュトス』は、跡形もなく滅んだ。
今後は、ただ人々の歴史の影にそういう機関が存在していた――ということだけが、まことしやかに語られ続けるのだろう。
幻のように。伝説のように。御伽噺のように。
ビュトスの三魔術師……彼らが求めてやまなかった、黄金の夜明けという理念と共に。
Dominusも――
いや。一般人へと戻ったあなたもまた、元の生活へと戻った。
いまだ完全な復興とは程遠い街並みを横目に、学校へ行く。
破壊を免れた商店街を通り、“生き残るべき5億人”に選ばれていた人々と、いつも通りの軽い挨拶を交わす。
学校で、学友たちの変わらない顔を見る。当たり障りのない会話をして、放課後まで過ごす。
『錬金人類(エリクシアン)』が現れる前と、何も変わらない毎日。
平和な、でも少しだけ退屈な、平々凡々とした毎日。
これからも、きっと大きくは変わることなく繰り返されるであろう毎日。
――そう、思っていたけれど。
それから、ほどなくして黒塗りのストレッチ・リムジン。
リムジンのドアが開き、中から複数の人影が出てくる。
玄関前で、扉を挟んで声がする。
「ここがDominusの家?ちっちゃくなーい?こんなんでボクたち全員住めるの?ボク、自分の部屋ないとヤだよ?」
「日本の家屋はウサギ小屋と聞いていましたが、本当に小さいですわね……。やっぱりアメリカがナンバーワンですわ」
「いやいや、まぁまぁ、これでもけっこー過ごしやすくて、いいトコなんだよ?あたしの荷物まだ残ってるかなぁ」
「ふむ。まこと懐かしい……此処で過ごした日々が思い出される。早くひと風呂浴びて旅の垢を落としたきところ」
「あァ?風呂は年功序列!オレが一番に決まってンだろが!」
「年功序列なら、あなたは四番目でしょうに……。ねえ?お姉さま?」
「もう。お風呂の話はあとにしなさい、みんな。まずはDominusにご挨拶しなくちゃ、でしょう?」
そんなことを話している。
一番年長らしい女性の声に、他の全員が「そうだそうだ」「了解ですわ」などと返答する。
「つーか、アイツどこ行ったンだ?そもそもDominusはアイツのDominusだろが?アイツがいねェでどォするよ」
「まだリムジンの中に入っていますわ」
「え〜?なんで?こっち来るまで、もーバカみたいに『早く!早く会いたいです!』って言ってたのにさー」
「でも、ここに近付くごとに口数少なくなってったよね。ガッチガチに緊張して」
「まったく仕方のない。ならば、無理矢理引きずり出すのみ!ええい、武士ならば武士らしく観念せよ!」
「あらあら、あんまり手荒なことをしちゃダメよ?ご近所迷惑になるから……」
どったん、ばったん。
「ま、ままま、待ってください姉さま!まだ心の準備が!もっ、もう少しだけお時間を……!」
「問答無用!ボクは早く寝そべったりのんびりぐったりダラダラしたいんだから!グズグズしてるんじゃなーいっ!」
「そんなご無体なっ!?わ、わたしの気持ちにも少しは配慮してくださいーっ!」
「知るか!ンなモン、Dominusと会って!ギュッとしてもらって!ンでもってキスの一発や二発もカマせば解決だっつーの!」
「!!!??……キッ、キキキキキ、キス……!?」
「大事な妹の唇ではあるが、相手が主殿ならば致し方なし。許可しよう」
「ハッピーエンドには熱い口付け。まさしくハリウッド的ですわね」
「あらあら、うふふ。若いっていいわねえ」
「も、もうっ!姉さまたち、からかうにも程がありますからーっ!」
末の妹がたまらず叫ぶ。姉たちが、あははと朗らかな笑い声をあげる。
「……さて。おふざけはこのくらいにして、きちんとご挨拶を。宜しいですわね?」
「はいはーいっ、全員せいれーつっ!」
「わたしの服装、大丈夫かしら?前にDominusと会ったときは、アサルトスーツ姿だったし……」
「吾はいつもアサルトスーツに道着で抜かりなく」
「それ自慢することか?」
「私語厳禁!……さあ、Dominusを呼んで。もう一度、みんなでやり直そう……ソレイユ」
「――はい。ラ・テール姉さま」
インターホンが押される。軽快なベルの音が、あなたの耳に響く――
0265創る名無しに見る名無し
2016/10/25(火) 18:48:02.81ID:LuHH4kaA疲れからか、不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。後輩をかばいすべての責任を負った三浦に対し、
車の主、暴力団員谷岡に言い渡された示談の条件とは・・・。
綺麗に終わって大団円かな?
とにかくお疲れ様でした。この数か月間、すごく楽しませてもらいました。
導入の「ちょっと怪しげな」正義の組織から興味を惹かれて、気づいたらここまで追ってしまったよ。
もう神は不要と言ったウェストコットの言葉が本当なら、最後に出て来た錬金人類たちは記憶を共有した普通の人類(クローン)?
ビュトスはなくなっちゃったし、エリクシアンをメンテできるところもない。
でもリムジンに乗ってくるってことはそれなりの規模の組織がまだ存続しているってことだから、一概にそうとも言えないのか。
ちなみに今からスレ主を褒め殺すので異論のある人には申し訳ないんだが、以下の点で見事としかいいようがないゾ。
・キャラの立った登場人物(エリクシアン)たち。
・始めから規定路線がちゃんと決まってたんだろうけど、参加者の設定を取り入れつつもぶれない話運び。
(メネクやオリジンにはきちんとしたお話と結末を用意)
・話のブロックごとに起承転結があって飽きさせない展開。(毎週楽しみだった)
・おまけコーナーに見るキャラ愛。
・表現に過不足がなく読みやすい文章。
・そして何よりお話を始めて、終わらせたこと。
※個人の感想です。
もう容量も少ないが、よければ制作の裏話とか裏設定とか苦労話なんかも聞きたいな。
0266創る名無しに見る名無し
2016/10/26(水) 08:03:44.46ID:G02jsTnF個人的感想には100パー同意だけどな!
悲しい終わり方じゃなくて心底ホッとしたよ!
ジュピテル「え?なんて?」
ヴェヌス「(本編は)もう一話だけ続くんじゃ、と言っておられますわ」
ラ・テール「次回!錬金乙女エリクシアン最終回!
