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自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第83章 [転載禁止]©5ch.net

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001創る名無しに見る名無し2015/07/05(日) 00:07:13.25ID:L4FaFm27
ハイテク兵器 vs 剣と魔法。
内容はガイドラインを参照。

・sage厳守。
・書きこむ前にリロードを。マナーとして。
・SS作者は投下前と投下後に開始・終了宣言を。分断防止のため。
・SS投下中の発言は控えてください。
・支援は50レスに1回。
・嵐、煽り、気に食わないコテは徹底放置。自然現象として脳内あぼーんしましょう。
・品性に欠けるレスはなるべく付けませんよう。
・気に食わないレスを、気に食わないコテハンまたは気に食わない人間のものと根拠無く認定するなかれ。
 ループ禁止。対策としての『萌え』などには書き手も読み手も極端な反応をしないこと。
 そんなことより海産物の話でもしよーぜ。
・以上を守らないものはぬるぽと見做し、鉄槌制裁( ・∀・)つ=■彡☆))`Д´)されます。

前スレ
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第82章
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1411893556/

保存庫
ttp://www26.atwiki.jp/jfsdf/
ttp://pixus.iinaa.net/jfs.htm

分家
ttp://jbbs.livedoor.jp/movie/4152/fjieitai.html 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0d11aca5c3e7934062b6d1e25bb7a9d7)
0002創る名無しに見る名無し2015/07/05(日) 00:08:10.30ID:L4FaFm27
2 :創る名無しに見る名無し:2014/12/19(金) 19:04:42.15 ID:9kS2DG7j新暫定ガイドライン
0. 現代科学であれ男塾理論であれ異次元科学であれ議論であれ、第一に置くべきははスレ住人が楽しいこと。住人が不快に思う事は避ける。
1. 投下してくれる作者は神。批評はいいが節度を持ってやること。
2. 「自衛隊がファンタジー世界に」とあるように、あくまで「現代の日本国自衛隊」が主に関わる話であること。
3. 自衛隊の組織・装備はあくまで現用もしくは近未来的に配備が予想されるものに限る。
  核兵器・旧東側諸国製兵器・未来兵器・巨大人型兵器など、現代の日本国が配備するにはナンセンスなものは極力避けること。
  現代科学と作中の設定で説明できる場合にはこの限りではない。
4. 軍事力の背景となる社会構造、政治・戦略・作戦・戦術・戦闘に関してはある程度しっかり設定しておくのが好ましい。
  作中の設定で説明できないものは避けること。
5. F世界側の設定は作者が勝手に決めることが出来るが、「超魔法・無敵キャラまんせー」な話にならぬよう気をつける。
  基本的には自衛隊・近代兵器マンセーの方が好まれる。
  また、オーバーテクノロジーの扱いは慎重に。
6. ファンタジー側の人間もきちんと描写する方が好ましい。
  自衛官主観という演出などであえて描写しないのはこの限りで無い。
7. 萌えだけ、エロだけ、グロだけを目的とした作品は、このスレ以外のしかるべき板やスレに書き込むこと。
8. スレ外の該当作品にかんする批評などの雑談は、ほどほどに。
9. 次スレは>>980か480KBを踏んだ方が立ててください。
10.投稿された作品は、まとめサイトに転送する場合、作者の許可なく誤字の修正や改変はしてはいけない
0003創る名無しに見る名無し2015/07/05(日) 00:08:44.23ID:L4FaFm27
3 :UNNAMED 360:2014/12/19(金) 19:05:08.60 ID:9kS2DG7j■今までこのスレで討議された議題

・ファンタジー世界の市場規模についての考察
・麻薬による世界支配は許されるか
・江戸時代とファンタジー世界の類似性について
・大陸国家VS海洋国家戦略、その長短について
・マッチとメラ、着火手段としてどちらが優れているか
・F世界での日本経済再生と交易について
・ドラゴン…契約方法と空軍戦力としての有効性を考える
・自衛隊的ダンジョン攻略法
・対人地雷と魔法の罠。
・F世界における神の影響力について。
・F世界的陣地攻略法
・熊に見るモンスターの手強さ
・巨大昆虫対策〜界面活性剤から核弾頭まで
・決闘における非致死性制圧法(殺さずにいたぶる百の方法)
・F世界の街道、交通路における運搬手段が道に与える負担うんぬん
・銃弾を受け付けない素材を武具の材料に用いれるか
・マクロ経済を考慮すべきか
・後世の倫理や常識/後知恵で過去を断罪しても赦されるか
0004創る名無しに見る名無し2015/07/05(日) 00:09:45.38ID:L4FaFm27
■さんざんガイシュツの話題
・シーレーン確保における脅威の排除(海賊、海の怪物対策)
・日本が傭兵を雇用することは可能か?
・萌えは是か否か。
・議論は是か否か。
・魔法・怪物の設定(最終的には作者に一存という結論)
・補給が断たれた場合、弾薬を何とか確保可能か?不可能な場合はどうなるか?
・球形以外の世界。
・食糧対策・餓死者の局限−魔物を喰らうモノ−
・在日外国人・異世界住人対策。政治思想の殴り合いは勘弁
・資源・エネルギー問題。
・外交方針について。
・人間と亜人の共生について。

ガイシュツだが、再考察とかは特に禁止されてない
SFは禁止だと言うことです
0005創る名無しに見る名無し2015/07/05(日) 00:10:44.54ID:L4FaFm27
5 :UNNAMED 360:2014/12/19(金) 19:08:09.49 ID:9kS2DG7j関連サイト
「帝國召喚」(作:くろべえ/分家皇軍スレ)
ttp://www.geocities.jp/wrb429kmf065/index.html

「輸送戦記」(作:Call50/本家)
ttp://homepage2.nifty.com/Call50/

分家まとめサイト
ttp://www.geocities.jp/wimsigma/

SSの書き方
ttp://www6.plala.or.jp/Action/taidan01.html
ttp://www6.plala.or.jp/Action/taidan02.html
0006創る名無しに見る名無し2015/07/05(日) 00:11:34.93ID:L4FaFm27
過去スレ
創作発表板
82 ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1411893556/
81 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1407067096/
80 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1402473421/
79 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1396284516/
78 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1387140159/
77 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1382513049/
76 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1373291272/
75 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1361022572/
74 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1351193900/
72 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1344911105/
72 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1337702041/
71 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1326519134/
70 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1318261509/
69 ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280728791/
68 ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1261921219/
67 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1254132077/
66 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1247917732/
65 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1242886494/
64 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1235983300/
63 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220184382/
軍事板
63 ttp://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/army/1220300122/
62 ttp://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1214912385/
61 ttp://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1210853200/
60 ttp://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1206945872/
59 ttp://hobby10.2ch.net/test/read.cgi/army/1200068856/
58 ttp://hobby10.2ch.net/test/read.cgi/army/1187502563/
57 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1181167154/
56 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1177836560/
55 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1173715591/
54 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1171625885/
53 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1170750554/
52 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1166436294/
51 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1163066160/
50 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1161084208/
49 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1160188326/
48 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1157263954/
47 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1153579549/
46 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1149155655/
45 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1145708454/
44 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1141803533/
43 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1138537013/

42以前は保存庫参照
0007石動 ◆Ir0KQby7irVk 2015/07/05(日) 05:55:10.62ID:6iBhUO1/
おはようございます。
こちらが85ということで、投下させていただこうと思います。
0008石動 ◆Ir0KQby7irVk 2015/07/05(日) 05:56:04.55ID:6iBhUO1/
第2部 第5話

ルルェド南方約60キロ付近 マワーレド川
2013年 2月14日 21時05分


 
 密林の夜は思いの外賑やかだ。
 川面を風が吹き抜ける度に、生い茂った木々がざわざわと音を立て、夜行性の名も知れぬ鳥や獣が多彩な鳴き声をあげる。水面は静謐さを保っているが、ごくたまに巨大なナマズが跳ねて盛大な水音を立てた。
 この夜は、普段よりもう少し騒がしい夜だった。低い唸り声のような響きが、マワーレド川の水面を震わせている。

「嚮導1号、面舵。針路015度」
 船団の先頭を行く特別機動船1号がマワーレド川の流れに合わせて舵を取った。
 5.56ミリ機関銃を銃架に据え付け、海自陸警隊が周囲を警戒する特別機動船を先頭に、第1河川舟艇隊の各船艇は厳格な灯火管制を維持している。操舵室から見えるのは、光度を極限まで絞った船尾灯のおぼろげな光だけだ。

「おもーかぁーじ、015度宜候」
「宜候015度」

 船長の声量を抑えた号令が狭いブリッジに響く。微光暗視眼鏡JGVSーV3を装着した操舵員が慎重に舵を切った。
 流木や浅瀬が多いマワーレド川、しかも雑多な船の寄せ集めで夜間航行に踏み切り、今のところ大きな問題が無いというのは、高い練度だけで成し得た成功ではない。
 少なくとも暗視能力の確保について、第1河川舟艇隊指揮官は最大限の装備を確保しようと努力し、それはある程度の成果を得ていた。



 船団左後方。曳船に曳航されるカッターの一艇には、ブンガ・マス・リマ水軍刀兵たちが乗り込んでいる。軽量で動き易い革鎧を着込み、片刃のカトラスを携えて真っ先に敵陣に斬り込んで行く勇敢な兵たちだ。
 よく見るとその中に、毛色の違う兵士が混ざっていた。

「痛めたのは、ここかい?」
 西部方面普通科連隊第1中隊第1小隊に配置された衛生員の百武賢司(ひゃくたけ・けんじ)二等陸曹は、目の前にあぐらをかいた刀兵の右腕を持ち上げ、皮膚を少し押してみた。
「そこ。棍棒で殴られた。帝國の手下如きに不覚」
 彼女──ニノという名前だった──毛むくじゃらの腕は少々腫れているようだ。おそらく骨は折れていない。打撲だろう。百武二曹はそう見積もった。
 百武の意識は怪我よりも目の前の刀兵そのものに向いていた。いかにもすばしっこそうな体躯を持つその兵士は、今まで百武が見てきたどんな人種にも似ていない。背は高くないが、肩周りや太ももの筋肉は盛り上がり、兵士としての実力を想像させた。
 そして、その顔。人と猫科の肉食獣を合わせたような姿。
0009石動 ◆Ir0KQby7irVk 2015/07/05(日) 05:57:17.54ID:6iBhUO1/
 彼女は『獣人』と呼ばれる人種である。多くが人語を解し、文明的な生活を送っているが、その肉体は人族と大きく異なっている。
 元となる動物は哺乳類に限らず、猫・虎・狼・兎・魚類・蜥蜴など多岐にわたる。ただし、サハギンやミノタウロス、オークなどは言語や思考形態が人族とあまりに異なるため『妖魔』として扱われることがほとんどである。
 じゃあ具体的にどの種族がどうか、と言えば、この辺りの匙加減、マルノーヴ世界はなかなかにいいかげんなのだ。
 つまり、マルノーヴ世界において彼らの扱いは様々で『話が通じれば誰でもお客さん』という感覚の南瞑同盟会議から、『見つけ次第〈悪しきもの〉として殲滅』という宗教国家まで、対応はバラバラであった。ちなみに〈帝國〉領内では、濃淡はあれど一様に扱いは悪い。

