先日書き込んだものは出来が悪かったので、新装版を投稿。


「顔を上げさせろ」

 命令に従い、兵士の一人が、レミールの髪を掴んで顔を上げさせる。隊長がうなずき、かたわらに立つ人物に問うた。

「朝田大使、この女ですか?」

「……ええ、間違いありません。かなりやつれてはいますが、この女です」

 祖国滅亡のショックで、抜け殻状態だったレミール。しかし突然、虚ろだった目に光が戻る。彼女は目を見張り、叫んだ。

「お前は! あの時の!」

「ああ、あの時のあの男だよ──どうだ? 蛮族と蔑んでいた相手に、惨敗した気分は? 祖国を滅ぼされた気分は?」

「きっ、貴様!」

「我々を蛮族と思い込み、我が国のことを知ろうともせず、軽率極まる判断をし、傲慢極まる、残虐極まる振る舞いをし、その結果すべてを失って破滅──。
 こんな愚かな話も、そうそう無いと思わないか? こんなみじめな運命も、そうは無いと思わないか?」

「き、貴様! こんなことをしていいと思っているのか! 蛮族である貴様らが、こんなことをしていいと思っているのか!」

「──ほう? 我々が蛮族なら、お前たちは何かな? その蛮族に為す術も無く敗れた、お前たちは何かな?」

「な──くっ!」

「負け惜しみは止めることだ。気づいていないとは言わさん。我が日本が、お前たちパーパルディアより、遙かに強大で、進んだ、優れた国だったことを。
 戦争になった時、パーパルディアの敗北は、すでに決まっていたことを。パーパルディアが我が国に勝つなど、そもそも最初から、不可能だったことを」

「──くうっ!」

「まったく、愚かな真似をしたものだよ──。そうは思わんかな?」

「ぐぐぐ……」

 歯噛みするレミール──しかし、無理矢理それを押し殺すと、呻くような声で問うた。