『そして、日の射す未来へ』
おったのしみにーぃ!!」
〜次回放送日は10月29日の予定です〜
0268創る名無しに見る名無し
2016/10/27(木) 18:30:31.21ID:iHHGnbPGいきなり感想は飛ばしすぎたかもしれないゴメンネ
さーて、ジュピテルを高級プリンで釣る作業に移るか……!
0269創る名無しに見る名無し
2016/10/27(木) 21:25:35.21ID:pH2IWkH5それにこのトラックに積まれた荷物は……え? 皆ここに住む? いいよ?
としても部屋割りはどうするか。荷物の多い少ないがあって、姉妹でもどの部屋が良いかとか、どの人の隣がいいかとか好みがあるだろう
それらの事情を把握しているであろう人物で、かつ、ここに住んだことがあり部屋の大きさや配置を把握してると思われる人物……
ソレイユ、サテュルヌ、ラ・テールに部屋割りは任せよう
それで荷物をいったん中に運び終わったら、今日はゆっくりして出前でも取ろうか。ピザとかお寿司とか
君達が帰ってきたことの祝いと、そして我が家にやってきたことを歓迎して、パーッと宴会でもと考えてるんだけど、どうかな
それと……おかえり
俺も感想書きたいな。長い事楽しませてくれてありがとうとか、お疲れ様とか、
更新がある度どうしたら事態が好転するか考えるの面白かったよーとかさ
それに裏話やらも聞きたい
一番最初に、突然に。ある日なんの前触れもなく、あなたの前に現れたときと同じように。
白いワンピースに身を包んで、あなたの目の前に佇んでいる。
頬を赤らめ、手指を胸の前でもじもじさせて、何か言いたげに――けれど、言うきっかけを掴めずにいる。
「そ、その。ええと、Dominus……。あのっ、そ……、その……」
束の間見つめ合う、あなたとソレイユ。
後ろに控える姉たちは穏やかに微笑んだりニヤニヤ笑いをしたり、囃し立てたりしながらあなたと妹を見守っている。
「おいおい、Dominus!男だろ?ちゃンと男らしいトコ見せてみろよな!」
「四の姉上の仰る通り。吾らは主殿ならば善いと思っておる、ならば――据え膳食わぬは漢の恥、であろう?」
「おーっとっとぉ!足がもつれちゃったぁ!」
ラ・テールがそんなことを言って、不意にソレイユの背中を押す。
バランスを崩すソレイユ。たたらを踏み、体勢的にあなたの胸の中へと飛び込む形になる。
ソレイユがあなたの胸に両手を添える。お互いの顔と顔とが近付く。
「……ど……み、ぬす……」
敢えて口に出す必要はない。長い戦いで絆を育んできたあなたには、きっとソレイユの想いがわかるはず。
そう。
あなたの顔を見つめるソレイユの、潤んだ瞳が。
あなたを呼ぶソレイユの、可憐な唇が。
触れ合うことを望んでいる。繋がり合うことを願っている。
口付けを。ねだっている――。
これは、神の去った世界で。
あなたが神の子に与える、最初の行為(オーダー)。
ソレイユは、そっと目を閉じた。
「あらあら、うふふ。いらっしゃいませ〜、今日も、いつもので宜しいですか〜?」
メルキュールは長姉として家の掃除と妹たちの食事の支度など、洗濯以外の家事を一手に引き受けている。
最近は午前中で家事が終わってしまうので、午後からは商店街の『大西たばこ店』で腰痛の店主に代わり店番をしている。
メルキュールが店番を始めてから、大西たばこ店の売り上げは従来の680パーセント増となった。
「毎度ありがとうございま〜す、これからも大西たばこ店をご贔屓に〜♪」
「わたくしの追跡から逃れようなどと、所詮は無駄な足掻き。醜いものは美しいものに敗北する他ないのです」
ヴェヌスは古巣のCIAに戻り、大統領の息のかかった特別捜査官として多忙な日々を過ごしている。
お蔭で日本へはほとんど帰れず、妹たちとは年に数度顔を合わせる程度になってしまったが、本人は満足している模様。
帰国の際はおみやげを楽しみにしているジュピテルに嫌がらせ的なおみやげを見繕うのが密かな楽しみだとか。
「CIA特別捜査官、ウラニア・ポース。――執行いたしますわ」
「や〜っほ〜っ!みんな、今日はあたしのために集まってくれて、どうもありがと――――っ!!」
ラ・テールは雑誌モデルを経てまさかの芸能界入り。可憐な外見と飾らない性格で瞬く間にトップアイドルへのぼりつめた。
現在はテレビにラジオに舞台に歌にドラマにと、三面六臂の大活躍。メディアが取り上げない日はない。
ことあるごとにソレイユに芸能界デビューとユニット結成を打診するものの、希望が叶う可能性は限りなく低い模様。
「みんな愛してるよーっ!それじゃー、今日もドキドキキュンキュンで救星しちゃお――――っ!!」
「オラオラァ!ジャリども、お昼寝の時間だッ!遊んでねェでさっさと寝ろ!」
マルスは何の因果か保母に。スポーツインストラクターか格闘家でも目指すのだろうと思っていた姉妹は度肝を抜かれた。
が、本人は意外にも面倒見の良さと子供好きっぷりを発揮し、良い保母さんとして父兄の受けも中々いいらしい。
マルスの私室には児童の作ったマルスの似顔絵や色紙の首飾り、一緒に撮った写真などが誇らしげに飾られている。
「なに、オレと一緒に寝たいって?オマエも?……そっちもか?しゃあねェ、まとめて面倒見てやっか!」
「……キミたちかい?ボクの学校の生徒をイジメたっていうのはさァ……?」
ジュピテルは外見のままに小学生として過ごし、転入後わずか二日で学校を支配した。
現在は学校の暴君として君臨し、一部の生徒以外にしか制御できないわがまま放題やりたい放題の毎日。
上級生や付近の中高生は言うまでもなく、暴走族、暴力団さえもジュピテルの名を聞いただけで失神するとかしないとか。
「キミたちはボクのオモチャだ。せいぜい楽しませてよ、壊れるまでね……きゃハははハはははハハはハッ!!」
「まだまだ踏み込みが甘い!それで敵に克てるか、この未熟者がッ!」
サテュルヌは近所の剣術道場で、師範代として門下生の指導に当たっている。
道場はサテュルヌ目当ての入門希望者者で一時的に人員が倍になったが、ほどなくサテュルヌの鬼のシゴキに耐えかねて元に戻った。
道場から貰える謝礼はすべて漫画(主に薄い)とコスプレ衣装に消える。
「本日はここまで!――では、吾はメイド喫茶のバイトへ征く!さらば!」
そして、ソレイユは――
玄関先で、制服姿のソレイユがあなたを待っている。
あなたが靴を履くと、その姿を頭のてっぺんから爪先までチェックし、にっこりと笑う。
「うん、大丈夫ですね。今日もDominusは素敵です」
「じゃあ、早く学校へ!バスはあと13分21秒後に停留所へ到着する予定です!」
「……あ。その前に……」
ソレイユは僅かに頬を染めると、そっとあなたへ歩を詰める。
そして、頬に掠めるような口付けをひとつ。
「いってきます、と。いってらっしゃい、のキス……です。ふふ……」
ほんの少し恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに。ソレイユは笑って、一歩を踏み出す。
そして、長い白金の髪を揺らして、あなたへと振り返り――
「さあ。往きましょう!Dominus!」
――と、言った。
どんなに夜の帳が深くとも、闇の時間が永遠に続くことはない。
いかなる絶望や苦悩、災厄が作り出す闇も、希望に向かって手を伸ばし続ける人々がいる限り、いずれは消える。
世界に輝かしい黄金の夜明けがやってくる。
太陽は、必ず昇るのだ。
これは。
地上で輝く、白い太陽の物語。
『白い太陽』ソレイユ:早見沙織
『慈愛の水麗』メルキュール:皆口裕子
『最美の閃光』ヴェヌス:沢城みゆき
『救星主』ラ・テール:生天目仁美
『炎熱の顕形』マルス:高野麗
『電界の女帝』ジュピテル:釘宮理恵
『極冷の刀尖』サテュルヌ:戸松遥
メイザース:菅生隆之
ウェストコット:中田譲治
ウッドマン/エル・シャダイ:若本規夫
……and All Dominus.