 彼らは全身または腕や足、顔などが体毛や鱗に覆われていることが多い。形質上の差異はそのまま身体能力の差異に通じ、大方の種族で人族より尖った能力を持つ。膂力や俊敏さ、耐久力の高さなど、その種族に応じた強点だ。
 ブンガ・マス・リマ市自警軍や水軍は、彼らの身体的特徴に着目し、積極的に兵士として採用していた。
 今回、ルルェド救援作戦『サンダー』に送り込まれてきたのは、そんな獣人兵を多く含む水軍刀兵400名余である。真面目に戦える戦力として十分当てになる部隊であったが、その裏にはブンガ・マス・リマが決して一枚岩ではないことも透けて見えた。 
 

 先の防衛戦で人的・物的両面で手酷い打撃を受けたブンガ・マス・リマは、独力での対〈帝國〉戦争の遂行は不可能な情勢下にある。
 そうなると、どこかの勢力を頼るか、和議を求めるかという話になるが、〈帝國〉南方征討領軍に程々で戦をおさめる気が全くない現状では和議イコール無条件降伏による南瞑同盟会議の滅亡でしかない。

 ならばどこを頼るか。

 この点で、ブンガ・マス・リマ市参事会は大きく二つに別れた。
 一つはアラム・マルノーヴの常識を遙かに超えた異界の国家〈ニホン〉の助力を得てこの戦争を戦い抜こうとする一派──これにはカサード提督率いる水軍やリユセ樹冠国、ロンゴ・ロンゴ参事を中心とする参事の三割が賛同している。
 一方、保守的な参事を中心とする五割は、旧くからの友邦であり同盟会議のメンバーでもあるザハーラ諸王国バールクーク王国軍に主導権を与えるべしと主張していた。
 ちなみに残りの二割と議長たるマーイ・ソークーン、ギルド長ヘクター・アシュクロフトは中立を保っている。

 両派は、ルルェド失陥の危機と〈帝國〉南方征討領軍主力の出現という現状に対して、異なる作戦方針を主張した。

 〈ニホン〉派は、ルルェド失陥は諸勢力離反による同盟会議の崩壊を招きかねないという認識のもと、速やかな救援を第一と考えていた。そのためには自衛隊が主導権を握り作戦を遂行すべきとしている。
 背景には自衛隊の圧倒的な戦闘能力への信頼がある。マルノーヴ世界と隔絶した力を目の当たりにした彼らは、日本との協力こそが最重要だと考えたのだった。


 一方、保守派は〈門〉を超えてきた異邦人である日本国をそこまで信頼すべきか、という疑問を呈した。余りに圧倒的かつ未知の戦力を持つ自衛隊を警戒する声は意外に多い。加えて、〈門〉のみで本国と繋がる自衛隊が果たして何時まで共に戦えるのか、という現実があった。
 戦後のことを考えれば、いずれ帰ってしまう自衛隊より、影響力を維持し続けるではずのザハーラ諸王国と誼を通じるべきだ。彼らはそう考えていたのだった。
 戦力に関して言えば、三万余の大兵力を有するバールクーク王国遠征軍の姿は、彼らの目に〈帝國〉南方征討領軍主力に十分対抗できるものとして映っていた。
 ルルェド救援はもはや手遅れだ。ならばバールクーク王国遠征軍を主力とした戦力による、〈帝國〉南方征討領軍撃滅に全力を傾注し、しかる後に各地を奪還すれば良い。


 両派はこのような認識の元、作戦投入兵力について綱引きを行った。もとより、ブンガ・マス・リマ市の持つ兵力は一度壊滅していため、切ることのできる手札は限られている。
 『サンダー』作戦に投入された水軍刀兵400名は、両派の討議と妥協の着地点であった。
0010石動 ◆Ir0KQby7irVk 2015/07/05(日) 06:04:02.32ID:6iBhUO1/
 〈ニホン〉派にとっては自派における最大勢力である水軍の陸戦部隊主力であり、ルルェド救援に全力を尽くすという意志の現れである。

 一方、保守派にとってみればルルェドはすでに喪われている。遙か200キロ北方のルルェドを包囲する一万の〈帝國〉軍に、わずか数百の兵力で解囲を試みるなど無謀の極みだ、と呆れてすらいた。
 兵力はバールクーク王国遠征軍に集中すべきだが、〈ニホン〉派の水軍刀兵が無理な作戦で消耗するのならば、戦後の政治的には自派に有利に働くだろう。
 そうした計算から、保守派も表立って反対することはなかった。
 
 日本国政府と自衛隊としては、ここで南瞑同盟会議に崩壊してもらう訳にはいかない。自衛隊単独で異世界における遠征作戦を行うなど冗談ではなかった。
 幸い、政治的妥協から差し出された水軍刀兵隊は、現在の第1河川舟艇隊で輸送可能、かつ戦力として計算できる部隊だった。




「この腕じゃ湿布は無理か……」
 湿布を貼ろうにも毛が邪魔をして皮膚に薬剤を浸透させられそうにない。百武は赤いフィルター付きライトの明かりを頼りにザックから消炎スプレーを取り出した。
 カラカラと音を立てスプレーを振ってから、刀兵の腕に噴霧する。
「冷やっこい!」
 刀兵が五センチほど飛び上がった。コシの強い毛の間からぴょこんと飛び出た、やはり毛むくじゃらの耳がひくひくと動く。
 へぇ、やっぱり動くのか。本物なんだなぁ。
 百武は妙なところに感心した。
「薬液を吹き付けたんだ。冷やして安静にしていれば大事は無いだろうけど」
 彼女は安静にする気など無いだろう。あと数時間もすれば真っ先に敵兵に突っ込んで行く。水軍刀兵という連中は、皆むやみやたらと勇敢だった。
 島嶼防衛の切り札として連日過酷な訓練を積み重ね、隊員の七割がレンジャー資格を持つとされる西部方面普通科連隊に所属し、猛者の類は自身を含めて飽きるほど見てきた百武だが、その彼ですら呆れるほどの戦意の高さだった。


「じっとしてる? 冗談」
 ニノは人より遥かに大きな猫目を丸くして言った。どうもきょとんとしているようだ。百武に支給された『通詞の指輪』はどうも高級品らしく、相手のニュアンスまで何となく分かった。
「痛みが引いたみたい。謝す。お前は良い薬師だ。これで戦える」
 彼女はそう言って鋭い牙をちらりと見せた。百武の背筋にぞくりと寒気が走った。美しい、そう感じたのかもしれない。昼間見た彼女の毛並みは艶やかなサバトラだったことを思い出した。



 突然、百武の乗るカッターを曳航していた曳船のエンジン音が小さくなった。行き足が弱まる。周囲の船艇の船尾灯が明滅している。
 何が起きたかな? 百武は辺りを見渡した。カッター内の刀兵たちも事態に気付いたようだ。
「敵だ」ニノがぼそりと言った。百武が振り返ると、大きな瞳を爛々と光らせた彼女が前方を見ていた。
「どこにいる?」
「あっち」
 百武の問いにニノが前方を指差した。百武は鉄帽の上に跳ね上げてあったJGVSーV8個人用暗視装置のモノキュラーを下ろし、目を凝らした。よくわからない。
「見えないよ」
「この先に帝國兵がいる。こっちには気付いてない」
 そうこうしているうちに、左側を航行していた特別機動船が陸岸に近付き、搭乗していたレンジャー分隊と数人の獣人兵が密林に消えていった。
「あたしも行きたい」
 ニノはうずうずしていた。
 
 暫くして散発的な銃声が聞こえ、すぐに止んだ。密林の音に紛れ意外に目立たない。船団前方で赤外線ストロボが明滅し、それを受けて船団がまたエンジンを始動する。どうやら敵監視哨の排除に成功したようだ。

「お前たち、面白い戦士だね。か弱いのに勇敢だ。これっぽっちでルルェドを助けに行く」
「か弱いかなぁ」百武は苦笑いを浮かべるしかない。バラモン部隊も彼女にかかっては形無しだ。
「夜目利かない。足も遅い。身体か弱い。でも弱くはないか。良い業を持っている」
「まぁ俺からすれば君たちの方が面白いよ」

 お互いに笑って、ふと空を見た。
 日本ではどんな山奥でも見たことのない星空が、満天に輝いていた。
0011石動 ◆Ir0KQby7irVk 2015/07/05(日) 06:06:22.44ID:6iBhUO1/
ジャボール兵団本営 ルルェド
2013年 2月14日 22時47分


「南方で同盟会議軍に動きが見られます」
 獣脂の燃える臭いが漂う天幕内に集まった諸将に対し、参謀魔導士が報告した。
「ルルェド南方四十里(約160キロ)付近の監視哨のいくつかが連絡を断ちました。その他にも混乱が見られます」
「リザードマンどもはどうした? あ奴らが川を封鎖しておるのではなかったか」
「石竜兵とも連絡が取れぬ状況です。南瞑同盟会議軍と交戦し敗れた恐れがあります」

「敵もようやく動いたか。だが、遅いわ」
 主将のゾラータが笑った。諸将や参謀たちも追笑する。
「同盟会議軍が進発していたとして、ルルェドに姿を現すまでに5日はかかりましょう。ルルェドをそれまでに陥落させれば、行軍で疲弊した敵軍を迎え撃ち叩き潰すことも容易いかと」
「うむ。わざわざ皆の手柄になりに来よるわい」
 実際のところ〈帝國〉軍内の情報伝達速度の限界により、ようやく昼に発生した損害が報告されたに過ぎず、すでに第1河川舟艇隊は南40キロ地点に到達しているのだが、今のところ彼らがそれを知る術はない。

「夜襲の手配りは」
 副将シリブローが尋ねると、小柄で陰気な印象を滲ませる男が進み出た。外見通りのボソボソとした、しかし自信に満ちた口調で報告する。
「選抜猟兵挺身隊、いつでも鞍上に」
「飛行騎兵隊、下知が下れば直ちに空に上がりましょう」
「諸隊、手抜かりなく」
 最初に報告した選抜猟兵隊長グラゴレフに続き、ジャボール兵団の諸将が口々に準備の完了を告げる。

「陣触れを出せ。今夜中にあの小生意気な城塞を落とす。新たな戦を我らジャボール兵団が満天下に示すのだ!」






以上です。ゲートアニメ早く見ないとなぁ。
しばらくはなろうと平行して投下したいと思います。
御意見御質問御感想お待ちしております。

>>1
スレ立て乙でした。
0012創る名無しに見る名無し2015/07/05(日) 09:39:27.84ID:44Vt8T8U
スレ立て&投下乙です
>水面は静謐さを保っているが、ごくたまに巨大なナマズが跳ねて盛大な水音を立てた。
こういう描写が好きですね。

今後を見据えた諸王国派にも一理あるのがいい。
なべての小説だと、日本に冷淡な勢力はいいとこなしな描写をされるので。
しかし、残り2割は何の解決にもなっていませんね。意見保留をしている局面ではない。
0013創る名無しに見る名無し2015/07/05(日) 13:53:16.98ID:FDm1bYEf
投下乙です

冷静な政治的駆け引きが描かれているところが良いです。


アニメ版はグロカットしすぎな印象がありました。
0014創る名無しに見る名無し2015/07/05(日) 19:04:54.67ID:SBWj7Cvf
投下乙です
果たして自衛隊は間に合うのか!?
0015創る名無しに見る名無し2015/07/05(日) 21:08:38.27ID:GBQCx/sq
>>1乙、そして石動氏投下乙
マルノーヴの獣人さんはかなり毛深いのか…体を洗う時は結構大変そうだ
シャンプーをプレゼントしたら喜んでくれるかな?
0016創る名無しに見る名無し2015/07/06(月) 00:35:02.81ID:4ifkailS
ttp://www1.axfc.net/u/3432624
ttp://www1.axfc.net/uploader/so/3497654

テキストファイルですまんけど前スレ分のリレー小説もあげといたよ
よかったらどうぞー
0017創る名無しに見る名無し2015/07/06(月) 18:16:31.89ID:A6siT3rc
島戦争だが、ネスラスらはグナドス人から訓練を受けたんだな
ニホン製の銃火器や防弾チョッキもグナドス経由で流れたんだろうな

地球世界で例えればパキスタンとかインドネシアとかそんな感じの国か
0018創る名無しに見る名無し2015/07/06(月) 20:14:15.06ID:R7535v0X
>>1
前スレ
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第83章 [転載禁止]©2ch.net
ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1418983451/

>>950から>>980辺りになると思うが次スレを建てる人は第85章で頼む
0019創る名無しに見る名無し2015/07/06(月) 21:32:23.82ID:2keQi22V
>>1
何度目だよコレ、3回目か?何スレ分ずらせば気が済むんだ
頼むから投稿する前にタイトルだけでも確認してくれよ、メモ帳に書いてコピーでも良いだろ、間違えようもないだろ
前々スレッドからの反省がまるで無い
0020創る名無しに見る名無し2015/07/06(月) 23:34:31.17ID:2keQi22V
>>18
ちげーよアホ、ここが85章だ 目の前の箱弄れるなら数字位読めるだろ
次が86章だ

>>1のは、唯でさえずれた84章の文章を丸々コピーしたものだからリンクも82章止まりだ
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1411893556/
82章
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1418978357/
83章
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1418983451/
84章

それともいっその事、ずれるのを慣習にしちまうかw?続けてりゃルールになるからな
0021創る名無しに見る名無し2015/07/07(火) 01:51:00.92ID:INC2SMu4
>>20
そんなイライラせず落ち着け
0022創る名無しに見る名無し2015/07/07(火) 05:11:18.07ID:QCJppuas
そもそもこのスレ980でもない奴が勝手に立ててただろうが
ずれてるとか文句言われてもしったこっちゃないわ
0023創る名無しに見る名無し2015/07/07(火) 07:50:07.14ID:5DHQTJru
自分では何もしないくせに文句だけは一人前
0024創る名無しに見る名無し2015/07/07(火) 20:22:16.57ID:VJ2RPgTu
>>19 >>20
いや、すまんこ、わざとじゃないんだ、悪気も無いよ、間違えたのは悪かった。
だから、罵声浴びせないでくれ地味に傷つく

>>22
あー・・・それね、980で誘導しようと思ったんだけど、連投規制されちゃって誘導できなかったのね。
これも悪かった、ごめんよ
0025創る名無しに見る名無し2015/07/07(火) 20:24:57.01ID:VJ2RPgTu
過去スレ
創作発表板
84 ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1418983451/
83 ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1418978357/
82 ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1411893556/
81 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1407067096/
80 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1402473421/
79 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1396284516/
78 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1387140159/
77 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1382513049/
76 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1373291272/
75 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1361022572/
74 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1351193900/
72 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1344911105/
72 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1337702041/
71 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1326519134/
70 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1318261509/
69 ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280728791/
68 ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1261921219/
67 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1254132077/
66 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1247917732/
65 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1242886494/
64 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1235983300/
63 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220184382/
軍事板
63 ttp://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/army/1220300122/
62 ttp://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1214912385/
61 ttp://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1210853200/
60 ttp://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1206945872/
59 ttp://hobby10.2ch.net/test/read.cgi/army/1200068856/
58 ttp://hobby10.2ch.net/test/read.cgi/army/1187502563/
57 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1181167154/
56 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1177836560/
55 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1173715591/
54 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1171625885/
53 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1170750554/
52 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1166436294/
51 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1163066160/
50 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1161084208/
49 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1160188326/
48 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1157263954/
47 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1153579549/
46 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1149155655/
45 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1145708454/
44 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1141803533/
43 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1138537013/

42以前は保存庫参照


じゃ、>>20を参考にテンプレ更新したよ、次の人こっちをコピペ頼むねー
0026創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 01:53:09.63ID:yqETqTf1
>>25
ごめん。あなたに問題はないです。

過去スレ
創作発表板
84 ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1418983451/
83 ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1418978357/
82 ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1411893556/
81 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1407067096/
80 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1402473421/
79 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1396284516/
78 ttp://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1387140159/
77 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1382513049/
76 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1373291272/
75 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1361022572/
74 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1351193900/
72 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1344911105/
72 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1337702041/
71 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1326519134/
70 ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1318261509/
69 ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280728791/
68 ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1261921219/
67 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1254132077/
66 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1247917732/
65 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1242886494/
64 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1235983300/
63 ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220184382/
軍事板
63 ttp://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/army/1220300122/
62 ttp://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1214912385/
61 ttp://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1210853200/
60 ttp://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1206945872/
59 ttp://hobby10.2ch.net/test/read.cgi/army/1200068856/
58 ttp://hobby10.2ch.net/test/read.cgi/army/1187502563/
57 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1181167154/
56 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1177836560/
55 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1173715591/
54 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1171625885/
53 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1170750554/
52 ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1166436294/
51 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1163066160/
50 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1161084208/
49 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1160188326/
48 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1157263954/
47 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1153579549/
46 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1149155655/
45 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1145708454/
44 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1141803533/
43 ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1138537013/

42以前は保存庫参照
0027創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 01:56:34.19ID:yqETqTf1
他で改行が多いってはじかれるのに、ここでは出来きるとは不思議だ
レス汚ししました。責任とって一年ロムります
0028創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 21:34:26.25ID:kHAmHISY
あくまで近代軍とファンタジー世界が関ればいいんだよね?
自衛隊オンリーじゃなくて
0029創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 21:47:07.36ID:jOLFoflc
>>28
残念ながら……
2. 「自衛隊がファンタジー世界に」とあるように、あくまで「現代の日本国自衛隊」が主に関わる話であること。

まあ何分過疎スレなんで一端投下してみて反応をうかがってみてもいいかもしれない
0030創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 21:51:45.13ID:6+6j0GFF
自衛隊以外の軍がメインの話を書きたいのなら>>1にある分家のほうがいいんじゃないの?
まあ向こうはここ以上に過疎ってるんだが
0031創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 22:05:10.98ID:kHAmHISY
そうなのか…
アメリカ軍とかあったしいいかなと思ってた
0032創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 22:27:54.21ID:E6shXTWv
米軍モノなら米軍スレが、帝国陸海軍モノなら皇軍スレとそれぞれ専用スレあるしな。
0033創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 22:35:55.40ID:6+6j0GFF
>>31
自衛隊主役で脇役として米軍、っていうパターンならまだセーフなんだけど
米軍主役で自衛隊の出番なし、みたいなのはさすがにね

ところでリレー小説投下しようと思うんだけど、いいかな?
0034創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 22:41:47.63ID:Re3rUaoe
いいかな?とかウザいから止めて
確認とか不要だから
0035創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 22:43:49.47ID:FLKsu+RG
バッチこーい
0036創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 22:44:26.96ID:6+6j0GFF
それでは投下します


ゲート近海
この世界と地球とをつなぐゲート、そこからかなり離れた海上に4隻の帆船がゆるやかなうねりに乗って漂泊していた。
どの船も3本のマストを備えており、その大きさは地球における18〜19世紀のフリゲイトにほぼ等しい。その船尾には
ガルリア帝国旗をアレンジした軍艦旗が掲げられている。
そして戦列の先頭に立つひときわ大きい帆走軍艦、軍艦旗と共に提督旗を掲げるその艦の艦長室ではこの戦隊の指揮をとる提督とその副官、
そして各艦の艦長による会議が行われていた。

「―――。以上です」

副官が手にした十数枚の羊皮紙――先ほど至急便のワイバーンが空中投下した文書――の内容を読み終わると、
それまで沈黙を守っていた4人の艦長たちが喋り出す。皆赤銅色に日焼けしており、そのしぐさの端々からは
ベテランの船乗りであることが伺われた。

「上も無茶を言う、もしもの時は機獣を用いず機獣を仕留めるような連中の艦隊を相手にしろ、とは……」
「魔法の手助けがあるとはいえこちらは風まかせ、一方相手は自由自在に動きまわり、遠方から正確な攻撃を仕掛けてくる。4対1でも勝ち目はないぞ」
「敵である勢力の情報を一部なりとも掴めたことは喜ばしいことなのでしょうが、これを部下に知らせるのはさすがに……はぁ」
「ううむ……」