Image song
時空間超越ライブラリィ - MOSAIC.WAV
錬金乙女エリクシアン
おわり
錬金乙女エリクシアン打ち上げ暴露大会!〜無礼講だよ全員集合〜
10月31日公開予定
マルス「ちょっ!?今日はやンねーのかよ!?」
ジュピテル「パーティー!パーティー!Dominus!プリンちょーだいプリン〜!」
サテュルヌ「もしもし、特上寿司8人前。あ、ひとつはサビ抜きで頼む」
ヴェヌス「ピザ、メニューを片っ端からデリバリーお願いしますわね。それとカロリーゼロのコーラを」
メルキュール「お酒。頼んでもいいのかしら……?」
ラ・テール「あたし、甘いものが食べたいな〜。ケーキ3ホールくらい注文しちゃっていい?」
ソレイユ「姉さまたち……少しは遠慮してください……」
0275創る名無しに見る名無し
2016/10/30(日) 04:46:32.91ID:iXjqNU3aキャラ的にはマルスッスが一番好きだったよ!
その次はジュピテルかな!
0276創る名無しに見る名無し
2016/10/30(日) 18:40:49.43ID:KaWZiUxr極冷の刀尖は1スレ目のおまけコーナーで自分のスピンオフタイトルにつけてたわ
イメージ声優も元々想定してたんかな。はやみんのソレイユは真面目な感じと凛々しい感じがぴったりやね。ウッドマン若本だったから印象がらっと変わったw
イメージソングは思ったよりもライトな印象やな、MOSAIC.WAVやしな。歌詞のスケールはでかいけどな!
もう容量480KB超えそうやけど書きこんどくで!即死判定で主の書き込み前に死なせたらスマンな!ガハハ!
0277創る名無しに見る名無し
2016/10/31(月) 15:37:21.11ID:Vxz68t3OしかしこれDominusのお財布空っぽになりそうだな。まぁいっか
0278創る名無しに見る名無し
2016/10/31(月) 17:32:02.41ID:W4tkZwbl生マルス見られるかも
0279ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/31(月) 18:46:06.52ID:+CiCWd0D>>277
>ひゃっほぉおおお今日は徹夜で騒ぐぞおおい
ソレイユ「『錬金乙女エリクシアン』、無事完結しました!これも、応援して下さったDominusの――」
マルス「おい、ソレイユ!ンな堅ッ苦しい挨拶はいーンだよ!さっさと始めようぜ!」
ジュピテル「そーだよ、ボクもーおなかペコペコだし!」
ヴェヌス「では、乾杯致しましょうか。グラスの用意はよろしくて?」
メルキュール「それじゃ、作品完結を祝して……」
『かんぱ――――いっ!!!』
ジュピテル「ぃよぉ――――――っし!今日は徹夜で騒ぐぞ――――っ!!」
メルキュール「ジュピテル、あなたは明日も学校でしょ?ほどほどで休まなくちゃダメよ?」
ラ・テール「あたしも明日番組の収録があるから、早めに上がらなきゃ……うぐぐ……」
マルス「いや〜、それにしてもちゃんと終わらせられてよかったな!」
サテュルヌ「くぅ〜疲れました!」
マルス「それはやめろマジで」
メルキュール「ごめんなさいね、Dominus。急に押しかけて、しかもパーティーまで開いてもらって……」
ヴェヌス「住んでよいと言ったのも、パーティーを開くと言ったのもDominusですから、構いませんでしょう?」
ラ・テール「ここはDominusには死んでもらうしかないね!まーでも、こっちは大事な妹をあげるワケだから〜!」
ソレイユ「!?……ラ、ラ・テール姉さまっ!?」
ジュピテル「キャはハハハはハハはははははッ!Dominus!料理どんどん持ってこーいっ!」
>>265
>導入の「ちょっと怪しげな」正義の組織から興味を惹かれて、気づいたらここまで追ってしまったよ。
ヴェヌス「(仁義なき『錬金人類(エリクシアン)』ですかしら……)」
ソレイユ「Dominus、本当にお疲れさまでした。わたしたち姉妹も、Dominusと共に在ることができて。とても幸せでした」
ラ・テール「ビュトス機関、そんなに怪しかった?当初はホントに正義の機関のつもりだったんだけどねぇ」
ジュピテル「Dominusが怪しむから『んじゃ、実は黒幕ってことでいっか!』って。まー、正義で何するってアイデアもなかったし」
マルス「でも、改めて見直すと怪しいわな。いきなり人ンちに女送りつけてくるとか」
ソレイユ「受け取り拒否されなくてよかったです……」
>最後に出て来た錬金人類たちは記憶を共有した普通の人類(クローン)?