副官が読み上げた文書の内容、それはガルリア帝国がニホンの外交団とのこれまでのやりとりで入手したニホンの海軍についての情報だった。
彼の国は島国であり、それゆえ海軍にはことのほか力を入れている。過去には大海戦を何度も行い、劇的な勝利をおさめたことも幾度かある。
その海軍は50隻を越える軍船を保有し、そのほぼ全てが鉄船、中には極めて巨大なものもある。さらにヒコウキ――
こちらのワイバーンなどに相当する航空戦力――を有し、海と空から攻撃を行うこともできる。
攻撃に用いられる武器は水平線のはるか向こうの敵を狙い撃てるほど射程が長く、狙いを外すことはまずない。
文書にはこれ以外にも様々な情報が綴られてはいたが、そのいずれもがニホンの海軍が恐るべき敵であることを物語っていた。

4人の艦長、ある者は腕組みをして黙りこみ、またある者は俯いて磨き上げられたテーブルの天板を見つめている。
皆文書の内容に驚き、少なからず混乱していた。だが疑問を呈する者はいない。誰もが情報収集活動の重要さを知り、その難しさを
程度の差こそあれ理解しているからだ。
そしてこの一見荒唐無稽な情報が実際は専門家による絶え間ない取捨選択と裏取りの成果であることを誰もが承知していた。
狭い室内に船材の軋む音と波の音、そして甲板で作業をする士官や水兵たちの声が響く中、沈黙を破ったのはこの戦隊を指揮する提督だった。
その顔は艦長たち以上に日焼けし、髪には白いものが目立つ。
0037創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 22:45:10.81ID:6+6j0GFF
「確かにニホンの海軍は恐るべき存在ではある、だが同時に我ら同様人間の集まりだ。不眠不休で戦い続けることなどできぬし、
時には失策も犯す、それが人間だ。我々の敵は海の怪物でも機獣でもない。それに――」

大きく咳払いを一つし、一旦言葉を切る提督。4人の艦長の視線を受け止めつつ再び話しだす。

「――皆も聞いたとおり『あちらがわの世界』には魔法というものが存在しない。つまり彼らは魔法に関する知識も備えも持っていないのだ
この点は我々が明らかに優位に立っている。無論向こうも馬鹿ではないから白銀同盟の連中から魔法についての知識を仕入れていることだろう。
だがそんな半端な知識、間に合わせの対策が通用するほど戦争というものは甘くはない。そうではないかな諸君?」

話し終えると力のこもった視線で艦長たちをぐるりと見回す提督、その視線に艦長たちが反応する。

「提督の仰るとおりです。敵にもつけ込む隙はある」
「我らの切り札は魔法というわけですか……ふむ、うまく決まれば勝ち目はありそうだ」
「付け焼き刃の知識のみで戦いを挑む羽目になる彼らこそ不幸なのかもしれませぬな……いや、これはさすがに見くびりすぎですか」
「……はい」

副官の報告が終わってから室内に漂っていた重い空気がようやく晴れる。

「諸君らとは近いうちにまた会議を持つ予定だ、その時までに君たちはこれまで得られた情報を元にして、ニホンの軍艦と交戦する際に
有効打を与えられるであろう戦術を立てて欲しい。私は次のワイバーン定期便で上に増援を要請する、なにか質問はあるかな?」

その声に応えて次々と質問を行う艦長たち、副官とともにそれをさばいてゆく提督。それが終わると提督は閉会を宣言、
艦長たちは別れの言葉を述べると一人、また一人と部屋を後にした。
提督と副官のみになった室内、副官がポツリと呟く。

「増援……果たして来るのでしょうか」

「海軍の現状が厳しいのはわしもわかっている。40隻を超える艦を一時に失なうなど我が海軍の歴史でも初めてのことだからな。
だからこそ、何としてでも上に増援を約束させる。戦力を小出しにするなどあってはならぬことだ」

大きく頷き、決意を新たにする提督。だが彼は、いや、この戦隊に所属する4隻の艦に乗り組む全ての軍人たちは気づいていなかった。
そのニホンの海軍の艦が人知れず自分たちを監視しているということを。
0038創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 22:47:10.05ID:6+6j0GFF
「連中が動きました、これまでと同じ進路を取る模様」
「ご苦労、何かあったら知らせてくれ。こっちも動くぞ、深度そのまま、前進微速」

押し殺した声で報告を行う水測員、報告を受けた艦長もまた押し殺した声で応える。
SS-595『なるしお』、おやしお型潜水艦6番艦として建造され、今は横須賀を母港とするこの艦が命令を受け、ゲートの向こう側の情報収集と
外交団との連絡を付けるべくゲートをくぐったのはおよそ8時間前、そして今この艦は深度35メートルの海中を這うような速度で航行しつつ
そのソナーで水上と水中を監視していた。

「会議は終わったようですね」
「ああ、問題はその中身だな。定例会議なのか緊急会議なのか、議題は何なのか……もどかしいな」
「それは仕方ありません、いくらうちの水測員が地獄耳とはいえさすがにソナーで盗聴はできませんよ」

辛抱強い人物である艦長の顔に普段は見ることのないいらだちの色が浮かぶ、それをなだめる副長。
およそ1時間半前、水測員が監視対象全ての減速を報告、程なくして海面に何かが投下された音を探知する。さらに停止した
監視対象周辺で複数の音源(水測員は艦載艇ではないかと推測)が新たに探知された。
そして今、艦載艇であろう音源が全て消え、監視対象は再び動き出したことを水測員が確認、『なるしお』もまた追尾を再開したのだ。

この監視対象がとった一連の行動を『なるしお』艦長は何らかの情報を受け取った指揮官が部下を招集して会議を開いたものと推測した、
だが現状ではその会議の内容や性格までは把握できない。そして彼の脳内にはその情報とは敵地で孤立無援の『くらま』が撃沈、もしくは
拿捕されたというものではないか、という推測がちらついていた。

「……予定を繰り上げるべきかな、君はどう見る副長?」
「リスクはあります、ですが『くらま』の置かれた状況を考慮すればそれをおかす価値はあります」
「……よし、やるか」

艦長はそう決断すると監視対象から離れる進路を取りつつ増速するように操舵員に命じ、通信員には短波通信の準備を命じる。
狭い発令所に押し殺したやりとりが飛び交い『なるしお』はその船体をかすかに傾けた。
やがて監視対象と十分に距離をとった『なるしお』が潜望鏡深度に達するとまずレーダーと潜望鏡が周囲状況を確認、
次いでセイル上部に取り付けられた短波通信用アンテナが立てられ、通信員が予め用意された電文を発信する。
程なくして『くらま』との回線がつながり、両者は挨拶もそこそこに情報交換を開始した。

限られた情報を基に強敵に勝利すべく策を練る男たち、監視の目をかいくぐりながら貴重な情報を集める男たち。
日本とガルリア帝国、2つの国は戦いの準備を静かに、しかし着々と進めつつあった。


これにて投下終了です
外交団と政府や外務省がずっと連絡を取り合えないままなのは流石にまずかろう、と思いましたのでこういう形で連絡を取れるようにしてみました
あと帝国側が海自について色々知ってる理由は日本側が見くびられないようにあえて情報を明かしている、という設定です
0039創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 23:31:03.67ID:KM0lo1AR
>>34
それは流石に言い過ぎ、失礼だよ。

>>38
乙です。航空勢力がベルゼバが最強でワイバーンよりも早くて、91式戦闘機相当という事は
今の所、自衛隊は、ガルリア帝国の航空機を圧倒している状況ですね。(向こうがジェット機みたいな機獣を開発しない限り

未知数な所がありますが、地上戦に持ち込まれても撃破可能で、上陸前に全て撃沈できそうです。
何やら不穏な動きがありますが、交戦状態になったらこれを撃破して、上手く交渉の材料にしたい所です。
0040創る名無しに見る名無し2015/07/08(水) 23:39:49.06ID:FLKsu+RG
乙です
お互いにらみ合いだな


>>34
一応投下前に確認とるのはマナーなんで一つ
0041創る名無しに見る名無し2015/07/09(木) 18:22:58.18ID:Jzn0pnpG
「ガサラキ」の特務自衛隊とか出たら面白いかも。
0042創る名無しに見る名無し2015/07/09(木) 20:01:02.18ID:+Swa1nW8
それだと東宝自衛隊もOKになりかねない罠
0043創る名無しに見る名無し2015/07/09(木) 23:37:02.95ID:Y5bYvkEm
>>38
乙、流石に水中を自由に動ける船が潜んでいるとは思っていないかww
両社とも牽制し合っている状況ですね。

>>42
自衛隊に原子力炊飯器と光学兵器搭載型戦車が存在するのは公然の秘密です。
0044創る名無しに見る名無し2015/07/10(金) 19:00:30.44ID:vdk18TCZ
石動様へ
先日、「隠岐にはイノシシはいない。ノウサギが最大」と申し上げたものですが、
ノウサギより小さいイタチがいました。
イノシシの削除より、「野犬かイタチ」という台詞への変換でよかったですね。
どうも「野犬でも」だけでは台詞が寂しくなっていたように見えたので。

遅くなってすみません。
0045創る名無しに見る名無し2015/07/10(金) 21:53:30.50ID:HDAvmd/o
隠岐にイノシシはいないがイノブタはいるって聞いたんだが本当なんだろうか
0046創る名無しに見る名無し2015/07/10(金) 23:07:21.09ID:lECNwBoG
モンスター娘のいる日常がアニメ化してて草
でも、F世界と繋がったら亜人と交流するんだろうなぁ・・・アメリカ辺りは差別問題酷そうだ。
日本は日本で893の商売道具にされそう(亜人少女
0047創る名無しに見る名無し2015/07/10(金) 23:15:04.81ID:vdk18TCZ
>>45
あらかた検索したのですが、自分が見た限りではありませんでした。
イタチはこちらの「自然分布」参照。移入説もありますが今いるのは確実。
ttp://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/10320.html
0048創る名無しに見る名無し2015/07/10(金) 23:17:59.66ID:oYv2VNNa
猫の獣人がいればマタタビが高く売れそう
0049創る名無しに見る名無し2015/07/10(金) 23:32:05.23ID:lECNwBoG
猫耳娘とかじゃなくて、アイルー・メラルーみたいな完全に二足歩行する猫みたいな獣人はどうなんだろうな。
中国辺りだと、密漁されそうだ。一応人間の言葉を理解する知的生命体だけど、人間(水子)すら調理するんだからそう言う種族も裏で流通しそう

亜人の国と交流するにあたって、各国の反応・対応を見てみたいもんだ。
0050創る名無しに見る名無し2015/07/11(土) 01:05:29.13ID:jkbALOFk
アヘン戦争のようにマタタビの氾濫が原因で戦争になったりして
0051創る名無しに見る名無し2015/07/11(土) 05:46:15.31ID:65pl45+M
親切心から犬系獣人の子供にチョコレートをあげたら倒れる事故が起きたりするのか
0052創る名無しに見る名無し2015/07/11(土) 07:46:49.12ID:hROi18i3
日本召喚モノのSSで日本の宿泊所が獣人にはタマネギを出さないよう注意してたな
0053創る名無しに見る名無し2015/07/11(土) 13:05:05.06ID:yEm9Xbfl
>>49

シナとチョンはダメっすね。奴ら犬猫を殺して食うしチョン半島やシナ大陸(チベット・ウィグル・満州を除いた華北・崋中
・華南)がF世界に転移したら亜人を食べまくるでしょう。
クワバラクワバラ!
0054創る名無しに見る名無し2015/07/11(土) 18:33:42.34ID:LOuteLAx
犬猫を殺して食べるのは構わんだろうに…
結局は肉でしかないのだから、愛玩動物だからと言って犬猫だけ保護しますって都合よすぎでしょ
他文化圏の食文化を安易に批判するもんじゃないよ

特にF世界の食生活なんてかなり清潔な食糧供給の下生活してる
自分達にとっては中国もビックリなもんが多いだろうしね
0055sage2015/07/11(土) 18:54:54.07ID:zFTyWITh
どれ程容姿が似ているかにもよるな
F世界で猿をメインに食べると聞いてこっちがどんな反応するのか
そういえば、エルフの主食が人間という設定をどっかで見たなw
0056創る名無しに見る名無し2015/07/11(土) 18:58:17.18ID:zFTyWITh
>>55間違えた。名前欄じゃねーわw
0057創る名無しに見る名無し2015/07/12(日) 13:35:59.83ID:PU7z9E2H
>>54
偏見かもしれないけど連中は養殖用以外の他人が飼ってるペットも
攫って食べるイメージがあるんじゃないか?
0058創る名無しに見る名無し2015/07/12(日) 15:00:54.65ID:PAPkRdn0
>>57
そういう偏見を持ってるなら何やったって悪い方に考えるだろうからなぁ
考え方を変えない限り、そういう偏見を持つ人とは分かり合えんでしょう
海の犬っころと同じメンタリティだよ
0059創る名無しに見る名無し2015/07/12(日) 17:14:23.97ID:icsC1EsB
これ以上続けたいなら東亜板でも行ってろよ。
0060創る名無しに見る名無し2015/07/12(日) 18:46:32.01ID:PAPkRdn0
これは申し訳ない
このスレで他文化批判や政治的な話はするもんじゃないな
0061創る名無しに見る名無し2015/07/12(日) 20:14:53.51ID:MgRRs/fi
向こうの方から人間を食肉目当てで襲ってきたら、撃退するべきだけど、こっちの方から亜人を食うとなるとなぁ・・・。
文明を持たないモンスターと思ってオークの住む島を襲撃してオークを絶滅させつつ食糧に加工したが、埋葬した後や壁画などが見つかって
日本が動揺する・・・みたいなネタどこかで見た事あったな。

ゴブリンだろうがオークだろうが、原始的であっても文明を築いている種族を一方的に追い払うのは避けたいもんだ。
0062創る名無しに見る名無し2015/07/12(日) 21:22:24.41ID:VtALbaFm
白人のネイティブアメリカンにした文明やら天命が何とかで言って行った超野蛮行為を現代も行うとか人間不信に成りそう・・・
そのせいか、アメリカ人は潜在的に自分より強い何かに恐れてるとか言われるが、どちらにせよ、人道や倫理を捨てて弱肉強食が尊ばれる
世は来て欲しく無いな。

しかしネイティブアメリカンみたいな国や土地の所有の概念が無かったり、原始共産社会が広がった地域や人は西洋的物質文明とは
根本的に相容れようが無いなとも感じてしまうが・・・・
0063創る名無しに見る名無し2015/07/13(月) 18:57:55.82ID:GkL9EYxh
>>61
帝国召喚の外伝だな
0064創る名無しに見る名無し2015/07/13(月) 19:34:24.31ID:6m3LzrvA
帝國召喚はダークエルフも日本も異世界もそれぞれの思惑があり利用され利用する関係が良かったな
その外伝もオークに助けられた現地民がいたけどいなかった事にされたりで
小銃でも中々止まらない体格から繰り出される投石が砲弾みたいだったが確かに石投げるだけでも脅威だよなぁ
0065創る名無しに見る名無し2015/07/13(月) 21:04:07.49ID:zz4A/Mtt
帝国召喚はわざわざ嫌な話を作ろうとしているところがあざとかった
0066創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 22:11:46.29ID:Vcy7CeN4
こつこつ書いて何とかひと段落
リレー小説の続きなのですが投下してもよろしいでしょうか?
0067創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 22:18:03.90ID:dT+xG4Pm
いいですとも
さあ今回はどんな話かな?
0068創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 22:22:03.11ID:BKs5lSLa
バッチこーい!
0069創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 22:30:50.52ID:Vcy7CeN4
それでは投下します
アランは割り当てられた客室に荷物を置き同僚に挨拶を済ませると会議室にに向かった。

高級木材で作られた車両は政府専用の特別列車だけあり豪華なものであった。
オークやオーガの体格に合わせて設計されているため天井までの高さは5メートルを超える。
車体が大きいため軌道幅は3メートルにもなり車輪は人ほどもある。
そのため一般の客車は2階建てになっておりさながらホテルのラウンジのようだ。
床には珍しい刺繍を施した分厚い絨毯が敷き詰められている。
壁には木目を生かした細工が彫られ、刺繍の入った絹に包まれた魔力灯が輝いている。
屋根の棟木と梁にも彫刻がほどこしてあり、屋根そのものは螺鈿である。
天井に付けられた魔力灯の光によって黒く艶のある鈍い光沢を放っている。

会議室の前には護衛の象頭の獣人が番をしていた。挨拶をすると笑顔で―本人は笑顔のつもりなのだろうがちょっと怖い―中へ入れてくれた。
会議室にはすでに一群が丸い会議用のテーブルを囲んで話をしていた。話し声は真剣でみな異世界の船が到来したことは帝国にとって危険なことかもしれないと考えていた。
摂政、海軍省のリボル・ヴラサーク、参謀本部のフィアン・ユルチェ、情報省のラデク・ハルトル、医者のターニャ・サラコヴァー、それから魔科学省から派遣された恐竜人のアンドリアス・ショイフツェリが集まっていた。
エヴェリーナの後ろにはメイドが2人控えている。

恐竜人、恐竜から進化した彼らは人間や他の獣人とは特徴が大きく異なる。
手先3本で人間と同じく器用ではあるが肩の構造が人間とは異なる為、腕を大きく振り上げることが出来ない。
しかしその脚力は強靭で身体強化がなくとても時速60キロで走ることができ全力疾走では100キロを超えてしまう。
人族と同じく湿気を嫌い乾燥した場所を好むが、だからといって砂漠みたいな場所を好むわけではない。ようは人間と一緒だ。
永遠戦争の後逃げることに成功した種族で各地に隠れ住み独自の社会と文化を維持することに成功していた。
人族の中ではリザードマンと名付けられ魔族に指定されている。

アランは挨拶をすませると席についた。

中年の彫りの深い顔に髭を蓄えたフィアンが席を立って喋りだした。
「これまで解っていることを振り返りまして、明らかなのは、この者達がまったく異世界のものだということです。」

フィアンが会議テーブルの水晶に魔法をかけると水晶が光だし空中にくらまの映像が浮かび上がった。

「この船は、わが国の造船技師達も知らない製法で作られております。
表面材質は鋼それからアルミナやセラミックなど我々の世界とかわりませんが、加工技術は遥かに我々の技術水準を超えています。
しかし、アダマンタイトやオリハルコン、ミスリルを使用している形跡は見当たらりません。
そしてやっかいなのが彼らの使っている武器でして。」

エヴェリーナが尋ねた。「彼らの武器の正体が判明したのか。」

「はい、連射式の銃や砲、自動追尾式のロケット弾だというのが分析者の見解です。」
そう言うとフィアンが水晶に魔法をかけネレイドと自衛隊の交戦映像に切り替わった。

「この兵士の持っているのが連射式の銃ですな。設置型のやや大型の銃も確認できます。
筒状の武器がロケットです。先端部がロケット弾で発射時の爆風を後方に逃がしているのですな。推力に火薬を使っていることが映像から解ります。
後方ににて発射光と煙が確認されます。望遠索敵によりますとこれが砲ですな。形は長砲身小口径で我々の砲とかなり違います、筒状の小型の砲も確認できます。
回転翼機にも銃とロケット弾が、自動式の車には大砲と銃、ロケット弾を装備したものがおります。」

アンドリアスが口を挟んだ。
「我々の世界では銃や大砲の研究は魔法研究の躍進によって遅れているが魔法がない異世界では銃や大砲が主武装として進歩しているのだろう。」

「そうですな。魔法の研究が進むにつれ銃砲の研究がおろそかになったのは否定できません。」
フィアンは口を挟まれたことを気にせず相槌をうった。
0070創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 22:32:40.23ID:Vcy7CeN4
「回転翼機というのはどういったものですか?」ターニャが質問した。まだ若く美人ではあるがまだあどけなさが残っていて長い亜麻色の髪をしている。

アンドリアスが答えた。「回転する翼によって揚力を得て飛ぶ飛行機械の一種だ。ワイバーンに変わる戦力として研究されているが結果は思わしくはない。」

「何が問題なんです?。」ターニャは好奇心から尋ねた。

「軍が要求した性能は垂直離陸能力を持つ、時速300k以上、限界高度8000m、航続距離900k以上つまりワイバーン以上の能力を持ち、5年で1万機を配備できる生産性を持たせることだった。
加えてこの性能より下では追跡エンチャントと飛距離上昇エンチャントを付けた投弾兵器の追跡を逃れることは出来ない。」
アンドリアスは淡々と答えた。

エヴェリーナが口を挟んだ「2万を超えるワイバーンの代替になるのだ。それくらいの性能がなければ採用はできんな。それに滑走路は対魔法防護を使わなければ土魔法で簡単に破壊されてしまう。
白銀同盟の破壊工作を警戒せねばならん我らには滑走路はあまり作りたくない代物なのだ。」