サテュルヌ「その辺りの想像は、Dominusにお任せしようと思う」
ジュピテル「ただまぁ、ぶっちゃけビュトス機関がなくなっても技術供与されてた国や組織はまだあるワケで」
ヴェヌス「人であれ『錬金人類(エリクシアン)』であれ、わたくしたちの需要はある……ということですわね」
ソレイユ「あのリムジンはどこの組織のものだったのでしょうか?」
マルス「わかんね。つか、ラストの〆なんだからそこはカッコつけたいだろ!」
ラ・テール「ライトバンとか軽トラに乗って、とかそういうのはちょっと……うん……」
>ちなみに今からスレ主を褒め殺すので異論のある人には申し訳ないんだが、
ソレイユ「ありがとうございます、Dominus。でも、それはやはり、わたしたちだけの力ではありません」
メルキュール「Dominusが、この物語に参加してくれた。窮地に陥ったソレイユを助けようと、知恵を絞ってくれた――」
マルス「それが一番大切なンだぜ。オレたちがいくら頑張ったって、Dominusが手助けしてくれなきゃ意味がねえ」
ヴェヌス「この物語は、Dominusあってこそ。完結したのは、参加してくれたすべてのDominusのお蔭なのですわ」
ラ・テール「Dominusが感想を言ってくれて。戦法や戦術を考えてくれたから。ストーリーも進められたんだし」
ジュピテル「流れによってはソレイユが死ぬ展開だってあったもんね〜」
マルス「最後死んだけどな」
ヴェヌス「あれは最初から決まっていたことでしたから、よいのです」
ソレイユ「本当に、すべてのDominusに深い感謝を――。ありがとうございます」
0280ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/31(月) 18:49:34.87ID:+CiCWd0D>悲しい終わり方じゃなくて心底ホッとしたよ!
ラ・テール「いやホント、よかったよかった!あたしもホッとしてるよ〜」
ヴェヌス「そうですわね。Dominusの反応によっては、ソレイユ(とわたくしたち)の復活は無しでしたから」
サテュルヌ「>>256の後、もしDominusが『ありがとう』や『今まで楽しかった』的なことを言ったら復活は無しであった」
ソレイユ「でも、Dominusは消えゆくわたしを引き留めてくれました。おいとまなんて言うな、還ってこい、消えないで、と」
メルキュール「まさかとは思っていたけれど。Dominusは見事、期待に応えてくれたわね」
ジュピテル「復活しなかったとしたら、どーゆーラストになってたの?」
ヴェヌス「Dominusが日常へ戻るのは変わりありませんが、もちろんわたくしたちは戻ってきません」
ラ・テール「日常の中で、Dominusがソレイユのことを想いうかべて終わり」
メルキュール「うっうっ……そうならなくて本当によかったわね……!お姉ちゃん嬉しい……!」
サテュルヌ「一の姉上、呑みすぎですぞ」
ソレイユ「ハッピーエンドを選んでくれたのは、他でもないDominusご自身です。さすがはわたしのDominusです!えへへ」
>>268
>さーて、ジュピテルを高級プリンで釣る作業に移るか……!
ジュピテル「プ!リ!ン!プ!リ!ン!商店街の『プティ・ドルチェ』の一日10個限定プリン〜!」
マルス「プリンなら、もう相当食ってるじゃねェか……」
ジュピテル「高級プリンは別腹だし〜。Dominus、よこせーっ!」
サテュルヌ「ソレイユのみならず、吾ら姉妹もDominusにたくさん愛して頂きましたな。まこと、有難きこと――」
メルキュール「以前Dominusに指摘された通り、この物語のコンセプトは○ックマンだったのだけれど……」
ヴェヌス「当初は本当に、単にデミウルゴスに鹵獲され敵になったという設定しかありませんでしたわね」
ラ・テール「でも、Dominusがメルお姉ちゃんのこと好きだって。甘えたいって言ってくれたから」
ソレイユ「姉さまたちのことも、ただの敵や障害といったもの以外にしようと考え直したんです」
ラ・テール「キャラ付けはみんな、あっさり決まってたかな。あたし以外は」
メルキュール「ラ・テールが最後というのは最初から決まっていたけど、どういう人物にするかは決まらなかったのよね」
ヴェヌス「黒いソレイユと決まったのは、最初の出番の直前でしたわ」
ソレイユ「トゥーレ協会での戦いまで、『磁力を操る』という設定も決まっていませんでしたし……」
マルス「じゃあ、核弾頭やグランMACを止めてたのはなんの能力のつもりだったんだよ?」
ラ・テール「重力とか、時間停止とか、あと現実改変とかも候補に入ってた」
ジュピテル「勝てるかっ!!」
>>269
>俺も感想書きたいな。
ソレイユ「本当に、今までありがとうございました。ここまで漕ぎ着けることができたのは、Dominusのお蔭です」
マルス「オレたちも面白かったぜ!毎度、Dominusがどうオレたちの無茶振りに応えるのかってな!」
ジュピテル「基本、こっちは打開策考えないで戦法はDominusに丸投げしてたからネー」
サテュルヌ「ゆえ、読み返すとソレイユは戦いのたび『Dominus、わたしはどうすれば……』ばかり言っておる」
ソレイユ「そっ、それは、そういうコンセプトなのですから仕方ないんですっ!」
メルキュール「でも、本当にDominusの戦法には大いにインスピレーションを刺激されたわね」
ラ・テール「そう来たか〜!ってゆー戦い方も一度や二度じゃなかったしね!特に真デウス!」
サテュルヌ「あれはこちらとしても『これどう倒すんだろう』と思っていましたからな」
ジュピテル「欲を言えば、もー少し真デウスとの戦いはじっくりやりたかったかな」
ソレイユ「容量が気になってしまって……」
>それと……おかえり
ソレイユ「あっ!……そ、そうでした。すっかり言いそびれてしまっていたんですが……。た、ただいま戻りました……」
ジュピテル「遅っ!おっそ!」
ラ・テール「まぁまぁ、いいじゃない!こうしてもう一度会えて、大団円なんだから!」
サテュルヌ「で、祝言はいつになるのか?」
ソレイユ「……しゅ……!?」
ヴェヌス「アメリカと日本を行ったり来たりするのは手間ですから、するなら早めにと言いたいですわね」
マルス「つーか、キスはしねーのかよ!こんだけ御膳立てしたのに!Dominusのヘタレ!童貞!」
ジュピテル「すごいぶっちゃけたーっ!?」
ソレイユ「マルス姉さま……ちょっとふたりきりでお話ししましょうか……」
マルス「ゴ……ゴメンなさい……」
0281ソレイユ ◆vTHUCgBFbw
2016/10/31(月) 18:52:00.74ID:+CiCWd0Dマルス「オウ!ありがとよ!……なンか、そう面と向かって言われると照れ臭いな……オレもオマエのこと好きだぜ!」
ジュピテル「え〜?ボクが二番目?マルスお姉ちゃんよりボクのほーがカワイーよ?」
ヴェヌス「性格もあなたの方がねじ曲がっておりましてよ」
メルキュール「先にも言ったけれど、ただの敵でしかなかったわたしたちをたくさん愛してくれたことに、深い感謝を――」
マルス「キャラが立ってるって感想は、最高の褒め言葉だな!」