「このため我々は回転翼機に注目し研究していたが現在の我々では回転翼機でこの性能を出すことは出来ないとわかり計画は凍結された。
結局採用されたのはアルレガ殿下のベルゼバだけだけだった。もっとも機獣枠としてだが。」

「ベルゼバも性能ではワイバーンに勝っているが材料が特殊で生産性が悪くてな。設計に余裕がなくて亜空間式断層装甲も搭載できん。」

「できればアルレガ殿下には学会に出席したり学術誌を読むように進言していただきたい。彼の発明は注目すべき点があるが一部には古い発想のものがある、知見を広めればそのような事もなくなるはずだ。」

「私や陛下も言うてはいるのだがな。何分あの性格ではな。」

「そりゃそうでしょう。自分が一番賢いと思ってる人間が他人の意見を聞くはずありませんよ。」
そう発言したのは情報省のラデクだ。彫りの深く高い鼻をした小男で目は小さくやぶ睨みで、まっすぐな黒髪をギザギザに刈っている。どことなく胡散臭い雰囲気を纏っている。
「若い頃は、誰だって自分の能力に過度の自信を持つものですよ。気にやむことはありませんて。」

「貴方が継承権を捨てて家を飛び出した時みたいにか。」フィアンが言った。

「誰にでも若い時はあるもんさぁ。」ラデクは平然と認めて頭をかいた。
「どうしても言うことを聞かせたいなら、リリスかマルダランあたりを魔道工房に送るんですなぁ」

「そんなことをしてみろ、私は不幸な事故の報告と葬儀の準備をしなければならなくなる。」エヴェッリーナが文句を言った。

「なぁに綺麗さっぱり後腐れがなくなりまさぁ。」

「ともかく、いずれの兵器も亜空間式断層装甲を破るにいたっておりませんがその破壊力、命中率、射程は十分な脅威であります。
また回転翼機や自動車などはわが国では研究中なれど実用化がされてないものを使う異世界人は高い技術力を持っております。」

「破壊されたネレイドの残骸はできれば回収したい。特にアレルガ殿下の調整したネレイドは映像を送ることはなかった。原因を調査したい。」アンドリアスが意見を言った。

アランが答えた。「交渉して見ましょう。」

エヴェリーナが肯いて水晶に魔法をかけるとくらまの映像に切り替わった。「さてラデク、そなたはこのような造りの船の事を聞いたことがあるか。」

「いいや」ラデクが答えた。
「我々はもとより他の大陸においてもこのような船は知られておりませんなぁ。
帝国大図書館やティア・マトゥ(旧エル・ティリア首都)他各地にて古い文献を調べさせております。何かわかるかもしれません。」

エヴェリーナは言った「頼んだぞ。彼らもゲートの存在を知らないと言っているが真偽は不明だからな。
彼らがゲートを自由に作れるなら密かにこちらを偵察しているかもしれん。」
0071創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 22:41:26.50ID:Vcy7CeN4
「どちらにせよできるだけ情報を集めたほうがいいと思います。」
海軍省のリボルが言った。まだ若い彼はやや緊張しながらも意見を続けた。
「この船は明らかに軍艦のようですね。交戦記録からも幾つか似たような船が確認されます。
船首斜檣も帆柱もないことから何らかの動力船であることは間違いありませんし回転式の砲塔は船全体に死角を生じさせないように配置してあります。
前甲板の三つ目の装置も何らかの武器でしょう。彼らの武器が銃、砲、自動追尾式のロケット弾しかないのならこれがロケット弾の発射装置かもしれません。
広い後甲板は回転翼機を離着陸させるためでしょうし後ろに砲がないのは艦隊で運用するためではないでしょうか。
報告書によれば、何度も塗料を塗り替えた後や修理の痕跡があるとのことで少なくとも最新のものではないでしょう。」

フィアンが言った。「このお客さんの船は機能的に出来ていてハリネズミみたいに武装しています。中に何千人の兵隊を抱えてるか解らない。
仮に戦艦で向かっていったら射程に入る前に海に放り出されるはめになりますな。」

「動力船は船体に動力源を収容しなければならないのであの大きさでも千人も乗るとは考えにくいのではないかと」リボルが控えめに主張した。
彼は椅子に寄りかかり、指を曲げてテントの形を作っている。
「幸いなのは進入経路が現在1つに絞られていることです。異世界船は金属製ですが骨組みが見える程薄い装甲をしています。
戦争になるのなら、ゲート周辺に機雷を設置してしまえば損害を与えることもできるでしょう。」

ガルリア帝国の機雷は樽に爆薬詰めたり炸裂魔法をかけた初歩的なもので、重しの数によって深度を調整する。接触式と時限式のものがある。

「海軍ではこの船に対抗できる船を作ることは可能か」

「難しいでしょう。私どもの船は動力の故障率や燃料節約のため、未だに帆を搭載した機帆船がやっとです。動力方式もまだ決まっていません。
対抗するにはネレイド級が必要でしょう。水中からの攻撃も効果があるかもしれません。」

現在帝国は3つのタイプの動力船を開発している。
1つは畝傍をモデルにした石炭を燃料とする蒸気機関。
もう1つは魔力シリンダーに魔力を注入し炉内で活性化させ高温で湯を沸かす蒸気機関。この方式は魔導列車に採用されている。
他に魔力そのものを動力にする魔導機関を搭載した魔導船が存在する。
魔導船は発掘された古代機械を参考に作られているがこの3者でもっともコストが高く量産化に達していない。
ちなみに白銀同盟は損傷の少ない古代機械の魔導船をそのまま使用している。
最大の問題は航続距離で食料と水さえあれば、無限に航海できる帆船と違い、動力船は燃料の補給を必要とし航続距離という制約ができたことだ。
各地に燃料補給のための基地が必要になり兵站の労力が数倍に跳ね上がるのだ。
石炭などは他大陸でも採掘できるが、魔力シリンダーに魔力をこめるには輝ける太陽が必要になるが破片であろうと他大陸に持ち出すのはもってのほかである。
裏技で魔法使いが魔力を込める事ができるが故障の原因になるので禁止されている。
加えて燃やせる石炭と違い魔力シリンダーは魔力を放出してもそのまま残ってしまうので航続距離は石炭式にどうしても一歩劣ってしまう。
しかし魔導列車での実績がある魔導式蒸気船は安定性があり故障率も低いため支持者も多いため帝国内でも決めかねているのが現状だ。

エヴェリーナが肯いた。「わかった。彼らの船の航続距離も調べねばならんな、まさか無限に動くことはあるまいし動けたとしても食料や物資の補給のために定期的に港に寄港しなければならんだろう、その期間を知りたい。
しかし、正体不明のゲートの向こうが異世界とは、そんなことがあるものだろうか。」

「世界各地には異世界信仰が多くある。沿岸部では黄金を積んだ船がやってくる伝承やある日突然人が消えたり現れたりする事件の記録がある。
それらすべてが実際の事件とは考えにくいが興味深いのはフジワラ氏族の発祥伝説だろう。」アンドリアスが発言をする。。
0072創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 22:43:28.35ID:Vcy7CeN4
「フジワラ氏族ってあのフジワラ氏族ですよね。どんな伝説なんですか。」ターニャがたずねた。

「簡単に言おう。昔フジワラ氏族の祖先はこの世界とは違う世界で平和に住んでいたが西には悪魔が住んでおり定期的に供物を捧げなければならなかった。
ある時祖先の住んでいた地の豊潤さに目が眩んだ悪魔の軍勢がついに押し寄せてきた。
祖先は迎え撃つために兵を起こした。しかし集結中に辺りが真っ白になったかと思うと以前とは別の場所に移っていた。
以降祖先はその地に住むことにしたという伝説だ。
その後拡大してきた当時のガルリア帝国に吸収され彼らの文化は帝国に多大な影響を与えた。
大きいのは摂政制を導入したことだ。それによって一時期ガルリア帝国はフジワラ氏に支配されていた。」

「フジワラ氏族にそんな伝説があったんですね。」

「フジワラ氏族発祥地とされる場所はクレーターの跡地にあり、発掘調査によって地中から白銀の月の欠片が発掘されている。」
「白銀の月の力か」エヴェリーナが呟いた。

「現在ミダス島をゲートに向かわせています。到着しだい着水しゲートの研究を開始する手筈になっております。」フィアンが付け足した。

エヴェリーナは肯いた「許可する。この異世界人の会議はこれまでとしよう。何か新しいことが分かりしだい会議を開く。
2日後には彼らはマル・プトラに到着する。講和交渉も重要ではあるが彼らを観察するのも重要な事である。
初日の夜にはお互い友好のため晩餐会を予定している。各々気づいたこと解った事はどんな事でも報告してほしい。」

「可能であれば『心の接触』を行いたいと思います。」ターニャが言った。
『心の接触』は高位の魔法使いにしかできない術で、施す者と施される者にとても危険な術であった。
その危険を冒してでも情報を得たいと彼女は考えているのだ。

「頼むぞ、さて、次は白銀同盟の動向についてだが――――」

会議はまだまだ続く

終わりです
わけ分からん奴等が来たぞどうしようというシーンがかきたかったのです
エヴェリーナのモデルがT-elosらしいがゼノサーガやったことないから口調や性格がさっぱりな有様だ
消えた奥州藤原氏20万の兵力、実際はブラフで20万人も兵力はなかったそうですね
藤原氏はどうせ帰れないだろと思ってむちゃくちゃいったようです
0073創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 23:17:38.76ID:GSrK7xX6
>>72
乙ですー。
数の問題で未だにワイバーンが空軍の主力なんですね、でも、生物を成体にまで育てるのと、
工場で作るのでは生産性が段違いなので、その内ベルゼバに取って代わられそうです。

あれ?ベルゼバってヘリコプターじゃなくてオーニソプターじゃなかったけ?
後は、丸玉の大砲の世界でロケットの存在が知られているのに少し違和感が
アルミニウムと言いセラミックスと言い、産業革命初期に入ったばかりの技術力の割にありえない素材が見られるのが気になるかもです。
0074創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 23:25:35.46ID:AS+zc59j
自衛隊ずっと出ないな
0075創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 23:48:58.54ID:BKs5lSLa
投下乙です
ちょっと詰め込みすぎかも?
偶然によるゲート発生だから相手がなんなのかさっぱりなんだろうな
征服されたのにいつの間にか摂政政治始める藤原はさすがだな
0076創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 23:59:00.76ID:GvV18GB/
投下乙です。
藤原氏のバイタリティーが高すぎませんかw
0077創る名無しに見る名無し2015/07/14(火) 23:59:31.57ID:dT+xG4Pm
乙でした
ガルリア帝国、近代的な部分を持つ強国だけあって情報収集にも抜かりがない
しかもこれから隙を見て奥の手的な魔法を使う計画まであるとは
…アルレガ殿下の工作でこの魔法が暴走して交渉決裂、再交戦みたいな展開なんてのもアリかな?
0078創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 00:12:22.87ID:fr02dkAl
乙です 私も書いていたネタが纏まったのでリレー小説投下しましょうかね?
霞ヶ関の話だけど
0079創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 00:24:15.64ID:GKzLMZBl
燃料投下かもん
0080創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 00:26:25.58ID:6dv+7coD
お願いします!
0081創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 00:30:01.51ID:KNlzg6/D
バッチこーい
0082722015/07/15(水) 00:31:34.23ID:O2I0pY3n
>>73
ベルゼバは飛行機械として採用されたのでヘリコプターではないですね
私自身はオーニソプターだと思っています、書き方が悪かった
セラミックというのは近代的なイメージがあるかもしれませんが和訳すると陶器でして紀元前からある代物なんですよ
アルミニウムも18世紀に発見されているのでまああるかなと知ってはいるけど加工技術に驚いてるんですね
ロケットも一緒で13世紀には今のロケット弾の原型の形の物が作られていました

>>75、76
藤原氏は不滅だ何度でも公家として蘇るさ
とりあえず最高権力者に娘を嫁がせる事から始めよう

>>76
説明入れてなかった心の接触はティーリアが魔石に使ったのと同じ魔法で相手の心を読むみたいな魔法です
失敗すると両者とも精神に異常をきたしてしまうのです。

>>77
バッチこーい
0083創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 00:37:26.55ID:fr02dkAl
では投下

東京、霞ヶ関
そのビルにあるロータリーに何台かの黒塗りの高級車が進入した。警察官は憮然とした表情でその様子を見ている。
そして高級車から数名のボディガードに囲まれ、女性と胸と肩に星をつけた一人の男が降りて足早に建物へと入っていく。
そして二人はオフィスのある一室に案内された。座った二人の目の前には英文で書かれた資料と二人の男が座っている。

「モロハシ外相とお会いできると伺っておりましたが。」

明らかに不機嫌な顔の女性を前に篠塚外務次官も少し押されぎみで答える。

「キャロライン大使、申し訳ございませんが諸橋大臣は現在官邸で緊急の閣議の真っ最中です。あの事件のあと情勢が大幅に変わりつつありますゆえ・・・」

「言い訳はいい。私たちがここに直接やってきた意味は分かっているね?」

男は背広の星を見せ付けるがごとく背筋を張って外務次官の発言をさえぎる。

「ミッチェル、少し抑えて。コホン、我々も合衆国の代表として貴国の悲劇に哀悼の意をささげます。
 しかし、軍・・・自衛隊を動かし『戦闘』が発生した以上わが国も座して見守るわけにいかないのです。そのためにも我々はこうして情報の共有のために・・・」

篠塚の隣に座る統合幕僚長、遠野が眉をひそめた。「あの事件」の時アメリカ軍はこちらと情報を全く共有しなかったではないか。
アプカ上陸直後、厚木から2機の海軍のF/A-18F戦闘機が離陸したという最初の報告は米軍からではなく基地に同居する海上自衛隊の航空隊からであった。
しかも戦闘機の離陸後SH-60シーホークを引っ張り出していたことも海自から報告された。コブラの撃墜を見てそそくさと格納庫に戻していたようだが。
さらにアプカが成田へと向かっていると判明した段階で追加のF/A-18F戦闘機を4機離陸させた。
米軍の公式の記録ではこの段階になって初めて自衛隊に対し「在日米軍は情報収集のため厚木から戦闘機を離陸させた」と伝えたのである。
付け加えるとこの4機は成田から退避する民間機の護衛、誘導に当たっていた空自のパイロットの報告によれば、
この『偵察機』は爆弾をぶら下げていたようで、このために自衛隊は独力でのアプカの破壊を急がざるをえなかったのである。
もっとも最初の報告があってから自衛隊も情報を出し渋ったのでどっちもどっちではあるが、対面に座る二人はそれが気に入らなかったのである。

「以前もお話しましたがあの事件については未知の要素が多すぎて調査は全く進んでおらずこちらが提示できる情報も限られております。」

「すでに貴国が『軍艦』を一隻向こうに送ったことはこちらでも把握しております。そちらからの情報はございませんか?」

アメリカ大使は相手を気にしないかのように「本題」を提示してきた。将軍の目つきも変わっている。
異世界のモノたちが最初に現れた海域は当初海上保安庁が封鎖していたが
「同盟国を守るため」にアメリカ海軍が駆逐艦を出したことで自衛隊も対抗して護衛艦を出さざるをえなくなっていた。
護衛艦くらまが異世界に旅立った様子をアメリカ海軍はばっちりと監視していたのである。
0084創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 00:37:57.32ID:fr02dkAl
「『向こう側』との通信が完全に途絶している以上、我々は彼らが無事帰ってくることを祈るしかございません。
 もちろん彼らが無事何かしらの情報を持ち帰ってきた際は、貴国に優先して提供する用意はございます。」

統幕長が事務的に答えたが今度は中将が不満げな口調で返す。

「祈る?君は敵対勢力が闊歩するかもしれない地域に駆逐艦一隻を何の支援も無く送り込んでただ祈るというのかね?
 我々にいわせればそれは無謀すぎる。十分な攻撃能力を持たせた艦隊を送り込むべきだったのだ。『我々と共に』な。」

ミッチェルの露骨な物言いにキャロラインはため息を吐いた。

「とにかく、合衆国は未知の脅威から日本を守るために必要なあらゆる措置をとる準備がある、ということです。
 しかし我々には情報が無い。だからこそ貴国に『お願い』をしているのです。」

「ですから、我々にはこれ以上の『情報』は現在のところ把握しておらず、従って貴国にいくら要請されても渡すものが無くては・・・」

大使と外務次官、そして在日米軍と自衛隊。双方の交渉は平行線をたどり、結局時間切れでお開きとなった。
外務省のビルを出た高級車の中でキャロラインとミッチェルは小声で話し合っていた。

「いささかでしゃばり過ぎたなら謝ろう。だが、今回ばかりは奴らも一筋縄ではいかないな。」

「あれくらいでいいわよ。しかし連中はこちらが『情報源』の存在に気付いていることを知っているのかしらね。」

「さあな。ただ連中は『情報源』をしばらくのあいだ隠しておこうとするだろうな。」

「ところで、『艦隊』の話は本当なの?わたしは初めて聞いたけれど。」

「まさか。空軍の私が海軍を直接動かすのは『大統領の命令がない限り』不可能だ。チバの沖合いの駆逐艦はランドルフが送ったものだよ。」

日没で暗くなりつつある中、黒塗りの高級車はかりそめの光が煌々と光る道を走り続けていた。
0085創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 00:38:22.41ID:fr02dkAl
外務省で日米の代表が会談していた頃、首相官邸の円卓には閣僚や政務官たちが集まっていた。理由はもちろん千葉沖の「異世界」についてのことである。
海上自衛隊の高官が手元の書類を一瞥したあと真剣な表情で述べる。

「帝国からの要求、いえ脅迫です。こちらが保護している白銀同盟の関係者の身柄を引き渡さない場合、『くらま』撃沈を含めた強硬策にでる用意があるとのことです。」

外務大臣がその報告に付け加える。

「しかし彼らを引き渡せば両国間の関係を保障するとも言ってきております。アプカ事件についての責任問題や保障について明確な返答が得られるのであれば応じてもよいかと考えますが。」

「『彼ら』の存在は異世界に対してだけではなくこちらの世界におけるわが国のカードだ。それをやすやすと捨てるべきじゃない。」

森経済産業大臣が外務大臣に釘を刺した。

「異世界に展開した潜水艦からの報告によれば、門付近に複数の帝国の船が集まっているとのことです。」

更なる報告に諸橋外務大臣が焦りの表情を浮かべて反応する。

「こちらの船を撃沈するつもりか?そうなれば大事だぞ。」

原首相は高官に向けて質問した。表情こそ変わっていないが声は震えていた。

「堀ノ内海上幕僚長、あなたはどう思われますか?攻撃された際『くらま』は大丈夫でしょうか?」

「外交交渉の結果によりますが決裂すれば帝国からの攻撃は避けられないと思います。また未知の世界において他の支援無しに戦闘状態に陥ることは得策とはいえません。
 報告によれば帝国の船は帆船か汽帆船に近いものが主力のようですが、もしも戦闘になった場合、『魔法』という不確定要素が強く、結果は予測できません。」

「結局は『魔法』か。最近ではこの言葉が呪文のように飛び交っているな。」

経済産業大臣が皮肉気味につぶやく。周囲から小さな笑い声が聞こえた。彼はそのまま続ける。

「しかし、『くらま』を撃沈すれば我々も黙ってはいないことぐらい彼らも分かっているでしょう?下手をすれば異世界同士の戦争だ。」

「お言葉ですが彼らに対して『アメリカの核ミサイル』など脅しにはなりません。」

会議の参加者たちは一斉に動揺し始めた。陸自、空自の高官はそれを見て苦笑している。堀ノ内は続ける。

「少し考えれば分かることではありませんか。『魔法』が我々にとって理解不能なものであるように、彼らにとって『核』というものは理解できないことなのです。
 『核』という単語を相手が知らない以上、彼らに対してその言葉は交渉材料にもなりません。我々の『力』を理解させるには彼らに直接見せ付けるしかないと考えたほうがよいでしょう。」