サテュルヌ「吾は?吾は何番目なのか?」
ラ・テール「あ、あたしが三番目だよね?あたし救星主だし!あとサブヒロインだし!」
ジュピテル「とりあえずDominusがマゾだってゆーことは把握した」
>>278
マルス「クックックッ……最後の最後にこンなにラブコールを受けるたァな……。ぃよし!テメェも一緒に呑むかァ!」
ヴェヌス「珍獣を見に来た感覚で参加されるのかもしれませんわよ?」
ジュピテル「マルスお姉ちゃんはメスゴリラだからね」
マルス「誰がメスゴリラだゴルァァァァ!!!」
ラ・テール「(吼えてる……)」
メルキュール「無事完結したのは嬉しいけれど、これで終わりと思うと少し寂しい感じもするわね……くすん」
サテュルヌ「そうですな。しかし、物事には必ず終わりがあるもの。有終の美を飾れたこと、それに勝る喜びはありますまい」
ラ・テール「それに、物語は終わってもあたしたちは死ぬわけじゃないし。Dominusが覚えていてくれる限り不滅なんだ!」
ソレイユ「はい。わたしたちは、いつでも会える。Dominusが望めば、そのときにはまた――」
ジュピテル「続編?続編やる?」
マルス「ちょっと待て」
>>276
ソレイユ「前スレまで遡って確認してくださるなんて、さすがですDominus!」
サテュルヌ「本編が終われば、次はスピンオフと相場が決まっておる。吾の出番よな」
ジュピテル「ズルイズルイズルイーっ!ボクだってスピンオフしたーいっ!」
マルス「オレも!」
メルキュール「お、お姉ちゃんも……」
ソレイユ「イメージキャストの方は、お話を作りながら考えていました。ちなみに、わたしは終盤まで決まりませんでした……」
ラ・テール「ウッドマン父さんは……ホラ、「ぶるるぁぁぁぁ」って言わせたいじゃん?」
ヴェヌス「途端に最終決戦の緊張感が薄れましたわね……」
ラ・テール「さて。残り時間もそろそろ、なくなってきたね」
ヴェヌス「まだまだ、語りたいこと。話したいことはありますが、冗長になりすぎるのもいけませんわね」
マルス「ンじゃ……そろそろ、お開きにすっか!」
ジュピテル「ボク、まだ食べ足りないんだけど……」
ソレイユ「――では。これにて『錬金乙女エリクシアン』は終わりです。最後に、姉さまたちから一言を」
メルキュール「お付き合い頂きまして、ありがとうございます。Dominusの心に、わたしたちの物語が少しでも残りますように」
ヴェヌス「フ……。わたくしの美しさ、華麗さ、忘れずにいなさいな?」
ラ・テール「ホントに、ホントに楽しかったよ!みんな愛してるーっ!」
マルス「まだまだケンカし足りねェが、そりゃまた次の機会だな!面白かったぜ……あばよ!」
ジュピテル「たまにはボクたちのこと思い出してね……ってゆーのもベタだけど。まーいっか!バイバイ!」
サテュルヌ「……うむ。また会おう」
ソレイユ「もう一度、参加して下さったすべてのDominusにありがとうを。心からの愛を……」
『それじゃ、またいつか!黄金の夜明けの果てで――!!』
おしまい
0282創る名無しに見る名無し
2016/10/31(月) 18:54:03.32ID:n3M1HPgR0283マルス ◆vTHUCgBFbw
2016/10/31(月) 19:00:15.27ID:+CiCWd0DしょうがねぇなぁDominusは……。そらよっ!(ぎゅー
つーか、まだ書き込めンのか?二次会いっとくか?
0284創る名無しに見る名無し
2016/10/31(月) 19:39:27.36ID:Vxz68t3O本当に今までお疲れ様。楽しい毎日をありがとう。終わりだと思うと寂しいよ
またどこかで会えたら是非よろしく。言いたい言葉は沢山あるけど、言える内にこれだけでも言っておこう
0285創る名無しに見る名無し
2016/10/31(月) 19:44:40.35ID:W4tkZwblうおーーーーーーーーー!!!!俺にもぎゅーしてくれーーーー!!
0286創る名無しに見る名無し
2016/10/31(月) 20:15:08.15ID:sHuEpse/> ラ・テール「ビュトス機関、そんなに怪しかった?当初はホントに正義の機関のつもりだったんだけどねぇ」
現用兵器が通じない敵「デミウルゴス」が出現したタイミングで超科学力をもったビュトスの出現……これはマッチポンプに違いない!と思っていたンダ。
それから双方の強さの源泉が分からなかったから、もしかしたらデミウルゴスは未来からやってきた過去改変侵略者で、
ビュトスはそれを止めるためにやはり未来からやってきた存在なのかも、とも思った。
そういう想像の余地がわりかしあったので妄想したり書き込んだりするのが楽しかった。
それからメイザース->錬金人類、ウェストコット->機械化人類、ウッドマン->デミウルゴスだろうから、三つ巴になるのは既定路線だったと思っていた。
> ヴェヌス「そうですわね。Dominusの反応によっては、ソレイユ(とわたくしたち)の復活は無しでしたから」
お話的には超科学の遺産は全て消え去って、元の人類の世界に戻る……っていうのが悲しくもそうあるべきかな、とも思ったけど
わがまま言ったらなんとかなる雰囲気だったから、さよならを言うDominusはきっといなかったろうw
何よりソレイユが謳い上げてたのが愛だったし。愛のパワーで復活いけるやろ!みたいな。
> メルキュール「以前Dominusに指摘された通り、この物語のコンセプトは○ックマンだったのだけれど……」
マジだったか。でもおまけコーナーでキャラクタ作りこんでるのわかったからちょい役はもったいないと思ったよね。
メル姉さんね。最高ですよね。メル姉の母性に溺れたい。
> マルス「つーか、キスはしねーのかよ!こんだけ御膳立てしたのに!Dominusのヘタレ!童貞!」
その代わりソレイユがチュッチュマシーンと化したのでDominusは死んだ。満足げな顔で死んだのだ。
基本的にDominusxソレイユだけど、ジュピテルとヴェヌス以外はなんとなくDominus狙ってNTRありそうな予感がするゾ……。
薄い本 誰か 頼む
0287創る名無しに見る名無し
2016/10/31(月) 22:06:58.90ID:n3M1HPgRあ、ありがとうマル・・・(めきめきめき・・・昇天)
本当にお疲れさまでした、楽しかった。
スレ主はもちろんだけど、素晴らしいオーダーを出し続けてくれたDominusや絵師さんにも感謝です。
0288創る名無しに見る名無し
2016/11/01(火) 16:21:58.45ID:U7Zi1vhHメイザース「……。……!……」
ジュピテル「え?なんて?」
メルキュール「あり、ですって」
サテュルヌ「エリクシアン暴露大会第二幕〜クーポンあるんでドリンク一杯無料にしてください〜 11月2日放送予定である」
ソレイユ「Dominus!誰がチュッチュマシーンですかっ!?そんなこと言うDominusにはもうしませんからーっ!」
0290創る名無しに見る名無し
2016/11/01(火) 21:37:55.62ID:92Bd8MXB「錬金人類vs平凡人類 〜錬金人類が勝ちます〜 the movie」 coming soon....
同時上映「仁義なき大西タバコ店」
0291創る名無しに見る名無し
2016/11/02(水) 14:53:33.03ID:5znJDBXK・メネクやオリジン、アリシアって頑張れば助けることもできた?
…沢山質問したいが容量少ないし自重しないと
後はスレ主とソレイユ達とDominus、その世界に住まう全て人々の幸せを願ってお別れかな
今までありがとうございました
マルス「ウーッス、マルスッスー。金姉、焼き鳥アラカルトで頼ンじまうけどいーよな?」
ヴェヌス「味付けはタレで。……最美の閃光ヴェヌスでお送り致しますわ」
マルス「あ゛ァ?そこは塩だろ!」
ヴェヌス「いいえ、譲れませんわね。店員さん、全部タレで」
マルス「せめて半分塩にしろって!これだから覇権主義者はよーッ!」
ヴェヌス「この席は世界の縮図。後進国は世界の先導者たるアメリカの意向に従っていればよいのです」
マルス「ふがぎぎぎ……!テメェ!戦争か!」
メルキュール「はい、そこまで、せっかくひっそり二次会をするのですから、ふたりとも仲良くね?」
マルス「ちぇっ、しゃあねェな……」
ヴェヌス「了解致しましたわ」
メルキュール「では、メルキュールのエリクシアンおまけ講座最終回!始めま〜す☆」
>>284
マルス「つーワケで、打ち上げじゃ呑み足りねーってンでDominusの家の近所の鳥○族に来たワケだが」
ヴェヌス「お酒の呑めないソレイユとラ・テール、ジュピテルはお留守番ですわ」
メルキュール「サテュルヌは?」
ヴェヌス「アニメが観たいから外に出たくない、とのことでしたわ」
マルス「あっそ。まーともかく、Dominusもお疲れさン!もっかい乾杯しようぜ乾杯!ガハハハ!」
ヴェヌス「本当に、これで終わりと思うと後ろ髪を引かれる思いですわね。もっとシナリオを延長すればよかったでしょうか?」
メルキュール「それでは、Dominusに飽きられてしまったかもしれないし。ちょっと物足りないくらいでいいのよ」
マルス「Dominusのお蔭でハッピーエンドにもできたし、これ以上を望むモンじゃねェわな」
メルキュール「ええ、本当に。わたしたちも、もっともっとDominusといたいけれど――今は。ここで一区切りとしておきましょう」
マルス「つっても、なンかの間違いでいきなり続編とかやっちゃうかもしンねーケド」
ヴェヌス「え?」
マルス「戦いを終え、平和な日常へと戻った錬金人類たち。しかし、ある日ソレイユは突然正体不明の敵の襲撃を受ける」
マルス「自らを完全な錬金人類と言い放つ、新たな敵『ユラニュス』『ネプチューヌ』『プリュトン』の三人」
マルス「そして、三人の背後で暗躍する人類永続機関『ヌーヴェル・ビュトス』の影」
マルス「『錬金真人類(ル・ヴレ・エリクシアン)』三人の狙いは?世界は、人類の存亡は?」
マルス「ソレイユは新しい敵に打ち勝ち、愛の絆を護ることができるのか――?」
マルス「……的な?」
メルキュール「焼き鳥、全部串から外しちゃうわね?」
ヴェヌス「お姉さま、それは禁忌でしてよ。わたくしは串から食べますのでお気遣いなく」
マルス「人の話聞けやァ!!」
>>285
ヴェヌス「命知らずなDominusからの要望が来ておりますわよ」
マルス「ヘッヘッヘッ、なんだテメェもか?しょうがねェ、ハグしてやっからそこ立ちな!そォーらよッ!(ぎゅー)」
メルキュール「『ぎゅー』じゃなくて『ボキボキ』っていう音が聞こえてくるのだけど……」
ヴェヌス「『ハグ』というより『ベアハッグ』と言った方がいいような気がしますわね」
メルキュール「マルス、お店で騒ぎを起こしちゃダメよ?」
マルス「おっといけねェ、最後だからな!ちょいサービスしすぎちまったかな!ワハハ、まァご愛嬌っつーことで!」
ヴェヌス「残り少ないですが、512バイトまでしっかりやりましょう」
マルス「他にハグして欲しいヤツァいねーかァ!受けて立つぞォ!!」
メルキュール(ナマハゲかしら……)
>もしかしたらデミウルゴスは未来からやってきた過去改変侵略者で、
マルス「宇宙人案とかならあった。つか、始まった時点ではまったく設定決まってなかったからな、デミウルゴス」
ヴェヌス「なんとなくチェスの駒にしようと思ったら、Dominusがオポジット級やフィアンケット級などを造って下さって――」
メルキュール「あれで一気にデミウルゴスも敵として深みが出たような気がするわね☆」
マルス「『巨神』にはビビッたけどな」
ヴェヌス「チェスにない!大きい!何考えてるかわからない!どうしよう!?と暫く放置していたのですが……」
メルキュール「vsヴェヌス戦あたりで、そろそろ最終ボスを考えなくちゃって。大きくて強いのがいいなって思ったら……」
マルス「目の前にいた―――――!!!っつーことで、ラスボスになったワケだ」
>何よりソレイユが謳い上げてたのが愛だったし。愛のパワーで復活いけるやろ!みたいな。
ヴェヌス「それを汲んでくださっただけで、もうこちらとしては大成功!でしたわね」
マルス「まァ……振り返ってみるとシナリオはありきたりだし、ソレイユは青臭ェしでこっ恥ずかしいケド――」
メルキュール「でも、そういうお話が好きなので……。愛と勇気で困難に立ち向かい、最後にはハッピーエンド……と」
ヴェヌス「ハリウッド的でいいですわね。スリルとサスペンス、面白黒人、そして爆発!熱い口付け!」
マルス「爆発すりゃイイってモンじゃねーぞ。てか、Dominusはこれからが大変だからな?」
ヴェヌス「なんの話ですの?」
マルス「ソレイユ、超やきもち妬きだからな。Dominusがうっかり大好きじゃー!とか言うから、もうアイツすっかりその気だぜ?」
ヴェヌス「そういえば、完全に女房気取りでしたわね……。>>290みたいなノリで……」