「堀ノ内海将、君は帝国と戦うべきだ、と考えているのかね?」

総理大臣からの質問に対し海上自衛官はこう答えた。

「私は戦争は回避すべきだと考えております。しかし、今回の相手は我々の想像、いえ常識さえ超越する相手であることは承知しておくべきでしょう。」

自衛官から直接出た『戦争』という単語に会議の場は重苦しい雰囲気に包まれることとなった。
0086創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 00:42:24.28ID:fr02dkAl
投下終了
アメリカの動向と日本の動向をメインにスパイスとして間接的に「帝国の要求」を混ぜてみました。
私はファンタジー要素には疎いのでこういった「日本側」しか書けないんですよね。
基本となる世界観からして違う相手との交渉は何がカードになるのかすら手探りになると思います。
0087創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 02:32:27.58ID:0Mrhj+z9
ケーブルをつないだ中継機とかおけねぇの?
0088創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 19:15:40.15ID:FcgElEmf
投下乙です。
当初は強硬な要求をしておいて妥協するってのは定番ですものね。
しかし、今更ながらくらま一隻にしてしまったのはまずかったなぁ。
0089創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 19:57:58.09ID:6dv+7coD
乙でした
自分たちの相手がどれほど異質な存在かいまいち認識できてないっぽい日本政府も心配ですが
空軍と海軍の足並みが揃ってないらしい在日米軍も心配だ
特にトップが色々とアレらしい海軍がそのうちなにかやらかすかも?
0090創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 21:04:09.95ID:KNlzg6/D
>>85
投下乙です
なんとか戦争を回避したい日本はアメリカに知られたら介入されて戦争になりそうな交渉内容を隠したいんでしょうね
0091創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 22:58:41.96ID:wpHjGoGu
>>85
乙です。仮に くらまを攻撃したら、それ相応の損害を覚悟した方が良いですね帝国は。
多分牽制だと思うので、実力の良く分かっていない未知の相手に殴り掛かるような真似はしないと思いますが、注意した方が良いでしょうね。
0092創る名無しに見る名無し2015/07/15(水) 23:15:50.49ID:O2I0pY3n
投下乙です。
アメリカが介入してきましたね。小康状態である今は強く言ってきませんが今後どうなっていくのか。
潜水艦にも築いてる様子。帝国も強硬案を出したり板ばさみでどうなっていくのか。
0093創る名無しに見る名無し2015/07/16(木) 23:16:28.70ID:MHhY51gg
ゲート、やっぱり緒王国軍のシーンはスパルタカスのローマ正規軍が陣形組むシーン見たいに迫力あるシーンにして欲しかった
そんな予算無いか…
0094創る名無しに見る名無し2015/07/16(木) 23:58:50.84ID:Fnhhr+Tg
アニメ化するにあたって、随分と省略されてしまって、残念でならないねー
一般にF自ジャンルが広まるのは良いけど、一過性のブームで盛大に良い意味でも悪い意味でも盛り上がった後、
そして誰も居なくなった・・・となるのが恐ろしい
0095創る名無しに見る名無し2015/07/17(金) 00:07:35.73ID:k+wVs4zR
アニメ版オリジナルのシーンだが、アルヌス戦でエルベ藩王のデュラン陛下が割と奮戦してるのは良かった
特科の効力射の中、キルゾーンを抜ける為に敢えて進軍を命令したシーンとかね
火砲の概念を知らない文明水準の人間なのに、その辺りを事を看破したのはさすが歴戦の軍人という感じ

残念だったのは、特科のキルゾーンを抜けても鉄条網・馬防柵・地雷・対人障害システム・機関銃・迫撃砲・戦車砲・高射機関砲の対地射撃などの洗礼が待ってる訳ですが
0096創る名無しに見る名無し2015/07/17(金) 00:20:22.14ID:UwGz0pSr
マジキチ王子の日常、投下してみます。


ガルリア帝国、第8魔道工房

見も気もよだつ拷問器具が立ち並ぶ魔道工房から朽木がへし折れるような鈍い音がミシミシと響いている。

「うぐううううぅ・・・あ・・・あぐぅっ・・・。」

棘まみれの水車の様な器具に拘束具を取り付けられたまま、ゴリゴリと押し当てられ、体中に細かい穴が開いた女性が呻き声を上げる。

「うぐっ・・・・あがが・・あがぁぁっ!!!!」

突如女性の全身から血が吹き出し、どばどばと魔道工房の床を汚し、その肉体も血の様に液体化し、残った骨が、拘束具から外れ血だまりに音を立てて崩れ落ちる。

「サドラー、着替えを用意してあげて」

「はっ、アルレガ殿下!」

ローブの男が、工房の扉を開き、更衣室に向かい、残ったアルレガは床に散らばった骨と血の池を見つめる。

「さてさて、これが終わったらまた機獣の調整作業だね、まったく、素体が手に入らないから暇でしょうがないよ。」

アルレガが独り言をつぶやくと、突如血だまりが隆起し、床に散らばっていた骨はパズルの様に元の位置にはまりながら立ち上がり
赤いゼリー状の膜が骨を覆うように、まとわりつくと、血は肉の塊へと変化し、筋肉、内臓、皮膚、体毛と次々と体組織を形成し、全裸の女性の姿が現れる。

「見事な物だねぇ、マゾーガ、流石は上級魔族と言った所か」

「あら?アルレガ殿下の再生の魔法も素晴らしい物ではありませんか。」

「君みたいに、骨だけになっても戻る事は出来ないだろうさ、血液さえ残っていれば幾らでも復活できる君には負けるよ。」

「御戯れを・・・殿下こそ私なんかよりも力を持つ魔族の血を引いているではありませんか。」
0097創る名無しに見る名無し2015/07/17(金) 00:21:17.22ID:UwGz0pSr
扉が開かれる音共に、更衣室から着替えを持ってきたサドラーが現れる。

「マゾーガさん、着替えを持ってきましたよ。」

「有難う御座います、サドラーさん、試作品ですが、悪くない出来でしたわ。」

「それはそれは、君にそう言われると、とても光栄に思うよ。」

「仲睦まじいですねぇー・・・。」

アルレガが微笑ましい視線を二人に送ると、執務室へと向かう。

「そう言えば、アルレガ殿下、白銀同盟との機獣の戦闘記録が届きました、後で目を通してください。」

「あぁ、例の新型機獣にネレイド部隊が全滅したって話でしょ?力押しの運用しか出来ない我が軍にも良い薬になったでしょう。」

「しかし、魔力で形成した亜空間装甲を打ち破るとは、魔法を無力化する領域を展開する装置は厄介ですね。」

「確かに防御力だけは馬鹿げた性能だよ、でも燃費が最悪なんだよね。黄金色の太陽から魔力を充填した特級魔石が何個あっても足りないよ。」

「亜空間式断層装甲が無くとも、ネレイドはオリハルコン性、鋼鉄の4倍は固いはず、ブルータルホッパーの脚力はそれをも貫く威力の様です。」

「なけなしの魔術師を使いつぶす勢いで生産した機獣があの程度と言うのも涙をそそるねぇ・・・・白銀同盟も苦労しているようだよ。」

ため息をつきながら、どかりと椅子に座り、机に置かれた資料を手に取る。

「骨格は軽量なミスリルで作られていて、可動部分はオリハルコン、ネレイドの装甲を貫く脚部、特に先端部分にはアダマンタイトと来た、豪勢な事だよ。」

「・・・でもねぇ、いまどき格闘戦特化と言うのは時代遅れだよ、ゴーレム時代に逆戻りかい?」

「アルレガ殿下、しかし、魔力が無効化される空間の元でのブルータルホッパーの戦闘力は目を見張るものがあります。」

「機能停止した動かないネレイドを一方的に殴るだけだろう?動かないネレイドの破壊なら下手するとガラクタ〈フロッガー〉でも可能なんだよ。」

「ご安心を、アルレガ殿下は既にベルゼバを数機、特攻用に調整しています。格闘戦しか能の無い機獣など、空飛ぶベルゼバの突撃に対処など不可能でしょう。」

「事前に察知されていたら成功率は下がるかもしれないけどね、そこだけ気を付けていれば何とかなると思うよ。」
0098創る名無しに見る名無し2015/07/17(金) 00:23:11.64ID:UwGz0pSr
資料を一通り目を通すと、紙束を机の端に放り投げ、投げやりに天を仰ぐ

「全く、こんなつまらない報告書を延々読み続けるのも気が滅入るよ、変わった事ないかなぁ」

「アルレガ殿下、話は変わりますが、少しの間お暇を頂けないでしょうか?」

「マゾーガさん?」

「実は、実家から呼び出しがありまして、暫く魔都へ戻らねばならないのです。」

「へぇ?そうかい?気を付けてね。そうだ、どうせなら魔王陛下〈お爺様〉にもよろしく言っておいてよ、暫く顔も見せていないしね。」

「以前お会いした時は、殿下とガルリア皇帝とまた杯を交わしたいと、仰っておりましたよ?たまにはエキドナ様と共に戻られては如何ですか?」

「母上も母上で忙しいからねぇ、中々里帰りも出来ないんだよ、色とりどりの魔石灯で照らされた魔都ヘルムスヘイムをまた見てみたいものだね。」

「何にせよ、目の前の問題を片付けないと、面白そうな事〈異世界〉に手が付けられないよ。」

ため息をつきながら、いつの間にかサドラーが用意しておいた紅茶を飲むと、手を組み顎を乗せてぼーっと視線を泳がせる。

「(白銀同盟の機獣から白銀の月の欠片を回収した後は、それを使って早速実験と行こうかな、世界を無茶苦茶にするのも当分先になりそうだ。)」

「それでは、アルレガ殿下、拷問器具の片づけに行きますので、失礼しますね。」

「あぁ、お疲れ様ね。(白銀の月と黄金色の太陽は、神が世界を作り給うた時に作られた世界の欠片、そして世界そのもの・・・。)」

「(『旧世界』において、何故 神遺物が何度も砕かれているか、それは世界の再構成を無限に繰り返しているからであろうと、魔族に伝わっている。)」

「(真偽は兎も角、完全なる月と太陽は、いずれ姿を現す、これは賭けでは無く必然なのだよ。)」

「(意のままに因果律を操り、世界を海に沈めるのも悪くない・・・でも・・・・。)」

「(この世界ごと向こう〈異世界〉)に転移させて、ぶつけ合うと言うのも良いアイディアじゃないかい?」


終了です。何だか無駄にスケールが大きくなってきた。メテオじゃメテオー!
0099創る名無しに見る名無し2015/07/17(金) 00:26:34.14ID:9juo3vW6
たかだか4倍?
0100創る名無しに見る名無し2015/07/17(金) 02:37:28.83ID:3vvMl0PS
投下乙です
オリハルコンはモリブデン鋼包丁よりちょっと固い程度の固さなのか…
魔力で補えば力は何十倍にもなるとか…
それはともかくポセイドン族は全滅しなければならないオーリーハールーコーン!
0101創る名無しに見る名無し2015/07/17(金) 04:48:20.16ID:gJyIhxHQ
>>95
そういう防御陣地って、普通はどうやって攻略するものなの?
戦闘機と重砲で敵の榴弾砲陣地や対空陣地を破壊、地雷などの複合障害は砲迫で大体吹っ飛ばした後に戦闘工兵が啓開、潰し残した壕や掩体を戦車と歩兵が叩く
こんな感じ?
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