メルキュール「Dominusをこの鳥○族に連れ出すときも、だいぶ揉めたものね」
マルス「まぁ、そりゃDominusの責任っつーことで。ソレイユのこと頼んだぜ!義弟よ!」
>ジュピテルとヴェヌス以外はなんとなくDominus狙ってNTRありそうな予感がするゾ……。
マルス「や、オレは別にそういうの興味ねェし?保育園でガキの相手に大わらわだってのに、その上Dominusの相手までできっかよ」
ヴェヌス「わたくしも、この身はアメリカと婚姻しているようなもの。Dominusと妹の邪魔はしませんわ?」
メルキュール「というか、ソレイユを敵に回すなんて恐ろしくて……ぶるぶる……」
ヴェヌス「精神的にお子さまなジュピテルには、その手の話はまだ早いでしょうし」
マルス「サテュルヌは面白がってDominusを誘惑したりしそうだな……。Dominusとソレイユをからかって遊びかねねェ」
ヴェヌス「ラ・テールはどうですの?」
メルキュール「あの子はDominusというか、ソレイユLOVEだから……」
マルス「あー……そっち方面なンだ……」
>>287
ヴェヌス「……泡を吹いていますわよ?」
マルス「そンなに喜んでもらえるたァ嬉しいぜ!オラッ、もういっちょ抱きしめてやっか?」
メルキュール「マルス、もうDominusのライフはゼロよ……」
ヴェヌス「Dominusたちには、こちらこそ本当に楽しい思いをさせて頂きましたわ。いくら感謝してもしきれませんわね」
メルキュール「わたしたちとオリジンのイラストは、本当に素敵だったわね。この場を借りてもう一度、ありがとうございます」
マルス「とりあえず壁紙にしてみた」
ヴェヌス「反省点としては、もっとシナリオにDominusの意向を反映させたかったですわね」
マルス「ンだなァ……。いいネタフリしてくれてたのを、シナリオの都合で省いたことも結構多かったし……」
ヴェヌス「それは次回の改善点としたいところですわね」
マルス「Dominusが楽しかったって。そう思ってくれたなら、オレたちも頑張った甲斐があったっつーモンだぜ!」
ヴェヌス「タイトルでネタバレしておりますわよっ!?」
マルス「パネェな……。つか、靴下くらい洗濯カゴに入れとけよ、Dominus……」
ヴェヌス「脱いだものを脱ぎ捨てっぱなしで、下着姿でうろついている貴方に言われたくないとDominusも思っているでしょう」
マルス「それが気持ちイインだからしょうがねーンだよ」
メルキュール「お洗濯に関しては妥協を許さないから……ソレイユは」
ヴェヌス「でも、最近はDominusの洗濯物のにおいを嗅ぐことはしておりませんわね?」
マルス「Dominus本人から直接嗅いでるからな」
ヴェヌス「……もはや、自分の欲求を隠さなくなりましたわね……あの子」
メルキュール「せめて、お姉ちゃんたちが近くにいるときは自重してもらいたいんだけど……」
マルス「ところで、オレとしては同時上映が気になるンだけど」
ヴェヌス「多くのライバルたちを押しのけて、大西たばこ店の――いやさ商店街のアイドル!お姉さまと仲良くなりたい!」
ヴェヌス「その為には、どんな手段さえ厭わない……これはお姉さまを巡る、大西たばこ店常連たちの血で血を洗う抗争の物語!」
ヴェヌス「全米が泣いた!ニコチン超バイオレンスアクション副流煙ラブロマンス『仁義なき大西タバコ店』!!』
マルス「レディースデーに観に行くわ」
>>291
マルス「続編は、さっき>>284でとりとめもなく考えてみたワケだが」
ヴェヌス「とりあえず、無いとは言わない……とだけ。Dominusのご要望があれば選択肢のひとつに、という感じですわね」
メルキュール「どちらにしても、わたしたちはしばらくはお休み、という感じかしら」
マルス「次回作の企画はある。オレらとは全然別の話だけどな」
ヴェヌス「どんなお話ですの?」
メルキュール「……………………よ、妖怪?とか?あと都市伝説とか……?」
ヴェヌス「ケン○ッキーフライドチキンでは、足が四本あるチキンを使っているとか。そういう話ですの?」
マルス「そうそう。ンで、次やるならこういうスタイルじゃなくて、普通のTRPGとして参加者を募れればいいなーって」
メルキュール「そのときは、また。Dominusと再会できるといいわね」
ヴェヌス「トゥーレ協会の『機械化人類(メカニゼイター)』については……どうでしたかしら?」
メルキュール「わたしたちの物語は、わたしたちとDominusたちの作る物語。そのルートも、もしかしたらあったかもしれないわね」
マルス「こっちとしては最初からああいう最期にするつもりだったけど、生存ルートもなくはなかった……かな」
ヴェヌス「それはもう、Dominusのやり方次第という話ですわね」
マルス「ただ、メネクはもう人間の身体を捨ててたし、アリシアと合体してたし。難しかったかもしンねーな」
メルキュール「そこはそれ、愛の力でなんとか……。オリジンにも、オリジンの愛があったのだし」
ヴェヌス「何れにせよ、ドクター・メネクが多くの人々の命を奪い、悪に染まりきっていたのは事実――」
マルス「その罪の償いは、例え生存ルートがあったとしても何らかの形でしなくちゃいけなかった、わな」
メルキュール「それでも、生きているなら。脳だけになったとしても、一緒にいられるなら……オリジンは幸せだったでしょうね」
マルス「ン……。頑張れば、助けることも『出来たかもしれない』っつーことで」
マルス「今回はここまでだけど、まだいけるか?」
ヴェヌス「では、できれば三次会へ続くということで」
メルキュール「お姉ちゃん、まだ呑んでるんだけど……」
マルス「とりあえずDominus、ここの勘定ヨロシクぅ!」
0295創る名無しに見る名無し
2016/11/03(木) 19:42:00.20ID:EnuAGfyA昔は良くやったよね
0296創る名無しに見る名無し
2016/11/03(木) 22:10:06.09ID:Es5oBnOV> メルキュール「あの子はDominusというか、ソレイユLOVEだから……」
キマシ?…って感じではなかったからなー。溺愛って感じかな、ニュアンス的には。
> マルス「Dominus本人から直接嗅いでるからな」
くわしく。衆人環視の元でhshsしてんのかソレイユは。
> マルス「次回作の企画はある。オレらとは全然別の話だけどな」
スレ主による別企画ってことかな。(一瞬「VSヌーヴェル・ビュトス」の話かと思った)
ちなみにこのスレッドのやり方(スレ主が進行して名無しがちゃちゃいれる)っていうのは気楽に参加できてよかったゾ。
進行の9割方がスレ主負担になるし、モチベ保つのも大変だったとは思うが。
というか読ませる書き方できて参加者が持ってくるフラグをバッサリ切ったり採用したり進行できる腕がないと続かんやろな。
どっちかってーと読者参加型SSみたいな感じか。そして一定のペースを保って進行させて完結させたのはやっぱりスゴイ。
マルス「最後最後って言っといて、ずいぶン喋っちまったなぁ」
ジュピテル「前回、抜け駆けで三人だけで喋るなんてずるーいっ!最後なんだからボクも出るからね!」
ラ・テール「あたしも!あたしだって喋りたいしっ!」
ソレイユ「……あの……姉さま方、わたしが主役なんですけど……」
サテュルヌ「主役の影が薄いというのは、この手の話ではごく普通のことである。諦めよソレイユ」
メルキュール「では、本当の本当に泣いても笑っても最終回!エリクシアンおまけ講座開催しま〜す☆」
>>295
サテュルヌ「そも、完走チャットとは何か」
マルス「オレら、なな板TRPGは今回が初めてだったから、昔のことはちょっとわかンねェンだよなァ。悪ィ」
ラ・テール「その名の通り、完結を記念してこういう所でチャットみたいにリアルタイム会話するってことじゃない?」
メルキュール「楽しそうだけれど、さすがにもう容量がないし……」
ジュピテル「次スレ立てよう」
マルス「待て」
>>296
>キマシ?…って感じではなかったからなー。溺愛って感じかな、ニュアンス的には。
ラ・テール「ソレイユはあたしの大切な大切な妹で、分身で、もうひとりのあたしだからね。愛してる!」
ヴェヌス「ラ・テールのソレイユに対する愛情はDominusも仰る通り、溺愛ですわね」
ジュピテル「恋人関係になりたいとか、えっちなことがしたいーって欲求はあんまりないみたいだねー」
メルキュール「色違いの自分のそっくりさんなのだし、そういう願望がないのは普通かもしれないわねえ……」
ヴェヌス「そんなことはなくってよ?わたくしはわたくしとそっくりな他人がいたら愛したいですわ?」
マルス「金姉はまぁ、そうだろうよ」
ラ・テール「あたしはソレイユに幸せになってほしい。ソレイユが幸せになるなら、あたしはなんだってするよ」
ソレイユ「ラ・テール姉さま……!感激です……!」
ラ・テール「だからソレイユ、もしDominusにDVとかされたらすぐ言うんだよ?あたしが叩きのめ……懲らしめるから!」
ソレイユ「あ……はい……」
メルキュール「というか、錬金人類にDVをする旧人類というのは……」
サテュルヌ「主殿の意思は地球人類の総意。であれば、主殿がソレイユにDVしたいと思えば、それが地球人類の意思!」
ジュピテル「地球人類の代表ってそーゆー意味だったの!?」
>くわしく。衆人環視の元でhshsしてんのかソレイユは。
マルス「ヤだなァ、そりゃDominusが一番よくわかってンじゃねェか」
ヴェヌス「というか、ソレイユは今もDominusの隣をキープしているではありませんか」
ソレイユ「もちろんです。わたしはDominusの守護者、いつも傍らにいるのが役目ですから!ね?Dominus!」
ジュピテル「仮にそうだとしても手を繋ぐ必要はないと思う」
ソレイユ「Dominusの身に万一のことがあったら大変ですから。決めたんです、Dominusの半径1メートル以内から離れないと!」
サテュルヌ「うむ、まあ、勝手にせよ……」
メルキュール「仲がいいのは、とってもいいことだし微笑ましいけれど……」
マルス「そーいや、どォよDominus?もうアレか、ヤることはヤッたンか?え?具合はどーだった?」
ジュピテル「出た。酔っ払いエロオヤジ」
サテュルヌ「それは吾も気になっていたところ。さて主殿、詳しく聞かせて頂こうか」
ラ・テール「壁一枚隔ててあたしたちがいるし、そんな機会ないんじゃあ……?」
ソレイユ「姉さまたち……あんまり卑猥なことを言って、Dominusを困らせると……わたし、怒りますよ?」
マルス「あ、スイマセン……」
ソレイユ「ともかく。Dominusのすぐそばで、Dominusのにおいを嗅いで日々が過ごせるなんて!これに勝る幸せはありません!」
ジュピテル「ホントににおいフェチなんだ……」
ソレイユ「姉さまたちだって、いいにおいを嗅げば気持ちも安らぎますよね?」
ヴェヌス「それはまあ……そうですが」
ソレイユ「あぁ……どうして洗剤や柔軟剤には「Dominusの香り」という種類がないんでしょう?あれば100年分購入するのに!」
マルス「やめろやめろォ!オレらの服までDominusのニオイになっちまうだろが!」
ジュピテル「そんなことになったらボク、もう学校行けない……」
ソレイユ「この世にDominusのにおいほど素敵なにおいはありません!姉さまたち、どうしてわかって下さらないのですか!?」
サテュルヌ「わかるかッ!」
ヴェヌス(アメリカに戻りたいですわ……)
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